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タグ : TAKUYA(公認心理師・臨床心理士) , メンタルヘルス , メンタル不調・精神疾患解説
2024年3月15日
最終更新日 2024年5月9日
「衝動性」という言葉。皆さんはご存じでしょうか。日常的に使う場面は少ないかなと思いますが,「衝動にかられた」経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
「衝動」を調べてみると,
①人の心や感覚をつきうごかすこと。
②反省や抑制なしに人を行動におもむかせる心の動き。
という説明が出てきます。
衝動買いという言葉に代表されるように,後先考えるより先に行動に至った際の心の過程を表現しています。
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衝動は神経伝達物質であるドーパミンやセロトニンの活動によって賦活・抑制されます(Buckholtz et al, 2010; Schweighofer et al, 2008)。ドーパミンやセロトニンは脳内で快楽や報酬に関わる物質であり,人間の行動とも密接に関わっています。
ちなみに,衝動性が生じているとき,脳の中心部分が活動的となります。人間の脳は中心部へ行けば行くほど原始的な機能を保有しているため,衝動性は本能と近しい存在にあると言えるでしょう。
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ついついやってしまう衝動行動ですが,その中身は日常生活でよくみられるものから疾病として分類されるものまで,実に多様です。日常的なもので言えば,先の「衝動買い」や,「突発的な怒り」,「興味の引かれたものにすぐ飛びつく」などが挙げられるでしょう。しかし,そういった衝動行為が生活に支障をきたすようであれば,やはり医療的・心理的介入が必要になります。
衝動性に関連する疾患は,衝動制御の障害として,アルコール依存症を含む物質関連障害,ギャンブル障害,間欠性爆発性障害,窃盗症,抜毛症などが挙げられます。上記の疾患だけではなく,その他の精神疾患においても衝動制御が障害されます。
例えば,うつでは気分の落ち込みの増悪時に,統合失調症では幻覚・妄想状態の際に,双極性障害では躁状態における気分の高揚・興奮によって,それぞれ衝動行為に及び,場合によっては自傷他害に至ってしまうこともあります。ADHD(注意欠如・多動性障害)においては,その中核症状の1つとして衝動性が挙げられ,順番を待てない,不用意な発言をしてしまう,我慢するとイライラする等の生活上の困りごととして表れます。
【参考】
また,パーソナリティ障害においても衝動性と関連があります。特に境界性パーソナリティ障害では,感情とともに衝動の制御が困難であり,性衝動,浪費,物質乱用,無謀な運転,過食などの行動として表れます。
上記のように衝動と一言で言っても,その心理特性や行動傾向によって多様な形で現れます。(学術的には”尺度”と呼びますが)チェックリストとして参考になる考え方をご紹介します。
Whiteside & Lynam (2001)は,それまであった衝動性に関連する多様な尺度や定義を統合するためにUPPS衝動性尺度を作成,のちにLynam, Smith, Whiteside & Cyders (2006)がUPPS-P衝動性モデルと呼ばれるモデルを作成しました。Kiire, Matsumoto, & Yoshida(2020)や長谷川,川端,福田,今田(2018)によって日本語版の質問紙も作成されています。
このモデルは,衝動性を以下の5つの次元から測定します。
①ネガティブ・アージェンシー(Negative Urgency)
アージェンシー(Urgency)とは,日本語で「緊急性」や「切迫性」と訳される言葉です。不安・動揺などの嫌な気分のときに後先考えない不適応な行動を取る傾向を表しています。
➁ポジティブ・アージェンシー(Positive Urgency)
こちらは前述のネガティブ・アージェンシーと反対に,ワクワク・興奮などの良い気分のときに後先考えない不適応な行動を取る傾向を表しています。
③刺激希求(Sensation Seeking)
目新しく刺激的な経験や興奮を求める傾向を表しています。危険なことに対してワクワクする傾向もここに含まれます。
④忍耐欠如(lack of Preseverance)
物事を投げ出しやすさ,継続性がない傾向,辛抱強く課題に挑むことや課題を終わらせることができない傾向を表しています。
⑤熟慮欠如(lack of Premeditation)
将来展望がない,行動する前に注意深く考えないなどの計画性や慎重性のなさを表しています。
①~⑤を読んでみて「当てはまるかも」と思った項目はありましたか?
実は衝動買いなどの行動は,当人がその衝動を認識しづらく,そのあとに続く行動がトラブルや生きづらさを引き起こしています。逆に言えば,衝動そのものへの認識が衝動コントロールへの第一歩ということになります。
【参考】
オタク臨床心理士・公認心理師は語る。収集癖は趣味なのか病気なのか
衝動性・衝動行動への心理的援助としてはアクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT:アクト),マインドフルネス,行動活性化療法,動機づけ面接等の療法が挙げられます。本人の性格や,衝動の原因などによる「療法との相性」はあるため,個人個人にあった治療の組み立てが必要になりますが,衝動性はコントロール可能なものであり,決して制御不可能なものではありません。
【参考】
もし,衝動性でお困りであれば,気軽に近隣の精神科やカウンセリングルームに問い合わせをしてみてください。
引用・参考文献
【執筆】 TAKUYA(公認心理師・臨床心理士) 今回は衝動性について、主に困りごとにつながりがちな側面について解説しました。思わずスケールアウトしがちな側面は否定できませんが、即行動が求められるシチュエーションにおいては瞬発力として強みにもなります。 “衝動性”即ち”困りごと”ではないという側面を理解していただくと、衝動性の理解が深まるかと思います。
【監修】 本山真(日本医師会認定産業医|精神保健指定医|医療法人ラック理事長|宮原メンタルクリニック院長) |