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【公認心理師執筆】スポーツとメンタルヘルスの関係

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2020年12月18日

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最終更新日 2021年8月26日

公認心理師がスポーツとメンタル疾患の関係性を解説します!

 

若丸
若丸

スポーツっていいですよね!

大学院を卒業してから早○年。
最近スポーツを再開しました。

筋トレをしたりダンスをしたりしているんですが、もう細かい理屈抜きで単純にすっきりします!

 

スポーツを再開してみて気づいたこととして、元々体育会系だった影響か、筋トレにせよダンスにせよ、『よりハードに』、『より限界に』となぜか自分に追い込みをかけているんですよ笑『これを持ち上げられなかったら敗退!(何に?)』と勝手にプレッシャーをかけています。

 

(私の場合は勝手に自分でファイトモードに切り替えてしまっているだけですが)息抜き・気分転換目的のスポーツと、競技としてのスポーツって、プレッシャーであったり緊張であったり、メンタルの要素が関与してくるところに違いがあります。

 

“プレッシャーや緊張をいかにコントロール下に置くか”が“競技としてのスポーツ”におけるポイントですよね。これ私にも覚えがありましてね…。学生時代水泳をやっていたんですが、とある大会のとき、『全身が心臓になったのか』と思うくらい緊張してしまったんですよねえ。チームのみんなや家族の応援が励みである一方、私の体はどんどん固まってしまい…。実力が発揮できず結果は散々でした。

 

メンタルとパフォーマンスの関係については以前、弊社ブログにて解説しています。高すぎず、低すぎない丁度良いストレスがベストパフォーマンスの鍵、というお話でした。

【参考】

【ストレスってなに?】ストレスとの上手な付き合い方

 

“パフォーマンス”の発想がある以上、スポーツとメンタルは切っても切れないものなんですよね。今回は、スポーツとメンタルという切り口で“スポーツに取り組んでらっしゃる方に関係し得るメンタル疾患”をご紹介しようと思います。

【こちらもどうぞ】

【精神科医監修】アスリートとメンタルケア|リラクゼーションでパフォーマンスアップ!

 

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スポーツ選手に起こりうるメンタル疾患4選

とある調査によれば、スポーツ選手の3人に1人(!)が精神疾患の症状を経験しているそうです。『アスリートだからこそメンタル不調が起きやすい』という側面と、『体育会系であることにより支援につながりにくい』という側面はあるようですが、いずれにせよ、スポーツ選手にとって、メンタル不調は身近なものだと言えそうです。スポーツ選手に起こりうる精神疾患を紹介していきます。

 

若丸
若丸

若丸の豆知識

精神疾患は、“診断基準”を参考に診断されます。

精神科や心療内科にて広く用いられている診断基準は、アメリカ精神医学会が出版しているDSM(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders:精神障害の診断と統計マニュアル)です。最新版は2013年(日本語版は2014年)に刊行された第5版、DSM-5(でぃーえすえむふぁいぶ)と呼ばれています

 

スポーツと適応障害

ストレスが原因となって心身の不調が生じている状態を適応障害(てきおうしょうがい)と呼びます。『気分が落ち込みやすくなった』、『やる気が出ない』といった情緒面の症状もあれば、『寝つきが悪くなった』、『食欲がなくなった』といった行動面の症状も出現します。

 

症状はバラエティーに富んでいますが、他のいずれの精神疾患の診断基準を満たすほど顕著なものは認められません。

 

【適応障害の診断基準】

A:原因がはっきりとしていて、その原因が始まってから3ヵ月以内に症状が出現する

B:症状は以下のうち1つまたは両方に当てはまる

1.その原因に不釣り合いな程度の苦痛

2.社会的・職業的機能などにおける重大な障害

 

C:他の精神疾患の基準を満たさない/他の精神疾患の悪化とも異なる

D:その症状は正常の死別反応を示すものではない

E:原因となっているストレスが終結すると、症状がその後6ヵ月以上持続することはない

引用:DSM-5

 

症状改善のために必要且つ重要なポイントは2つあります。1つめは“休養”です。体調を崩したときや、怪我をしたときと同じように、こころが疲れているときにも休養は効果的です。

 

わかります。

せっかく割れてきた腹筋が日に日に隠れていく辛さ…(違う)。

 

休んでいる間に焦燥感や不安感が大きくなることもあるかもしれませんが、急がば回れ。心身ともにしっかり休みを取ることが、もともとのパフォーマンスを再度発揮するための1番の近道なのです。

*ちなみに過度な焦燥感や不安感は、それそのものがメンタル不調のサインであることもあります。気をつけましょう!

