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【精神科医監修】五月病は予防できる!公認心理師が解説

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2022年4月14日

最終更新日 2023年5月9日

五月病の予防方法を公認心理師が解説します!

五月病って聞いたことありますよね?(ちなみに読み方は『さつき』ではなく『ごがつ』です)医学用語ではありませんが非常にポピュラーな概念であり、多くの方が経験したことのある不調なのではないでしょうか。今回のブログは精神科医監修のもと、公認心理師が五月病の予防方法を解説します!

 

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五月病って何でしょう?


春、特に4月は進学や就職、それに伴う引っ越しなど「変化」が多い季節です。新しい環境での緊張や疲労、気温の高低差に対する体調管理など、なにかと順応しなければならないことが多く、ストレスがたまりやすい時期であるとも言えます。

【参考】

 

ストレスというとネガティブなことをイメージしがちですが、希望していた学校や会社への進学や就職、昇進などのポジティブな変化も実はストレスの原因になるのです。新しい環境に適応しようと知らず知らずのうちに心身に負荷がかかってしまうのは当然のこと。人間は置かれている環境に変化があると、悪い場合だけでなくたとえ良い場合だとしても心身が緊張するようにできており、そのような状態が継続すると普段よりもエネルギーを消耗すると言われています。

 

新年度が始まり1ヶ月ほどするとゴールデンウィークがやってきます。

 

1ヶ月頑張ったのだからのんびり休んでリフレッシュしよう、と思っていたのに、ゴールデンウィーク明けから明確な理由もなく「会社や学校に行きたくない」「物事に集中できない」「なんとなく体調が悪い」などの状態に陥ったという話を聞いたこと、実際に経験したことがある人もいるのではないでしょうか。これが「五月病」と言われる状態で、張り詰めていた糸が切れたように5月の大型連休後に不調が出現することから、そのように呼ばれています。

 

 

五月病の症状とは?


初期症状としてやる気が出ない、眠れない、食欲や集中力が落ちるなどの様子が見られますが、五月病は正式な病名ではありません。医学的には適応障害、うつ病や抑うつ状態、不眠症などに分類され、環境適応に対するストレスが原因で元々持っていた病気が引き起こされるケースもあります。

 

 

 

五月病。精神科医の立場としてはなかなかに難しい概念です…。どこまでを生きるうえでの課題として、どこからを病とするのか、本当に悩ましい。功罪それぞれあるわけですが、まあ大まかには、HSPのブログで触れた考えが近いでしょうか。

 

メンタルヘルスのサービスはアクセスまでのハードルが高いもの。様々な研究によって援助希求行動/援助要請行動と呼ばれる援助を求める行動(help seeking behavior)が生起しづらい領域であると明らかになっています。

 

自身の困り感を自覚すること。そのうえでサービスを使ってみようと思い行動を起こすこと。この2つにつながるのであれば、HSP現象には大きなメリットがあると言わざるを得ないでしょう。

【引用】【精神科医監修】HSPは病院に行くべき??診断問題を解説

 

さてさて、いくつか専門的な用語が出てきたので解説しておきましょう。

 

■適応障害

転勤、配置換え、新しい人間関係などある特定の状況や出来事がその人にとって非常につらく耐え難い感覚を生み、うまく対処することができない結果、不安感や気分の落ち込みなどの症状が現れて社会生活に支障を来している状態のことです。

 

うつ病や不安障害とよく似ていますが、ストレスとなる状況や出来事がはっきりしているので、その要因から離れると症状は次第に改善します。五月病の症状を訴える患者様の中で最も多い印象がありますね。

【参考】

 

■うつ病

気分障害の1つで、1日中気分が落ち込んでいる、何をしていても楽しくないなどの精神症状と、眠れない、食欲がない、疲れやすいなどの身体症状が出現し、日常生活に大きな支障を来すものです。

 

日本では100人に6人ぐらいが経験するというデータがあり、男女別にみると、妊娠、出産、更年期などとの関係も深く女性の方が男性よりもかかりやすいと言われています。治療としては休養・抗うつ薬の服用・認知行動療法などが有効だとされます。

