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【精神科医監修ライフハック心理学】類型論と特性論から性格を考える

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2024年3月29日

心理学の理論である類型論と特性論から性格を考えます

 

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血液型で性格は理解できるのか?


血液型は赤血球の表面にある抗原により決まります。皆さんの頭に思い浮かぶ血液型と言えば、血液型占いで取り上げられるA型、B型、O型、AB型の4種類ではないでしょうか?正しく血液型を理解するのであれば、RH+、RH-、出現頻度が1%以下とされる稀な血液型も存在するんです。

 

日本は、他国に比べて血液型占いを信じる割合が高く、コミュニケーション場面にて『私はA型だから、整理整頓はきっちりやりたいんだ』と伝えれば、違和感なく通じるほど、他者の性格を理解する指標の1つとして社会に浸透しています。

 

血液型と性格の関連を調査した多くの研究によって、血液型と性格を関連づける科学的根拠はないということで結論は出ています。久保・三宅(2011)は、血液型と性格に関係があると認識されてしまうメカニズムをステレオタイプとバーナム効果で説明しています。

 

ステレオタイプ

▶比較的固定化され、過度に簡略化された集団や階級についての一般概念。ステレオタイプは、一度作られてしまうと、自分の持つステレオタイプと一致する例に注目して、ステレオタイプを裏付ける証拠ばかりを集めてしまう。

バーナム効果

▶誰にでも該当するような曖昧で一般的な性格をあらわす記述を「あなたの性格です」と言って渡されると、多くの人が自分だけに当てはまる正確なものだと捉えてしまう現象。

引用:久保義郎・三宅由起子(2011)血液型と性格の関連についての調査的研究.

 

ちなみに…つい気になって、占いを見てみてしまうという行動には、『未来や将来といった不確実で未知なものを、確実で既知なものとして掌握したい』『不安の芽を取り除き、安心したい』という気持ちや『もっと自分自身について知りたい、理解を深めたい』という気持ちなど、様々な思いが関わり合っているのかもしれません。

 

心理学の世界では”人間の性格を理解したい”という思いをきっかけに、性格を説明する理論が多く生み出されてきました。性格を説明するうえで代表的な性格理論として類型論と特性論があります。

 

類型論から考える性格


類型論(Typology)とは、性格をいくつかの典型的なカテゴリーに分類する考え方です。代表的なものにKretchmerの気質論やJungの類型論などがあります。

 

Kretchmer(クレッチマー)の気質理論

ドイツの精神科医Kretchmerは、精神病患者の臨床的観察に基づき、患者の体型の違いに注目しました。そして、①肥満型、②細長型、③闘士型という3つの体形と親和性のある気質、精神病を以下のように関連づけて分類しました。

①肥満型・循環気質

▶躁うつ病者に親和性のある性格類型。肥満体型で、外向的、明朗多弁、社交的な性格・行動特徴を持つ。

②細長型・分裂気質

▶統合失調症者に親和性のある性格類型。やせ型で、内向的、神経質、非社交的な性格・行動特徴を持つ。

③闘士型・循環気質

▶てんかん病者に親和性のある性格類型。こだわりが強く、粘着的な性格・行動特徴を持つ。

引用:松下正明(2009)みんなの精神医学用語辞典, 株式会社弘文堂

現代の感覚的には、体型と性格?とお感じになる方もいらっしゃるかもしれませんし、アンコンシャスバイアスの一種では?と考える方もいらっしゃるかもしれません。クレッチマーの気質論が発表されたのは1921年であり、精神疾患の研究はまだまだこれから、な時代です。気質論発表後、批判的な研究も数多く発表されましたが、例えば、循環気質としてまとめられていたこだわりや粘着的な性格・行動については、てんかん発作によって生じていることが明らかになったりと、現代に受け継がれています。

 

Jung(ユング)の類型論

精神分析家のJungは、リビドー(心的エネルギー)の向かう方向により、①内向型と②外向型の2類型を区別しました。そして、思考・感情、直感・感覚という相対する心理機能を考えました。

 

【2つの類型】 

◎内向型 ➡ 自己の内界に関心がある 

◎外向型 ➡ 自己よりも外部の世界に関心がある。

 【下位分類】

◎思考―感情 ➡ 合理機能

◎感覚―直観 ➡ 非合理機能

 

 

 

 

引用:無藤隆・森敏昭・遠藤由美・玉瀬耕治(2019)心理学新版, 有斐閣.

 

類型論は、大雑把に人をとらえてイメージし、知らない人に説明したり、異なる類型の人と比較するのに便利である(無藤・森・遠藤・高瀬,2019)ことが長所とされています。また、少数の類型にあてはめることで、簡単に性格を理解出来ることが、人々から受け入れられやすいと考えられます。『他者の性格を一瞬で簡単に理解できる』という感覚を伴う点においては、上述した血液型占いや星座占い、最近流行りの※MBTI診断などにも共通しているかもしれません。(当然ではありますが)類型論では、個人の全ての側面を捉えきれません。

 

特性論から考える性格


わかりやすさに長けた類型論ですが、類型論における性格とは”(クレッチマーの気質論のように)ベースとなる理論や仮説に基づく性格”ですから、理論が想定している範囲でしか性格を規定できないわけですね。目の前の人は一人の人間なのに、理論の数だけ性格が存在するという、机上の考え方になってしまうこともあるわけです。

 

類型論の限界を踏まえた理論が特性論(Trait theory)です。和田(1996)によると、特性論では、性格を構成するいくつかの変数を量的に測定し、それらの組み合わせで性格を記述し、説明しようとします。代表的なものに、ビッグファイブ理論があります。

 

ビッグ・ファイブ理論

ビッグ・ファイブ理論は、CostaとMcCraeが開発したNEO-PI-R(Revised NEO Personality Inventory)にて5因子が想定されています。それぞれの因子には6つの下位次元があります。

 

次元(因子)

下位次元

神経症傾向

不安、敵意、抑うつ、自意識、衝動性、など

外向性

暖かさ、群居性、断交性、活動性、など

開放性

空想、審美性、感情、行為、など

調和性

信頼、実直さ、利他性、など

誠実性

コンピテンス、秩序、良心性、達成追求、など

引用:無藤隆・森敏昭・遠藤由美・玉瀬耕治(2019)心理学新版, 有斐閣.

 

特性論では、行動傾向の集積として性格を把握しようとするため、実際の個人的特徴をより正確に捉えることができます(無藤・森・遠藤・高瀬,2019)。

 

引用・参考文献


  • 久保義郎・三宅由起子(2011)血液型と性格の関連についての調査的研究.
  • 松下正明(2009)みんなの精神医学用語辞典, 株式会社弘文堂.
  • 無藤隆・森敏昭・遠藤由美・玉瀬耕治(2019)心理学新版, 有斐閣.
  • 和田かおり(1996)性格特性用語を用いたBig Five尺度の作成,心理学研究,67,61-67.

 

【執筆】

田中(公認心理師)

自分の性格を理解したい。相手の性格を理解したい。素朴な思いをきっかけとして始まったであろう性格理論という学問。現代的には、性格(パーソナリティ)はビッグ・ファイブ理論で完結している、と言われています。ブログ内でアンコンシャスバイアスに触れましたが、多様性の社会において、性格を一つの型にあてはめて人を論じる/評価するという考え方は、いささか折り合いが悪いのかもしれません。

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【監修】

本山真(日本医師会認定産業医|精神保健指定医|医療法人ラック理事長|宮原メンタルクリニック院長)

 

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