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【精神科医師監修】マインドフルネスとは③効果、副作用を解説!

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2021年9月1日

最終更新日 2022年8月27日

マインドフルネスの効果、副作用を解説します

『マインドフルネスってどんな効果があるの?』

インターネットで“マインドフルネス 効果”と検索すると、様々な内容の記事やページがヒットします。『え?これ全部本当なの?』『結局何に効果があるの?』混乱してしまいますよね…。実はこれには理由があるのです!というのも、マインドフルネスの効果は、病院やクリニックなどの医療現場に限らず、ビジネス領域やスポーツ領域、学校などの教育現場、少年院などなど、非常に広範囲で確認されているんです。

 

精神面への効果はもちろんのこと、身体への効果、近年では脳機能への効果も明らかにされています。今後マインドフルネスの効果研究が進むにつれ、更に新たな効果が発見されてくるかもしれません!まだまだ可能性を秘めているマインドフルネス、目が離せません。

 

今回は種々の効果に加え、マインドフルネスの副作用についてもご紹介します。

 

【参考】eJIM|厚生労働省『「統合医療」に係る 情報発信等推進事業』

 

【精神科医監修】マインドフルネスシリーズ

マインドフルネスとは①定義と潮流

マインドフルネスとは②仕組みとやり方

【番外編】マインドフルネス体験談

【スタッフ体験談】マインドフルネスを公認心理師・臨床心理士が受けてみた!

オンラインでマインドフルネスをご体験いただけます

【まいたけあ】オンラインマインドフルネスプログラム

 

 

 

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マインドフルネスとストレス低減

ストレスフリーな生活。何となくのイメージとして、ストレスを全く感じない生活を指すのでしょうか?皆さんご承知の通り、生きている限りストレスを全く感じない生活って不可能ですよね…。そもそも、ストレスはほどよいプレッシャーとして働くことで、生活にメリハリをつけたり、人を成長させたりと、人生プラスの働きもあるので完全に無くなってしまっては味気ない。ストレス学説を提唱した生理学者セリエは『ストレスは人生のスパイス』と言ってますしね。

 

【ストレスってなに?】ストレスとの上手な付き合い方もどうぞ!

 

マインドフルネスも『ストレスをこの世から無くす』と言うより、ストレスから意識的に距離を置くことによるダメージ軽減という作用機序をコンセプトの一つとしています。さらに言えば【今この瞬間に着目し、ストレスを受けている自分をあるがままに見る状態】がマインドフル状態なのです。

※元来、ストレス耐性には個人差があり、レジリエンスといった概念もあるので、一概に「マインドフルネスさえやれば、ストレス耐性がつく」というわけではありませんのであしからず(レジリエンスについてはまた別の機会でご紹介いたします)。

 

さて、マインドフルネスによるストレス低減の主観的効果を紹介しましょう。働く人を対象としたメタアナリシスによれば、マインドフルネスは、中~大程度のストレス低減効果、ストレス低減の維持効果を認めます。看護師さんを対象にした研究では、精神的な疲労の低下が認められたという報告もあります。

※なお一つ目の研究、マインドフルネス以外のリラクゼーションプログラムとの差があったわけではないという制限つきです。マインドフルネスのアプローチに親和性のある人は選択すればよい、ということですね。

 

ストレス低減効果に関しては、ホルモンレベルでの検証が行われています。ストレスホルモン(コルチゾール、アドレナリンなどストレスと関わるホルモンの総称)と呼ばれるストレス反応を引き起こすホルモン量が、マインドフルネス実施後に低減しているという報告があるんです。

 

マインドフルネスでなぜストレスホルモンが低減するのか。これは前頭前野及び前帯状皮質の活性化による影響が想定されています。fMRIを用いた海外の研究によれば、マインドフルネス瞑想の熟練者は、マインドフルネス未経験者と比べると、前頭前野及び前帯状皮質の機能の活性化が認められたそうです。前帯状皮質にはストレスホルモンの過剰反応を抑制する働きがあります。

 

マインドフルネスによって前帯状皮質が活性化、ストレスホルモン放出が抑制、ストレスホルモン量が低減する。これが神経科学的(脳科学的)なストレス低減メカニズムです。主観的なストレス低減効果を裏づける科学的エビデンスが蓄積されているんですね。

 

 

マインドフルネスとメンタルヘルス(うつ病への効果)

マインドフルネスとメンタルヘルスの関係について解説しましょう。反芻思考(はんすうしこう)って聞いたことありますか?嫌なこと、不安なことなど繰り返し思い出し考えてしまう思考パターンのことです。(鶏が先か卵が先か難しいところなのですが)反芻思考が強い人ほど、抑うつ気分(憂うつな気分)が高まりうつ病になりやすい、または、うつ病の症状として反芻思考が強くなる、と考えられています。

