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タグ : ふ~みん(公認心理師) , メンタルヘルス , メンタルヘルス対策 , 産業精神保健
2022年9月9日
最終更新日 2024年3月2日
目次
学生時代、自分の希望する職種や会社に就職できたらきっと素晴らしい生活が送れるだろうと思い描き、就職活動を頑張った人も多いと思います。しかし、たとえ希望の職種や会社に就職できたとしても、人事異動や労働環境などの要因によって心身に不調をきたし、出勤できなくなり、医療機関で「適応障害」と診断され休職をすすめられるようなこともあるかもしれません。
休職期間ってどのくらい?休職の伝え方は?休職中の給料は?もしも適応障害と診断され休職をすすめられたら。そんな時に役立ちそうな情報を整理しておきましょう。
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まず、適応障害とは、特定の状況や出来事がストレス因となり、気分の落ち込みや不眠などの症状が出現している状態のことを言います。もし、“特定の状況や出来事”が職場内にあるのだとしたら、その場から離れる、つまり休職や退職をすることでストレスが解消されれば症状は改善し回復に向かうと言われています。
ストレス因が取り除けずに慢性化・重症化するとうつ病などになってしまう不安もありますので、適応障害と診断を受けたら回復を目指すことが大事です。回復に向けて、お薬を服用したりカウンセリングに通ったりするのも良い方法かもしれませんが、休職することが最善の場合もあります。後述しますが、休職に関しては法律や義務として定められたものではないため、職場によって扱いがそれぞれ違います。ご自身の職場がどのように規定しているのかを事前に調べておくことをお勧めします。関連項目:適応障害(e-ヘルスネット)|厚生労働省
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休職制度とは、労務に従事することが不能な状態にある場合、労働契約は維持させながら労務への従事を免除する制度のことです。休職制度は法律に明記されておらず、それぞれの労働関係において定められています。
休職には「病気休職/私傷病による休職」「事故欠勤休職(傷病以外の自己都合による欠勤のこと)」「起訴休職(犯罪行為により起訴された場合に、判決が確定するまで休職すること)」といった様々な種類があり、休職に至るまでの背景や事由によって、休職の形態は異なります。今回は最もポピュラーである病気休職/私傷病による休職についてご紹介します。
何らかの病気に罹患したことで仕事を中長期的に休む必要が出た場合において、多くの企業で採用されているのが「私傷病による病気休職制度」です。私傷病による病気休暇制度は、業務外でケガや病気になり、働くことが困難になった場合に「事業場の被雇用者としての身分を一定期間保障しつつ、労働契約に基づく一部の権利・義務関係を凍結し、実際の労務の提供を免除または禁止する(労働者健康安全機構 ,2017)」制度です。
したがって、私傷病による休職が開始すると、会社に籍を残しながら、ある一定の期間(休職期間)において、労務を提供する義務を負わなくて良いこととなります(業務上や通勤によって休職する場合は、労災保険の対象となります)。
なお、休職の手続きは企業・団体によって異なります。参考までに厚生労働省による職場復帰支援の手引きに記載されている手続きを紹介しておきましょう。
管理監督者(労働者を指揮命令する人、上司)に対して、主治医の診断書(病名・必要な療養期間などが記載されたもの)を提出することで病気休職が開始する。【引用】職場復帰の手引き(厚生労働省)
職場に休職制度があり利用できそうだと分かったら、いつまでに、だれに、どのように伝えるのかも確認しましょう。休職にあたって、「〇日前までに診断書と申請書を用意して人事部に申し出る」などと決まっている職場もあります。業務の引継ぎや人員の補填が必要なケースも考えられるので、ギリギリまで我慢せず、不調を感じたら早めに対策を検討しましょう。
先述の通り、休職制度の有無、休職にあたっての手続き、診断書の有無といったポイントは、多くの場合就業規則に記載されています。ご職場の就業規則を確認してみることをおすすめします。
適応障害で休職する場合、その期間は人それぞれですが、1~3ヶ月ぐらいの場合が多いようです。最長で3年まで認められるというような職場もありますが、6ヶ月を超えたり年単位で休んだりするなど長期にわたる場合は、復職前に「職場復帰支援(リワーク)プログラム」を利用するのも良いかもしれません。
ちなみに適応障害の定義としてストレス因から離れれば6ヶ月以内に回復する、というものがあります。あくまで定義ではあるので言葉に翻弄されすぎる必要はありませんが、休職をして充分に休養できているはずなのにコンディションが持ち上がらない、という場合はうつ病に移行していると考えた方がよいかもしれません(『実は充分に休養できていない』というケースもありますので、不明点は主治医の先生に相談しましょう)。
関連項目:〜メンタルヘルス対策における職場復帰支援〜|厚生労働省
実際に休職しようとしたとき、上司にはどう伝えれば良いのか迷いますよね…。適切な伝え方はあるのでしょうか。漠然と「調子が悪いのでしばらく休みたい。」と意思を伝えたところで、認めてもらえない場合の方が多いのではないかと思います。もちろんご自身の意思を伝えることも大事ですが、たいていの職場では『医療機関を受診して診断書をもらうように』と言われたり、職場の産業医との面談を勧められたりするでしょう。
