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もしメンタルの病気になったら? |公認心理師が疑問にお答えします!

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2020年11月13日

もし自分が、家族がメンタルの病気になったらあなたはどうしますか?

 

「メンタルの病気って治るの?」

「治療費はどれくらいかかるの?」

「仕事はどうすればいいの?」

 

先々のことを考えると、不安なこと、心配なことがたくさん浮かんでくるかもしれません。

 

かつてはマイナスなイメージを持たれやすかった精神疾患。

近年では、種々の普及啓発活動や、芸能人やスポーツ選手といった著名人によるメンタル不調の公表によって、精神疾患がぐっと身近なものになったように思います。

 

とは言え…

 

“いざ自分が何らかのメンタルにおける不調を感じた際にまずどうしたらいいのか”

“病気にかかったらその後の生活はどうなるのか”

 

『わからないからこその不安』や、『わからないこその抵抗』をお持ちである方がいらっしゃるのは事実です。

 

こちらの記事では、メンタルの病気になった場合の受診や通院に関する疑問、活用できるサービスを紹介します。

 

心療内科・精神科受診やメンタルの治療に対する敷居が下がり、多くの方が積極的にメンタルヘルスケアに取り組める社会作りに貢献できれば幸いです。

 

実は身近なメンタルの病気

精神疾患の患者数は近年大幅に増加しており、患者数は400万人を超えています(2017年統計)。

 

精神疾患の患者数(医療機関に受診する患者の疾病別内訳

出典:厚生労働省みんなのメンタルヘルス『精神疾患のデータ』

 

最も多いのはうつ病などの気分障害。

15人に1人は一生のうちに一度はかかるとされているほど身近なんです。

 

また、厚生労働省が重点的に対策に取り組んでいる5大疾病(がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病、精神疾患)。

5大疾病のなかで一番患者数が多いのは精神疾患であることが明らかとなっています。

 

いかがでしょう?

誰でもメンタルの不調を抱える可能性はあるんです。

 

悩んだときに活用できるチェックリストと相談窓口サービス

さて、メンタルにおける何らかの不調を感じた時、どうしたらいいのでしょうか。

 

シンプルに回答すれば、医療機関を受診することが最善策です。

背景にメンタル疾患があれば早めに対処することが出来ますし、メンタル疾患ではないと分かれば、それはそれで安心することができるからです。

 

医療機関の勤務経験を振り返ると、“こんなことで受診してもいいんでしょうか?”と心配そうな患者様が多くいらっしゃいました…。

もちろん受診していいんです!

 

我慢を重ねた結果、自分が思っている以上に重症化してしまっているケースもあるんですよね。

 

精神疾患の症状は複雑であるため自己判断が難しいものです。

もしご自身で不調に気が付くことができたら、出来る限り早めに受診をしておきましょう!

 

とは言え、様々な理由から医療機関の受診を躊躇してしまう方が多いのも事実。

 

受診すべきか悩んだときに活用できる2つの方法をご紹介します!

 

活用できる症状チェックリスト

 

不調や違和感がなんなのか。

どれほどのものなのか。

医療機関を受診すべきなのか。

 

そんな時には症状のチェックリストが参考になります。

 

インターネットで検索するとあらゆるチェックリストが出てきますが、なるべく医療機関や公的な機関が公表しているチェックリストを参考にすることをおすすめします。

 

なお、チェックリストはあくまで参考としての使用にとどめて、医療機関の受診を検討する目安としましょう。

 

弊社母体のクリニックでも、症状のチェックリストをいくつか掲載しています。

よろしければご参照ください。

 

活用できる相談窓口サービス

厚生労働省のHPには、メンタルヘルスの相談窓口として、電話相談、SNS相談、その他の相談窓口の一覧が掲載されています。

 

例えば…「こころの健康相談統一ダイヤル」

このサービスは、共通ダイヤル番号番号にかけると、電話をかけた所在地の公的機関につながる仕組みになっています。

匿名で相談することができるので、誰かに知られることなく頼ることが出来ます。

 

なお、いずれの相談窓口も、通話料や通信料の負担が必要な場合はあるものの、相談そのものは原則無料です。

 

どこに相談したらいいかわからないときのために、以下のような検索ページも設定されていますよ!

