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精神科医監修:強迫性障害とは?診断基準や症状などわかりやすく解説

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2022年11月4日

最終更新日 2023年1月20日

強迫性障害とは何なのか?診断基準や症状など精神科医監修でわかりやすく解説します!

今回の精神科医監修ブログのテーマは『強迫性障害』です。汚れているのでは?と感じて手洗いが頻回になったり、鍵を閉め忘れたのではと気になって家に戻ったり、エンタメにおいて題材になることの多い疾患ですから見聞きしたことのある方もいらっしゃるのではないでしょうか?

 

強迫性障害の診断基準や症状、巻き込み行動などわかりやすく解説します。

 

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強迫性障害ってどんな病気?わかりやすく解説!


強迫性障害とは、“自分の意思とは関係なく、繰り返し浮かぶ考えなどで頭がいっぱいになり、それらを打ち消そうと特定の行為を繰り返す”疾患です。端的には強迫観念と強迫観念を打ち消そうとする強迫行為、この2つが伴って出現している場合、強迫性障害と考えます。

 

繰り返し頭の中に現れる考えや衝動、イメージを強迫観念と言います。

強迫観念には強い不安や恐怖、苦痛が伴いがち。そんな強迫観念を打ち消す、中和する、予防するために、繰り返し行う行為を強迫行為と言います。

 

この病気は、自分でも「この考えおかしい…」という自覚があるけれど、どうすることもできない、という点が特徴です(自我違和感と呼ばれる感覚です)

 

 

平均発症年齢は19.5歳で、強迫性障害患者のうち、約25%の人が14歳までに発症しています。男女比は女性の方が若干多いとされています。

 

強迫性障害の診断基準をわかりやすく解説!


精神疾患の国際的な診断基準(DSM-5)は以下の通りです。

A:強迫観念、強迫行為、またはその両方が存在すること

B:強迫観念、または強迫行為によって、時間を浪費させられる(少なくとも1日1時間以上)、または、臨床的に意味のある苦痛や生活内における支障を引き起こしている。

引用:DSM-5

 

ちなみに英語では『Obsessive-compulsive disorder』と表記し、頭文字を取って『OCD(オーシーディー)』と呼んだりします。DSM-5より邦訳として『強迫症』が併記されるようになりました。

 

強迫性障害が生じる原因については、様々な研究が行われている段階でありいまだ明らかになっていません。予てより抗うつ薬の効果は認められており、セロトニンに関連する神経回路の働きに異常(過活動)が生じている可能性は指摘されています。

 

強迫性障害の症状とは?わかりやすく解説!


強迫性障害の症状にはいくつか種類があります。ここでは、いくつかの症状をご紹介します。

 

 

①不潔恐怖

例えば…

強迫観念強迫行為
  • 身の回りにある物がひどく汚れている
  • 自分が汚れている
  • 自分が細菌か何かに汚染されている
  • 手洗いや歯磨き、シャワーなどを一日に何度も繰り返す、あるいは長時間行う
  • 家の中や買ってきたものなどを徹底的に消毒、清掃する

汚れや目に見えない菌などへの極度の不安や恐怖を感じ(不潔恐怖)、洗浄・消毒を繰り返す(洗浄強迫)、ということが特徴です。自分が汚れる可能性のある場所や物を極度に避ける、ということもあります。結果として電車に乗れない、学校や職場に行けない、など日常生活に支障がでてきます。

 

②加害恐怖と確認行為<その1>

例えば…

強迫観念強迫行為
  • 戸締りはできているか
  • ガスの元栓はしめたか
  • 部屋の電気、家電のスイッチは切ってあるか
  • 何度も確認する
  • 見張り続ける

 

戸締りやミスの確認など、「本当にできているかな…」という不安から、火災や空き巣などの犯罪、「周囲に迷惑をかけるかもしれない」という考えで頭がいっぱいになり(加害恐怖)、確認することをやめられない(確認強迫)、ということが特徴です。確認をやめられず、学校や会社、予定に遅刻する、なんてことも起こりやすいんです。

 

③加害恐怖と確認強迫<その2>

加害恐怖には、先ほど紹介したもの以外にも以下のようなタイプがあります。

 

例えば…

強迫観念強迫行為
  • 駅のホームで誰かを突き飛ばすのではないか
  • 車の運転中に誰かをひいてしまったのではないか
  • 書類にミスはないか
  • テレビや新聞で報道されていないか、周囲の人や警察などに「自分はやっていないか?」とひたすら確認する
  • 車から降りたりその場に戻ったりして、周囲を確認する
  • 書類を何度も見直す

 

誰かを傷つけてしまうのでは、怪我をさせてしまったのでは、ミスが周囲に多大な迷惑をかけるのでは、という考えにとらわれ(加害恐怖)、繰り返し確認する(確認強迫)、ということが特徴です。誰かを傷つけるのでは、と外出することが恐くなり、ひきこもりがちになる場合もあります。

