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タグ : オンラインカウンセリング , メンタルヘルス , 籔(公認心理師・臨床心理士)
2020年8月15日
最終更新日 2024年2月10日
目次
“カウンセリング”という言葉を聞いて、皆さんはどんなシチュエーションを思い浮かべますか?
カウンセラーと部屋に2人きり、じっくりと話をする。
マニアック(?)な方は、寝椅子に横たわって話をするなんてイメージをもってらっしゃるかもしれません。
“カウンセリングは病院に通っている人が利用するもの”と思ってらっしゃる方もいますよね。新型コロナ感染症(covid-19)により私たちの生活様式は変容しました。カウンセリングも例外ではありません。皆さんのカウンセリング業界への様々なイメージに【オンライン』という新たなイメージが加わるかもしれません。
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2020年新型コロナウイルス感染症拡大に伴い突如として訪れた”新しい生活様式”。新型コロナウイルス感染症の5類移行後においても、講義や授業、会議など、様々な場面でオンラインのやり取りをする機会が増えた方いらっしゃるのではないでしょうか。カウンセリング業界においても「オンライン」という形式が急速に拡大し定着した感があります。カウンセリングの歴史を振り返れば、遠隔でカウンセリングを提供しようとする流れは以前からありました。ツールの進化に伴い、近年はLINEなどSNSでのカウンセリングという発展を遂げています。
今回は、遠隔カウンセリングの一種、ビデオ通話を利用したカウンセリングをオンラインカウンセリングと定義したうえで解説しようと思います。ビデオ通話というと、テレビ電話やSkype、Zoom等のシステムを利用した通話をイメージしていただくとわかりやすいでしょう。より対面に近い雰囲気でカウンセリングが行えることが大きな特徴だといえます。
オンラインカウンセリングは、近年徐々に増加してきている比較的新しい形式のカウンセリングサービスです。通信技術の進歩、利用できるツールの発達に伴いスマホ等でのビデオ通話が当たり前になってきた今だからこそ拡大しているサービスだと言えます。従来の遠隔カウンセリングでは、電話やメール(更に遡れば手紙という方法もありました)、直接顔を見て話すことはありませんでした(顔が見えないからこそ、色々思いを馳せる部分はありますし、決して優劣の話ではございません)。
従来型の遠隔カウンセリングと比較すると、オンラインカウンセリングは最も対面に近い遠隔カウンセリングの形態だと言えます。その可能性については海外でも注目されており、うつ病や強迫性障害の治療に対しオンラインでの認知行動療法(厚生労働省HP)はエビデンスが蓄積されてきています。
関連項目:認知行動療法とは?認知再構成法と行動活性化【精神科医監修✕公認心理師解説】
では、ビデオ通話は対面型のカウンセリングと完全に同じなのか。そこはやはり完全一致というわけではなく、オンライン、対面それぞれにメリット、デメリットがあるように感じています。オンラインカウンセリングを担当してみて『メリット、デメリットを天秤にかけてどちらを選ぶか』という話であって優劣の話ではないのかなと感じています。
カウンセリングをオンラインで行なうメリットをいくつか紹介しましょう。
新型コロナウイルス感染症拡大を経て、オンラインフィットネス(パーソナルトレーニング)やオンラインヨガプログラムなど多くのユーザーファーストなビジネスモデルが生まれました。カウンセリングも同様です。対面のカウンセリングですとどうしても“通わなくてはなりませんでした”(当たり前ですけど)。
自宅からの距離を考慮する必要がありますし、学校や仕事の時間や家庭の予定を調整したりして通うための時間を捻出する必要があります。学派によっては、予約を守り時間や手間をかけて通うこと=主体的にカウンセリングに臨む姿勢にこそ意味がある、という考え方もあるにはあるんですが、実際には定期的に『通う』コストがネックになってカウンセリングをあきらめてしまっている方もいらっしゃると思うんですよね…(フィットネスジムの入退会を何度繰り返したことか…)。
【参考】癖なの?病気なの?【先延ばしの科学】精神科医監修ライフハック心理学#3
また、引っ越しや長期出張でカウンセリングの継続が難しくなるというケースは当然あったりします。オンラインカウンセリングはインターネットに接続できる環境さえあれば、住んでいる場所に縛られることなくカウンセリングが受けられます。様々なご事情で家から出られない方、近所にカウンセリング施設がない場所にお住まいの方、定期的に通う時間がなかなか捻出できない方でも継続してカウンセリングを受けられることは、オンラインならではの意義だと言えるでしょう!アクセシビリティの向上ですね。