 

もう1つは“環境調整”です。適応障害は定義上、不調の原因となっているストレス(ストレッサー)の存在が前提。ストレスを取り除いたり、ストレスから距離をとったりすると復調するのが適応障害の特徴です。

 

スポーツで例えてみれば、慣れ親しんだポジションから、別のポジションへとコンバート。

新しいポジションは右も左もわからず、成績も振るわない。

何だか気分が持ち上がらずうつっぽい…。

 

こういったケースにおける環境調整としては、“元のポジションへと戻してもらう”という方法がありますね。もう少し積極的な対処として、“慣れ親しんだポジションのノウハウを新しいポジションに活かすアイデアを練る”、“新しいポジションにて必要なスキルを身につける”というのもありでしょう。

 

まとめますと…

適応障害は、“自分自身”と“今置かれている環境”とがうまくマッチングしていないサイン。サインを放置するとうつ病(気分障害)へと移行するという指摘もあるので、サインをキャッチしたら休息、そして環境調整を心がけましょう!

 

スポーツと気分障害

気分障害とは、うつ病、躁うつ病(双極性障害)を指します。

 

“うつ病”と聞くと、真っ先に『ストレスが原因?』と考えがちですよね?気分障害を考えるうえでは、ストレスはあくまで、発症にいたるトリガーの一種と考えるのが一般的です。

 

うつ病を一生のうちで経験する割合(生涯有病率)は7%程度であると言われています。40歳までに発症する場合が半数を占めますが、中高年層においても発症の可能性が高いのが特徴です。男女差は、女性が男性の2倍ほど生涯有病率が高いようです。

【参考】厚生労働省:みんなのメンタルヘルス

 

一方、双極性障害の生涯有病率は0.7%程度で、100人に1人程度の割合です。発症年齢もうつ病より低く、10代後半から20代後半までが主です。男女差はほとんどないと言われています。

【参考】厚生労働省:みんなのメンタルヘルス 双極性障害(躁うつ病)

 

【うつ病の診断基準】

A:以下の症状のうち5つ以上が同じ2週間の間に存在し、不調をきたす前の機能から変化が生じている

  1. 抑うつ気分
  2. 興味または喜びの著しい減退
  3. 著しい体重減少または増加/食欲の減退または増加
  4. 不眠または過眠
  5. 落ち着かない、または頭が働かない
  6. 疲れやすい、または気力がない
  7. 無価値観、または過剰あるいは不適切な罪責感
  8. 思考力や集中力の減退、または決断困難
  9. 死についての反復思考、反復的な自殺念慮、自殺企図

B:症状は著しい苦痛または社会的・職業的機能などに障害を引き起こしている

C:物質や他の医学的状態による精神的な影響が原因ではない

※Aのうち少なくとも1か2のどちらかが該当していないとうつ病とは診断されない

※Aの症状はほとんど毎日、ほとんど1日中続く

引用:DSM-5

 

うつ病を発症すると、多くの場合は明らかな機能低下が認められますが(思考力や集中力の減退、決断困難という部分です)、周りの人でなければ気づきにくい変化だったりします。上記のような不調を少しでも感じたときには早急に医療機関に相談されることをお勧めします。ちなみにうつ病の治療中は、チームを辞めたり、競技を辞めたりといった大きな決断をしないようにしましょう!うつ病の症状として、悲観的に考えやすくなっていたり、バランスの良い決断がしづらくなっていることがほとんどです。

 

では、双極性障害の場合はどうでしょうか。双極性障害は“○型”とタイプ分けをする考え方が一般的です。今回は双極Ⅰ型障害の診断基準をご紹介します。

 

