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タグ : メンタルヘルス対策 , 健康経営® , 産業精神保健 , 若丸(公認心理師・臨床心理士・健康経営エキスパートアドバイザー)
2022年12月9日
最終更新日 2024年1月23日
先日、第1回Femtech Tokyo 2022に参加してきました!
本日は #FemtechTokyo へ出張しております😊女性のヘルスケアの観点から、今必要とされている・普及が進んでいるサービスについて学ばせていただきました。
メンタルヘルスケアを身近に感じられる世の中になるように我々ができること、改めて考えて発信いたします!#フェムテックトーキョー pic.twitter.com/B5Xp8rbI1V
— 【公式】株式会社サポートメンタルヘルス (@co_sapomen) October 21, 2022
数ヵ月前まで『ふぇむてっく?何それ??』状態だった私ですが、実際にサービス・商品に触れてから『フェムテックって、現代社会に生きる私たちにとってすごく大切じゃん!』と思うようになりました。
今回はFemtech Tokyo 2022で仕入れた知見も織り交ぜつつ、女性の健康に焦点を当てていこうと思います。
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まずはフェムテックとは何なのか?についてできる限り簡単に解説します。私たち人間には多くのライフステージがあります。女性特有のもので考えると、月経(生理)、妊娠、出産、子育て、更年期、閉経などがありますね。これら女性特有のライフステージにはホルモンバランスの変化がつきもの。ホルモンバランスの変化に伴って様々な健康課題が出現しやすいんです。
簡単に言えば、フェムテック(Femtech)とは『女性特有の健康課題をテクノロジーで解決しようという考えのもとに作られたサービスや製品』のことを指します。Female(フェム)+Technology(テック)でフェムテックです。
『フェムテック』という言葉自体は、2012年にドイツで月経(生理)管理アプリが開発されたタイミングで生まれたそうです。ちなみに、その頃には日本においても月経(生理)管理アプリなどが普及していました。
著名なサービスの1つとしてLunaLuna(ルナルナ)があります。LunaLunaはまだスマートフォンが登場していない2000年に誕生(当時のサービス名は“ルーナ”でした)してから、毎月訪れる月経(生理)をフォローしてきたようです。フェムテックのはしりだと言えますね。
【参考】LunaLunaホームページ
LunaLunaを代表に『フェムテック』という言葉が生まれる前から女性特有の健康課題を支えてきたサービスがあったわけですが、フェムテックという言葉が生まれたように、女性の健康課題をケアするサービスがより注目されるようになった背景にはテクノロジーの進化や女性の積極的な社会進出といった要因があります。簡単に解説すれば、女性の積極的な社会進出に伴い、解決すべき健康課題が顕在化したことが始まりということです(『顕在化』ですから、太古の昔から潜在的に存在していた健康問題であって、社会が認識していなかった(しようとしていなかった)ということでもあるのでしょうが、これはまた別の話)。
【参考】女性の健康問題を解決「フェムテック市場」が急拡大、その背景とは?|DIAMOND online
なお、フェムテックに向けられる期待は時代の流れに伴い徐々に拡大しています。先ほどご紹介したLunaLunaを含む月経管理アプリに従来期待されていたのは月経日予測でした。月経日を簡単に知ることで女性のセルフケアに役立てるという狙いですね。その後、女性のニーズを踏まえて妊活・避妊を快適に行うという機能や、月経関連の不調をパートナーに解説し共有するといった役割が付与されるようになりました。
先述した通り、女性はライフステージごとにホルモンバランスが大きく変化します。フェムテックにおける女性特有の健康課題の多くはホルモンバランスに関係したものだと言えます。代表的なものを順番に見ていきましょう。
○月経(生理)
思春期頃に初潮を迎え、それから毎月訪れる月経(生理)。月経(生理)に伴う不調を感じている女性は8割を超えると言われています。
個人差はありますが、腹痛、腰痛、倦怠感といった身体症状に加え、気分の落ち込み、イライラなどのメンタル不調はポピュラーな症状です。また、経血量が多い場合は貧血などの疾患にも繋がりやすく、迅速なケアを要することもあります。これらの症状に翻弄され、自分らしくいられない経験をした女性も少なくないのではないでしょうか?