どこからでもカウンセリングが受けられるメリットはもう一つあります。“自宅でカウンセリングが受けられること”です。カウンセリングは、取り扱う話題によっては、とても体力を使います。
仕事終わりにカウンセリングへ。
たくさん話ができたり、考えていることをまとめられたのは良かったけどぐったり。
さて、これから帰宅するために電車に乗ってもうひと頑張り…。
仕事終わりにカウンセリングを受けるとしても、帰宅してからのオンラインカウンセリングであれば、仮にぐったり疲れても、あとはベッドに入るだけ。そのままゆっくり休めることにメリットを感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
カウンセリングの理論や学派は本当に様々です。
“日常と違う環境でこそ効果を発揮する”、という考え方もあれば、却って“日常場面での効果を広げていくことを狙いとする”考え方もあります。
何を目的として、どこで、どれくらいの頻度、どんなやり方でカウンセリングを実施するか。こうしたセッティングを、専門的には『治療構造』、『枠組み』、『枠』と呼んだりします。
『枠組み』は、カウンセリングの目的によって考慮、設定していくものなので優劣の問題ではありません。 |
自宅でカウンセリングが受けられる隠れたメリットは、テレワークによって生まれた思わぬ副産物(?)。
メンタル不調の時は、着替えや片付けといった身辺清潔が億劫になりがちです。カウンセリングに行こう。ああ服装を整えなちゃ。何を着ていこう。あれ?あの服どこにしまったっけ。時間に間に合わない…。オンラインカウンセリングはそんなキャンセル、中断を防いでくれるかもしれません。
カウンセリングにかかる費用・料金も、オンラインカウンセリングを選択するときメリットとなるかもしれません。臨床心理士や公認心理師といった資格を有したカウンセラーを指定した場合であっても、オンラインカウンセリング料金の相場は対面実施と比較して安価なケースが多い印象があります。カウンセリング自体の料金に加えて、自宅にてカウンセリングを受ける場合には特別な交通費がかからない点もコストには好影響だと言えます。「カウンセリングを受けてみたいな」と思ってはいるけど、料金や交通費といったコストがネック…。そんな方は「まずはお試しにオンラインで」という使い方もアリではないかなと思います。
*私は同じ理由でオンラインヨガを試してみました!
メリットがあれば、デメリットや問題点・注意点があるのが世の常。オンラインカウンセリングを考えるときのデメリット、問題点・注意点を紹介しておきます。
リモートワークやオンライン会議、オンライン飲み会など、若干のタイムラグ気になりませんか?喋るタイミングがかぶってしまったり、相手のリアクションがわずかに遅れるため不安になったり(高尚な言い方をしました。『あれ、すべったかな…』というアレです)。スムーズなやり取りが阻害されるとストレスですよねえ…。
オンラインカウンセリングを実施していても、あのタイムラグ確かに気になるんです。私は『慣れてしまえば気にならなくなるタイプ』(要はいい加減笑)ですが、やはり『自然な会話が難しい』と感じる方もいらっしゃいますよね。オンラインカウンセリングにおいても通信の品質は重要な課題だと思います。
あとは、すでに心の不調(うつ病や不安障害、パニック障害、発達障害の二次障害など)で精神科病院やメンタルクリニック、心療内科といった医療機関におかかりの方への注意点。オンラインカウンセリング開始にあたっては、カウンセリングの希望があることを含め、ご担当の医師に相談してください。これはオンラインカウンセリングだから、というわけではなく、カウンセリング全般に言えることです!
方針に基づいて、治療を責任もってすすめてくださっているのは主治医の先生です。
“今はカウンセリングより休養優先”
そんなタイミングで先生の知らないところでカウンセリングが実施され、結果なかなか治療が進まない…。
こういった事例は避けるべきです。
こころの専門家の国家資格、公認心理師法第四十二条2項には次のルールが設定されています。厚生労働省ホームページ『公認心理師法概要』を引用します。
公認心理師は、その業務を行うに当たって心理に関する支援を要する者に当該支援に係る主治の医師があるときは、その指示を受けなければならない。
【参考】公認心理師法(厚生労働省)
オンラインカウンセリングを担当するのが公認心理師であれば法律に基づき、主治医の先生がいるかどうか?、主治医の先生の方針は?という確認をするものではありますが、カウンセリングサービスをご希望の場合は、まずは主治医の先生に相談を!