【双極Ⅰ型障害の診断基準】

A:気分が異常かつ持続的に高揚し、開放的または易怒的になる/異常かつ持続的に亢進した活動または活力がある

B:以下の症状のうち3つ以上(気分が易怒性のみの場合は4つ以上)当てはまり、普段の行動とは明らかに異なっている

  1. 自尊心の肥大、誇大
  2. 睡眠欲求の減少
  3. 普段より多弁/しゃべり続けようとする切迫感
  4. 観念放逸/いくつもの考えがせめぎ合っている感覚
  5. 注意散漫
  6. 活動の増加
  7. 困った結果に繋がる可能性の高い活動であるにもかかわらず熱中する

C:症状は著しい苦痛または社会的・職業的機能などに障害を引き起こしている

D:物質や他の医学的状態による精神的な影響が原因ではない

引用:DSM-5

 

双極性障害には、躁病エピソードと呼ばれる大きな波が出現する群と、軽躁病エピソードと呼ばれる小さな波が出現する群があります(先ほどのタイプで言えばⅡ型)。

双極性障害には気分の波が伴います

波の程度によって、日常生活への影響も大きく異なります。もしもスポーツ選手が双極性障害に罹患した場合、どのようなことが起こるでしょうか?

 

なんだかエネルギッシュで、いつも以上にやる気に満ち溢れる=気分の高揚

時間を忘れてトレーニングに励む=活動亢進

疲れ知らずで夜通しトレーニングし続ける=睡眠欲求欠如

 

さてさて、このような生活を続けていくとどうなるでしょうか?気分の高揚は体の限界を考慮していませんから、いずれからだが悲鳴を上げるかもしれません。

 

このケースは軽躁病エピソードを想定していますが、Ⅰ型であれⅡ型であれ、双極性障害には必ずうつ期がやってきます。軽躁病エピソード期に得た周囲からの評価(ブーストが効いていたからこそ残せた成績)が大きなプレッシャーとなり、苦しい思いをするかもしれません。

*自分が今、躁病エピソード、軽躁病エピソード状態であると自覚すること(特に未治療の場合)は難しいんです

 

うつ病、双極性障害ともに、治療は休養と併せて薬物療法が中心となります。気分の高ぶりや落ち込みを、まずは服薬によりコントロールしていきます。徐々に回復してきたら、お薬と気分のコンディションとの調整をしていくことが有効です。

 

スポーツとパニック障害

 

『パニック』とだけ聞くと『頭が真っ白になってしまう』系のイメージをされるかもしれません。パニック障害におけるパニックとはパニック発作(Panic Attack)と呼ばれる症状を指します。イメージしていただきやすいのは過呼吸発作でしょうか?

 

パニック障害においては、過呼吸や動悸、呼吸困難感、めまいなどのパニック発作が突如出現します。それまでに経験したことのない死ぬかもしれない発作が突然生じるわけです。恐怖ですよね。『また発作が起こるのではないか』、『また発作が起こったらどうしよう』と不安にもなります。こういった不安を予期不安と呼びますが、不安のあまり発作の出現を避けるために行動を制限する(回避行動)ようになるわけです。

 

中には、広場恐怖症を伴う場合もあります。広場恐怖症とは、自分の力でどうすることもできない状況に対し、不合理で強い恐怖感・不安感を感じる疾患です。例えば、電車に乗っているときにトイレに行きたくなったとします。『今すぐトイレに行けない状況である』ということから強い不安を感じ、その不安感を回避するために電車に乗らない生活を選択したり、場合によっては外出が困難になったりします。

 

生涯有病率は0.8%。およそ100人に1人の割合ですからポピュラーな疾患だと言えます。発症年齢の平均は20代前半であり、若い年代の方が広場恐怖症を伴うことが多いと言われています。男性よりも女性の方が2倍ほど多いというデータもあります。

【参考】厚生労働省:みんなのメンタルヘルス

 

【パニック障害の診断基準】

A:繰り返される予期しないパニック発作

  1. 動悸、心悸亢進、心拍数の増加
  2. 発汗
  3. 身震いまたは震え
  4. 息切れ感または息苦しさ
  5. 窒息感
  6. 胸痛または胸部の不快感
  7. 嘔気または腹部の不快感
  8. めまい感、ふらつき、頭が軽くなる感じ、気が遠くなる感じ
  9. 寒気または熱感
  10. 異常感覚(感覚麻痺、うずき感)
  11. 現実感喪失または自分自身から離脱している感じ
  12. よく勢力を失うまたは『どうかなってしまう』ことに対する恐怖
  13. 死ぬことに対する恐怖

