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タグ : メンタルヘルス , 若丸(公認心理師・臨床心理士・健康経営エキスパートアドバイザー)
2021年11月8日
最終更新日 2023年1月28日
目次
こんにちは。公認心理師・臨床心理士の若丸です。
コロナ禍の影響もあり、個人的に運動不足が深刻です…。というわけで、最近筋トレに励んでいます。まずは大きい筋肉を鍛えると良いよ!と先輩にご助言いただいたので、大腿四頭筋と三角筋のトレーニングを始めました。
筋トレについてもっと知りたくて調べてみたところ、『筋トレでメンタルを鍛える!』といった表記を複数発見!その中でも、特に“自己肯定感”に注目している方が多い印象でした。
『こころとからだは繋がっている』とはよく聞きますが、実際どういった仕組みなのでしょうか?今回は、メンタルとフィジカルの関係についてご紹介します。 |
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“自己肯定感が高い人”とは、どのような人を指すのでしょうか?
ーポジティブな人?
ー自分に自信がある人??
ー自分のことが好きな人???
改めて考えてみると、“自己肯定感”というワードはとても曖昧なんです…。まずは自己肯定感を整理しておきましょう。
自己肯定感と類似の概念に“自尊感情”があります。自尊感情の研究者としては社会学者のRosenbergが有名です。Rosenbergは自尊感情を2つに分けて考えていました。
①very good(たいへんよい) 他の人よりも自分が優れていること。 他の人から「優れている人だ」とみなされること。
②good enough(これでよい) たとえ自分が平均的な人間であったとしても、自分自身が決めた評価基準に照らし合わせたうえで自分自身を受け入れること。 自分を好ましく思い、自分を尊重すること。 |
上記のうち、特にメンタルヘルスにとって大切なのが②good enough(これでよい)なんだとか。
そういえば、中学生の頃の私は数学が非常に苦手で、学校の先生や親からお小言を言われることがしばしばありました。こういった場面において『たとえ同級生より点数が低くても、赤点じゃないからOK!』と自分を受容したり、『数学ができなくたって、私は価値のある人間なんだ』と自分を尊重したりすることが、Rosenbergのいう“good enough(これでいい)”な考え方に近いのでしょうね。当時は多少落ち込んでいたような記憶もありますが、確かにgood enoughで考えることができれば、ネガティブになりすぎずに済んだのかもしれません。
話を自己肯定感に戻します。自己肯定感についてはジャンルや立ち位置によって種々の定義がありますので、いくつかご紹介します。
特別支援教育大事典(旬報社、2010)では、自己肯定感とは「ありのままの自分を受け止め、自己の否定的な側面もふくめて、自分が自分であっても大丈夫という感覚である」と定義しています。
自己肯定感に関する質問票を作成した田中(2008)は、自己肯定感を「自己に対して前向きで、好ましく思うような態度や感情」と定義しています。
自己心理学の最先端(あいり出版、2011)では、自尊感情と自己肯定感とは完全に異なる概念ではなく相互関係のある概念であると述べています。
【参考】 |
まとめてみると下記のようになります。
|
※自己肯定感と類似の概念は自尊感情の他にも、自己効力感、自己受容などいくつかありますが、これらも明確に分類されるものではなく部分的に共通しているものなのかもしれませんね。
なるほど…(わからん笑)。
