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タグ : メンタルヘルス , 若丸(公認心理師・臨床心理士・健康経営エキスパートアドバイザー)
2021年7月2日
最終更新日 2022年7月30日
目次
こんにちは。若丸です。
先日高校時代の友人と連絡を取る機会があり部活話で盛り上がりました。当時、私はバドミントン部に所属していたのですが、部活全体として上向きだったこともあれば、思うように成績が残せず心が折れそうなこともありました…。今となっては良い思い出ですが、山あり谷あり…決して楽しいことばかりではなかったなぁと思います笑
アルバイトに休み時間に夏休みに冬休みに、そしてほんの少しだけ勉強に笑、あの頃の私の生活はスポーツ中心でまわっていたわけではありませんでした。それにも関わらず部活動について考えている時間は長かったような気もします(その影響で勉強が手につかず何度も怒られましたがそれも良い思い出笑)。
部活動でさえあれこれ悩んでいたわけですから、スポーツ競技を専門としているアスリートの皆さんはどうやってメンタルケアをしているんでしょう。日々心身のコンディションと向き合い続ける。考えただけでハードな取り組みです…。今回はスポーツにおけるメンタルケアの歴史を辿り、アスリートのパフォーマンスアップが期待できる取り組みをご紹介しようと思います。 |
メンタルヘルス、セルフケアに関する情報をお届けしています!
スポーツ分野におけるメンタルケアを説明する前に、まずはメンタルケアの歴史をおさらいしておきましょう(メンタルケアとメンタルヘルスケアは厳密に言うと相違がありますが、本ブログにおいては同義として取り扱います)。
CiNii(NII学術情報ナビゲータ[サイニィ])にて『メンタルケア(メンタルヘルスケア)』を検索してみると、日本においては概ね1980年代後半頃より論文として報告されはじめています。1980年代後半と言えば日本はバブル経済真っ只中。物の豊かさが満たされることで『心』に対する関心が高まってきたのかもしれませんね。
その後、様々な領域で研究がすすめられてきたメンタルヘルスケア。近年は、職場におけるメンタルヘルスケアに関心が高まってきています。厚生労働省は、メンタルヘルスケアの基本的な考え方を提示しています。
メンタルヘルス対策を効果的に進めていくためには、以下の4つのケアが必要だと指摘されています。
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特にセルフケアを行うためには、自分自身のメンタルについて理解・把握しておくことが大切です。その前提があるからこそ、メンタルヘルス不調の予防に繋がるんですね。スポーツ領域においても『メンタルトレーニング』という類似のコンセプトがあります。ご紹介しましょう。
メンタルトレーニングとは、パフォーマンス及び生活の質の向上を目的としてメンタルヘルスを育成することを指します。
【参考】国際メンタルトレーニング学会資料
大切な場面でプレッシャーに負けずにパフォーマンスを発揮したり、モチベーションを高めたりすることに関連するトレーニングですね。今でこそ一般的な感じがするメンタルトレーニングですが、実は日本におけるメンタルトレーニングには紆余曲折の歴史がありまして…。
日本では、1964年の東京オリンピック以前にメンタルの強化を試みた時期がありました。特に“動作法”という心理療法の導入が検討されたようですが、当時は「根性つくり」を方針とする風潮もあり、メンタルトレーニングはなかなか普及しなかったようです。
ソ連やアメリカなど、世界的にはメンタルトレーニングをすでに取り入れている国もあり、実際に成績に繋がったという成果も報告されていました。それを機に1985年頃より日本でも再度メンタルトレーニングが注目されるようになり、効率的にパフォーマンスを向上させること、メンタル面の強化を図ることを目的としたプログラムが開発されてきました。そして皆さんがイメージしやすいメンタルトレーニングに至る、という流れです。 |
メンタルトレーニングで取り扱われている対象としては、情動制御、イメージ能力、目標設定、自信の向上、ストレスマネジメントなどがあります。多くのプログラムではリラクゼーションやイメージトレーニングといった手法を用いることが提案されてきました。
近年、マインドフルネスをメンタルトレーニングとして導入するという研究報告が散見されるようになってきました。パフォーマンスそのものを向上させるといった報告から、パフォーマンスに関係するフロー状態に影響する、アスリートの燃え尽き症候群を防ぐ、といったものまで、狙いや目的は様々ではありますが、スポーツ選手がマインドフルネスを取り入れることは概ね良好な結果につながるようです。
エビデンスの観点から考えると、特にダーツ・射撃といった精度を求められる競技においては、マインドフルネスを日々のトレーニングに導入する価値はあると言えそうです。
【参考】
Effects of Mindfulness Practice on Performance-Relevant Parameters and Performance Outcomes in Sports: A Meta-Analytical Review. Sports Medicine.
