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タグ : TAKUYA(公認心理師・臨床心理士) , メンタルヘルス対策 , 産業精神保健
2024年8月2日
最終更新日 2024年8月2日
目次
「ラインによるケア」という言葉をご存じでしょうか。職場のメンタルヘルス対策である4つのケアのうちの1つなのですが,それを聞いてもどんなものなのか全然イメージが掴めませんよね。今回はそんな「ラインによるケア」について解説していきます。
株式会社サポートメンタルヘルスは”働く人を応援するメンタルクリニック”を運営する医療法人が母体です。医療機関におけるメンタルヘルス対策のノウハウを以て、全国の中小企業をサポートいたします。 株式会社サポートメンタルヘルスでは、メンタルヘルス専門職による”中小企業のメンタルヘルス対策個別無料相談会”(web開催、日時は応相談)を実施しております。従業員のメンタルヘルス対策にお悩みの経営者様、人事ご担当者様、まずはお問い合わせフォームよりお申し込みください。
【監修】 本山真 株式会社サポートメンタルヘルス代表取締役 日本医師会認定産業医/精神保健指定医 医療法人ラック理事長/宮原メンタルクリニック院長 【執筆】 TAKUYA(公認心理師・臨床心理士) |
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厚生労働省の「労働者の心の健康の保持増進のための指針」で示されている下記4つのメンタルヘルスケアのことを指します(精神科産業医監修|企業のメンタルヘルスケアーキホンのキー)。
様々な方面のケアを用いて従業員のメンタルヘルスを守っていきましょう,というその方面の1つがラインによるケアなのです。
そもそもラインとは何ぞや?という話なのですが,ラインによるケアの「ライン」とは,指揮系統の線上にいる管理監督者,いわゆる課長や部長等にあたる上司のことを指しています。つまりラインによるケアとは,「上司による部下や社員へのケア」ということを意味しています。
ラインによるケア≒上司によるケアなのは分かりましたが,実際に何をすればケアになるのでしょうか?
ケアの内容に移る前に,ケアという言葉の意味に触れていきましょう(「もう知っているよ」という方であれば読み飛ばしていただいてかまいません!)。ケア(care)は邦訳するとおおよそ3つの訳に分かれます(他にもありますが今回はスルーします)。
①注意する,用心する
➁配慮する,心づかい
③世話をする
ケアと似た言葉にキュア(cure)という言葉がありますが,こちらは下記のように訳されます。
①治す,治療する
➁直す,矯正する,改善する
この両者は似た言葉として混同されやすいのですが,よくよく見ると全く異なります。キュアが「相手の病気や不調を改善する」のに対し,ケアは「状態に関わらず相手に意識を向けること」を指しています。ラインによるケアにてポイントとなるのは,このキュアとケアの違いを考慮することです。キュアは部下に関わる医師や心理士等の専門家の役割です。
常日頃から部下の業務や態度の変化に注意を払い,必要に応じてサポートやリソースの提供をしたり医師等の専門家に繋げたりすることが,上司の役割であり,ラインによるケアなのです。
では具体的に何をすれば?という話ですが,こちらは①部下の健康状態の把握,➁部下の相談対応,③職場環境への対応,④職場復帰支援の4つに分けられます。
①部下の健康状態の把握
ラインによるケアにおいて大切なのは,上司が「いつもと違う」部下にいち早く気づくことです。勤怠,報告や相談・挨拶など会話量の減少,対人トラブル,パフォーマンスの低下,表情,服装の乱れなど,普段の部下と異なる様子が観察された際には何らかの対応が必要となります。こういった変化の裏にはメンタルヘルスの問題が隠れている場合もあるので,日頃から部下の様子に気を配るとともに,部下の「いつもと違う」を素早くキャッチできるようにしましょう。
➁部下の相談対応
部下の様子を把握することも大切ですが,上司からの声かけや部下からの相談対応も同じくらい重要です。上司が部下の話を積極的に聞くことで,不調の早期発見+早期の対応に繋ぐことが出来ます。声かけに関しては挨拶や雑談等の普段からの声かけも大事ですが,不調と思しき部下に対しては「最近よく眠れているか?」と聞いてみてください。答えやすい内容で,不調の程度も掴める質問です。
部下から相談を受けた際には受容的に話を聴き,不調の原因の把握に努めましょう(関連項目:【共感とは?】心理学の観点から共感を理解する|精神科医監修ブログ)。その理由が体調不良や病気の症状によるものなのであれば,その評価のために産業医をはじめとした専門家に部下を繋げましょう。また,部下から受けた相談内容には守秘義務があり,情報は厳重に保護されなければなりません。他者の目に触れない空間で話をするなどの相談時の配慮や,人事などの外部に話をする際は部下本人の許可を得るようにしましょう。
③職場環境への対応
ストレス要因としての職場環境には,業務の量と質,業務の裁量権の他に,照明や物音などの作業環境,作業姿勢やスペースなどの作業方法,組織形態,人間関係等が含まれています。職場環境のストレスは,そのストレスとなる基準が個々人によって異なるため「自分にとっては平気でも部下にとっては困るものかもしれない」という視点が必要です。
人間関係は言わずもがな,光や音等の感覚については過敏性の個人差があり(【精神科医監修】感覚過敏とスヌーズレン・センサリールーム),かがむ・腰を曲げる等の必要がある場合には年齢や持病等で負担の個人差があり,組織内での情報の流れ方や意思決定への参加の機会等の組織形態もストレスに感じるかどうかは個人の差があります。
ただ,これらの個人差を上司が改善せず関知もしないままだと,生産性の低下を引き起こし,メンタルヘルスの不調に繋がってしまいます。職場環境のストレスは目に見えないものが多い分,どこから手を付けていけばよいのか分かりづらいものです。部下の働きづらいと感じているポイントを特定し,できるものから改善していくことが重要です。
④職場復帰支援
病気やストレスなどの理由で休職した部下が復職するとなった場合、上司は部下の職場復帰支援の中心人物となります。職場復帰してすぐに発病前と同水準の質と量を求めることは難しく,職場復帰後は時短勤務,業務軽減等のステップを徐々に踏みながら通常勤務へと戻す期間が必要となります。どのような過程で職場復帰していくかという計画を「職場復帰支援プラン」と言いますが,作成に当たっては事業場内産業保健スタッフ等を中心に上司,休職中の部下の間で連携しながら作成されます。
【参考】
また復帰後も、他の部下に対し勤務上の配慮事項を明確に伝える,職場復帰支援プランの実施状況の確認,プランの評価と見直し,疾患の再発・再燃の早期発見,通院状況の確認等,適宜フォローアップやサポートを提供し、部下が安心して業務に復帰できるようサポートします。
職場復帰支援に役立つコンテンツ(事業者の方・部下を持つ方へ)
4つのケアのうち,部下との距離が一番近いのは職場の上司です。不調の早期発見や,専門家への橋渡し,職場環境改善,職場復帰支援など,メンタルヘルスケアにおいて上司の役割は多岐に渡り,それぞれがとても重要なものとなります。一方でその役割が大きい分,自分1人で抱え込んでしまうと,それが不調の原因となってしまう恐れがあります。ラインによるケアの実施には,事業場内外の産業保健スタッフや資源をうまく活用していくことが望ましいでしょう。
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