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タグ : メンタルヘルス , 若丸(公認心理師・臨床心理士・健康経営エキスパートアドバイザー)
2023年10月6日
最終更新日 2024年9月13日
目次
厚生労働省の調査によると、日本人の睡眠時間は6時間以上~7時間未満が最も多く(33.4%)、次いで5時間以上~6時間未満が26.2%を占めているそうです(参考:令和4年度 健康実態調査結果の報告|厚生労働省)。日本人の睡眠時間の短さは世界的に見てもよく指摘されていますが、実際のところどうなのでしょうか。今回は女性の睡眠に焦点を当てて解説していきます。
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月経、妊娠、出産など、各ライフステージに伴い女性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロンなど)の分泌量は変化します。思春期に初潮を迎え、その後女性ホルモンの分泌量が増加します。心身ともに大人になりつつある段階で、月経が安定するまで時間がかかることもあります。女性ホルモンの分泌量が安定する性成熟期には妊娠、出産、子育てを経験される方もいらっしゃるでしょう。閉経前後の更年期は女性ホルモンが減少し、老年期にはほとんど分泌されなくなります(参考:Mint+|年齢とともに変化!女性ホルモン|あすか製薬株式会社)。
このように様々なライフイベントを経験する中で女性ホルモンの分泌量は大きく変化します。それに伴い、睡眠の質も変化をきたしやすくなります。睡眠の質低下により懸念されるのが、生活や仕事への影響…。特に近年は働く女性が増加傾向にあることから、睡眠の質低下によるプレゼンティーズムに繋がるリスクが高まるとも言えるでしょう。
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これまでの研究により、不眠症は女性に多いことが知られています。特に‟寝つきの悪さ“を抱えている方が多いという特徴があるようです(参考:内山・降籏・今野・鈴木・金野・高橋・兼板・大井田・赤柴(2014)日本の一般成人における不眠症状と性差の関連性について|厚生労働科学研究費補助金分担研究報告書)。このような男女差が生じる要因の1つとして、女性ホルモンの分泌量による影響が挙げられます。今回は月経、妊娠、更年期に分けて解説します。
1)月経に伴う睡眠の乱れ
月経前、妙に眠くなるタイプの方がいらっしゃいます。より質の良い睡眠を確保するためのメソッドの1つは、‟就寝前には深部体温(体の中心部の温度)を十分低下させること“です。月経に伴い女性ホルモンの分泌量は増加する影響で、月経前には基礎体温が高くなります。ということは、基礎体温が高い時期にはいつもより深部体温を下げきれず、通常時よりも睡眠の質が下がってしまうリスクは高くなるのです。
【精神科医本山コラム】睡眠のメカニズム私たちにはホメオスタシス(睡眠の恒常性)とサーカディアンリズム(体内時計)というシステムが生来的に備わっています。
端的に言えば『眠くなるシステム』です。アデノシンという物質が脳内に一定量蓄積すると眠くなります。溜まったアデノシンは眠ると解消されます。いっぱいになるまで溜まって、どばーっと解消されて、また徐々に溜まって、というこの仕組みは日本庭園でよく見かける‟ししおどし“に表現されます。
起床する少し前のタイミングから深部体温が徐々に上昇し始め、活動モードに切り替わります。だいたい起床後12時間程度で深部体温はピークまで上昇し、その後は就寝に向けて下がっていきます。深部体温が十分に下がると、体はおやすみモードにシフトしていきます。 また、起床後14~16時間後には睡眠ホルモン(メラトニン)の分泌が始まります。睡眠ホルモンの分泌量が十分であることも、おやすみモードに移るときの条件です。‟起床後“と書きましたが、ここで大切なのは太陽の光をよく浴びることです!太陽の光によって脳内の体内時計に関わる部位が刺激され、適切なリズムが作られます。
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2)妊娠に伴う睡眠の乱れ
妊娠前期、プロゲステロン分泌の影響により日中の眠気が強くなります。また、妊娠後期には胎動や腰痛などの体の変化から夜中に目を覚ましやすい傾向が見られます。なお、出産後には赤ちゃん中心の生活になるため、まとまった睡眠時間を確保するのは難しくなります。
3)更年期に生じやすい睡眠の乱れ
一般的に、男女ともに加齢によって睡眠時間は短く、且つ浅くなると言われています。加えて、女性の場合は閉経後に不眠症状が出現しやすいという報告もあります。また、更年期症状としてのぼせや動悸などの症状が夜間に出現することで睡眠の質がより低下することもあるようです(参考:更年期の原因・症状と対策方法|更年期ラボ)。
女性のライフステージによって生じやすい睡眠の乱れをご紹介しました。ここからは女性の睡眠不足の対処法について解説します。
先ほど解説した内容と重複しますが、太陽の光を浴びることで体内時計のリセットを図ることができます。活動モード、おやすみモードの切り替えがスムーズであったりメリハリがついたりすることで、規則正しい、且つ質の高い睡眠を獲得できる可能性が高まります。天気や生活リズムによっては、太陽の光を十分浴びることが叶わないこともあると思います。その際はできるだけ部屋を明るくしましょう。
より良い睡眠に向けて照明、運動、入浴、カフェインなどの刺激は‟時間“を意識すると良さそうです。
照明
夕方頃から明るすぎる照明は避けましょう。同じように、就寝前のブルーライトにも注意が必要です。強い光は睡眠ホルモンの分泌を妨げる要因になります。
運動や入浴
運動や入浴は体温が上昇するため、就寝直前には避けるのをお勧めします。就寝する2~3時間前には終わらせて、その後はゆっくり過ごしましょう。
カフェイン
カフェインは摂取後30~75分で覚醒効果が最大になり、その後3~7時間は効果が持続すると言われています。就寝時間から逆算して、夕方以降の摂取は控えましょう(参考:カフェインの科学【作用と効果と副作用】精神科医監修ライフハック心理学#4)。
睡眠の恒常性の観点から、日中に寝すぎると溜めておくべきアデノシン(『眠くなるシステム』に関わる脳内物質)が不足し、結果的に睡眠の質低下に繋がる可能性が高まります。アデノシンを十分溜めるために、仮眠やお昼寝は午後3時までに15~20分程度にしましょう。
服薬が有効なケースも多くありますが、妊娠や授乳に影響が出ないかという懸念から踏み切れない方もいらっしゃるかもしれません。一方で、睡眠不足による体調不良が子育てに影響を及ぼすリスクが高まるというのも否定できません。妊娠や授乳のタイミングで服用しない方が良い薬剤があることは事実です。しかし、全く服薬してはいけないわけではありません。通常時よりも量を減らしたり飲み方を工夫したりする必要はあります。睡眠薬の使用について正しく理解するために、医師に相談することをお勧めします。
参考文献・参考資料
【執筆】 若丸(公認心理師・臨床心理士・健康経営エキスパートアドバイザー) 毎日やってくる睡眠。心身のコンディションを把握するためにも、心身のコンディションを整えるためにも非常に有用です。健康は睡眠から!朝起きたら陽の光を浴びましょう!
【監修】 本山真(日本医師会認定産業医|精神保健指定医|医療法人ラック理事長|宮原メンタルクリニック院長) |