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【精神科医監修】散歩でメンタルケア!ストレス発散効果は?【ライフハック心理学#2】

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2021年10月23日

最終更新日 2024年3月2日

散歩のストレス発散効果とは?メンタルケアの観点で解説します!

VUCA時代とも言われる現代。メンタルケアの観点からすると、気分転換や気晴らしが非常に大切!一人でも手軽にできる気分転換として散歩が人気のようです。

【参考】

【産業医時事ニュース解説】500人に聞く、在宅ワーク中のリフレッシュ方法ランキング

 

散歩をすることによる気分転換や気晴らしについては、皆さん実感してらっしゃるところだと思いますが、散歩のストレス発散効果って実際どうなのでしょうか?今回は散歩のストレス発散効果やメンタルヘルスへの影響について解説しましょう。

 

精神科医監修ライフハックシリーズ!

#1:【精神科医監修】ルーティンワークを解説!

#2:【精神科医監修】散歩でメンタルケア!ストレス発散効果は?

#3:癖なの?病気なの?【先延ばしの科学】精神科医監修ライフハック心理学#3

#4:カフェインの科学【作用と効果と副作用】精神科医監修ライフハック心理学#4

#5:精神科医監修ライフハック心理学#5【実行機能をわかりやすく簡単に解説】

 

臨床心理士の休日【散歩編】25㎞のスマホのスクリーンタイム

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「散歩」と「ウォーキング」の違い

「散歩」と「ウォーキング」。散歩は気分転換目的、ウォーキングは健康維持目的、と厳密には取り扱いが異なるようです。本ブログでは『散歩』を、気分転換かつ健康維持を目的とした有酸素運動として取り扱います。

【参考】

「散歩」と「ウォーキング」の違いとは?わかりやすく解説

 

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散歩にストレス発散効果はある??


1.散歩は幸せホルモンを増やしてストレスホルモンを抑えます!

有酸素運動は、セロトニンという神経伝達物質の分泌を促し、コルチゾールというホルモンの分泌バランスを整える働きがあります。セロトニン?コルチゾール?横文字が並ぶと何だかそれだけで拒否反応が生じてしまうのは私だけでしょうか笑

そんな私ができる限りわかりやすくなるよう頑張って解説します。

 

【引用】e-ヘルスネット(厚生労働省)有酸素運動無酸素運動

 

脳は緊張やストレスを感じると、ドーパミンやノルアドレナリンを分泌します。さらに副腎皮質という場所からはコルチゾールという物質が分泌されます。それぞれの分泌によって交感神経の働きが活性化されるわけです。緊張やストレス状態というのは、生き物にとってピンチな状態ではあるので体を闘争/逃走モードに切り替えるわけですね。交感神経優位な状態に対し、セロトニンが分泌されることでドーパミンとノルアドレナリンを制御し、自律神経のバランスを整えようとしているわけです。

 

ストレスを感じている時、温かい湯船につかると癒されますよねえ。あの瞬間、脳の中では、セロトニンが増え、ノルアドレナリン(不安や怒り)が減少しているんです。つまり、副交感神経が優位の状態となり、心身がリラックス状態となるわけです。セロトニンが不足していると、ドーパミンやノルアドレナリンの働きを制御できなくなってしまうんですね。

【ストレスの解説についてはこちらをどうぞ】

【ストレスってなに?】ストレスとの上手な付き合い方

 

コルチゾールは、ストレスから体を守ろうと様々な臓器に働きかけ代謝に影響を与えます。分泌からしばらくすると、バランスを取ろうとする体の機構により、今度はコルチゾールの分泌が抑えられます(これをネガティブフィードバックといいます)。慢性的なストレス状態が続くと、このシステムがうまく働かなくなってしまい、コルチゾールが過剰に分泌され続け、様々な不調を引き起こしてしまうのです。例えば、うつ病の人はうつ病でない人に比べて、セロトニン値が低く、コルチゾール値が高いことが知られています(意欲や判断力の低下の原因と考えられています)。なんと、セロトニンが増えるとうつ症状(不安や気分の落ち込み)は軽減されるんです。

散歩をすることによってセロトニンが増えること、コルチゾールがコントロールされること、はストレス解消につながるわけです。

 

 

【参考】

セロトニン(e-ヘルスネット|厚生労働省)

ドーパミン(e-ヘルスネット|厚生労働省)

ノルアドレナリン(e-ヘルスネット|厚生労働省)

コルチゾール(ヤクルト中央研究所)

 

2.散歩はメンタルヘルスを整えます!