 

④縁起強迫

例えば…

強迫観念強迫行為
  • この順番で家事や仕事をしないと何か恐ろしいことが起きる
  • 特定の数字が不吉だと感じる
  • どんな時も同じ順序で家事や仕事をしないと気が済まない
  • 特定の数字を含む時間に物事を始めた場合、時間が経ってから物事をはじめからやり直す

 

このように、縁起が悪い行動や言葉、数字などを強く恐れてとらわれ、それらを打ち消すために儀式的な行動を繰り返す、ということが特徴です。繰り返し儀式的な行動をするため、やるべきこと、やりたいことがなかなか進まなくなります。

 

⑤その他の強迫

不完全恐怖(物事が中途半端であることに耐えられない)、強迫性緩慢(不快感、後悔を恐れて一つひとつの行動が進まない)などの症状があります。

 

同居する人も大変?強迫性障害と巻き込み

ここまで強迫性障害の概要や症状をご説明してきました。先ほど述べた通り、「なんか変だな…」「おかしいな…」といった自覚はあるけれど特定の行為をやめられない、が強迫性障害の特徴のひとつです。この特定の行為(強迫行為)は、“自分がせずにはいられない”という場合と“身近な人にもやってもらいたい”という場合があります。

 

例えば…

  • 家族にも同じように何度も手洗いをしてもらわないと不安で仕方ない
  • 鍵を閉めたかどうか、何度も家族に確認してしまう

などです。

 

このように、症状が本人だけでなく同居する人も巻き込んでいくことがあります。また、本人は“自覚があるのに、周りを巻き込みたくないのに、やめられない”ため、抑うつ症状の併発や、社会との関わりの回避に繋がる場合もあります。重要なのは、症状が本人や同居する人に影響を及ぼしている、ということです。

 

どこまでがきれい好き?どこからが強迫性障害?

例えば、電車に乗る人の多くがつり革や手すりを利用しています。故に、つり革などが常に清潔かと言われると、清潔!と答える人はそう多くはないと思います。

 

  • 気にせず(あるいは気になるけど仕方なく)つり革などを利用する人、
  • ハンカチや手袋で対処する人、
  • なるべく多くの人が握らなさそうな位置を探す人、
  • 何にも触らずに電車の揺れに耐える人…

 

様々かと思います。

加えて、新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、以前よりも世の中が敏感になったように感じます(少しずつ落ち着いてきていると思いたいですね…)。

 

果てしてきれい好きの範疇なのか、はたまた症状によるものなのか…。どこまでがきれい好きでどこからが強迫性障害なのか、難しいですよね?

 

前提として、「清潔でないものに触れたくない」ということ自体は普通の反応です。仮に何か汚れがついていたとして、触って手が汚れることを好む人はそう多くないでしょう。手が汚れたら手を洗う、小さい頃から教えられたり自然と身に着けてきた行動です。

 

ポイントの一つ目は、“どのくらい気になって、解決するための行動がコントロール可能か”という点です。

 

 

『気になるな~、後で手を洗っとこう~』という程度なのか、『恐怖や不安でいてもたってもいられず、手を洗わないと気が済まない』という程度なのか、ということです。例えば前者であれば、一度手を洗ったり消毒すれば気が済んだり安心します。一方後者は、一度の手洗いでは安心できず、その行為を終わりにしたくてもやめられない状態です。

 

そしてポイントの二つ目は、“日常生活でどの程度困っているか”という点です。

 

先ほどの話の続きで、何度も手を洗うことで手が荒れる、水道代がかさむ、逐一手を洗うため他のことが先に進まない、など、日常生活にどの程度支障をきたしているか、ということです。

 

コロナウイルス感染症の流行をきっかけに、通勤手段を電車などの公共交通機関から自家用車や自転車などに切り替えた、という話をよく聞きました。別の手段をとることがそこまで負担ではない、日常生活に支障をきたしていないのであれば、通勤方法を変えることは感染予防対策といえます。

 

一方、一駅ごとに下車して手を洗う、電車に乗ることを避けて外出しない、などの手段は、ある意味感染予防対策なのかもしれませんが、日常生活への支障が大きいでしょう。

 

 

強迫性障害の参考文献・参考図書


 

【執筆】

盛光(公認心理師・臨床心理士)

ここまで読んで「自分はどうだろう…」と思った方は、ここまではきれい好き、ここからは強迫性障害、という捉え方というよりは(もちろん診断基準はありますが)、特定の考えにどれくらいとらわれていて、どの程度困っているのか、という部分で考えてみるとよいかと思います。

思いあたることがある、同じようなことで困っている、という場合は一度精神科への受診をおすすめします。

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【監修】

本山真

医療法人ラック理事長、株式会社サポートメンタルヘルス代表取締役社長

医師、精神保健指定医、日本医師会認定産業医

 

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