ちなみに、妊娠・出産の機会が減少した現代社会では、月経回数は昭和初期の約9~10倍(!)になっているそうで、フェムテックのカオスマップを眺めてみても最も勢いのあるトピックであるように感じます。
月経(生理)に伴う不調(PMS、PMDD)についてはこちらの記事で詳しく解説しています。ご参考にどうぞ!
精神科医監修|PMS・PMDDのトリセツ|解説から対処法まで
○妊娠、出産、産後
妊娠初期から身体には大きな変化が生じます。具体的には悪阻が始まり、吐き気が生じたり、これまで気にならなかったもの(においなど)に敏感になったりします。それに伴い、落ち込みやイライラなど気分の波が生じる場合もあります。少しずつおなかが大きくなってくると、腰痛が生じたり睡眠の質が下がったりすることもあります。
産後は赤ちゃん中心の生活になり、1日のリズムが大きく変わります。授乳やお世話のために睡眠不足にも陥りやすくなります。また、母乳の分泌による身体の変化や、落ち込みやすい、不安感といった不調をきたしやすくなるタイミングでもあります。
フェムテックカオスマップを見ていると月経・生理関連の次に勢いのあるトピックが妊娠・出産・産後ケアですね。
こちらは周産期をサポートする弊社サービスのご案内です。必要時はお気軽にご利用ください!
【じぶん mo いちばん】妊娠・出産・子育てカウンセリングプログラム
○更年期、閉経
閉経の前後5年程度のことを更年期と呼びます。よく耳にする症状としては、疲れやすい、ほてり、発汗、イライラ感、不眠などがあります。これらの症状が生活に支障をきたしている場合、医療機関では更年期障害と診断されることがあります。
閉経の平均年齢は約50歳です。40代後半~50代前半は、キャリアを重ねて重要なポストにおられることもあるでしょう。子育て中であれば、子どもが大人へと成長するタイミングなので見守るエネルギーを要することもあると思います。
この時期を自分らしく乗り切るためには、我慢し続けるのではなく早めに専門機関へ相談することをお勧めします。
3つのライフステージに生じる健康課題による懸念点として、心身上の健康課題によってパフォーマンスが発揮できない状態=プレゼンティーズムがあります。特に月経や更年期に伴う不調は『しんどいけど休みを取るほどではない』と本人が考えておられるケースを多く耳にします。
女性の社会進出が進む中、経済産業省は“女性の健康課題に対応し、女性が働きやすい社会環境の整備を進めることが生産性向上に結び付く”としています。実際、月経関連の症状による労働損失は年間で4911億円にのぼるとも…。身体の仕組み由来の不調なので完璧にコントロールすることは難しくもありますが、ホルモンバランスの変化に翻弄されすぎないための工夫は重要ですね。
【参考】
女性ひとりひとりが自分らしく生きていくために、これまでに様々なフェムテックサービスが展開されてきました。具体的には、月経に伴う不快感を軽減させる月経ショーツや月経カップ、ホルモンバランスによる心身の変化を緩やかにするサプリメント、妊活に向けたセルフ検査キット、デリケートゾーンのケア用品などがあります。
こういった身体のケアと同時に、メンタルヘルスを意識するべきタイミングもあります。メンタルヘルスケアの必要性を感じながらも、忙しい毎日の中でどうしても優先順位が下がってしまうことはありませんか?例えば、月経痛があった場合、痛みを抑えるために服薬するといった対処をされる方もいらっしゃるでしょう。一方、落ち込みやイライラ感が出てきた場合はどうでしょうか?多くの女性が『生理前だししょうがない』と我慢されていることもあるのではないでしょうか。
フェムテックにおける『テクノロジー』。ITを思い浮かべる方が多いかもしれません。知識の実用化という点で言えば、メンタルヘルス領域においても新しい発見や実用化に向けたアイデア・実践例がたくさん生まれています。女性のメンタルヘルス課題を解決する選択肢として、メンタルヘルス専門職の立場からいくつかのアイデアをご紹介しますね。
〇メンタルヘルスのためのリラクゼーション法