 

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■不眠症

良質な夜間の睡眠を十分にとることができず、仕事や学業など日中の生活に支障を来している状態のことです。

 

寝つきが悪い入眠障害、眠りが浅く寝ている間に何度も目が覚める中途覚醒、早朝に目が覚めてしまう早朝覚醒、ある程度の時間眠ってもぐっすり寝たという満足感が得られない熟眠障害を主症状としています。

 

睡眠薬による治療の他、適度な運動、寝る前にリラックスすること、太陽光を浴びることによる体内時計の調整なども有効とされています。また、睡眠を要する時間には個人差があるため、時間数にはこだわりすぎないことも大事です。

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もちろんこの3つ以外の病気である可能性や、発達障害に関係するご不調である可能性もあります。五月病を疑う症状が出現し、継続している場合は、自己判断せずに精神科や心療内科の医療機関を受診することをおすすめしますよ。

 

 

五月病になりやすいタイプ!?


誰でもなりうる五月病ですが、中でも以下のようなタイプの人がなりやすいと考えられています。

  • 受験や就職など大きな目標を達成し、入学や入社がゴールになっている。そのため次の目標を見失い、燃え尽き症候群のような状態に陥っている。
  • 配属先、転居先、学生から社会人になるなど大きく変化した環境になじめない。新しい人間関係をうまく築けない。
  • 真面目で責任感が強く、自分だけで物事を抱え込みきちんとしようとする。
  • 完璧主義で自分や部下の失敗が許せず、少しでもうまくいかないと自分のせいだと感じてしまう。
  • 業務内容や学習内容が思っていたのと違った、自分のスキルでは対応できないなど思い描いていた生活と現実とのギャップがうめられない。

 

このようなタイプの人はストレスをためこみやすく、疲れていても頑張ってしまいがちです。気負い過ぎて余計なエネルギーを使わないようにするためにも、周囲に協力を求めたり、自分の体調の変化に気付けたりするようにしましょう。

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五月病を予防するには?


五月病の多くは一過性で、適度な休息をとることで改善されます。新生活が始まり頑張ろうと思う気持ちが強い人は多いと思いますが、頑張りすぎて心身に過度の負担がかかると不調に陥り、それを放置してしまうと症状が悪化してしばらく職場や学校から離れざるを得ない状態になる場合もあります。

 

ストレスの感じ方や発散方法は人それぞれですが、日頃のちょっとした対処で五月病を予防することができます。

 

例えば、寝起きや食事の時間をはじめとした生活リズムを整える、栄養バランスのとれた食事摂取を心がけ、疲労回復に良いとされる食物を摂る、適度な運動を習慣化し健康維持につなげる、趣味、職場、付き合いの長い友人など信頼できる人とのコミュニケーションをとり、悩みや愚痴を聞いてもらう、などです。

【参考】

 

勤務時間が不規則な仕事であったり、人見知りで他人とのコミュニケーションをとることに苦手意識があったりする方もいらっしゃることでしょう。上述した内容に限らず、自分なりのストレス発散法、休日の過ごし方を見つけ、無理のないメリハリのある生活をすることが五月病の予防に効果的です。

関連項目:オタク臨床心理士・公認心理師は語る。趣味とストレスの関係とは?

 

 

一説には、新入社員が研修を終え配属先が決まる6月頃に不調を訴える「六月病」もあるんだとか。新年度の疲れを感じ始めている方、まだ感じてはいないがこの先が心配な方、今からでも予防策を考えて実行してみてはどうでしょうか。

 

【解説】

ふ~みん(公認心理師)

大学院修了後、精神科・心療内科クリニックにて勤務。子育て世代への支援に関心があります。

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【監修】

本山真(精神科医師/精神保健指定医/産業医/医療法人ラック理事長)

2002年東京大学医学部医学科卒業。2008年埼玉県さいたま市に宮原メンタルクリニック開院。2016年医療法人ラック設立、2018年には2院目となる綾瀬メンタルクリニックを開院。

 

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