 

マインドフルネスと反芻思考

 

「嫌なことを思い返さなければいいんだ!辛い時こそポジティブになろう!切り替え切り替え!」。頭ではわかっていても思考を切り替えるのって難しい!わかっていてもどんどんネガティブ思考に陥ってしまうんですよね…。

 

注意を『今、ここ』に固定するトレーニングを通じ、結果として反芻思考に翻弄されるという悪循環を断つ。マインドフルネスで想定されている作用機序の一つです。実際、国内研究の文献レビューにてうつと不安への効果が抽出されています。

※なお、メンタル不調は状態によって優先される治療法が異なります。お休みしたり、環境を整えたりすることで復調することもあれば、カウンセリングやお薬を使った薬物療法を試したり、それぞれを組み合わせたり、と様々です。休養や薬物療法の効果が見込める状態において、自己判断でマインドフルネスを導入するのは思わぬ不利益につながることもあります。あらゆるエビデンスには限界があり、マインドフルネスも例外ではありません。

【参考】もしメンタルの病気になったら? |公認心理師が疑問にお答えします!

 

マインドフルネスと痛み(慢性疼痛への効果)

 

マインドフルネスはメンタルの不調だけでなく、身体の不調にも効果があると言われています。特に、慢性疼痛(痛み)を軽減する効果が注目されています。厚生労働省慢性疼痛治療ガイドラインを参考に解説します。まず慢性疼痛とは何なのか引用しておきましょう。

 

慢性疼痛とは、国際疼痛学会(IASP)で「治療に要すると期待される時間の枠を超えて持続する痛み、あるいは進行性の非がん性疼痛に基づく痛み」とされている

【引用】慢性疼痛治療ガイドライン|pdfファイル(厚生労働省)

 

慢性疼痛は、メンタルの影響や生活環境の影響によって痛みが変化する特徴を持っています。そのため痛みそのものへのアプローチに加え、痛みに関係する因子へのアプローチによる効果が期待されているんです。痛みをできる限り軽くすることで生活の質を向上させることが慢性疼痛の治療目標となります。

 

マインドフルネスを通じて、痛みの感覚や痛みに伴う思考・感情に翻弄されることなく客観的に捉えることで身体的・心理社会的ストレス耐性が向上する、という作用機序(どう効くかのモデル)が想定されているようです。

 

慢性疼痛グループのなかでも、慢性腰痛、頭痛、過敏性腸症候群(お腹の痛み)への長期効果は、通常治療の効果を上回ります。また、疼痛への効果が明らかになっている認知行動療法と比べ遜色ない効果が認められています。ガイドラインのなかでもエビデンス推奨度は最も高い1A、行うことを強く推奨するとされています。

 

慢性疼痛におけるマインドフルネスのエビデンス

【参考】慢性疼痛治療ガイドライン|pdfファイル(厚生労働省)

 

なお、疼痛グループの中でも線維筋痛症に対するマインドフルネスはまだ充分な効果が認められておらず、質の高い研究が必要だとされています。

【参考】繊維筋痛症|厚生労働省『「統合医療」に係る 情報発信等推進事業』

 

マインドフルネスと糖尿病

糖尿病の治療においてもマインドフルネスの効果が認められています。糖尿病によって生じる身体的苦痛(手足の痛み・痺れ、疲れやすさなど)の低減効果だけでなく、血糖値、血中コレステロールの低下にも効果があります。これは、マインドフルネスが直接血糖値や血中コレステロールに影響を及ぼすわけではなく、マインドフルネスによるストレス軽減効果の間接的作用だと考えられています。

 

より詳しく説明すると、マインドフルネスによりストレスが低減し、ストレスに起因する暴飲暴食といった健康を阻害する行動が減少します。その結果、血糖値や血中コレステロールの低下が促されるというメカニズムのようです 。

 

マインドフルネスと自律神経

マインドフルネスの効果と副作用

 

自律神経はうまくコントロール出来れば強い味方となり、私たちの日々の生活を支えてくれます。反対にコントロールが乱れると、心と身体のバランスまでもが乱れてしまいます。

【参考】自律訓練法とは|公認心理師がリラックス法を解説!

