ブログ

栄養がメンタルを安定させる?【栄養精神医学】食事とメンタルの深い関係

タグ : ,

2022年8月19日

最終更新日 2024年8月3日

食事・栄養とメンタル安定の関係とは?栄養精神医学を解説

日本は豊かな国だと言われていますが、栄養不足に陥っている人が多いようです。栄養素は足りていないのにエネルギー過多にはなりやすくて、結果として肥満になったり糖尿病などの身体疾患に繋がったりするんだとか…。栄養不足って身体だけでなくメンタルにも影響を与えると言われています。“栄養精神医学”という領域のお話ですね。今回は食事や栄養素とメンタル安定の関係について紹介します。

 

株式会社サポートメンタルヘルス公式LINE ID

メンタルヘルス、セルフケアに関する情報をお届けしています!

 

食事・栄養はメンタルと関係する【栄養精神医学】


食や栄養素とメンタルヘルスがいかに関係しているか、世界的に研究が進んでいます。その領域を『栄養精神医学』と呼びますが、日本ではまだまだ知見が多くありません。というわけで、発展途上の新しい学問であると言えます。

【参考】

  • Roger A H Adan, Eline M van der Beek, Jan K Buitelaar, John F Cryan, Johannes Hebebrand, Suzanne Higgs, Harriet Schellekens, Suzanne L Dickson(2019)Nutritional psychiatry: Towards improving mental health by what you eat. Eur Neuropsychopharmacol. 2019 Dec;29(12):1321-1332.
  • Giuseppe Grosso(2021)Nutritional Psychiatry: How Diet Affects Brain through Gut Microbiota. Nutrients. 2021 Apr 14;13(4):1282.

 

日本では知見が多くないと言えども、近年メンタル不調と栄養素との関連が徐々に注目を集めています。松岡(2020)は過去のコホート研究と横断研究に基づくメタアナリシスにて、地中海式食事―植物由来食品をよく摂取し、脂質はオリーブ油を主とする、中等量の魚、低~中等量の乳製品、低量の赤身肉、適度なワインを楽しむ食事―を多く摂取している人は、そうでない人に比べてうつ病を発症するリスクが下がったという知見を見出しました。

 

また、健康的な食事パターン―果物、野菜、全粒穀物、魚、オリーブ油、低脂肪乳製品を多く摂取する食事―であるほど、うつ病を発症するリスクが下がったという知見も併せて紹介されています。他にも、功刀・古賀・小川(2015)は肥満、脂質異常、n-3系多価不飽和脂肪酸、ビタミンB12、葉酸、鉄、亜鉛などの栄養学的異常がうつ病の発症リスクと関連があるという海外の研究について報告し、実際に採血をしてデータを収集しています。

 

栄養精神医学領域がより発展していくことで、メンタル不調を未然に防ぐアプローチが取れるようになるかもしれませんね。

【引用・参考】

  • 松岡豊(2020)科学的根拠に基づく食によるメンタルヘルスへのアプローチ, 行動医学研究, vol.25, No.2, 113-118
  • 功刀浩・古賀賀恵・小川眞太郎(2015)うつ病患者における栄養学的異常, 日本生物学的精神医学学会誌, 26巻, 1号, 54-58

 

メンタルの安定と関係する栄養


現時点で明確に立証されつつある栄養素、今回はミネラルとビタミンについて取り上げましょう。

 

 

ミネラル

私たちの筋肉・血液やエネルギーを作り出してくれる五大栄養素のうちの1つがミネラルです。ミネラルは「生体を構成する主要な4元素(酸素、炭素、水素、窒素)以外のものの総称」とされています。

【参考】ミネラル|e-ヘルスネット(厚生労働省)

 

ミネラルには身体の細胞を作り出したり、歯や骨を作ったりする働きがあります。かなり多くの種類が存在していますが、実際に私たちの身体に必要なのは16種類程度だそうです。私たちが生きるために必要不可欠なミネラルですが、自前で生成できるものではないため食物などから取り入れなければいけません。中でも不足しやすいミネラルの1つとして鉄があります。鉄は赤血球のヘモグロビンに多く含まれているミネラルで、私たちの皮膚、爪、軟骨などの代謝に関わる働きをしています。

 

酸素を運搬する役割を担うヘモグロビンが不足した状態が続くと、全身に酸素が十分に運搬されないことになります。すると、疲れやすさや怠さ、めまい、耳鳴り、息切れ、動悸などの症状が出現しやすくなるのです。さらに鉄が不足しているとなると、爪が薄くなり割れやすくなる、脱毛しやすくなる、内出血しやすくなる、といった症状が見られるようになります。また、鉄はセロトニンやドーパミンなどの脳内の神経伝達物質の原料にもなるため、それが不足するとイライラしやすい、やる気が出ない、集中できない、眠れない、といった症状にも繋がりやすいと言えます。

 

【引用】【精神科医監修】散歩でメンタルケア!ストレス発散効果は?【ライフハック心理学#2】

 