 

B:発作のうちの1つ以上は、以下が1つまたは両方1ヵ月以上続いている

  1. さらなるパニック発作やその結果に対する持続的な懸念、心配
  2. 発作に関連した行動を避けるなど、不適応的な変化

 

C:物質や他の医学的状態によるものではない

D:他の精神疾患ではうまく説明されない

引用:DSM-5

 

【注意】一見パニック発作のような症状が、実際に心臓や肺の病気だった…そんな勘違いを防ぐために、体の病気を除外する必要があります。これはあらゆるメンタル疾患に言えることです

 

大切な試合の直前でパニック発作が出現。

思うようなパフォーマンスを発揮できなかった…。

今度の試合、また同じことが起こったらどうしよう…。

 

私たちに感動を与えてくれるスポーツ選手、アスリートの多くは、フォロワーの期待を背負う分だけ、不安感や緊張感と戦い続けているのでしょう。

 

不安感、緊張感それ自体は人体に悪さをするばかりではなく、適度な集中や昂ぶりを生み出しベストパフォーマンスを発揮する可能性を高めてくれます。“不安感、緊張感をコントロールできる感覚があるかどうか”が、通常の不安感・緊張感とパニック障害との大きな差だと言えます。パニック障害治療においては、薬物療法と認知行動療法など精神療法(心理療法)の組み合わせが効果的だというエビデンスがあります。

 

 

スポーツと摂食障害

“食行動の障害”と呼ばれる精神疾患です。

食事を摂らなくなる神経性やせ症(神経性無食欲症/拒食症)、過食になり場合によっては食べ吐きを繰り返す神経性過食症(神経性大食症/過食症)があります。女性に多く認められる疾患で、発症年齢は多くの場合10代後半です。

【参考】厚生労働省:みんなのメンタルヘルス

 

【神経性無食欲症の診断基準】

A:必要量を比べてカロリー摂取を制限し、健康な状態に対して最低体重を下回る

B:低体重であるにもかかわらず、体重増加または肥満になることに対する強い恐怖/体重増加を妨げる持続的な行動がある

C:自分の体重・体型、または自己評価に対する認知の歪み/低体重の深刻さに対する認識の持続的欠如

 

【神経性過食症の診断基準】

A:以下の反復する過食エピソード

  1. 他とはっきり区別される時間帯に、明らかに多い食べ物を食べる
  2. その間は食べることを抑制できないという感覚がある

B:体重増加を防ぐための反復する不適切な行動

C:過食と不適切な代償行動が平均して3か月にわたって少なくとも週1回起こっている

D:自己評価が体型・体重の影響を過度に受けている

E:神経性やせ症のエピソードの期間にのみ起こるものではない

引用:DSM-5

 

ベストパフォーマンスを発揮するために体重調整をしたり。

試合ごとの階級制限のために減量をしたり。

からだづくりが仕事であるスポーツ選手と摂食関係の障害は密接なんです。

 

摂食障害はこころだけでなくからだへの負担もかなり大きい疾患であり、死亡率が高い疾患でもあります。そのため、治療にあたっては精神科や心療内科のみならず、内科や産婦人科、歯科など様々な科への受診ないし入院治療を要することもあります。

 

おわりに

 

“自分自身を傷つけるレベルまで追い込めてしまうストイックさ”がスポーツ選手のパフォーマンスを担保しているのかもしれません。筋肉痛であったり怪我であったり体の限界にはわかりやすいサインがあるため、休養というアクションにつなげやすいものですが、メンタルのサインは見落としがちなんです…。

 

これはスポーツに限った話ではなく、ビジネスパーソンや学生さん、家事育児に奔走されてらっしゃる方など、頑張っている皆さん全てに当てはまります。今回ご紹介したいずれのメンタル疾患も早期発見が重要です。

 

ご自身はもちろん、ご友人であったりご家族であったり、周囲の大切な人に少しでも不調が見られた際は、適切な機関へとご相談いただくことをおすすめします。

【参考】もしメンタルの病気になったら? |公認心理師が疑問にお答えします!

 

【執筆】

若丸(公認心理師・臨床心理士)

心理系大学院修了後、関東圏のメンタルクリニックにてカウンセリング、心理検査を担当。

好きな動物はパンダ。

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