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【精神科医監修】認知機能とは?認知機能が関連する困りごと

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2024年5月31日

認知機能とは何か?認知機能が関連する困りごとを精神科医監修で解説

皆さんは、「テスト勉強で頑張ったのになかなか覚えられない…」、「会社の資料を見ても情報がすっと入ってこない…」といった経験はありますか?このような経験には、人にもともと備わっている「認知機能」が関連しているかもしれません。今回は認知機能と日常生活における困りごととの関係について一緒に考えていけたらと思います!

 

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そもそも認知機能とは?


認知機能とは、理解、判断など、知的な機能のことです。物事を正しく理解して適切に実行するための機能というとわかりやすいでしょうか?見たものを記憶する、考えていることを話すなど普段何気なく使われている機能であると同時に、様々な場面で駆使される重要な機能になります。

【参考】認知機能|厚生労働省e-ヘルスネット

 

日本精神神経学会の定義によると、認知機能は大きく6つに分類されます。

  • 複雑性注意:注意力を持続したり、振り分けたりする能力
  • 実行機能(遂行機能):計画を立て、適切に実行する能力
  • 学習と記憶:学習したり、記憶したりする能力
  • 言語:言語を理解したり表出したりする能力
  • 知覚-運動:正しく知覚したり、道具を適切に使用したりする能力
  • 社会的認知:人の気持ちに配慮したり、表情を適切に把握したりする能力

日本精神神経学会(2014)DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル

 

認知機能は上記に挙げた機能が単独で働いているのではなく、複数の機能が相互的に働いています。例えば「友達と話す」という1つの行動を取っても①何を話すのか決めて(実行機能)、②相手に合わせながら(社会的認知)③話す(言語)といったように、様々な認知機能を用いています。

※簡単にご説明するために省きましたが、思考から行動へ移すまでには例でご説明したよりも多くの認知機能が使われています。こちらおさえておいてください

 

認知機能と日常生活における困りごとの関係


日常生活における困りごとは、認知機能の特性によって生じる場合と成人期までに獲得した機能が低下することで生じる場合があります。今回はこの2つの観点から、日常生活における困りごとと認知機能の関係について解説していこうと思います。

 

【認知機能の特性によって困りごとが生じる場合】

先ほど様々な認知機能があるというお話をしましたが、コミュニケーションがうまくいかなかったり、なかなか覚えられなかったり…といった困りごとは、認知機能の特性が関係している場合があります。認知機能の特性とはつまり、情報処理の特徴です。情報処理の特徴として多く取り上げられる例をご紹介します。

  • 聴覚的な処理(聴覚認知)と視覚的な処理(視覚認知)

聴覚的な処理とは”聞き取った音声の情報を理解すること”です。視覚的な処理は”目で見たものの情報を理解すること”です。例えば、理解しやすい情報処理の仕方と、実際に行う処理の仕方が異なっていたり、聴覚的な処理と視覚的な処理の働きにアンバランスさがあったりすると「覚えたいのになかなか覚えられない…」といった困りごとにつながる場合があります。

 

  • 継次処理と同時処理

継次処理とは、情報を1つずつ順序だてて理解することです。同時処理は、情報の全体でとらえてから細部を理解することです。例えば、順番に決まったやり方で作業をした方が早く進むはずなのに、思いついた順に作業をした結果、「余計に時間がかかってしまった…」といった困りごとにつながる場合があります。

 

ちなみに…認知機能の特性について調べていくと、発達障害の研究では「認知特性」、「認知スタイル」、「学習スタイル」などといった言葉が多く使われていました。発達障害は、認知機能の特性によって、日常生活に大きな支障が出た場合に診断されます。発達障害の分類には、自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)、学習障害(LD)などがあります。発達障害の種類や個人差によっても左右されますが、発達障害の兆候は0~2歳ごろから目立ち始め、5~6歳ごろには集団と生活の中で特性がはっきりするとされています。

発達障害については国の機関を中心に様々な情報が発信されています。当社のブログもご参照ください。

【参考】

 

