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【精神科産業医監修】学校では教えてくれない休職中の過ごし方

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2022年9月30日

最終更新日 2024年9月19日

学校では教えてくれない休職中の過ごし方を精神科産業医監修で解説

『最近眠れない日が多く、仕事に集中できない。』

『気分が落ち込みやすくなった。何事に対してもやる気が起こらない。』

『部下の様子が気になる。ミスが増えているし、元気がないように見える。』

 

メンタルの不調を自覚する人もいれば、周囲から心配・指摘されて気づく人もいます。メンタル不調の改善のために、治療・休養(休職)などの手段を選択することもあります。自分らしく働けない状況が続くというのはつらいものです。今回は学校では教えてくれない”休職に関する一般的な知識”を紹介しつつ、精神科産業医監修のもと、”休職中の過ごし方”について解説します。

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学校では教えてくれないそもそも休職とは?


広く言えば“仕事を休むこと”ではありますが、正しく表現すると“従業員自身の都合によって長期的に仕事を休むこと”を指します。休職制度は労働基準法や労働契約法で定められているものではないため、その条件は会社によって様々です。休職期間も会社によってまちまちですし、制度自体設けていない会社もあります。休職には種類があり、それぞれの形態によって対応が異なります。代表的なものをいくつかピックアップしました。

・傷病休職(私傷病休職)

病気やケガによって一定期間休みをとることを指します。

あくまで従業員個人の事情によるもので、通勤途中や業務時間中に起こる労働災害とは異なります。

・出向休職

所属している会社との雇用関係を維持したまま関連会社などに一時的に出向する場合、もともと雇用契約を交わしている会社では休職の扱いになります。

・自己都合休職(ボランティア休職)

社会貢献や地域支援などの奉仕活動のために一定期間休みをとることを指します。

・留学休職

会社からの指示ではなく、自分の意志でキャリア形成を目的に留学する場合の休職を指します。休職後は職場復帰をすることが前提になっています。

 

上記に加え、育児・介護休業など、休職については様々な形態があります。今回は冒頭でお示ししたように適応障害やうつ病などメンタル不調をきたした場合の傷病休職に焦点を当てていきます。

 

学校では教えてくれない休職中に使える補償


休職中は基本的に給与は発生しません。会社によっては独自の給与補償制度を設けている場合もありますが、休職中の金銭面の不安はなかなか拭いとれないもの。特に病気やケガによる傷病休職の多くは、準備が整っていない状態で迎えなければならないこともあると思います。そんなときに使えるのが傷病手当金です。傷病手当金とは、病気やケガが原因で会社を休む場合に、休職する方とそのご家族の生活を保障するために設けられた制度です。健康保険の加入者が会社から十分に給与を得られない場合に、加入している健康保険から手当が支給されます。ちなみに、支給額は月給の2/3程度です。

【詳しくはこちらをご覧ください】

全国健康保険協会 傷病手当金

 

金銭面の不安が強くある状況で休職をしても、気持ち的に落ち着かない日々が続くかもしれません。一般的な補償制度を知っておくことで心身ともにじっくり休養できるようになり、結果として順調に社会復帰に至るケースも多くあります。

 

学校では教えてくれない休職中はどう過ごすべき?


休職中の過ごし方について、ポイントを3つに絞って解説します。

 

休職中の過ごし方3つのポイント

 

生活リズム

最も大切なのは生活リズムの確立です!

メンタル不調によって支障をきたしやすいのが睡眠です。『なかなか寝つけない』、『夜中や朝早くに目が覚めてしまう』、『ぐっすり眠れた気がしない』といったお困りごとは非常にポピュラーです。睡眠のコンディション不良が続いていると規則正しい生活リズムを維持するのは難しいですよね。不眠症状の改善のために医師より服薬を勧められることもあるかと思いますが、併せて取り組んでいただきたい工夫があります。

➀ 太陽の光を浴びる

生活リズムを作るためには、まずある程度決まった時刻に起き上がって太陽の光を浴びましょう。これには体内時計の働きが関与しています。陽の光には、体内時計のずれをリセットしてくれる役割があります。体内時計がちょうど良いリズムになると体温調節や睡眠ホルモンの分泌が適切に行われ、良質な睡眠に繋がるのです(参考:【眠れない方必見!】睡眠のカギは朝にある!精神科医監修不眠解消メソッド)。