有酸素運動の中でも、特にリズム運動(散歩、ジョギング、ダンス、サイクリング)がストレス解消には効果的です。リズム運動を行うことで、セロトニンを分泌するセロトニン神経が強化され、セロトニンの分泌が活性化されるんです。セロトニンは、運動を開始して約5分後からその濃度が高まり、20~30 分でピークに達します。しかし、それ以上運動を継続して、疲労がたまってくると、逆にセロトニンの機能は低下してしまいます。そのため、一度に長い時間取り組むのではなく、1日に20~30分程度、毎日取り組むことが大切です。

 

日常的に有酸素運動をしている人は、運動習慣のない人に比べて、ストレス時のコルチゾール分泌が少ないことがわかっています。運動自体、生体にとっては負荷に他ならないため、もれなくコルチゾールは分泌されるわけですが、日常的な運動によりコルチゾールの分泌が繰り返されることでバランス機構が調整し、程よい分泌バランスに落ち着きます。

 

運動の効果に着目した「運動療法」という治療法にも興味深いエビデンスが報告されています。

Blumenthal ら(1999)の研究によれば、適度な運動は、軽度~中等度のうつ病の治療に有効だとされています。研究では、うつ病と診断された男女156名(50歳以上)を対象に、下記の通りランダムにグループ分けをしています。

 

  • 抗うつ薬の服用のみ
  • 一回30分の有酸素運動を週3回
  • 抗うつ薬と有酸素運動を併用

 

16週間の治験を実施し、うつ病の改善率を比較したところ、3グループすべてにおいて、抑うつ症状は改善しています。ん?抗うつ薬のみで改善するのであれば、有酸素運動にコストをかける意味はあるの?とお感じになるかもしれません。こちらの研究の独自性はその後の経過にあります。

 

こちらの研究は、6か月の追跡調査を実施しています。追跡調査の結果として、抗うつ薬服用のみのグループと比較して、有酸素運動を取り入れていたグループの方が再発率は低かったんだそうです。

 

研究を読み解く際は批判的検討が大切ですから、有酸素運動そのものの効果と言えるのか、有酸素運動に伴う何かの効果なのか、有酸素運動を心がけることでその他生活習慣にも変化が生じたのか、様々な可能性は考えられます。

 

とは言え、うつ病の再発率は60%と言われるなか、再発を防ぐための方法として有酸素運動を検討するという発想は選択肢として覚えておくとよいのかもしれません。

 

日本における運動とメンタルヘルス効果との研究もご紹介しておきましょう。種々の理由によりお薬に反応しづらいグループ(お薬の効果が認められないグループ)を薬物療法抵抗性と呼んだりしますが、薬物療法抵抗性の抑うつ患者グループに対する運動療法の併用効果や、運動療法により体力が増加し気分の不安定さや抑うつ症状が改善される傾向が報告されています。

 

うつ病に対する運動療法の注意点として、抗うつ効果を支持する報告が多い一方で、一致した結果が得られていないという指摘もあります。現時点では、まだまだ知見を蓄積する段階ではありますが、メンタルヘルスケアのひとつとして有酸素運動に期待が集まっているのでしょう。ちなみに、欧米ではウォーキングのメンタルヘルス効果に注目した「ウォーキングセラピー」が注目を集めているそうです。

 

散歩は特別な道具も必要ないため気軽に始めることができますし、過度な負荷もなく自分のペースで進めることができるため、取り組みやすく継続しやすい有酸素運動だと言えます。

 

散歩で自然に触れるストレス発散効果!


