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タグ : TAKUYA(公認心理師・臨床心理士) , ストレスチェック , メンタルヘルス対策 , 産業精神保健
2024年1月26日
最終更新日 2024年8月2日
目次
皆さん,労働安全衛生法という法律をご存じでしょうか。労働者の安全と健康を確保するために定められた法律ですが,いざ調べてみようと思ってもなかなか難しいと感じてしまう方は多いのではないでしょうか。労働安全衛生法には,条文や細かな規則が多くあり,また,専門的な用語も頻繁に登場します。こういった要素が難しさにつながる要因の1つになっているのでしょう。
しかし,労働安全衛生法の基本的な考え方や内容を理解することは,労働者の権威と義務を守るためにとても重要です。今回は,労働安全衛生法の概要やポイントを解説していきたいと思います。
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労働安全衛生と一言聞いてピンとくる方はあまりいないのではないでしょうか。この言葉は「労働安全」と「労働衛生」という2つの言葉から構成されます。
それぞれ,
を意味しています。
労働安全衛生法は,この「労働安全」と「労働衛生」を確保するために,事業者と労働者に対して,様々な義務や措置を定めています。
1911年に制定された「工場法」を前身としており,1947年に「労働基準法」へ統合,のちに独立し1972年に制定されています。労働安全衛生法が制定される頃の日本は高度経済成長期の中にあり,目覚ましい発展を遂げていました。しかし,その発展のウラでは,死亡労働災害が年間6000件近く発生している状況であり,社会問題にもなっていました(この件数は近年の6~8倍の件数に値します)。
技術革新や職種の多様化が進む一方で,当時の労働基準法では対応できない部分がでてきたため,「労働基準法」から分離・独立する形で,1972年制定されました。
労働安全衛生法は労働安全衛生法施行令(政令)や労働安全衛生規則(省令)などで具体的な内容を定めています。
事業者等の義務
事業者は、労働災害防止のための法の定める最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならなりません。また,国が実施する労働災害防止に関する施策への協力も義務付けています。
安全衛生管理体制
事業場の規模・業種に応じて,事業者に対し委員会の開催や管理者・責任者の選任を義務付けています。特に(安全)衛生委員会は50人以下の事業場でも実施することが望ましいです。もしもの際に過失にとられる可能性があります。また委員会で話し合われたことは議事録として毎月作成し,3年間保存しなければなりません。
議事録の非保存や会議遅延に具体的な罰則はありませんが,労働基準監督署より是正勧告が行われる場合があります。なお,是正勧告後にも改善が見られない場合は違法行為となり指導対象となります。労働基準監督署の立ち入り検査(臨検)があった場合は議事録もチェックされます。
危険・健康障害の防止措置
事業者は設備や作業等による事故・怪我・病気等の危険性から労働者を守るために,事前に防止措置を講じなければなりません。また,これらの防止措置は労働者も守らなければなりません。
具体的には…
などが挙げられます。またこれらのリスクアセスメントも事業者の努力義務とされています。
事業者は労働者を雇い入れた際に,従事する業務に関する安全衛生教育を実施しなければなりません。なお,この労働者にはパートやアルバイトなども含まれます。また,労働者の作業内容が変更となった際にも安全衛生教育を行うことが義務づけられています。その他,職長への教育,危険有害業務に関する教育への義務や,安全衛生水準向上に関わる教育の努力義務などがあります。
労働者の安全確保だけでなく,労働者の健康を守るため必要なことも労働安全衛生法には記されています。事業者は,作業環境を測定し,化合物,化学物質、有害な物質のほか、騒音、振動、高温・低温、高湿度等がある場合、これらを除去ないし一定の限度まで低減させなければいけません。また事業者は、労働者の健康に配慮し、労働者の従事する作業を適切に管理するよう努める必要があります。
年1回の医師による健康診断実施も事業者および労働者の義務となっています。後述するストレスチェックの実施義務も健康保持増進措置に含まれます。
平成27年12月1日より50人以上の労働者がいる事業場でストレスチェック制度の実施が義務付けられました。
ストレスチェックの目的は大きく
の3つが挙げられます。
実施頻度は1年以内に1回です。また,常時50人以上の労働者を使用する事業場でストレスチェックを実施した場合,ストレスチェックの結果を労働基準監督署へ報告する義務があります。50人未満の事業場ではストレスチェックの実施は努力義務とされていますが,可能な限り実施するのが望ましいでしょう。
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▶6か月以下の懲役または50万円以下の罰金(法119条)
※法人にも50万円以下の罰金(法122条)
▶特別の安全衛生教育の不実施(法59条3項)
▶健康診断等に関する秘密漏えい(法104条)など
50万円以下の罰金(法120条)
※法人にも50万円以下の罰金(法122条)
▶衛生管理者の不選任(法12条1項)
▶産業医の不選任(法13条1項)
▶衛生委員会の不設置(法18条1項)
▶労働災害防止措置の不実施(法30条の2第1項)
▶安全衛生教育の不実施(法59条1項)
▶健康診断の不実施(法66条)
▶書類保存義務違反(法103条)など
化学物質規制
化学物質による労働災害防止のため,2023年と2024年の二段階に分けて改正が施行されています。ラベル・SDS通知,リスクアセスメント対象となった物質が大幅に増加したほか,ばく露低減措置の義務付けや,対象の事業者に対し化学物質管理者選任の義務付けが追加されています。
一人親方等への保護義務
これまで労働者に当てはまらなかったいわゆる「一人親方」などの請負人に対して,排気装置等の設備稼働や義務付けられている作業方法の周知等の措置が義務化されています。また,同じ作業場所にいる労働者以外の人(一人親方,他者労働者,資材搬入者,警備員等)に対する措置義務も追加されています。
【執筆】 TAKUYA(公認心理師・臨床心理士) 労働安全衛生法は毎年のように改正されている法律です。労働者の安全と健康を守るためにも,常に最新の労働安全衛生法を把握しておきたいですね。
【監修】 本山真(日本医師会認定産業医|精神保健指定医|医療法人ラック理事長|宮原メンタルクリニック院長) |