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タグ : メンタルヘルス , 若丸(公認心理師・臨床心理士・健康経営エキスパートアドバイザー) , 認知行動療法・認知バイアス
2022年8月5日
最終更新日 2023年2月6日
目次
皆さん、夏は好きですか?私は夏の食べ物は大好きですが、暑いのは嫌いです!
あるものが好き、好きでない。あの人の意見に賛成する、いやいや反対だ。今の政治はどうだこうだ…というように、物事ひとつに対して私たちはそれぞれ主観的な考えを持っています。
その考え方に“癖”はありませんか?癖が強すぎると、ちょっとしたことで大きなストレスを感じてしまうこともあるかもしれません。嫌なことがあったとき、すぐに切り替えられるタイプの人としばらく引きずるタイプの人がいますよね(私は後者です笑)。これは、人がそれぞれの考え方にある種の“癖”を持っているから生じるものです。
今回取り上げる認知行動療法は主に“考え方の癖”にアプローチしていきます。認知行動療法がどのような心理療法なのか早速ご紹介しましょう!
関連項目:
【精神科医監修】認知の歪み?10パターンの考え方の癖を解説!
【精神科医監修】認知のゆがみの治し方|心のコリほぐしましょう!
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1950年代、医学者であるWolpe, J.氏を筆頭に行動療法が誕生しました。後に“行動療法の父”と呼ばれた人ですね。行動療法は学習理論をもとにして開発されています。
ちなみに行動療法のもとになっている学習理論とは…
ある刺激(Stimulus)によって反応(Response)が生起すると考える理論(S-R理論)で、動物の条件づけの根拠になっているものです。 有名なのは「パブロフの犬」。 ごはんを与える前にメトロノームの音(刺激)を聞かせるという手続きを繰り返していると、メトロノームの音を聞いただけで唾液が分泌されるという反応に繋がります。
【画像引用】【精神科医監修】眠れない原因は考えない!【不眠症の医学】
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このメカニズムを使って、行動療法では行動そのものに焦点を当てます。不適切な行動から適切な行動へ学習し直す、というイメージですね。しかし、行動療法は対動物のものとして開発されたものだったので、対人間だとどうしても限界がありました。それと同時期頃にAaron T. Beck氏が認知(考え)にアプローチをする認知療法を開発しました。
生き物の学習する習性を活用した行動療法、考え方のパターンを分析する認知療法が合体して、認知行動療法が生まれたのです。個人の認知と行動に働きかけることで、その人の社会生活をより良くしていこうというコンセプトを持っているのが認知行動療法です。
認知行動療法の代表的な手法の1つである認知再構成法と行動活性化について、具体例を交えながらご紹介します。
認知再構成法は、考え(認知)に縛られて問題解決が進まない、身動きが取れないようなときに活用できるアプローチです。 悩んでいるときって、同じようなネガティブな考えがぐるぐる回っていませんか?
多くの場合、この考えは現実的でなかったり極端であったりします。絵のうさぎさんのように、自分を責めたり過小評価するような考えにどっぷり浸かってしまうとメンタル不調に陥るリスクも高まります。この状態から脱するためには自分の中に自然に湧き上がってくる考え(専門的には“自動思考”といいます)へのアプローチが有効です。
うさぎさんの中に自然と湧き上がってきた「私はダメな奴だ」。果たして、これは真実なのでしょうか?個人内で考え続けてもキリがない…ということは多々あります。そういうときには、“事実と照らし合わせるとどうか?本当に正しいのか?”という視点で考えてみましょう。
あぁ、良かった!自分を責めて悩んでいたうさぎさん、自分自身を過小評価していたことに気づきました。非常に簡潔な例ですが、このように考え(認知)にアプローチして、視野を広げることで悪循環から抜け出すスキルが認知再構成法です。
自分の中にある考えの整理・改善に役立つツールとしてコラム表があります。状況や気持ち、そのときに出てきた考え(自動思考)などを振り返って書き出す方法です。頭の中で考えているだけでなく、アウトプットすることで客観的に整理できるという点がコラム表の大きなメリットと言えるでしょう。やってみると結構鍛えられますよ!
代表的なコラム表はこちらのサイトからダウンロード可能です。
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一方、行動活性化とは、考えではなく行動にアプローチしていきます。私たちの心と身体は繋がっています。明るい気持ちであれば行動的になれるし、運動すると自然と心も元気になってくるものです。
【心身相関についてはこちらの記事もご参考にどうぞ!】 【精神科医監修】筋トレで自己肯定感を高める!?メンタルとフィジカルの関係
行動活性化は、“身体から心へ”の仕組みを利用しています。心に元気がないとき、皆さんはどう過ごしますか?何もする気が起こらず、横になったまま過ごす方もいらっしゃるのではないでしょうか?しかし、何もしないままでは気分が切り替わるまで時間がかかりそうですね…。やる気・元気を取り戻すために必要なことは、何かしら行動することです。乗り気でなかった活動でも実際にやってみたら意外と楽しめた、なんていう経験はありませんか?心に元気がないときには、とりあえずでも良いから動いてみることが気持ちの変化に繋がります。
うさぎさんにとって“頑張ったのに成果に繋がらなかった”というショックな出来事がありました。その結果、憂うつな気持ち、やる気激減といった反応に繋がってしまいました。
「何もしたくない…」という考えのまま何も行動を起こさずに過ごしたとき、私たちの心はどう動くでしょうか?