<マインドフルネスについてはこちらもどうぞ>
【精神科医監修】マインドフルネスシリーズ 【番外編】マインドフルネス体験談 【スタッフ体験談】マインドフルネスを公認心理師・臨床心理士が受けてみた! オンラインでマインドフルネスをご体験いただけます |
次項は、リラクゼーション法の中から“自律訓練法”をピックアップしてご紹介いたします。
自律訓練法とは、“自己暗示の練習によって段階的に全身の緊張を解いていく訓練法”であり、疲労回復やストレス解消などの効果が期待できるリラクゼーション法です。
【引用】e-ヘルスネット『自律訓練法』
自律神経の働きに焦点を当て、からだとこころのバランスを整えていきます。その結果として、不安・緊張の減少、不眠改善、疲労回復などの効果が見込めるのです。
【こちらもどうぞ!】
調べてみたところ、自律訓練法をスポーツ選手に適用してきた歴史はいくつかあるようです。例えば、自律訓練法を中核としたメンタルトレーニングの効果として、不安・緊張が減少しパフォーマンス向上が示唆された研究や、自律訓練法を体育教育に組み込んだ結果、緊張の緩和、自己調整能力向上が認められた研究があります。
大変興味深かったのが、ある一部の公式を習得する前後でパフォーマンスに変化を認めた研究※です。
※参考 藤原忠雄・千駄息至(2000) 自律訓練法を中核としたメンタルトレーニングプログラムの作成とその妥当性の検討 教育実践学論集 |
自律訓練法によって、不快に感じるレベルの不安・緊張を減らし、適度にリラックス状態を獲得していきます。その結果として、落ち着いてパフォーマンスを発揮しやすくなったり、より向上させることができたりするんですね。
加えて、心身のコンディションと日々向き合っているアスリートにとって、自分自身を客観的に観察すること(=セルフモニタリング)は必要不可欠なのだと想像します。自律訓練法を継続していくと、徐々に心身のちょっとした変化に気づきやすくなります。それがすなわちセルフモニタリングに繋がっていくのです。
自律訓練法の実際はこちらの動画をどうぞ!
スポーツのパフォーマンス向上には、様々な要因が関連していると言われています。個人の要因としては、その人の性格や体格、疲れの度合いなどが含まれますし、個人外の環境要因であれば、指導者やチームメイトとの対人関係、プレッシャーや周囲の期待、 気候やフィールドの状態などが該当します。
各スポーツ競技によっても最適なリラックス・興奮の度合いは異なります。例えば、ゴルフのパットや射撃のような競技、ボーリングなど、細かい運動制御を必要とする正確性の高いスポーツは、興奮のレベルが低い時に最高のパフォーマンスへとつながりやすいですし、バスケや野球、バレーボールなどは少し高い興奮レベルにおいて、ウエイトリフティング・アメリカンフットボールなど大きな筋肉の運動を必要とする競技では、より高い興奮レベルにおいて、最高のパフォーマンスが期待できます。
今回注目しているメンタル面についても個人差は大きく、一律のメンタルヘルスケアでは対処しきれない部分もあるのが現実でしょう。
若丸小話 先日ニュース番組で特集されていたのですが、アスリートの4割はメンタルヘルス不調を経験しているというデータもあるそうです。時事ニュース解説においても取り上げましたが、スポーツ選手とメンタルヘルス問題は近年顕在化しつつある課題なんでしょうね。 【参考】 【産業医監修】「心の健康を優先」して途中棄権【時事ニュース解説】 “精神的不調”ラグビートップリーグ選手 調査で4割余りに上る
こちらの課題については、弊社ブログにて取り上げています。関心のある方はご参照ください。 |
今回はスポーツのパフォーマンス向上に注目してみました。パフォーマンス向上。これはアスリートに限った話ではありません。仕事や勉強のパフォーマンス向上を目的として、日常生活にリラクゼーションを取り入れることももちろんお勧めします。日々のルーティーンにすると継続しやすく、効果が期待できそうですね。
余談になりますが、アスリートの方にとってルーティーンは大きな意味を成します。イチロー選手は打席に入った後にバットを立てるという動作を、五郎丸選手は腰をかがめてお祈りをするようなポーズをとる、といったルーティーンはよく知られていますね。(競技は限定されるかもしれませんが)マインドフルネスをルーティーンにすることで、パフォーマンスアップも期待できるかもしれません♪
ちなみに、弊社はオンラインリラクゼーションプログラムとして【ホットレ】をご用意しています。パフォーマンス向上のためのルーティーンとして取り入れてみてはいかがでしょうか?(広告でした笑)
【Youtubeで公開中】自律訓練法ベースのホットレお試し体験!
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【執筆】 若丸(公認心理師・臨床心理士) 私の現役時代は、そこはかとなく“努力・気合・根性”の名残がありました。大人になってからもしんどいとき当時のメンタリティーに多々支えられました。とは言え、『いつでもどんなときも努力・気合・根性!』はスタミナを保つのが大変…。いざという時にベストパフォーマンスを発揮するために緊張と緩和って大切ですね。
【監修】 本山真(精神科医師/精神保健指定医/日本医師会認定産業医) |