➁ 夜になったらブルーライトを避ける

ここにも体内時計が関わってきます。太陽の光を浴びてから約14~16時間後に睡眠ホルモン(メラトニン)が分泌されます。睡眠ホルモンは日中明るい時間帯にはほとんど出てこないので、日が落ちて暗くなってから一気に分泌が始まります。ということは、暗いはずの時間帯に強い光を浴びると、睡眠ホルモンの分泌が疎外されてしまうんですね。

ブルーライトは太陽に光にも含まれている強い光です。睡眠ホルモンが出てくる時間帯にはスマートフォンやパソコンなどの使用頻度を下げたり、ブルーライトカット眼鏡などを用いたりすることが推奨されています。

➂ 眠くなってから寝床に入る

私たちの脳はうっかり勘違いをしやすいようで、“眠っていないのに寝床にいる”=“寝床は睡眠以外でも使う場所”という理解(誤学習)をしてしまいます。『寝床に入ってもなかなか寝つけない』というお困りごとの背景には、こういった脳の勘違いが存在することも珍しくありません。これを訂正するために、“眠くなってから寝床に入る”という工夫が大切なのです。

 

休職したばかりのタイミングでは、生活リズムの確立・維持を難しく感じられる方もいらっしゃるかと思います。メンタル不調を抱えているとき、多くは身体がだるかったりやる気が出なかったりするものです。

 

 

少しずつで構いませんので、上記①~③を取り入れてみてください。いきなり全てに取り組もうとしなくても良いです。体内時計や睡眠リズムが整ってくると、“日中は活動モード、就寝前には休息モード”というメリハリが1日の中に生まれてきます。

 

株式会社サポートメンタルヘルスでは睡眠の質改善プログラムのご用意があります。ぐっすり眠って体調を回復させたい、生活リズムを整えたいという方にお勧めです。

関連項目:精神科医監修|【睡眠大事】より良い眠りのためのオンラインプログラム

 

治療の継続

病気やケガによる休職の場合、医療機関から勧められて休職に至るケースも多いかと思います。

 

休息をとることで心身の負担が減り、状態が改善したと感じることもあるでしょう。だんだん意欲的になったり気持ちが前向きになったりして、『活動量を増やしたい』と思うタイミングがあるかもしれません。また、『もう薬は飲まなくて大丈夫』と考えることもあるかもしれません。しかし、油断は禁物。お薬を処方されている場合、主治医の先生に相談せず突然服薬をストップすることで不利益を被る場合も多々あります。

 

考え方としては、抗生物質と似ています。調剤薬局で『症状が治まったとしても処方されている分は飲み切ってください』といった説明を受けたことはありませんか?これは、表面的には症状が消えていても実はまだ細菌が隠れている(治ったと思っていたのにぶり返してしまう)場合のことを想定しているんですね。

 

メンタルの不調も同様です。思いがけないぶり返しを防ぐためには、服薬や活動量について自己判断せず、主治医の先生とよく相談することが非常に大切なのです。

 

適度なリフレッシュ

心身の負担が減ったり生活リズムが整ったりすると少しずつ意欲的になってきます。前述したように、急に治療を辞めたり活動量を増やしたりすることはお勧めできませんが、そのときの体調に合わせた適切な休養方法を選択することが大切です。

 

休養には“積極的休養”と“消極的休養”があります。

 

積極的休養とは、身体を動かすことで血行が良くなり、疲労回復を促進する休み方のことです。運動、ストレッチなどが含まれます。一方、消極的休養とは、身体を動かさずにじっと休むことで疲労回復を狙う休み方を指し、昼寝や入浴などが含まれます。この両方をバランス良く取り入れていくことが、心身の疲労回復に大いに役立ちます。

 

健康日本21では、休養とこころの健康に関する目標を掲げています。この中には、“「積極的休養」の考え方を広く普及していくことが重要”だと表記されています(関連項目:休養・こころの健康|厚生労働省)。

 

では、積極的休養はどの程度取ればよいのでしょうか。

 

意欲が出始めたあたりのタイミングでは、近所を散歩する、ストレッチをする、くらいの活動量が望ましいでしょう。動き始めてからしばらく体調が安定していたら、徐々に負荷を増やしていきます。運動をしたり、ある程度の集中力を要する読書、映画鑑賞などをしたりと、ご自身の趣味を再開しやすい時期になってくるかと思います(関連項目:【精神科医監修】散歩でメンタルケア!ストレス発散効果は?【ライフハック心理学#2】)。

 

また、このくらいの時期になると、復職訓練を開始する方もいます。出勤時間に図書館へ行ったり、通勤訓練として職場に顔を出したり、リワークプログラムに参加したりするケースが多いです(参考:リワークプログラムとは|日本うつ病リワーク協会)。

 

Q.休職中、リフレッシュのために旅行に行っても良いですか?