…多くの場合、なかなか動かないような気がします。
きっかけになった出来事(Trigger)によってネガティブな気分(反応:Response)が生じ、それらと向き合わない行動(回避行動パターン:Avoidance Pattern)が現れます。そうすると一時的には気持ちが楽になるかもしれませんが、結局問題解決には至りません。このように悪循環に陥っている状態のことを、頭文字をとってTRAPと呼びます。
今回のケースで考えれば、うさぎさんは1度の失敗をきっかけに苦手な物理学に向き合えないまま過ごしてしまうことになります。
「何もしたくない…」と思いつつもとりあえず行動してみた場合はどうでしょう。 きっかけになった出来事(Trigger)によってネガティブな気分(反応:Response)が生じた後、とりあえずでも良いから行動してみる(代替行動パターン:Alternative Coping)ことで多少の気分の改善が見込めます。このように悪循環を抜け出せた状態のことをTRACと呼びます。行動活性化では、TRAPからTRACへ戻ってこられるようにサポートします。
ちょっとお散歩して気分転換ができたうさぎさん、ちょっとずつ「また頑張ろう」という気持ちが出てくるかもしれませんね。 |
認知行動療法の手法は他にもリラクゼーション法、曝露療法(エクスポージャー)などいくつかの種類があります。
形式も様々で、1対1でやることもグループプログラムとして提供しているケースもあります。近年は認知行動療法に関する書籍も多く出ており、それに沿ってご自身で実施することも可能です。
認知行動療法関連の本は沢山出版されていますが、特におすすめなものをご紹介します!
大野裕(著)/さのかける・サイドランチ(マンガ) |
『マンガでわかる認知行動療法』池田書店(2019年) |
一般の方から専門家まで、幅広い層を対象としてわかりやすく解説されています。認知行動療法の考え方や対応について具体的に書かれており、基礎知識を理解するために非常に有用な1冊です。
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伊藤絵美(著) |
『ケアする人も楽になる認知行動療法入門BOOK』シリーズ(2011年) |
これから認知行動療法に取り組んでいくタイミングや、ケアを提供する側の人にとって力になってくれる1冊です。認知行動療法を用いてまずは自分自身を大切にする視点を身につけられます。
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ちなみに、認知行動療法を実践できる会員制サイト「ここトレ」が近年開発されました。『マンガでわかる認知行動療法』の著者である大野先生が監修されたものです。ご関心がある方はぜひ覗いてみてくださいね。
このような書籍、会員制サイトやアプリなどを使えば、セルフ認知行動療法も可能です。カウンセラーとの認知行動療法とセルフ認知行動療法の関係性は、パーソナルトレーニングと自主トレーニングに似ています。いずれの方法であっても大切なことは、自分の認知や行動をモニタリングすること。セルフモニタリングの視点を獲得することによる気分の変化や精神症状の改善といった効果が認められています。
例えば…
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一方、セルフ認知行動療法を実践するときにはモチベーションの維持が大きな課題になりやすく、ドロップアウトする人が少なくありません。目標をある程度明確にして取り組む、適宜目標に立ち返ってみる、という姿勢をより意識してみると良さそうですね。
認知行動療法の最も大きなメリットは、様々な心の病に対して効果的であると証明されていることでしょう。うつ病、パニック障害、社交不安障害、強迫性障害、不眠症などの治療の1つとして使われています。認知行動療法単独でも有効だと言われていますが、薬物療法と併用されることも多いです。
一方、時間的・金銭的負担が比較的大きいというデメリットはあります。このあたりを懸念される場合は、先ほどご紹介した書籍などを用いてセルフ認知行動療法に取り組んでみるのも手です。
多くは認知行動療法を専門とする相談機関や一部医療機関で受けられます。
精神科・心療内科へ通院中の方であれば、まずは主治医の先生にご相談ください。大切なのは、そのときの心の状態、症状に合わせた治療を受けることです。場合によっては、認知行動療法に取り組まない方が良いタイミングもあります。また、他機関にて認知行動療法を受ける際には紹介状(診療情報提供書)が必要になることがほとんどです。認知行動療法を受けることについて主治医の承諾を得たら、紹介状の作成を依頼しましょう。
ちなみに、認知行動療法を提供していると届け出ている医療機関については厚生労働省がリストアップしてくれています。ご参考にどうぞ。
*ご予約・ご受診前に、「認知行動療法を提供しているかどうか」確認することをお勧めします
専門の相談機関については、関東で代表的なのは東京都小平市にある認知行動療法センターがあります。他にも「認知行動療法 ○○(地域名)」とインターネットで検索をかけると近隣の相談機関がヒットしやすいと思います。
“考え方の癖”は多かれ少なかれ誰しもが持っているもので、その特徴は様々です。どのような考え方が良い・悪いという話ではありませんが、その“癖”によって生きづらさや不全感を抱えておられる場合、自分の“癖”に気づき、よりバランスの良いものにしていく認知行動療法は有効です。
なお、不調の有無にかかわらず「もっと○○な生き方がしたい」という思いを持っている方にとってもご自身の“癖”にアプローチしていくことは有用な手段と言えるでしょう。これまでのご自身を否定するのではなく考え方や行動のパターンに幅を持たせることで、多くの方が自分らしく生きていける世の中になると良いですよね。
【参考書籍】
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【監修】 本山真(精神科医師/産業医/医療法人ラック理事長) 【執筆】 若丸(公認心理師・臨床心理士) 今回は精神科医師と公認心理師がタッグを組んでお送りしました!タッグと言えば、認知行動療法は『行動療法』と『認知療法』がタッグを組んだセラピーだと言えます。行動療法と認知療法がタッグを組むまでには様々な歴史がありました(現在進行形とも)。ユーザーの皆様には一切関係のない経緯ですがご興味がおありでしたらまたブログで取り扱います。 |