散歩のストレス解消効果についてご理解いただけたでしょうか?有酸素運動としての散歩、リズム運動としての散歩をテーマにしているので、ジムのルームランナーで良いのね!とお感じの方もいらっしゃるでしょう。もちろんルームランナーも良いですが、メンタルケアを目的として散歩をするのであれば、外出して自然と触れ合うことをおすすめしたいと思います。より高いストレス発散効果が見込めるかもしれませんよ!

 

1.自然のなかでの散歩がコルチゾールを減らす

突然ですが自然と触れ合うと理屈抜きで癒されますよね!あれって何故なんでしょう。『気持ち良いんだし細かいことはいいや』とメカニズムを考えずにきてしまいましたが笑、今回ブログを執筆するにあたって調べてみることにしました。積極的なメンタルケアを考えるうえで、メカニズムがわかっているとモチベーション上がりますもんね。

 

自然との触れ合いによる癒し効果を調査した研究をご紹介しましょう。宮崎ら(2014)は、自然の中で約15分間座るもしくは歩くことによって、コルチゾール濃度、交感神経活動、収縮期血圧、心拍数が低下したことを報告しています。端的に言えば、ストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールの減少効果、交感神経活動の緩和効果が認められたということです。

宮崎良文,池井晴美,宋チョロン(2014)日本における森林医学研究 日本衛生学会

 

海外の研究においても同様の報告はあり、自然の中で過ごすことでコルチゾールが減少したそうです。こちらの研究によれば、最もコルチゾールが減少したのは、20分~30分ほどを自然のなかで座って、あるいは歩いて過ごした場合だそうです。自然に触れると癒される生体の仕組みは科学的に説明できるんですね!

Urban Nature Experiences Reduce Stress in the Context of Daily Life Based on Salivary Biomarkers

 

2.なぜ自然はメンタルヘルスに良い効果をもたらすのか

こちらでは散歩と少し離れまして、自然との触れ合いそのもののメンタルヘルス向上への効果についてご紹介します。自然との触れ合いがメンタルヘルスに良好な効果を及ぼすことについての研究の歴史は長く、なんと150年以上前(日本で言えば明治時代!)まで遡ることができます。研究が盛んになってきたのは1980~1990年頃からのようです。

 

自然がメンタルヘルスへと良い影響を与えるメカニズムについては、いくつかの仮説が提唱されています。

【ストレス低減理論:Ulrichら(1991)】

人間が本来持っている自然への感情反応(自然は食料を提供してくれる、身を隠す場所を提供してくれる等の生存競争に有効に作用するもの)が、癒しをもたらし、ストレスを緩和する。

 

【注意回復理論(ART):Kaplan & Kaplan(1995)】

自然に触れることで、常に何かしらに注意を向ける現代社会から離れ、脳を休息させることが出来る。休息により、注意機能の回復する効果があるとされる。

 

【参考】

Minimum Time Dose in Nature to Positively Impact the Mental Health of College-Aged Students, and How to Measure It::A Scoping Review

芝田征司(2013)自然環境の心理学 環境心理学研究

 

注意回復理論の考え方は、マインドフルネスにおける注意機能への作用機序に近しいものを感じますね!

【参考】

【精神科医師監修】マインドフルネスとは③効果、副作用を解説!

 

近年、『1/fゆらぎ』という独特のゆらぎにも注目が集まっています。1/fゆらぎとは、規則的なようで規則的でない、例えば、川のせせらぎや小鳥のさえずり、そよ風とかろうそくの火などがそれに相当し、自然界に多く存在します。

 

研究ベースで言えば、1/fゆらぎを含む音楽を聴くと、リラックス時に現れるアルファ波が多くみられることが分かっています。さらに、ヒトの心臓の心拍間隔、神経細胞が発する電気信号の間隔、そして人間以外の小さな生物の細胞や神経の働きのなかにもこの1/fゆらぎを観測することができることから、生体のリズムは基本的に1/fゆらぎであり、快適性と関連しているとされます。

 

詳細についてはいまだ解明されていないようですが、生体が1/fゆらぎを感知すると、生体リズムと共鳴し、安らぎを与えるのではないかと考えられています。

 

メンタルケアとしての散歩に適した時間帯とは?