先ほどの私の例をより自己肯定感的に考え直してみると、『数学の出来は悪いかもしれないけど、私は私。次のテストではもっと頑張ろう』といった考え方になるでしょうか。
昨今のお笑い業界のトレンドとして“人を傷つけない笑い”があります(急にお笑いの話ですが私が好きなんですすみません)。否定しない、ボケを肯定的に受け止めるツッコミが新鮮だと話題になりましたね。自己肯定感を形成するために必要なこととして、他者からの肯定的な評価や実際の成功体験などが関係していると言われています(榎本、2010)。確かに、自己肯定感は自分自身の内面から向上させることも、相手から受け入れられるといった外界からの影響がきっかけで向上することもありそうですね。
【参考】
インターネットで諸々調べてみたところ、筋トレは筋力を維持・向上させる側面に加えて、メンタルヘルスを維持・向上させる側面も持っているようです。メンタルヘルスの側面としては、筋トレによって分泌される脳内ホルモンによりポジティブな気持ちになれたり意欲が向上したりするといった効果が見込めるんだとか。
【メンタルと神経伝達物質についてはこちらもどうぞ】
【精神科医監修】散歩でメンタルケア!ストレス発散効果は?【ライフハック心理学#2】
確かに、ポジティブになれたり、やる気が出たりすれば、自分自身に対する肯定的な気持ちにも繋がりそうですよね。筋力アップによりボディラインにメリハリがついたところに気持ちも前向きでいられたら自然と自信も出てきそうです。
調べを進めていくと、運動がメンタルヘルスに及ぼす影響について記述している論文を多く発見しました!ここからはより専門的な視点からメンタルとフィジカルの関係性についてご紹介します。
【精神科医本山コラム】ジムに行きたくない…そんな時は…行動活性化のススメ。ー『今日は筋肉痛が辛いからジムやめとこう』 ー『仕事で疲れたしやめとこう』 ー『雨だしやめとこう』 ー『明日早いしやめとこう』 ー『何か今日はやめとこう』
全国のトレーニーの皆さん、一度は経験ありますよね?笑
ジムを休んでしまうと悶々とした気持ちが続く。『私はダメな奴だ』と自分を責める。その内何だか全部嫌になってしまう。やる気が起こらずジムを休む。悪循環…。トレーニーあるあるではないでしょうか?この悪循環は『行動活性化療法』で説明できます。行動活性化療法は認知行動療法と呼ばれる精神療法・心理療法の一種であり、【行動は気持ちに先行する】という立場を取ります。
『今日はやる気が起こらない』からジムを休む。ああまた休んでしまった(悶々)。
ジムに行く/行かないというパターンって一般的に考えればこんな感じですよね。行動活性化療法においては『ジムを休むこと』が悶々とした気分を維持していると考えます。
A:悶々としている B:ジムを休む C:更に悶々とする
今日はジムに行こうかどうしようか…。悶々とする気持ちを断ち切るのは難しいですが、ジムを休むという行動を変えることはすぐにでもできますよね。端的に言えばコンセプトはそういうことです。具体的には『やってみたら気持ちよかった(悪くなかった)』。そういう経験を段階的に増やしていくというアプローチを取ります。ジムに行くまでは気が重かったけれども、一発目の種目をこなしたら何だかやる気がわいてきた。『一種目だけでも』と思って始めた筋トレが、終わってみたらいつもよりハイボリュームだった。これもまたトレーニーあるあるだと思います。
この循環がまさに行動活性化療法の成功例だと言えますね。ジムに行くか行かないか悶々としたらまずは行動。ジムに行ってサウナに入ってさっぱりして帰る。ジム通いを『気持ちよかった』で終える。それが悶々とした循環を断ち切るコツだと言えます。
さてあなたは今日直帰しますか?それともジムに行きますか?