A.お気持ちはよくわかりますが慎重に!

 

『旅行したい』と自発的に思われるということは、外出意欲が戻ってきている証拠とも言えます。特にもともと旅行をご趣味とされていた方であれば、尚更リフレッシュのために遠出したくなりますよね。

 

しかし、休職中の旅行は正直あまりお勧めしません。旅行は案外心身に負担がかかりやすいものです。計画を立て、予約を取り、準備を整える…というお出掛け前のプロセス自体、脳みそ(主に前頭葉―思考、判断、コミュニケーションなど重要な役割を担う部分です)をフル活用するものなのです。

 

また、休職中に旅行に行ったと職場の人が知った際のリスクは念頭に置きたいですね。ご自身は積極的休息として選択した行動だとしても、周囲から見たときに不公平感として捉えられることもあります。体調を回復させ、旅行は職場に復帰してからのお楽しみ♪という心持ちでいられるとちょうど良いかもしれませんね。

 

Q.休職中はスキルアップのために勉強した方が良いでしょうか?

A.ご自身へ負担をかけすぎない程度に行いましょう!

 

復職後(場合によっては転職後)に困らないように、休職中にご自身のスキルアップを目指すことも良いでしょう。PCスキルを磨くために教室へ通ったり、専門分野の知識を深めるために読書をしたりする方もいらっしゃいます。

 

併せて、休職に至った経緯やご自身を振り返ることも大切です。ストレスとの付き合い方やセルフケアのスキルを学んだり、自分自身の考え方の癖について理解を深めたりすることで、メンタル不調の再発を予防する可能性を高めます(関連項目:【精神科医監修】認知のゆがみの治し方|心のコリほぐしましょう!)。

 

また、休職中に活用できる資源としてリワークプログラムがあります。プログラム内容は様々ですが、不調によって低下した集中力・判断力を鍛えたり、ストレス対処やコミュニケーションスキルを身につけたりなど、幅広いトレーニングが準備されているのが一般的です。リワークプログラムのご利用を検討する場合は、まず主治医の先生にご相談されるとスムーズでしょう。

 

Q.体調が悪いので、職場と連絡を取りたくないのですが…。

A.職場との連絡は必要不可欠。お互いが困らないように事前に準備しておきましょう!

 

休職者の体調を鑑みてその後のスケジュールを検討するため、定期的な連絡を必須とする職場がほとんどでしょう。しかし、メンタル不調が強い時期はどうしても億劫になってしまうものです。職場からの連絡を大きな負担と感じ、電話やメールに応答することもままならない可能性があります。しかし、そのまま放っておいても気持ちは落ち着きませんし、次のステップになかなか進めません。

 

そこで、休職中の連絡方法やそのタイミング、頻度などについて職場と事前に相談しておくことをお勧めします。また、復職に至るまでの流れ(リハビリ勤務の制度はあるのか、時短勤務など段階的な復職は可能かなど)も併せて確認しておくことで、先々の見通しがつけやすくなるでしょう。

 

学校では教えてくれない一人暮らしの人が休職中に気をつけるべきことは?


病気やケガをしている場合、家事や金銭面の管理を1人で行わなければならないのはご負担になるでしょう。これまで問題なくこなせていたことであっても、適応障害やうつ病などメンタル不調をきたすと大きなハードルに感じられることも多々ありますよね。休職中は、手助けしてくれる人を積極的に探してみましょう。一時的に実家に戻られるのも良い選択だと思います。家族や友人を頼ってみたり、家事代行サービスや食事配達サービスなどを利用したりして負担を軽減するのも良いかもしれません。

 

ポイントは”ひとりで頑張りすぎない“ことです。

 

【参考】

・櫻澤博文(2016)『メンタル不調者のための復職・セルフケアガイドブック』金剛出版

 

【監修】

本山真(精神科医師/精神保健指定医/日本医師会認定産業医/医療法人ラック理事長)

 

【執筆】

若丸(公認心理師・臨床心理士・健康経営®エキスパートアドバイザー)

今回は学校では教えてくれない休職中の過ごし方について解説しました。休職をしているとゴールを復職に設定してしまいがち。心身ともに十分休み、自分らしい生活を手にすること、継続することが休職のゴールだと思います。

この『自分らしい』という点がコツだと感じていて『以前のような生活に戻る』ことをゴールに設定することには注意が必要です。以前のような生活というのは、メンタル不調を招いた生活スタイルなわけですから再発のリスクが高いんですよね。

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