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タグ : メンタルヘルス , メンタル不調・精神疾患解説 , 若丸(公認心理師・臨床心理士・健康経営エキスパートアドバイザー)
2022年6月3日
最終更新日 2023年3月31日
目次
コンビニでヨーグルトを買ったんですけど店員さんがつけてくれたスプーンがあまりにも短かったんですよ。 気づいたのが帰宅してからでついイラっとしちゃったんですよね~。
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少し前、同僚からそんな話を聞きました。私も似たような経験があるので、彼の気持ちがよくわかります笑 喜怒哀楽を感じること、それを表出することは人間に備わっている機能です。今回は、感情の波の中でも特に“怒り”に重きを置いて感情との付き合い方、乗りこなし方についてまとめます。
メンタルヘルス、セルフケアに関する情報をお届けしています!
そもそも、私たち人間の感情(情動)は2種類に分類できると考えられています。1つは基本情動です。どのような文化で育っても、どんなに年齢層が異なっていたとしても、皆が同じように経験・表出する感情を指します。喜怒哀楽はこちらに分類されています。もう1つが派生情動です。名前の通り、生きてくる中で培われた経験や環境、文化などによって複雑に派生した感情のことです。嫉妬や共感はその代表例なんだとか。
【参考】
久保賢太・賀洪深・川合伸幸(2014)怒り状態の心理・生理反応, 心理学評論, Vol.57, No.1, 27-44p
“怒り”は生来的に備わっている反応であることがわかりました。怒っている瞬間やその直後は、怒りの対象以外に意識を向けることが難しく、客観的なものの見方が難しくなります(湯川, 2008)。振り返ると、怒っているときの私は自分が人からどう見えているのか意識せずに振る舞ってしまうことがあります…(猛省)。社会生活を円滑に過ごすためには、感情のコントロール力がある程度必要なんですよねぇ。
【参考】
湯川進太郎(2008)「怒りの心理学」有斐閣
頭の中が怒りでいっぱいのとき、私たちはどのように反応しているのでしょうか?私たちが激しい感情や強い肉体作業などでストレスを感じると、脳内でノルアドレナリンという神経伝達物質が分泌されます。ノルアドレナリンが分泌されると、自律神経の1つである交感神経の働きが強まります。
交感神経が活発に働くと、血圧や心拍数を上昇させたり血流が増えたりとからだに変化が生じます。そのような変化からこころも反応していきます。なんとなく落ち着かなかったり不安な気持ちが大きくなったりするのはその一例です。
関連項目:ノルアドレナリン/ノルエピネスリン(厚生労働省|e-ヘルスネット)
例えば、スーパーマーケットでレジに並んでいたら横入りされてしまった状況を想像してみてください。あなたが『すみません、並んでいます』と声をかけるも無視…。その相手の反応からムッと思いストレスを感じると、脳内でノルアドレナリンが分泌されます。ノルアドレナリンの働きによって、心臓がドキドキしてきたり呼吸数が増えたりしてきました。その場で大騒ぎするわけにもいかないのであなたはそのまま我慢しましたが、帰宅してもイライラもやもや。なんだか損しちゃったなぁ…という気持ちです。
日常生活を送る中で、このようにイラっとするエピソードを避けられないこともありますよね。激しい怒りを我慢し続けることは心身にとって悪影響を及ぼすことがある一方、感情の波に翻弄され怒りを表出することが大きな損失に繋がる危険性もあります。
イライラしていると精神的にすり減っていきますよね…。怒りへの対処にはいろいろな選択肢がありますが、今回はご自身でできる対処法を3つご紹介します!
