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精神科医監修|バーンアウトとは?症状とメカニズム、予防法を解説

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2023年8月18日

最終更新日 2023年9月6日

バーンアウトとは?症状とメカニズム、予防法を精神科医監修で解説

 

「バーンアウト」という言葉、皆さんご存じですか?燃え尽き症候群なんて呼ばれたりもすることもあります。耳にしたことはあるけれど、どんなものかよくわからないなあ・・・という方もいらっしゃるでしょう!ということで、今回はこの「バーンアウト」についてご解説していきます♪

 

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そもそも、バーンアウトってなに?


「バーンアウト」という状態は、ヒューマンサービスの需要が社会的に高まったことにより、現場で働くサービス従事者がストレスを訴えるようになったことから認められるようになりました。

 

【バーンアウトの由来】

心理学者のフロイデンバーガーは介護施設に勤務していた際に、同僚が精神的・身体的不調を訴え、1年もするとあたかも燃え尽きたかのように仕事への意欲やエネルギーを失っていく姿を目撃した。

彼はそのような同僚の様子を表現するために、

ドラッグ常用者のような状態を表す「バーンアウト(burn out)」を用いた。

参照:入江(2017)

 

近年では、特に教師や介護施設職員、看護師といった対人援助職における「バーンアウト」が着目されていますね!

 

バーンアウトの症状


「バーンアウト」を測定する尺度である、Maslach Burnout Inventory(MBI)では、「バーンアウト」を、①情緒的消耗感(emotional exhaustion)、②脱人格化(depersonalization)③個人的達成感(personal accomplishment)の低下といった3つの症状から定義しています。

 

①情緒的消耗感(emotional exhaustion)

心が疲れ果ててしまい、精神的に消耗してしまった状態。

例)もうこれ以上、頑張れない・・・。気持ちも身体も立ち上がれない・・・。何もしたくない・・・。

 

②脱人格化(depersonalization)

人間関係が煩わしくなり、人に対して、その人らしさを無視して機械的に対応してしまう状態。

例)人と関わるのが面倒になった。以前は他者への思いやりを持てていたが、今は持つことが出来なくなってしまった。

 

個人的達成感(personal accomplishment)の低下

仕事に喜びを感じることが出来ず、やりがいや価値を見出せない状態。

例)仕事にやりがいを感じられない。達成感もない。無力な気持ちになる。 

 

★これらの症状をイメージしてみると、某有名漫画の某有名な一場面、『燃えたよ、燃え尽きた・・真っ白にな・・・』のような状態だと言えるかもしれません・・・。

 

バーンアウトのメカニズム:個人内要因と環境要因


さて、3つの症状に代表される「バーンアウト」ですが、発症のメカニズムとして大きく2つの要因が関わっていると考えられています。(参照:久保,2007)

 

  • 1つ目が、性格の特性や性別といった、個人差のある要因(個人内要因)
  • 2つ目が、職場の環境やそこで得られるソーシャルサポートといった環境の要因(環境要因)とされています。具体的な例については、以下の図をご覧ください!

 

例えば・・・・

教員や介護士、看護師といった対人援助に携わる方々の中には、『他者に貢献できる仕事がしたい』という思いを持ち、職業を志した方もいるでしょう。しかし、対人援助職は、人を相手にする仕事のため、目に見える成果や功績を出すことが難しく達成感を得られにくいとされています。対人援助職に限らず、毎日多くの仕事に追われるような環境で働きながら、成果を出したいけれど思うようにいかない状態が続き、心身ともに疲労が蓄積してきてしまった場合、「気づけば、バーンアウト状態になっていた…」という事になる可能性があると言えます。

 

 

※感情労働とは・・・?(参照:山本・岡島,2019)

Hochschild (1983)により提唱された概念で、「肉体労働」「知的労働」に次ぐ「第三の労働」とされる。

自己の感情を、職業や労働場面に応じて管理することが必要となる、現代社会を象徴する労働形態のことです!

 

バーンアウトは精神疾患ではない!


これまで、「バーンアウト」の症状や発症に関わる要因について取り上げてきました。「バーンアウト」は、ストレスの結果生じる症状として捉えられることが多く精神疾患ではありません。

 

✓ 「うつ病」は「精神障害の診断と統計マニュアル」(Diagnostic and Statistical Manual Disorders, DSM)第5版や「疾病および関連保健問題の国際統計分類」(International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problem, ICD)第10版にて診断基準が定められた精神疾患

✓ 「バーンアウト」は、疾病の国際的な診断基準が定められていない=精神疾患ではない

 

一方で、いくつかの研究において、「バーンアウト」は他の精神疾患との区別が曖昧であることが指摘されています。例えば、「バーンアウト」に似た精神疾患として良く取り上げられるのがうつ病です。うつ病は、特に「バーンアウト」の症状である情緒的消耗感と強く関連しているとされています。また、「バーンアウト」からうつ病になる場合もあれば、うつ病から「バーンアウト」に至る場合もあることが指摘されています(入江,2017)。

 

このように、他の精神疾患の症状との重なりが指摘されており、概念が曖昧であるために、まだまだ研究の余地があるとされている「バーンアウト」ですが、その背景には仕事が関連していることが多いとされています。

 

★バーンアウトは、まだまだ多くの研究が成されているので、これからも新たな知見が募っていくと思われます!情報も更新されていくでしょう!!

 

バーンアウトの予防法


さて、この「バーンアウト」を予防するためにはどのようなことが出来るのでしょうか?

以下にいくつかの予防策をご提示いたします!北田(2017),佐野(2014)より引用・参照。

 

  • 働く時間と休む時間を明確に区別する。
  • セルフチェックを行い、自分の心身の状態を把握する。
  • 日々の中に、休息出来る瞬間を設けて、セルフケアをこまめに行う。
  • 生活習慣を整えて、身体を健康的に維持することを心掛ける。
  • 職場環境を調整したり、職場や仕事の業種を変える。

 

★みなさんも自分でもできそうだな~というものがあるかどうか、是非チェックしてみてください!!

 

引用・参考文献


  • 入江正洋 (2017) バーンアウトとうつ病. 九州大学基幹教育院紀要, Vol39, 41-47.
  • 北田雅子(2017)対人援助職のバーンアウトの予防に動機付け面接が果たす役割, 札幌学院大学総合研究所紀要, 第4巻, 37-45.
  • 久保真人(2007)バーンアウト(燃え尽き症候群)―ヒューマンサービス職のストレス, 日本労働研究雑誌. 49(1), 54-64.
  • 佐野秀樹(2014)教師ストレス(バーンアウト)からの回復と予防 東京学芸大学教育実践研究支援センター紀要, 10, 51-55.
  • 山本 準・岡島典子 (2019) 我が国における感情労働研究と課題―CiNii登録文献の分析をもとにー, 鳴門教育大学研究紀要, 第34巻,  237-251.

 

【執筆】

田中

「バーンアウト」は精神疾患ではありませんが、心身の疲労・疲弊の蓄積により生じる状態であり、後に精神疾患へと繋がっていく可能性も否定できません。「もしかしたら、バーンアウトしてるかもしれない・・・。」と、自分の不調に気づいた際には、すぐに休息を取り、セルフケアをしましょう。また、不調が悪化してきた場合は、一人で抱え込まず、なるべく早くに医療機関を受診することをお勧めします!

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【監修】

本山真(日本医師会認定産業医|精神保健指定医|医療法人ラック理事長|宮原メンタルクリニック院長)

 

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