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タグ : akiko(公認心理師・臨床心理士) , メンタルヘルス対策 , 産業精神保健
2020年8月25日
最終更新日 2024年2月10日
目次
新型コロナウィルス感染症が5類に移行したのちも、新しい働き方としてテレワーク(リモートワーク)には注目が集まっています。労働人口減少に伴う”ワークライフバランスからワークライフインテグレーション”への移行においても、テレワークは重要なポイントとなります。もちろん、「今までと違う働き方をするのは慣れない」「いきなり環境が変わるのは嫌だ」と、テレワークへの移行に不安をお持ちの方もいらっしゃることでしょう。
従前は“職場に行って働く”という働き方が主流だったのですから、不安や心配、混乱は生じて当然です。しかし、働き方の選択肢が増えるということは、その分、“自分に合った働き方を選択できる世の中”になるということでもあるのです。
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従前と異なる新しい働き方としてのテレワーク。どうやらテレワークにも人によって向き不向きはあるようです。テレワークの導入がきっかけで「仕事がはかどらず、毎日落ち込み気味だ」「最近ミスが増えた」というメンタルヘルス不調を訴える方が増加している印象はあります。一方で、テレワークにより「今までよりも働きやすい」「苦手な上司と距離を置けたので、安心して業務に集中できる」という声も耳にします。最近ですと、テレワークから通常出勤に戻ったことで、「テレワーク期間は問題なかったが、通常出勤になってから仕事を休みがち」「仕事に行こうとするとお腹が痛くなる」という方もいらっしゃるようです。まさに働き方の多様性ですね。
では、実際にテレワークが向いている人、そうでない人とはどのような人なのか。見聞きしたケースをもとにほんの一例ではありますが、少しまとめてみました。
テレワークが向いている人の特徴 | テレワークが向いていない人の特徴 |
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紋切型に、“テレワークをしたほうがよい”、“テレワークをしないほうがよい”とは言いきれませんね。ある人にとってベストな働き方が、ある人にとっては働きにくい環境でもあるのです。これはテレワークや仕事に限定されず、多くのことに共通することでしょう。働き方の選択肢が増えるということは、その分、自分に合った選択肢を選択しやすくなるということです。
いずれの場合も大切なことは、実際に選択をするのは自分自身ということ。その選択によって生じるメリット、デメリットを受け入れるのも、もちろん自分自身です。安易な選択は避けて、できることなら自分にとってメリットの多い選択をしたいものですよね。
私自身のこれまでのメンタルヘルスケア実践を振り返ってみましても、
というご希望は本当によく耳にするご希望です。これは、働く人の大部分が、大なり小なり日々感じていることではないでしょうか。
自分に合った仕事を永遠に探し続けた結果、なかなか定職に就けないというパターンもあれば、合わない職場で無理をしすぎた結果、メンタルヘルス不調に陥り休職(あるいは退職)してしまうというパターンもあります。つまるところ、どちらの働き方を選んでも、リスクはつきものなのでしょう。
いずれにせよ、自分に合った仕事を知るためには、まずは自分を知ることが必要です。そのうえで、「こういう職場はどうだろうか」「こういう工夫をするともっと働きやすくなるかもしれない」など、働く環境や働き方についてあれこれ考えて試してみることをおすすめします。自分に合った仕事を考えるうえで、覚えておいていただきたいのは、『職種や業種というよりも職場環境や働き方に注目すべし』ということです。
例えば、接客業一つとっても、あらかじめ話す文言が緻密にマニュアル化されている職場もあれば、臨機応変な対応(アドリブ)が求められる職場もあります。「人と話すことが好きだから、接客業に就こう」と就職した職場が、コミュニケーションがマニュアル化された環境であれば、窮屈さや物足りなさを感じるかもしれません。
一方で、「人と話すことは得意ではないけど、物事を覚えることは得意だし、台本があれば話すことができる」という人であれば、対応がマニュアル化された職場であれば問題なく働くことができるでしょう。このように、職種や業種は大まかな指標とはなりますが、実際に働く上では職場環境や働き方のほうがより重要度が高いのです。
自分を知り、自分のタイプを上手に活かして働くことをイメージしていただきやすいよう架空事例を2つほどご紹介しましょう。