【成人期までに獲得した機能が低下することで困りごとが生じる場合】

つづいて、成人期までに獲得した認知機能が低下することで、困りごとにつながる場合をご説明します。

  • 加齢に伴う認知機能の低下

認知機能は加齢とともに衰えるものです。加齢によって認知機能が低下することで、以前より物覚えが悪い、なかなか言葉が出てこないなどの不調が現れ、日常生活に支障をきたすことがあります。なお、記憶の障害に加えて、他の複数の認知機能の低下が認められ、日常生活や社会生活に6か月以上継続している場合、認知症と診断されることがあります。ただし、認知症は加齢だけでなく、生活習慣や身体疾患の罹患なども原因になるので、一概に加齢が影響しているとも言えません。認知症については、以下のブログもご参照ください。

【参考】

 

またまたちなみに…加齢によって認知機能は低下するとお話ししましたが、すべての認知機能が加齢とともに低下するわけではありません。認知機能の中には、加齢に影響されにくい機能と加齢に影響されやすい機能があります。加齢に影響されにくい機能は「結晶性知能(crystallized intelligence)」に含まれています。結晶性知能は、語彙力や一般的な知識などの機能が該当します。加齢に影響されやすい機能は「流動性知能(fluid intelligence)」に含まれています。流動性知能は、記憶力や推理力などの機能が該当します。「経験を積む」という言葉があるように、経験すると蓄積され、加齢が進んでも安定した状態を保つ機能はあるということですね。

【参考】

 

 

  • 精神疾患における認知機能障害

うつ病や統合失調症などの精神疾患を発症すると、認知機能の低下を引き起こすことがあります。集中できなかったり、見通しをもって行動できなかったり…といった認知機能の障害は「認知機能障害」と呼ばれます。うつ病の認知機能障害について検討した研究では、うつ病に罹患すると記憶、注意、実行機能に障害がみられることが報告されています。

認知機能の低下による不調に加え、食欲の低下や不眠、意欲低下、興味・関心の低下などの不調も同時に出ている場合、日常生活での困りごとの根本には、心の不調があるかもしれません。

【参考】

 

認知機能が関連するりごとを解消するためには??


さて、これまで認知機能と日常生活における困りごとの関係についてご説明してきました。では、日常生活をより過ごしやすくするには、そして、困っている現状から脱するためにはどのような手段があるのでしょうか?

  • セルフチェックしてみる

自身の状態を確認するために、情報を整理してみることも1つの手段です。ご自身が抱えている困りごとは幼少期からずっと持ち続けているものなのか、ある時期を境に生まれたのか、何かきっかけはあったかなど、1度自分の中で整理してみましょう。

現在は様々な情報が拡散している情報社会です。ですので、どの情報を信じればいいのかわからない…という方は、厚生労働省や国立の機関がまとめているサイト情報をあたってみるのがいいかもしれません。また、認知機能が低下しているかチェックできるサイトもあるので、使用してみてもいいかもしれません。

※正確な診断には医療機関の受診が必要になります

 

  • 周囲に相談・意見を聞いてみる

自分ではよくわからない、混乱してうまく整理できない…という方は、周囲の方に聞いてみることをおすすめします。客観的な意見を聞くことで、解決の糸口が見つかったり、具体的な対応につながったりすることもあります。

 

  • 専門家に相談!!

抱える困りごとによって、日常生活に大きな支障をきたしていると感じる場合は、専門家に相談することをおすすめします。専門家につながることで、より効果的な改善策が見つかったり、今後の行動の選択肢が増えたりすることもあります。

 

【執筆】

かなた(公認心理師・臨床心理士)

人は困りごとを抱えた時、その困りごとを解決しようと解決策を考えます。一見、当たり前なことに思えますが、人が何か新しいこと、今までとは違うことをするのは、想像以上に大変なことです。ですので、解決しようと頑張っている自分、えらい!とほめてあげましょう。このブログを見てくださっている方は、現状を変えようと考え、まさに今行動をしている方だと思います。素晴らしいですね!

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【監修】

本山真(精神科医師/精神保健指定医/日本医師会認定産業医/医療法人ラック理事長)

2002年東京大学医学部医学科卒業。2008年埼玉県さいたま市に宮原メンタルクリニック開院。2016年医療法人ラック設立、2018年には2院目となる綾瀬メンタルクリニックを開院。

 

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