【行動活性化療法についてはこちらもどうぞ!】 |
メンタルとフィジカルの関係性については、これまでに数多くの研究が報告されています。今回は心身の不調を改善するアプローチとしての“運動”をご紹介しましょう。こちらのブログでもご紹介した通り、運動は大きく分けると有酸素運動と無酸素運動に分けることができます。
有酸素運動で言えばネガティブな気分の減少及びポジティブな気分の増大という短期的な効果があるほか、長期的にもうつ状態や不安感の低減効果があると示した報告があります。筋トレなどの無酸素運動で言えば、高齢者を対象とした研究にて、筋力トレーニングの継続がうつ状態の改善に寄与することが明らかになっています。
2012年には、日本うつ病学会が治療ガイドラインとして「運動療法」を紹介しています。運動療法とは、運動を行うことが可能な方に対し、障害・疾患の治療や予防を目的として行う身体活動のことを指します。
【参考】
うつ病に対する運動療法については効果的であるという知見が蓄積されてきているものの、残念ながらまだまだエビデンスに乏しく、有効性については慎重に見極めていく必要があるようです。
うつ病以外のメンタル不調に関して言えば、強い不安感へのアプローチとしても運動が有効だと示した研究があります。ストレス下で生じる不安は、実は正常な反応であることが多いもの。しかし、この不安感が大きくなりすぎると話は別です。生活に支障をきたすような強烈な不安感へのアプローチとして、運動(特に有酸素運動)は不安自体を減らすことに加えて、不安の感受性を減少させる効果も期待できるようです。
『メンタル不調からの回復』において、運動などの身体活動が効果的に働くのと同時に、身体活動の増加がうつ病をはじめとするメンタル疾患や認知症の予防と大きく関連しているとする研究もあります。メカニズムは未だ解明されていませんが、体を動かすことによって脳内の神経伝達物質が増加したり、免疫系や自律神経系が活性化したりすることが影響しているのではないかと考えられています。
そもそも論ですが、メンタルとフィジカルの相互作用はどのような仕組みなのでしょうか?心理的なストレスが自律神経系などもともと私たちに備わっている機能に影響を及ぼすことは広く知られています。例えば、苦手な人の前で動悸がしたり冷や汗をかいたり…。これは心理的なストレスを受け、交感神経が活性化することにより生じる反応です。反対に、からだの感覚がこころの動きに影響することもあります。道で転んで膝を擦りむいたとき、痛みから悲しい気持ちが生じたり、怪我をした部分にばかり気を取られたり。このように、普段それほど意識しないかもしれませんが、からだとこころは相互に影響し合っているんですね。心理療法の中にも、からだの感覚からメンタルヘルスにアプローチするものがあります。そのうちの1つが自律訓練法です。弊社ブログにて、自律訓練法について紹介しています。
【参考】
自律訓練法ベースのリラクゼーション法『ホットレ』をYouTubeにて解説しています!休憩時間にどうぞ! 【臨床心理士によるリラクゼーション】ホットレってなに?編 【臨床心理士によるリラクゼーション】ホットレやってみよう編 |
他にも、臨床動作法や漸進的筋弛緩法といったアプローチがあります。
臨床動作法とは、動作を通してメンタルヘルスを向上・改善させる心理療法です。私たちひとりひとりの動作には、メンタルの状態や力の入り具合が表れます。動作をすることで自分のからだの感覚を実感し、うまくいかない部分を徐々に変えていきます。その過程で、自己肯定感や安心感などを得ていくアプローチです。
【参考】
臨床動作法|日本臨床心理士会
漸進的筋弛緩法とは、筋肉に力を入れた直後に一気に脱力することで、リラックスした感覚を得ることを目的とした心理療法です。力を入れる(緊張させる)、リラックスさせる、と繰り返すことで全身をゆったりリラックスした状態に導いていきます。筋トレに馴染みのある方であればイメージしやすいと思いますが、メインセットに挑戦したあとのインターバルの感覚、あれが近いかもしれません。
【参考】
第2章 心のケア 6.リラクセーション|文部科学省
からだがゆったり落ち着いた状態になると、こころもほっと一息つけるようになります。メンタルとフィジカルの相互作用を感じつつ、セルフケアとして生活に取り入れてみるのはいかがでしょうか?
小話①【筋トレは“クセ”の見直し?考え方のクセは認知行動療法でアプローチ!】
筋トレをするとき、私はいつも動画を見ながら実践します。その動画の中でトレーナーさんが『いつも動かしていない筋肉を使うのがポイント!』と繰り返し教えてくれるんです。トレーニング中は鍛えたい部位にしっかり負荷がかかっているか意識するようにします。トレーナーさんの指示通りにからだを動かしているつもりでも、筋肉痛がくる頃に『思ったより効いていないかも…』と悲しくなることも度々あります…。
筋トレをすることは、いわば“それまで生きてきた中で身についた動作の癖を見直すこと”に繋がるのではないでしょうか?フィジカルにおける癖を修正していくのが筋トレだとすると、メンタルにおける癖、考え方の癖にアプローチするのが認知行動療法という心理療法でしょう。
【参考】 【精神科医監修】認知の歪み?10パターンの考え方の癖を解説!
