2024年9月6日
初回カウンセリングをご希望の方はこちら
オンラインカウンセリングログイン
資料ダウンロード
タグ : メンタルヘルス , メンタル不調・精神疾患解説 , 盛光(公認心理師・臨床心理士)
2022年11月4日
最終更新日 2023年1月20日
目次
今回の精神科医監修ブログのテーマは『強迫性障害』です。汚れているのでは?と感じて手洗いが頻回になったり、鍵を閉め忘れたのではと気になって家に戻ったり、エンタメにおいて題材になることの多い疾患ですから見聞きしたことのある方もいらっしゃるのではないでしょうか?
強迫性障害の診断基準や症状、巻き込み行動などわかりやすく解説します。
専門職によるLINE友だち限定無料セミナー開催しています!
【精神科医監修】メンタル不調・精神疾患をわかりやすく解説シリーズ
【産業医時事ニュース解説】コロナで1.3億人がうつ、不安障害 女性や若者多数 精神科医監修|マリッジブルーの対処法|症状・特徴・解消法を知る
【眠れない方必見!】睡眠のカギは朝にある!精神科医監修不眠解消メソッド 【精神科医師監修】寝たはずなのに疲れてる?睡眠障害4つのポイント
精神科医監修|感情の波に飲み込まれるな!激しい怒りを乗りこなせ!
【ぞわぞわ…】精神科医監修パニック障害対策ブログ【そわそわ…】
精神科医監修:あがり症は性格なのか?社交不安障害の対策法を解説
精神科医監修|PMS・PMDDのトリセツ|解説から対処法まで
オタク臨床心理士・公認心理師は語る。収集癖は趣味なのか病気なのか
原因不明の痛み!?身体表現性障害(身体症状症及び関連症群)を精神科医が解説
|
強迫性障害とは、“自分の意思とは関係なく、繰り返し浮かぶ考えなどで頭がいっぱいになり、それらを打ち消そうと特定の行為を繰り返す”疾患です。端的には強迫観念と強迫観念を打ち消そうとする強迫行為、この2つが伴って出現している場合、強迫性障害と考えます。
繰り返し頭の中に現れる考えや衝動、イメージを強迫観念と言います。
強迫観念には強い不安や恐怖、苦痛が伴いがち。そんな強迫観念を打ち消す、中和する、予防するために、繰り返し行う行為を強迫行為と言います。
この病気は、自分でも「この考えおかしい…」という自覚があるけれど、どうすることもできない、という点が特徴です(自我違和感と呼ばれる感覚です)。
平均発症年齢は19.5歳で、強迫性障害患者のうち、約25%の人が14歳までに発症しています。男女比は女性の方が若干多いとされています。
精神疾患の国際的な診断基準(DSM-5)は以下の通りです。
|
ちなみに英語では『Obsessive-compulsive disorder』と表記し、頭文字を取って『OCD(オーシーディー)』と呼んだりします。DSM-5より邦訳として『強迫症』が併記されるようになりました。
強迫性障害が生じる原因については、様々な研究が行われている段階でありいまだ明らかになっていません。予てより抗うつ薬の効果は認められており、セロトニンに関連する神経回路の働きに異常(過活動)が生じている可能性は指摘されています。
強迫性障害の症状にはいくつか種類があります。ここでは、いくつかの症状をご紹介します。
例えば…
強迫観念 | 強迫行為 |
|
|
汚れや目に見えない菌などへの極度の不安や恐怖を感じ(不潔恐怖)、洗浄・消毒を繰り返す(洗浄強迫)、ということが特徴です。自分が汚れる可能性のある場所や物を極度に避ける、ということもあります。結果として電車に乗れない、学校や職場に行けない、など日常生活に支障がでてきます。
例えば…
強迫観念 | 強迫行為 |
|
|
戸締りやミスの確認など、「本当にできているかな…」という不安から、火災や空き巣などの犯罪、「周囲に迷惑をかけるかもしれない」という考えで頭がいっぱいになり(加害恐怖)、確認することをやめられない(確認強迫)、ということが特徴です。確認をやめられず、学校や会社、予定に遅刻する、なんてことも起こりやすいんです。
加害恐怖には、先ほど紹介したもの以外にも以下のようなタイプがあります。
例えば…
強迫観念 | 強迫行為 |
|
|