ケースA:一つのことに集中すると無敵なOさん
Oさんの尊敬する上司は、いつも複数の案件を同時進行でこなしています。
Oさんはそんな上司に憧れ、次第に上司のように複数の案件に同時に取り組むようになりました。
しかし、上司のようにうまくはいかず、「あ、ここ間違ってる!」「こっちに気を取られているうちに、あっちをやり忘れてた!」「締め切りに間に合わない!」等々、うっかりミスを多発するようになりました。
状況を見かねた上司が、Oさんと面談の機会を設けてくれました。
Oさんは上司との面談を通して、「自分は同時に複数の作業を行う(マルチタスク)よりも、一つずつ順番に素早く作業をこなしていく(シングルタスク)ことが得意なんだ」ということに気が付きました。
上司から『自分はマルチタスク派だから、同時進行で作業をしているけど、Oさんはシングルタスク派ならなるべく一つずつ作業を進めていったほうがいいかもね』とアドバイスをもらいました。
上司のアドバイスをもとに、Oさんは仕事の進め方を工夫するようになりました。
具体的には、その日にすべき業務を書き出し、優先度の高い業務から順番に、「Aが終わったらB、Bが終わったらC」と一つずつこなしていくようにしました。
その結果、やり忘れなどのミスは減り、Oさんの「一つずつ丁寧に作業をする」という強みが生かされるようになりました。
ケースB:移り気なTさん
Tさんは一つのことに集中してとりくむことが苦手で、どちらかというと短期集中型です。
職場でも、集中力が続いているうちは、次々と作業をこなしていくことができるのですが、集中力が切れてしまうと「この作業飽きたなあ…。」と、ぼーっとしてしまい、上司の話も頭に入らず、ミスや締め切りに間に合わないといったことがよくありました。
Tさん自身、自分が短期集中型ということは自覚があるため、自分なりに働き方を試行錯誤してみることにしました。
Tさんが行った工夫として、集中力が切れた時に行う用の別の作業(さほど集中力を要さない事務処理など)を用意しておく、自分の集中力の持続時間を把握した上でタスク管理をするなどがありました。
その結果、今まで集中力が切れてぼーっとしていた時間を有効活用することができ、今までよりも業務がはかどるようになりました。
Tさん自身も、「無理やり集中しようとする」ということが減り、以前よりも仕事のストレスが減ったようです。
このように、Tさんは働き方を工夫することで「集中力が続かない」という特性を「一度に複数のことに取り組むことができる」という強みとして仕事に生かすことができるようになりました。
このように、自分らしい働き方を選択するということは、“自分のタイプ(=特性、特徴、個性)を知り、自分のタイプに合った働き方をする”と言い換えることができます。“自分のタイプに合った働き方をする“ための手段は多種多様です。先ほど挙げた2人の例では、それぞれ作業の進め方を工夫するという手段をとっています。
他にも、転職により職種そのものを変えるという手段や、上司等と相談して働き方を変えてみる(勤務時間など)等の手段もあります。もちろん、職場によって選択できる手段の幅や内容は異なるものです。冒頭にも述べましたが、今後はこの“自分のタイプに合った働き方をする”ための手段としてテレワークという新たな選択肢が追加されることが予想されます。
自分に合った働き方と、自分が望む働き方は、残念ながら一致しないこともあります。その際に、自分に合った働き方を優先するのか、自分が望む働き方を優先するのかはみなさん次第です。どちらを優先してもメリットデメリットはありますし、どちらか一方しか選択できないということでもありません。
自分が仕事に何を求めているのか、職場から何を求められているのか、改めて自己認識することが今後の働き方の選択をするうえで鍵となっていくでしょう。自分の特性、価値観、望んでいること等々、「自分自身を知る」ということは簡単ではありません。「頑張っているのに、結果に繋がらない」「なぜかうまくいかない」時は、自己認識のズレとそれに伴う環境とのミスマッチが原因であることが多いようです。
【参考】
困りごとの源泉の変遷|医学モデルと社会モデルの違い。BPSモデルそして生活モデルへ
つまり、このようなお悩みをお持ちの方は、「自分のことを知っているつもり」であったり、あるいは「自分の知らない自分がいる」可能性があります。
自分を知り、自分に合った環境を選択するために何ができるか…
例えば専門機関で心理検査を受けてみる、職場の上司や同僚からフィードバックをもらう等々、方法は様々です。
人生の中で仕事が占める割合は少なくはありません。1日8時間仕事に費やし、1日8時間睡眠を取るとなると、実に起床時間の半分は仕事をしていることになります!できることなら充実したビジネスライフを送りたいものです。
【参考】