 

自律神経のバランスの乱れによって、頭痛、不眠・睡眠障害、耳鳴り、めまい、吐き気、下痢、便秘、高血圧、動悸、免疫力の低下、やる気の低下、集中力低下、感情の不安定さ(怒りっぽくなる、急に涙がでる)などなど、ありとあらゆる心身の不調が生じます。

 

「具合が悪くて病院に行ったけど、身体に異常はないと言われた」「薬を飲んでもなかなか症状が改善しない」「どこが悪いというわけではないけど、なんとなく調子が悪い」という場合、もしかすると自律神経の乱れが関係しているかもしれません。

 

下記の通り、マインドフルネスは自律神経の乱れによって生じる諸症状にも効果があると言われています。

  • めまい:6か月後まで症状の改善が維持され、長期的な効果が認められています
  • 高血圧:収縮期血圧、拡張期血圧ともに低下が認めらています
  • 免疫力の向上:マインドフルネスを実施していたグループは抗体量の増加が見られました
  • その他の自律神経の乱れによって生じる諸症状にも効果があると言われています 

 

マインドフルネスと脳機能

 

2000年以降、マインドフルネスが脳機能に及ぼす効果・影響に関して国内外で様々な研究がすすめられています。脳科学的な視点によるマインドフルネスの効果についていくつかご紹介いたします。

 

認知機能の向上

マインドフルネスが認知機能に及ぼす効果について、いくつかの研究によって明らかにされてきています。認知機能の中でも、注意力、認知的柔軟性、記憶(ワーキングメモリ)の向上が報告されています。これは先述した前帯状皮質の活性化による認知機能向上だと考えられています。

 

 

 

【ドクター本山の精神科豆知識】認知機能とは何か?

認知機能という言葉。耳にする、目にする機会増えたような気がします。いざ『説明して』と言われると『ぐぬぬ…』となりがちなワードです。認知機能とは外界の情報をキャッチし、キャッチした情報をもとにあれこれ想像・推論し、アウトプットする、という一連の流れに関わる機能を包括した概念です。

 

…まったくキャッチーではありませんね笑 間違い探しを具体例として説明してみましょう。

<外界の情報をキャッチ>

『二枚の絵で異なるところを探しましょう』

指示を耳で聞いて、二枚の絵を見ます。聴覚情報と視覚情報をキャッチしているわけですね。

<キャッチした情報をもとにあれこれ想像・推論>

絵を見比べて、どこが違っているか、異なっているか、ここかな?あそこかな?と考えながら探します。

<アウトプット>

『ここが違っています』と回答、指をさします。

 

注意力

間違い探しの例で言えば『二枚の絵に意識を向け続けられるか』が注意力に該当します。絵の置かれた机にあるペンに意識がいってしまったり、途中で飽きてしまったり、意識が逸れてしまったり。こういった状態を『注意力が落ちている』、『不注意』と表現します。

 

認知的柔軟性

『ここが違っています』と回答したところ『ブーッ。はずれです』と言われました。(はずれか。それなら別のところを探してみよう)こんな風に、外界のリアクションをもとに自分の考えや推理推測を適宜切り替える力、これを認知的柔軟性と呼びます。

 

ワーキングメモリ

(絵の右上は隈なくチェックして異なるところはない。次は左上を見比べよう)。こんな感じで情報、状況をアップデートしていく力です。右上をチェックしたことを忘れてしまうと何度も同じところを確認することになってしまいます。

 

不安や焦燥の抑制

海外の研究によると、前帯状皮質を含む前頭前野の活性化によって、扁桃体(人の情動を調整する部位)の過剰な興奮が抑制されます。扁桃体の過剰な興奮が抑制されると、強い不安感や焦燥感、衝動性が抑制されると考えられています。

【扁桃体と不安の関係についてはこちらをどうぞ】

【ぞわぞわ…】精神科医監修パニック障害対策ブログ【そわそわ…】

 

記憶・学習力の向上

持続的なマインドフルネスの経験により、海馬組織の機能回復につながることが明らかにされています。慢性的なストレスにより、ストレスホルモンの放出が続くと、海馬は委縮してしまいます。ストレスの他にも不安や、うつ気分、不規則な生活でも海馬は委縮すると言われています。マインドフルネスによって、ストレスホルモンの抑制、不安や焦燥の抑制が促されることで、委縮していた海馬が回復するそうです。機能の回復だけでなく、実際に海馬の容積の増大も認められたとのことです。

 

マインドフルネスやマインドフルネス瞑想の副作用

現状、マインドフルネスの副作用や有害事象に関する報告はほぼありません。ただし、真摯に考えれば”報告がない”イコール”副作用がない”というわけではありません。

 

世間の注目が集まることで多くのリサーチが実施され、新たなエビデンスが蓄積されるのは非常に科学的な経過。マインドフルネスに限った話ではありませんが、”今後副作用が明らかになる可能性はある”という発想はお持ちください(いたずらに不安を煽るわけではないことをご理解ください)。