認知行動療法とは、健康問題を維持する認知(考え方)や行動のパターン・癖に気づいていくアプローチです。そこからさらに考え方や対処行動の幅を広げたり柔軟にしたりすることでセルフマネジメント力向上を目的としています。
例えば、気分が落ち込んでいるときのことを想像してみてください。
そうなったきっかけには何があったのでしょうか? そのとき、ご自身の内側は何が起こっているでしょうか?
自分の外側(きっかけとなった出来事や環境)と自分の内側で起こっていること、これらは相互に影響し合っていると考えます。自分の内側については、そのときの気持ち(感情)、考え(認知)、からだの反応、実際の行動に分けて検討します。
特にセルフコントロールしやすい“考え(認知)”と“行動”に注目していきます。自分自身の考え方の癖や行動パターンを少しずつ見つけていくことで、問題解決に繋げていくのです。
この作業を積み重ねていくことで、考え方が柔軟になり、対処行動のレパートリーが増えていきます。その結果として『これでいい』と思える自分に繋がる。すなわち自己肯定感アップに繋がるアプローチだと言えるでしょう。
【参考】 認知行動療法|e-ヘルスネット[情報提供](厚生労働省) |
小話②【脳の筋トレ!?マインドフルネスのススメ】
マインドフルネスとは、“今・ここ”に意識を向け、気づきを得ていくアプローチです。自分の体験にリアルタイムに気づいて、受け止めて、じっくり観察して、最終的には手放していきます。
例えば、ランチに大好きなラーメンを食べに行こうとしたところ、業務のミスが発覚して上司から叱られてしまったとします(急にラーメンの話ですが私が好きなんですすみません)。失敗のショックで、ネガティブな気持ちを引きずったままお店のドアを開けるかもしれません。気持ちが切り替わらないままラーメンを食べ進めてしまったら、上の空になってしまって美味しかったはずのラーメンの味を後々思い出せない…なんてこともあるかもしれません。
そこでお勧めしたいのが、脳の筋トレ・マインドフルネスです。ネガティブな気持ちから一旦距離を取り、“今・ここ”の体験に意識を向けます。
多くの発見がありそうですね。このように、感情に翻弄されず、ありのままを体験するアプローチがマインドフルネスです。
【参考】 【臨床心理士がわかりやすく解説】マインドフルネス基礎講座 【臨床心理士がわかりやすく解説】マインドフルネス実践講座 |
【精神科医監修】マインドフルネスシリーズ 【番外編】マインドフルネス体験談 【スタッフ体験談】マインドフルネスを公認心理師・臨床心理士が受けてみた! オンラインでマインドフルネスをご体験いただけます |
認知行動療法やマインドフルネスも、筋トレと同様にすぐに効果を実感するものではないため、じっくり向き合って取り組み続ける姿勢が必要です。理想の自分や『これでいい』と感じる自分に近づくために、活用できるアプローチはいろいろありますね!
コロナ禍にて外出する機会はガクッと減ったと思います。外食や外出といった行動にある程度の制限がかかっている今、すっきりしない気分のまま過ごしている方も多いかもしれません(私もそのうちの1人です)。
そういうときには、メンタルとフィジカルの関係性という観点から、可能な限り運動や散歩といった身体活動を取り入れてみるのも手かもしれませんね。株式会社サポートメンタルヘルスYouTubeチャンネル【ZERO 1 CH】では散歩動画を公開しています。ぜひご覧ください!
臨床心理士の休日【散歩編】25Kmのスマホスクリーンタイム
臨床心理士の休日【散歩編】10Kmの平均通勤時間
【執筆】 若丸(公認心理師・臨床心理士) 正直ダンベル重いです…。筋トレをしているときは、もうとにかく『あと一回、あと一回』それで頭がいっぱいです…。『帰ったら何を食べようかな』とか『あ~仕事でミスったな』とか『報告書作成し忘れてた』とかあれこれ考える余裕なんてありません。意識が一点に集中されてあちこちに翻弄されない状態。これマインドフル状態ですよね!?
【監修】 本山真(精神科医師/精神保健指定医/日本医師会認定産業医) |