話を散歩に戻します。メンタルヘルスケアの観点から言えば、散歩に適した時間帯は、ズバリ朝です!散歩を含む有酸素運動によって活性化するセロトニンは、主に午前中に作られます。そのため、メンタルヘルス効果を得るには、散歩は夜よりも朝の方が適しているのです。朝の散歩によるセロトニン活性化は夜の快適な睡眠を促す効果もあるんです。眠りを促す『メラトニン』というホルモンは、セロトニンを原料に作られています。またメラトニンの量が多いほど、睡眠の質が良くなることが分かっています。日中にセロトニンがたくさん分泌されることで、メラトニンも多く作ることができ、より質のよい睡眠を得ることができるのです。

 

もう少し詳しい説明をしようと思いますが、横文字が並びます!できる限りわかりやすく解説できるよう頑張ります笑

 

私たちは基本的に、夜になったら眠くなってきて眠りにつき、朝になると起きて活動を始める、という体内リズムが備わっています。これをサーカディアンリズム(概日リズム)と言います。サーカディアンリズムを支えているのが、セロトニンとメラトニンです。セロトニンは、朝の光刺激によって分泌され、日の落ちる夕方まで分泌されます。睡眠中や深夜は分泌が抑えられますが、朝に近づくにつれて徐々に分泌されていきます。結果、体が徐々に活動モードに切り替わり、目が覚めて頭も覚醒するわけです。

 

セロトニンは、睡眠中はほとんど作られないため、朝スッキリと目覚めるために、そして夜に質の良い睡眠をとるために、朝の過ごし方が重要です。メラトニンは別名『睡眠ホルモン』と呼ばれ、日中に作られたセロトニンを原料に夕方から夜に作られます。夜に眠くなるのは、このメラトニンの働きによるものです。光刺激によりメラトニンの分泌が抑制され、夜になるとまた分泌量が増加します。朝から夕方はセロトニンが分泌され、夕方から朝方にかけてメラトニンが分泌されるというサイクルによって、私たちの体内時計のリズムは保たれているのです。

 

 

朝の散歩によってセロトニンが活性化、結果的に質の良い睡眠につながります。質の良い睡眠によってメンタルヘルスケア効果を得ることができるんですね。

 

【睡眠についてはこちらもどうぞ】

 

朝の散歩をするうえでの注意点!

散歩に出かける前に必ず水分補給をしましょう!起床時は水分が不足しているため、血液がドロドロの状態なんです(散歩中も適宜水分補給を行ってくださいね)。また、ご高齢の方や血管系の疾患をお持ちの方、高血圧の方は、朝の散歩が危険な場合があります。起床後、血の巡りが悪い状態で急に運動してしまうと、心筋梗塞や脳梗塞を起こしてしまう可能性があります。

 

上記に該当する方については、起床後すぐの散歩は避け、少し時間をおいてから散歩をするようにしましょう。

 

日常的なメンタルケアとして散歩をおすすめします!


いかがでしたか?こちらのブログでは、散歩のストレス発散、メンタルケア効果について解説しました。散歩は特別な道具を必要とせず手軽に始められて、無理なく続けられるところがポイント!ストレス解消効果、メンタルケアとしての散歩を狙うのであれば、朝20~30分、自然に触れ合うことが重要です!

 

是非続けてみてください♪

 

【監修】

本山真(精神科医師/精神保健指定医/日本医師会認定産業医)

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【執筆】

ayano(公認心理師・臨床心理士)

YouTubeにて弊社しゃもじちゃんが散歩をしていますが、東海道五十三次散歩ツアーに誘われています。約490㎞!!YouTube動画一本目でいきなり25㎞歩いた彼女です、きっと490㎞も歩ききるのでしょう。どうしましょう…5㎞くらいなら何とかとは思うのですが…。次のライフハック心理学では『上手な交渉の仕方』を特集しようかなあ。

2本目の散歩動画です!こちらは10㎞歩いてます!

 

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