鉄と同じように、亜鉛も不足しやすいミネラルの1つです。亜鉛は歯、骨、肝臓、腎臓、筋肉の中に多く含まれており、酵素の構成や活性化、ホルモンの合成・分泌の調整、たんぱく質の合成、免疫反応の調整などの働きをしています。その亜鉛が不足した状態が続くと、食欲低下、味覚障害、皮膚炎、脱毛、貧血、口内炎等の症状に加え、落ち込みやすくなったり不安感が高まったりすることもあるようです。

 

鉄不足、亜鉛不足による症状は『うつっぽさ』に見えることも少なくなく、メンタルクリニックを受診する方もいらっしゃいます。十分量のミネラルを摂取しておくことは、上記のような不調を予防する効果が見込めます。

【参考】

  • 功刀浩(2020)食事・栄養学的側面からの女性のメンタルヘルス, 女性心身医学, Vol.25, No.2, 79-82
  • 福士一恵・鈴木純子・大塚吉則・大久保岩男・清水真理・白幡亜希・松下真美・百々瀬いづみ・山口敦子・梅沢敦子・小林良子・斉藤昌之・久保ちづる・古川直美・峯岸夕紀子・武蔵学・守屋絜(2015)青年と中高年における食生活とメンタルヘルスの関連性, 天使大学紀要, Vol.16, No.1, 1-19
  • 小阪昌明(2012)わが国における鉄欠乏, 鉄欠乏性貧血女性の増加と栄養, 四国医誌, 68巻1, 2号, 13-18

 

ビタミン

ビタミンは直接的にエネルギーになったり身体を構成したりするものではありませんが、身体の調子を整えるのに必要な栄養素です。水溶性、脂溶性に分けられ、それぞれ身体の健康を維持するための働きを持っています。

 

[水溶性ビタミン]

ビタミンB群(B1、B2、B6、B12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチン)やビタミンCが該当します。代謝に関わる酵素の働きを補う役割を持っています。余分なものを尿として排出する働きもあり、身体に十分量溜まらず欠乏してしまう可能性があります。

 

[脂溶性ビタミン]

ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKが該当します。身体に取り入れられると脂肪組織や肝臓に溜められ、身体の健康を維持しています。水溶性ビタミンと比較して、脂溶性ビタミンは排出されないので過剰な量が身体に蓄積される可能性があります。

【参考】ビタミン|e-ヘルスネット(厚生労働省)

 

それぞれのビタミンの役割についてはこちらのサイトで詳しく紹介されています。気になる方はご参照ください。

一般社団法人愛知県薬剤師会 5.ビタミン

 

ミネラルと同じようにビタミンも体内で合成できるものではないため、食物などから取り入れる必要があります。ビタミン(主に水溶性ビタミン)が欠乏するとどうなってしまうのでしょうか。不足しているビタミンの種類によって症状は異なりますが、例として葉酸を挙げましょう。

 

ビタミンB群の1つである葉酸は、ビタミンB12とともに赤血球を生成する役割を担っています。特に妊娠中には胎児の発育に必要不可欠なもので、足りないと貧血を起こしたり胎児の発育に問題をきたしたりする可能性があります。また、うつ病に罹患している人はそうでない人と比較して葉酸の値が低いという報告もあります(功刀・古賀・小川, 2015)。葉酸が足りていない場合にもうつっぽさが生じやすいようです。

 

女性の方が男性よりも葉酸欠乏によるメンタル不調をきたしやすいとする研究もありますが、運動の習慣がない場合の男女差は大きくないと北林(2018)は述べています。

【参考】

  • 北林蒔子(2018)地方自治体職員における葉酸およびその他のビタミンB群の摂取と抑うつの関係について, 山形県立米沢栄養大学紀要, 第5号, 15-24

 

メンタルヘルスと食事・栄養は関係している!


今回はミネラルやビタミンが足りなくなった場合の不調をご紹介しました。栄養素が欠乏しないように意識することは大切ですが、実は摂りすぎも健康に良くありません(例:鉄の過剰摂取は吐き気や便秘などの胃腸症状が生じやすいと言われています)。心身の健康を維持・向上するためにバランスの良い食事を心掛けましょう!

 

【監修】

本山真(精神保健指定医/日本医師会認定産業医/医療法人ラック理事長)

東京大学医学部卒業後、精神科病院や精神科クリニックでの勤務を経て『働く人を応援する心療内科』として宮原メンタルクリニックを開院。メンタルクリニックにおける診療を通じて、メンタルヘルスをもっと身近に感じられる社会作りをする必要性を実感した。メンタルヘルスサービスのアクセシビリティ向上を目的に2019年株式会社サポートメンタルヘルスを設立。

 

【執筆】

若丸(公認心理師・臨床心理士)

心って何でしょう?(唐突)心をどう定義するかによって考え方は様々でしょうが『脳の機能の一つ』ということは言えると思います。食事・栄養とメンタルは関係していると聞くと『本当に?』『トンデモじゃないの?』とお感じの方もいらっしゃるでしょう。脳も臓器である以上、臓器を動かすための栄養素が必要であり、栄養が欠乏すれば機能が低下する=メンタル不調、と考えると少し理解は変わるでしょうか?

メンタル安定のため、今日も私はラーメンを食べるのです!!!(違う)

若丸記事一覧

 

関連記事