 

医療機関ってどこに行けばいいの?

精神科(精神神経科)と心療内科の違い

簡単に分けると…

精神科(精神神経科) 精神疾患を専門的に診る診療科目
心療内科 心理的・社会的なストレスからくる身体の不調を診る診療科目

 

どちらを受診すればよいのか迷ったときは以下をおすすめします。

  • 医療機関に直接聞いてみる
  • 精神科と心療内科を併記している医療機関を受診する

 

精神科病院とメンタルクリニックの違い

大きな違いは、入院できるかどうかです。

 

病院とクリニック(診療所)は、医療法という法律によって以下のように規定されています。

診療所(=医院、クリニック) 入院ベッド数が19床以下
病院 入院ベッド数が20床以上

 

入院ベッドのある診療所を有床診療所といいますが、近年では有床診療所の数は少なくなっており、入院はできない場合がほとんどです。

 

入院を視野に入れている場合は精神科病院を受診する方がよいでしょう。

 

必ず事前に予約を!

精神科であれ心療内科であれ、初診の場合、大抵は事前予約制を取っています。

 

予約枠が埋まっていることも多く、飛び込みでの受診は受け入れが難しいことも少なくありません。

 

予約制かどうか、事前に確認することをおすすめします。

 

しんどいときに何とか医療機関へと辿り着いたのに診察が受けられなかった…。

 

そんな不幸を避けるためにも、予約制である場合には必ず予約をしてから受診するようにしましょうね!

厚生労働省:医療機関の選び方

 

診察ってどんな感じ?

聞き取りによる「問診」がメイン

精神疾患は目に見えるものばかりではありません。

したがって、精神科・心療内科の診察は、お困りごとやこれまでの経緯、現在の状況などを聞き取る『問診』がメインとなります。

 

医療機関によっては、『予診』といって医師による診察の前に、“公認心理師・臨床心理士”、“精神保健福祉士”といった専門スタッフが事前問診を行なうところもありますね。

 

調子が悪く自分で話すことが難しい場合や、客観的に情報を伝えることが難しい場合には、家族や頼れる人に付き添いを依頼すると安心です♪

 

お身体の病気のありなし、普段服用している薬のありなし(お薬を飲んでいる場合は、何の薬をどれくらい飲んでいるか)は、実は精神状態に関係することがあるんです!

また、精神科や心療内科で処方されるお薬との飲み合わせにも影響するため大切な情報となります。

 

受診の際にはこれらの情報も必ず伝えるようにしましょう(お薬手帳をご持参されると便利ですよ!)

 

なお、問診がメインであるため、特に初診の時には診察、待ち時間が長くなりがちです。

後ろの予定には余裕をもっておくことをおすすめします。

 

治療について

精神科・心療内科の治療は、精神療法、環境調整、薬物療法の3つを組み合わせてすすめるのが一般的です。

 

精神療法とは、精神科の医師による“対話を通じたアプローチ”です。

認知行動療法など専門的なアプローチも存在しますが、一般的には、傾聴、支持的な対応、助言、アドバイスを指します。

 

環境調整は、生活習慣を整えたり、ストレス因となっている状況を改善したり、といったアプローチです。

 

薬物療法はお薬を用いたアプローチです。

 

定期的な採血や検査が必要な場合も!

お体の病気との鑑別を行う場合や、お薬の効果や影響、副作用を調べるために血液検査を行うこともあります。

また医師が必要だと判断した場合は心理検査を行う場合もあります。

 

診察とカウンセリングは別!

医師による一般的な診察とカウンセリングは別のものだと考えていただくとよいかもしれません。

医師は診察もカウンセリングもできますが、公認心理師・臨床心理士などの心理スタッフは、診察を行ないません(というよりも診察は医師がするものという定義です)。

 

医療機関ですと、医師が一人の患者様に費やすことのできる時間は限られます。

限られた時間のなかで経過の確認、治療効果の判定、見通しの修正を行なう必要があるわけなので、どうしても話足りないという気持ちになる患者様もいらっしゃるようです。

診察にて伝えるべきこと、伝えたいことはメモなどに書いて持参することをおすすめします。

 

『もう少しじっくり話をしたい』という場合、カウンセリングを利用する手もありますが、お薬と同様、カウンセリングにも作用もあれば副作用もあります。

病状によってはカウンセリングを実施しない方がよいタイミングがありますので、カウンセリングを希望する場合は、担当の先生に相談しましょう!