女性のメンタルヘルスへのアプローチとして、メンタルのリラックスを促進する心理療法があります。その1つがマインドフルネスです。マインドフルネスとは、過去の出来事や雑念に囚われず「今ここ」に焦点を当てて受け入れる手法です。まだ数は少ないですが、月経周辺症状や更年期の不快な症状(主に不安感や気分の落ち込みなど)に寄与するとした研究があります(山口、栗林、大野、佐藤(2018)/三好、永浦、岩井(2013))。周産期のケアとしてマインドフルネスを活用している事例もあるようです。
【参考】
三好裕子、永浦拡、岩井圭司(2013)更年期の身体的精神的症状に及ぼすマインドフルネスの影響, 心身医学53(9), 865-873
身体をリラックスさせることでメンタルヘルスに寄与することを期待した自律訓練法といったアプローチがあります。とある調査において、自律訓練法は月経前症候群(PMS)の対処方法として女性からのニーズが高いという結果が得られていますが、まだまだ認知度は低いのではないでしょうか…?同調査では、Webを用いた学習に対するニーズが明らかになっており、この辺り、女性特有の健康課題をテクノロジーで解決するというフェムテックのコンセプトまさに、ですね。
【参考】
駿河絵理子(2016).子供と同居していない正社員女性における月経前症候群の症状と職業性ストレスおよびセルフケア学習ニーズとの関連,国際医療福祉大学学会誌21 (2), 18-30
自律訓練法の詳細については下記ブログ・動画をご参照ください。動画は自律訓練法を基礎から学び、ご自身で学習していただけるような作りにしてみました。
【臨床心理士によるリラクゼーション】ホットレってなに?編
〇誰かに話してみる
家族や友人などの身近な存在に話してみることもメンタルヘルスを整える選択肢の1つになるでしょう。ご自身の中にある思いや考えを一旦アウトプットしてみることで、より整理されて突破口が見つかる例も少なくありません。突破口を見つけ出す目的でなくとも、『自分のことを話す(自己開示)』こと自体が、メンタルヘルスやストレス対処に効果的です。
なお、『反芻』と呼ばれる状態においては、悪い方悪い方にグルグル考えが巡ってしまい悪循環を形成しがちです。背景にうつ病が隠れていることもありますのでメンタルヘルス専門職を活用することもお勧めします。
【参考】【精神科医師監修】マインドフルネスとは③効果、副作用を解説!
〇医療機関受診
メンタルヘルスに限ってみても、生理周期に伴う不調である月経前症候群(PMS)や、月経前気分の不調が顕著である月経前不快気分障害(PMDD)、産後うつ病や産褥期精神病、更年期障害に伴うメンタル不調などなど女性特有の健康課題はたくさんあります。女性特有のメンタルヘルス問題について、より専門的な相談ができる場所として、医療機関(産婦人科、小児科、精神科、心療内科など)は大切な資源です。
なぜなら医療機関は、他所ではできない『診断・治療』が可能だからです。これは法律によって定められており、お薬の処方もこちらに含まれます。妊活中、妊娠中であったり授乳中であったりすると、お薬を服用することに不安を感じますよね。確かに、中には妊娠中に避けるべきお薬もありますが、リスクとベネフィット(効果)を比較し服用を継続した方が良い場合もあります。治療方針について主治医の先生とよく話し合うことは、安心・安全なケアに繋がりますよ。
【参考】
駿河絵理子(2017)月経前症候群および月経前不快気分障害にある勤労女性の症状とセルフケア学習ニーズに関連する要因, 聖徳大学研究紀要 聖徳大学 第28号 聖徳大学短期大学部 第50号, 59-64
【執筆】 若丸(公認心理師・臨床心理士・健康経営アドバイザー) 女性特有の話題はこれまで声を上げにくい風潮がありましたが、女性が積極的に社会進出するようになって徐々に変わってきたようにも感じます。参加したフェムテックトーキョー2022においても、来場される男性が思っていたより多かった印象でした。 社会背景によってニーズは異なり、フェムテックサービス・商品にもまた変化が生じるかもしれません。私たちがフェムテックに関連したサービスを考える際に時代の流れに沿って、より柔軟に対応することが大切なのだと改めて感じました。
【監修】 本山真(日本医師会認定産業医|精神保健指定医|医療法人ラック理事長) |