既にお伝えしたようにオンラインカウンセリングは、比較的新しい手法だと言えます。対面による従来型のカウンセリングと比べて安全性やオンラインならではのリスクはどうなのでしょう?アメリカ心理学会(American PsychologicAssociation:APA)によるオンラインカウンセリング(遠隔心理学)についてのガイドライン(いわゆる倫理ガイド)では、セキュリティに関する指摘が確認できます。
【参考】Guidelines for the Practice of Telepsychology
つきつめれば『情報流出のリスクヘッジはしっかりと』ということです。オンラインカウンセリング実施の際は、『セキュリティレベルの高いオンライン会議システムを利用する』、『ウイルス対策を施した通信機器(スマホやタブレット、パソコン)を使用する』、『フリーWi-Fiの使用は避ける』といった対策が、安全性を高め、リスクを避ける対策となるわけです。なお、倫理ガイドには、安全性を高めるためにカウンセラーはトレーニングしなさい、という指摘もありますが、これはまあ当然ですね。
メンタルのコンディションを大きく落としているときには、自傷他害(じしょうたがい)と呼ばれる行為に注意が必要です。読んで字のごとくですが、自傷他害とは、自らを傷つける、他者を傷つけるということです。対面のカウンセリングであれば『今にも自傷他害を起こしてしまいそう』というリスクが高いときには、精神科病院につないだり、救急につなげたり、といった対応をその場で行うことができます。リスクが高まっている状態は冷静な判断をすることが難しい状態だとも言えます。我々専門家はこういった緊急時の対応についてトレーニングを受けています。
オンラインカウンセリングは自傷他害のリスクが高まっている状態に対し物理的な距離があるがゆえ、即時の対応が困難だと言えます。メンタル不調を強く自覚してらっしゃる場合は、オンラインカウンセリングよりも対面のカウンセリング(と言うよりカウンセリングよりも医療的なケア)を選択することをおすすめします。
オンラインカウンセリングのメリット
オンラインカウンセリングの注意点
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本ブログではオンラインカウンセリングのメリット・注意点(デメリット)をご紹介しました。対面であれオンラインであれ、それぞれ“合う・合わない”といった相性があることは事実です。オンラインのメリットをメリットだと感じられない方、デメリットが気にならない状況の方、種々のシチュエーションに応じて、メリット・デメリットの評価が変わってくるのは当然だと思います。「カウンセリングと言えば対面でやるもの」「対面となるとちょっとハードルが高い」という方の中には、「オンラインだったらやってみたいかも」とおっしゃる方が少なくない数いらっしゃいます。オンラインカウンセリングは「カウンセリングをしてみたいけれども敷居が高い」、「やってみたいけど通える自信がない」といった、これまでカウンセリングをあきらめていた方への一つの選択肢として提供できるサービスだと考えます。
実際にカウンセリングを受けている方の中にも、「オンライン、最初は抵抗があったが意外と合っていた、便利だった」という感想を持つ方もいれば、「オンライン希望で始めたが、実際にやったらイメージと違った、対面の方がいい」と感じる方もいます。オンライン/対面のどちらかが優れている、どちらかが正しい、どちらかが良いもの、という考え方ではなく、「オンラインという手段もある」と知っていることで、「カウンセリング受けてみようかな?」「カウンセリングを中断する必要はない」と思っていただける機会が増えたらうれしく思います。
5G(第5世代移動通信システム)が拡大することで、若干のタイムラグやネットワークの接続問題は解消されていくはずです。新たな生活様式に変わっていく中で、カウンセリングにも新たな流れが広がり、もっと気軽に、様々な選択肢をもってカウンセリングを受けられるようなシステムが広がることを願うばかりです。
【監修】 本山真(精神科医師/医療法人ラック理事長・日本医師会認定産業医)
【執筆】 臨床心理系大学院修了後、大学や精神科・心療内科クリニックに勤務。 音楽、アニメ、ゲームなどサブカル大好きです。 |