 

なお、カウンセリングは保険適応ではないので自費扱いとなります。

料金は機関によってばらつきがありますが、おおよその相場は1回50分、数千円~1万円くらいでしょうか。

こちらもご参照ください!

 

通院の頻度は?治るまでどれくらいの期間がかかるの?

通院の頻度

病状や薬の効き目、副作用を確認するために最初は1~2週間に1度、安定すれば2~4週間に1度と、通院間隔を空けていくケースが多いですね。

 

なお、定期的な通院、適切な服薬、そして規則正しい生活習慣は治療効果に大きく影響しますよ。

 

服薬の効果

薬剤によって即効性のあるもの、効果を実感できるまでに時間を要するものがあります。

 

例えば、うつ病の治療や不安症(不安障害)の治療に用いる抗うつ薬の場合、効果が出始めるのは少なくとも2週間後からと言われています。

効果の実感については個人差が大きく、2週間以内で効果を実感した人は16%ほど40%の人が4週間後に効果を実感している、という調査もあります。

ただし、適切な服薬を継続していることが大前提であり、効果がなかったと訴える人のなかには適切な服薬をしていない方が多いようです。

 

効果が実感できるまでに少し時間はかかりますが、焦らずに正しく服薬を続けることが重要です!

 

通院期間

通院期間は、メンタル疾患の種類や重症度によって異なります。

 

いずれにせよ“早期に治療を受けること”、そして“必要なだけ治療を継続すること”は大切なポイントです。

 

病気を発症してから治療が開始されるまでの期間を、専門用語で DUP(Duration of Untreated Psychosis/精神病未治療期間)と呼びますが、このDUPが短いほど予後は良いとされており、逆にこのDUPが長いと症状の重症化や慢性化のリスクが高まるんです。

 

 

治療期間についても、早期に治療を始めればより短期で済むケースはありますし、治療開始時期が遅くなるほど治療に要する期間が長くなってしまうケースもあります。

 

つまり、症状や不調に気がついたら、いかに早く治療を受けられるかが、その後の生活に関わってくるとも言えるんです。

 

なお、自己判断での通院の中断は、再発のリスクを高めてしまうことがあります。

復活を焦って、無理をしたり、通院・服薬をやめてしまったりという方は少なくありません。

気持ちは十分に理解できるんですが、再び不調に陥り、その後の治療が余計に長引いてしまうというパターンも。

 

そもそも不調を抱えたまま元の生活をしようとすると、以前よりもパフォーマンスは低下し負担がより大きなものになってしまうんです。

焦らずにじっくりと治療に専念することが最優先です。

参考:厚生労働省『e-ヘルスネット精神疾患の早期発見・治療の重要性』

 

お金の心配

受診にかかる料金

初めて受診する初診の場合と、2回目以降の再診の場合とで料金は異なります。

 

初診の場合はおよそ2500円、再診の場合はおよそ1500円です。

 

診察に加えて“種々の検査(心理検査・血液検査)の有無”、“診断書等の書類発行の有無”によって料金は変動します。

 

※お薬が処方される場合は、別途お薬代がかかります。金額はお薬によって異なります。

※有効な保険証の提示がない場合、10割負担となる場合もあります。保険証はお忘れなく!

 

 

医療費負担を軽減するサービス

(ケースバイケースが大前提ですが)メンタル不調の治療においては、ある程度の期間、継続した通院が必要となります。

一回、一回の自己負担は軽微なものでも、積み重なってくるとなかなかの負担になってきますよね…。

 

実は、医療費の自己負担額を軽減し定期的な通院をサポートする「自立支援医療制度」という制度があるんです!