ストレスを感じたり強い肉体労働をしたりすると神経伝達物質であるノルアドレナリンが分泌され、その影響で交感神経が活発になるとお話ししました。交感神経が活発な状態は、いわばファイトモードです。
例えば、重い荷物を100m先まで運ばなければならないとき、のんびりリラックスモードの状態では踏ん張りがききません。ノルアドレナリンによってからだに諸々の変化が生じるわけですが、それはパフォーマンスを発揮するためにからだが準備を整えている証拠なんですね。
一方、リラックスモードに入るためには副交感神経に活発に働いてもらう必要があります。しかし、自律神経のバランスを保ち続けるのはなかなか至難の業…。日常的なこと、普遍的なことが原因となって案外簡単に崩れてしまうことも多々あります。崩れてしまったバランスを整えるためにおすすめしたいのが自律訓練法です。
【関連項目】
【臨床心理士によるリラクゼーション】ホットレってなに?編
【臨床心理士によるリラクゼーション】ホットレやってみよう編
ZERO 1 ch【株式会社サポートメンタルヘルス公式ch】
いろいろな現場で活用されるようになった、マインドフルネス。これまで起こった嫌な出来事や、これから起こるかもしれない不安な出来事についつい目を向けてしまうことがあると思います。マインドフルネスでは、過去や未来にとらわれず“今ここ”に意識を向け、自分の体験を“ありのまま”見つめて受け止められるようになることを目指します。効果として期待できるのは、ストレスや不安の軽減などメンタルヘルス不調の改善です。
イライラの対象って、多くは過去の出来事に対する怒りではありませんか?そういうときには一旦イライラと距離をとってみましょう。その方法として取り入れやすいのがマインドフルネスです。
こちらの記事で詳しく説明しています!
感情的になっているとその対象以外に意識を向けることが難しくなると先述しました。認知行動療法では、そういった場面で意識が向きづらくなっている部分についても目を向けるアプローチをとります。具体的に言えば、ストレス状況を環境要因と個人要因に分け、個人要因をさらに感情、考え(認知)、行動、身体反応に分けて検討するのです。それを書き出してみるだけでも案外新しい発見があるかもしれません。
【引用】【精神科医監修】マインドフルネスとは②仕組みとやり方
認知行動療法については、こちらの記事で詳しく説明しています。
【精神科医監修】認知の歪み?10パターンの考え方の癖を解説!
【ドクター本山の精神科豆知識】感情の波と言えば双極性障害精神科で感情の波と言えば双極性障害です。躁うつ病とも呼びますね。普段よりもアクティブになったり、よく喋るようになったり、気前がよくなったり、という躁状態と、落ち込んだ状態となるうつ状態を繰り返す精神疾患です。躁状態と聞くとハッピーだったりハイパーだったりする状態を思い浮かべる方が多いのですが、普段よりもイライラする、怒りっぽいというのも躁状態の特徴です。
双極性障害は大きくⅠ型とⅡ型に分類されます(双極性障害の権威Akiskal先生はⅥ型まで分類してらっしゃいますがこちらは賛否あります)。波の幅が大きいのがⅠ型、Ⅰ型ほどではないのがⅡ型です(非常にファジーな分類ですが私はこのファジーさが嫌いではありません笑)。
双極性障害においては気分の波を抑えることを目的とした薬物療法が重要です。本ブログでは『激しい怒りや感情の波を乗りこなす』という主旨で解説をしていますが、双極性障害の場合は乗りこなそうとしてはいけません!
急速交代型と呼ばれる何度も躁状態とうつ状態とを繰り返す病態がありますが、基準は年に4回以上。つまり『1日のなかで何度も気分が変動する』という場合においては、双極性障害の感情の波とは異なる可能性が高いと言えるでしょう。『些細なことで怒ったりイライラして1日のなかで感情の波がある』という場合は、うつ病の初期症状である可能性があります。不眠や不安、食欲の変動が重複しているようであれば精神科・心療内科へ受診してみてもよいかもしれません。 【参考】 |
怒りや悲しみなどネガティブな気持ちになる出来事はできることなら避けたいものですが、生きている限りなかなか難しいものです。ストレス社会とも呼ばれるこの時代。せめて私たち一人一人がより生きやすくなるために、生きやすさの輪が広がっていくように、できる工夫は取り入れていきたいですね。
ネガティブな感情が喚起されたときには、自分を否定するのではなくそれはそれとして乗りこなすようなイメージを持っていただくとよいのではと感じます。
【監修】 本山真(精神科医師/産業医/医療法人ラック理事長) 【執筆】 若丸(公認心理師・臨床心理士) 冒頭のスタッフ、大きいパックのヨーグルトに対し小さなアイス用のスプーンを渡されたとのことです。スプーンと言えば…カチカチに凍っているパックアイスをアイス用木製スプーンで食べようとしたら見事に折れました。怒りでもなく哀しみにでもなく、何でしょう、言葉にならない感情に翻弄され心も折れました…。 |