誰かを傷つけてしまうのでは、怪我をさせてしまったのでは、ミスが周囲に多大な迷惑をかけるのでは、という考えにとらわれ(加害恐怖)、繰り返し確認する(確認強迫)、ということが特徴です。誰かを傷つけるのでは、と外出することが恐くなり、ひきこもりがちになる場合もあります。
例えば…
強迫観念 | 強迫行為 |
|
|
このように、縁起が悪い行動や言葉、数字などを強く恐れてとらわれ、それらを打ち消すために儀式的な行動を繰り返す、ということが特徴です。繰り返し儀式的な行動をするため、やるべきこと、やりたいことがなかなか進まなくなります。
不完全恐怖(物事が中途半端であることに耐えられない)、強迫性緩慢(不快感、後悔を恐れて一つひとつの行動が進まない)などの症状があります。
ここまで強迫性障害の概要や症状をご説明してきました。先ほど述べた通り、「なんか変だな…」「おかしいな…」といった自覚はあるけれど特定の行為をやめられない、が強迫性障害の特徴のひとつです。この特定の行為(強迫行為)は、“自分がせずにはいられない”という場合と“身近な人にもやってもらいたい”という場合があります。
例えば…
|
などです。
このように、症状が本人だけでなく同居する人も巻き込んでいくことがあります。また、本人は“自覚があるのに、周りを巻き込みたくないのに、やめられない”ため、抑うつ症状の併発や、社会との関わりの回避に繋がる場合もあります。重要なのは、症状が本人や同居する人に影響を及ぼしている、ということです。
例えば、電車に乗る人の多くがつり革や手すりを利用しています。故に、つり革などが常に清潔かと言われると、清潔!と答える人はそう多くはないと思います。
|
様々かと思います。
加えて、新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、以前よりも世の中が敏感になったように感じます(少しずつ落ち着いてきていると思いたいですね…)。
果てしてきれい好きの範疇なのか、はたまた症状によるものなのか…。どこまでがきれい好きでどこからが強迫性障害なのか、難しいですよね?
前提として、「清潔でないものに触れたくない」ということ自体は普通の反応です。仮に何か汚れがついていたとして、触って手が汚れることを好む人はそう多くないでしょう。手が汚れたら手を洗う、小さい頃から教えられたり自然と身に着けてきた行動です。
ポイントの一つ目は、“どのくらい気になって、解決するための行動がコントロール可能か”という点です。
『気になるな~、後で手を洗っとこう~』という程度なのか、『恐怖や不安でいてもたってもいられず、手を洗わないと気が済まない』という程度なのか、ということです。例えば前者であれば、一度手を洗ったり消毒すれば気が済んだり安心します。一方後者は、一度の手洗いでは安心できず、その行為を終わりにしたくてもやめられない状態です。
そしてポイントの二つ目は、“日常生活でどの程度困っているか”という点です。
先ほどの話の続きで、何度も手を洗うことで手が荒れる、水道代がかさむ、逐一手を洗うため他のことが先に進まない、など、日常生活にどの程度支障をきたしているか、ということです。
コロナウイルス感染症の流行をきっかけに、通勤手段を電車などの公共交通機関から自家用車や自転車などに切り替えた、という話をよく聞きました。別の手段をとることがそこまで負担ではない、日常生活に支障をきたしていないのであれば、通勤方法を変えることは感染予防対策といえます。
一方、一駅ごとに下車して手を洗う、電車に乗ることを避けて外出しない、などの手段は、ある意味感染予防対策なのかもしれませんが、日常生活への支障が大きいでしょう。
【執筆】 盛光(公認心理師・臨床心理士) ここまで読んで「自分はどうだろう…」と思った方は、ここまではきれい好き、ここからは強迫性障害、という捉え方というよりは(もちろん診断基準はありますが)、特定の考えにどれくらいとらわれていて、どの程度困っているのか、という部分で考えてみるとよいかと思います。 思いあたることがある、同じようなことで困っている、という場合は一度精神科への受診をおすすめします。
【監修】 本山真 医療法人ラック理事長、株式会社サポートメンタルヘルス代表取締役社長 医師、精神保健指定医、日本医師会認定産業医 |