自立支援医療制度を利用すると、サービス申し込み時に登録した医療機関と薬局での支払いが軽減されます。

 

具体的には(ものすごくざっくりですが)…

・窓口負担が1割になる(通常は3割)

・窓口負担の上限額が設定される(世帯年収によって異なる)

例えば、通常3割負担で1500円だった場合、制度利用時の支払い額は500円となります。

さらに、月の上限額が例えば1万円なら、1万円を超える部分については、何度受診しても支払いはありません。

 

1年に1度更新の必要があり、指定の期限内に更新がなければそのまま失効します。

 

申請には医師による診断書(意見書)が必要となります。

ご担当の先生や通院先の医療機関にご相談ください。

 

仕事の心配

仕事をしながら通院する

仕事をしながら通院している方は多くいらっしゃいます。

働く人が通院しやすいように、夜間や土曜診療を行なっているクリニックも多くあります。

 

継続的な通院を視野に入れて、診療時間、所在地に注目して医療機関を決めると良いでしょう。

 

お薬による業務への影響が気になる場合は主治医に相談してみましょうね。

 

仕事を一時的に休む(休職)

病状によっては、医師より休職をすすめられることがあるかもしれません。

これは自宅療養と呼ばれる治療の一つです。

 

休職する場合は、主治医の診断書が必要になる場合が多いようです。

必要な場合は、主治医に申し出ましょう。

 

休職となった時に心配なのは経済的な問題ですよね。

収入面の不安で休職を躊躇しているという話もちらほら耳にします。

 

経済的な補償として、社会保険に加入している場合は、『傷病手当金制度』というサービスがあります。

業務外の事由における病気やケガの療養のために、連続する3日を含む4日以上の休職があった場合に、その4日目からこの手当金が支給されます。

*業務に関係した病気やケガは労災保険扱いになります。

 

支給額はおおよそ1か月の給料の2/3ほどの金額で、期間は最長1年6ヵ月までとなっています。

受給条件など細かい規定があるため、希望する際は詳細をご確認のうえ勤務先、及び主治医に相談するようにしましょう。

 

仕事に復帰する(復職)

休職を経て仕事に復帰するタイミング。

“ちゃんと復帰することが出来るのか”、“また不調に陥ってしまわないか”と不安になるのは当然です。

 

そういった不安を解消するためのサービスとして、専門機関で行っている「リワークプログラム」というものがあります。

このサービスは、病休からのスムーズな復職を目指すもので、実際の業務を想定したオフィスで活動したり、ストレスとの向き合い方、対処の仕方などを学ぶことで再休職を予防したり、再発の予防を目的としています。

 

リワークには3種類あり、医療機関による「医療リワーク」、地域障害者職業センターが行う「職リハリワーク」、各企業が独自に行う「職場リワーク」に分けられます。

 

機関によってプログラムの内容や費用は異なり特色があります。

例えば医療リワークでは、健康保険が適応されるため上記で述べた自立支援制度(3割負担から1割負担になる)を使うことが出来ますし、地域障害者職業センターが行う職リハリワークは、無料となっています。

利用前に見学が可能な場合もあるので、自分に合った機関を探してみるといいでしょう。

 

さいごに

いかかでしたでしょうか?

 

今回はメンタルの不調を感じた時から受診、通院に至るまでの大まかな流れとサービスについて説明してみました。

 

風邪であったり、ケガであったりで医療機関を受診する時と大きく変わらないですよね?

 

メンタルヘルスに関わらず、不調が生じれば、大なり小なり日常生活へと影響は出るものです。

 

大切なのは、不調との上手な付き合い方です。

 

不調は『無理をしているぞ』というサインであって、ある意味自分らしい生き方を考えるチャンスだと言えるかもしれません。

 

自分らしい生き方を考える機会に最善の方法を選択できるよう、様々なサービスが用意されているんです。

 

今回紹介したサービスや制度はほんの一部にすぎませんが、自分らしい生き方を考えるタイミングに是非お役立てください。

 

【執筆】

ayano(公認心理師・臨床心理士)

心理系大学院修了後、メンタルクリニックにて勤務。

地方の精神科医療を肌で感じ、メンタルヘルスサービスを多くの人に届ける必要性を実感。

弊社では心理学の知識を活用したセミナープログラムを開発している。

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