 

少なくともリサーチベースで言えば、正しい実施法(くどいですが科学的に言えばリサーチで用いた実施法)を選択した場合に限定して期待できる効果であるわけです。

 

つまり実施法によっては、効果があまり感じられなかったり、反対に事態が悪化してしまったりする危険性(いわゆる副作用ですね)を完全には否定できません。メンタルや身体の不調を抱える方は、病状によっては注意を必要とする場合があるかもしれません。医療機関にかかられている方はまずは主治医に相談し、マインドフルネスを実施してもよいか確認しましょうね。

 

適切な実施についても注意が必要です。極端な例ですが『大切な会議だ…。そうだ!会議中にマインドフルネスをやってストレスから意識をそらそう!』なんて使い方をしてしまうと、ただの話を聞いていない人になってしまいます。『こんな痛み、マインドフルネスで紛らわしてやる!』と病気やけがを放っておいた結果病状が悪化、なんてことも起こり得る話ですしね。

 

マインドフルネス注意点!

副作用とは異なりますが、気になる知見が報告されているのでご紹介しておきます。

 

マインドフルな状態とは、謂わば『状況や感情に翻弄されないこと』です。反芻思考の例のように、あれこれ考えてしまう悪循環を断つという切り口で考えれば有用なスキルではあります。これが攻撃や暴力が伴うようなシチュエーションにおいてはどうでしょう。『これを相手にしたら/言ったらどう感じるだろうか』という攻撃性のブレーキや調節の機能を持つ共感という感情からも解き放たれることを意味するわけです。

 

マインドフルネスに限らず、どんなツールにも当てはまることですが、正しい使い方と倫理観が大切だと言うことです。

 

【参考】

砂田安秀・杉浦義典(2021).マインドフルネスは有害な行動にむすびつくか?―マインドフルネスと能動的攻撃の関連に対する危害/ケアの調整効果 パーソナリティ研究,30,1-11.

 

【2022年】臨床心理士おすすめのマインドフルネス本

マインドフルネスの流行に伴い、たくさんの書籍が刊行されています。これだけたくさんの本があるとどれを読めばいいのかわからなくってしまいますよね…。適切な実施は正しい知識から!臨床心理士おすすめのマインドフルネス本をご紹介します。それぞれ出版社ホームページにリンクを貼っておきます。

 

つらいと言えない対人援助職の2人が,マインドフルネスとスキーマ療法によりいかにして幸せを手にしていくか!? 本書では,この2人と臨床心理士である著者とのやり取りが臨場感あふれる文章で描かれるとともにマインドフルネスやスキーマ療法,その基礎となる認知行動療法(CBT)についてわかりやすく解説されている。さらに,今日から実践できるマインドフルネスのエクササイズも多く紹介されている。

【引用】医学書院

 

 

伊藤絵美先生によるご著書です。マインドフルネスに加えスキーマ療法と呼ばれるセラピーを取り上げています。マインドフルネスのエクササイズがとにかくわかりやすく紹介されています。

 

セルフケアの道具箱: ストレスと上手につきあう100のワーク 

第1章 とりあえず、落ち着く
第2章 誰かとつながる
第3章 ストレッサーに気づいて書き出す
第4章 ストレス反応に気づいて書き出す
第5章 マインドフルネスを実践する(身体、行動、五感を使って)
第6章 マインドフルネスを実践する(思考、イメージ、感情に気づいて手放す)
第7章 小さなコーピングをたくさん見つけよう
第8章 生きづらさの「根っこ」を見てみよう
第9章 「呪いのことば」から「希望のことば」へ
第10章 「内なるチャイルド」を守り、癒す

【引用】晶文社

 

 

こちらも伊藤絵美先生よるご著書です。第5章、6章にてマインドフルネスを取り扱っています。マインドフルネスはもちろんのこと、全編通じ、ストレス対処に関する様々なアイデアの宝庫です!

 

※マインドフルネス研究の第一人者、熊野宏昭先生による【実践! マインドフルネスDVD (体験に気づき、反応を止め、パターンから抜け出す理論と実践)】おすすめなのですが出版社の倒産に伴い今後取り扱いがどうなるのかわかりません…。

 

【監修】

本山真(精神科医師/精神保健指定医/産業医/医療法人ラック理事長)

2002年東京大学医学部医学科卒業後、東京大学医学部付属病院で研修。川越同仁会病院、不動ヶ丘病院の勤務を経て、2008年埼玉県さいたま市に宮原メンタルクリニック開院。2016年医療法人ラック設立、2019年株式会社サポートメンタルヘルス設立。

2005年産業医、2008年精神保健指定医取得

 

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