医師の診断書や産業医との面談は、該当者が休職を要する状態にあることを客観的に認める材料になりますので、手続きを円滑に進める上で重要な要素の1つとも言えます。診断書に書かれた内容をもとに、ご自身の状態や不調に至った要因について上司と話し合ってみることも今後に向けて有意義なものになるかもしれません。
つまり適切な休職の伝え方としては、①ご自身の意思を伝える、同時に②客観的な材料を用意する(診断書や産業医面談結果)、ということになります。加えて、休職の伝え方として、対面して直接伝えるか、電話やメール等で間接的に伝えるか、といった方法があります。
最近ではテレワークの普及や勤務時間のフレックス化により、業務に関するやり取りはメールで行う(SNSやチャットツールを用いる)という職場も増えています。そのような風潮の職場や急遽入院することになり直接の申し出が難しくなってしまった際は、休職の伝え方として、メールで休職の意思を伝えるというケースもあり得ます。
しかし、そのような対応が一般的ではない職場の場合、メールで一方的に休職の意思を表明するという伝え方は非常識だと思われかねません。出社は難しいが上司に電話で伝える、家族に代行してもらうなど、休職に至った事情はそれぞれですが、不要なストレス因を増やさないようにしながら実情に合った方法を選びましょう。
前述したように休職に関しては法律や義務として定められたものではありません。そのため、雇用状況や職場の規定によってはいくら診断書を提出したり不調を訴えたりしても休職が認められない場合もあります。
休職が認められない理由として、就業規則で定めた休職のための勤続年数や出勤率を満たしていない、個人的な不平不満が理由とされている、そもそも休職制度がない、などが挙げられます。認められない場合には職場に明確な理由を示すよう求めたり、雇用契約書や就業規則の内容をきちんと確認したりする必要性が生じる可能性があることも覚えておくと良いでしょう。
適応障害で休職となった場合、やはり給与、経済面は気になりますよね。
休職中でも健康保険料、厚生年金保険料、住民税などは支払うことになります。こちらも職場の規定によりますが、休職期間中は無給であることも珍しくはありません。しかし、病気やケガのために仕事を休まざるを得なくなった人に一定額を給付し、生活の安定をはかる制度もありますので、いくつかご紹介します。
◎傷病手当金制度
この制度は
以上を条件に、受給することが可能になります。
支給される額としては、「支給開始日以前の継続した12ヶ月間の各月の標準報酬月額を平均した額÷30×3分の2」という計算式で示されますが、大雑把に言うと給与(月額)の3分の2ぐらいの額になり、支給される期間は最長で1年6ヶ月と決まっています。こちらは健康保険法に基づく制度です。
なお、扶養内での勤務やフリーランスの場合は対象外、業務中・通勤中のケガや病気罹患については労災の申請対象になりますのでご注意ください。
関連項目:労働災害が発生したとき|厚生労働省
◎自立支援医療制度(精神通院医療)
この制度は、精神疾患の治療を目的とした通院が続く場合に、医療費の負担を3割から1割に軽減する制度です。指定された医療機関、薬局、デイケアなどで利用することができます。
利用・申請には医師の診断書の他必要な書類を用意しなければなりません。検討されている方は通院先の医療機関や主治医、またはお住まいの自治体の窓口にご確認ください。
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もしメンタルの病気になったら? |公認心理師が疑問にお答えします!
休職期間は就業規則において企業が独自に設定しています。休職することになった事由や勤務年数が休職期間の根拠となっている場合が多いようです。どのくらい休職すべきかについてですが、病気の種類によって回復に要する期間は様々です。特に適応障害をはじめとしたメンタルの病気の場合、治ったことが目に見えて分かるわけでは無いため、どのくらい休むと治るのかといった明確な期間を推測することが困難です。
まずは、主治医との診察にて現段階におけるご自身の病状を把握しておきましょう。メンタルの病気の場合、薬物療法を行ったり、環境を調整したり、心理療法を行ったりと様々なアプローチを用いて病状の回復に努めていきます。回復のスピードには個人差がありますが、一般的な身体疾患と比べて、少しずつゆっくりと回復していく特徴があります。そのため、定期的に通院し、自分がどのくらい回復してきているのか、休養が具体的にどのくらい必要なのかを主治医に相談していきましょう。
独立行政法人労働政策研究・研修機構(2005)によると、病気休職による休職期間の上限は「6か月~1年未満」が一番多く、次いで「3か月未満」、「3か月~6か月未満」、「1年~1年6か月」の順で多く、企業の規模が大きくなるほど「1年6ヶ月~2年未満」「2年以上」と休職期間上限を長期に設定する傾向にあります。事前に、お勤めの企業で定められている休職の条件を就業規則にて確認し、休職期間の上限について把握しておきましょう。
参考・引用資料
【解説】 ふ~みん(公認心理師) 休職期間中は治療・療養に専念し、不調が改善し就労が可能な状態になったら、今度は医師に就労可能である旨の診断書を発行してもらい、職場と復職に向けて話し合うことになります。その際は再度適応障害で休職することにならないよう、双方が業務内容や勤務時間などを十分に確認し、無理のない範囲で復帰できると安心ですね。
【監修】 本山真(精神科医師/精神保健指定医/産業医/医療法人ラック理事長) 2002年東京大学医学部医学科卒業。2008年埼玉県さいたま市に宮原メンタルクリニック開院。2016年医療法人ラック設立、2018年には2院目となる綾瀬メンタルクリニックを開院。 |