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タグ : かなた(公認心理師・臨床心理士) , メンタルヘルス
2026年10月2日

目次
皆さん、お花は好きですか?
私は好きです。
お世話があまり得意ではないので、部屋にたくさん飾ることはできないのですが、小さいころは親にお花を買ってもらい、学校に持っていくのが大好きでした。大人になってからも、お花がたくさん咲いている場所やお花畑に惹かれたり、季節の花のにおいを感じると癒されたりします。
現実的な話、大人になると、仕事や人間関係、家事、将来のことなど、いろいろなストレスや疲労が増えますよね。そんなとき、ふと道端の花を見たり、花屋さんの前を通ったり、季節の香りに気づいたりすると、少しだけ気持ちがゆるむことがあります。
もちろん、お花がすべての悩みを解決してくれるわけではありません。それでも、お花や植物に触れることは、心を整える小さなきっかけになることがあります。
今回は、お花とメンタルヘルスの関係についてお話ししていきます。
『お庭』とメンタルヘルスの関係はこちら▶お庭とこころの深い関係|自然がもたらす癒しと心の健康
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お花が心をいやす理由の一つは、「気持ちの切り替え」が起こりやすいからです。
私たちはストレスを感じているとき、頭の中で同じことをぐるぐる考えてしまうことがあります。
「あの時、ああ言えばよかった」
「明日の仕事、大丈夫かな」
「また失敗したらどうしよう」
このように、過去の後悔や未来への不安に注意が向いていると、心はなかなか休まりません。
不安との付き合い方はこちらをどうぞ▶不安が止まらないのはなぜ? 脳の仕組みから考える「考えすぎ」との付き合い方
そんなときにお花を見ると、自然と注意がお花へ向きます。
色、形、香り、花びらの質感、季節感。
お花は、視覚や嗅覚、触覚など、いろいろな感覚を使って受け取るものです。そのため、頭の中だけで考え続けていた状態から、「今、目の前にあるもの」に意識が戻りやすくなります。
これは、マインドフルネスに近い体験とも言えます。
マインドフルネスというと、瞑想や呼吸法をイメージする方も多いかもしれません。しかし、特別なことをしなくても、目の前の花を眺める、香りを感じる、きれいだなと思うだけでも、意識は「今ここ」に戻りやすくなります。
落ち込んでいる気分を無理やり明るくしようとするのではなく、いったんお花に注意を向けることで、気持ちが少し切り替わる。
それがお花の持つセルフケアとしての力の一つです。
お花や植物が心に与える影響については、さまざまな研究が行われています。
屋内に植物があることや、植物を眺めること、園芸活動を行うことは、心理的なウェルビーイングやストレス軽減に良い影響をもたらす可能性があるとされています。実際に、園芸活動や園芸療法に関する研究では、気分の改善、生活の質の向上、不安や抑うつ症状の軽減などが報告されています。
こちらもどうぞ▶精神科医監修|植物はメンタルヘルスに良い?3つの効果と3つの理由!
ただし、ここで大切なのは、「お花を見るだけで必ずストレスが消える」という話ではないということです。
お花や植物は、薬のように特定の症状を直接治すものではありません。
しかし、視覚的に心地よいものを見ること、自然を感じること、香りを楽しむこと、手入れをすることなどが組み合わさることで、心身がリラックスしやすい状態を作る可能性があります。
たとえば、花や植物を見ることで、気分が少し明るくなったり、緊張がやわらいだり、呼吸がゆっくりになったりすることがあります。これは、花や植物が「安全」「季節」「成長」「やさしさ」といった感覚と結びつきやすいからかもしれません。
お花の魅力の一つに、香りがあります。
香りは、気分や記憶と結びつきやすい感覚です。たとえば、きんもくせいの香りを嗅ぐと秋を感じる、ラベンダーの香りで落ち着く、カモミールの香りでほっとする、という方もいるのではないでしょうか。
香りは、好き嫌いの個人差が大きいものです。同じ香りでも、ある人には落ち着く香りでも、別の人には苦手な香りに感じられることがあります。そのため、「この香りなら絶対にリラックスできる」とは言えません。
ただ、ラベンダーの香りについては、不安の軽減や睡眠の質の改善に関する研究もあります。
もちろん、香りだけで不眠や不安が治るわけではありませんが、寝る前や休憩時間のルーティンとして取り入れることで、気持ちを切り替える手がかりになることはあります。
たとえば…
「この香りを嗅いだら休む時間」
「このクリームを塗ったら寝る準備」
「このアロマを使う時はスマホを置く」
というように、香りを休息の合図にすることができます。
これは、香りそのものの効果だけではなく、日々の生活の中で「休む準備を始めるサイン」として学習されることにも意味があります。
お花を見ると気持ちがやわらぐ理由には、私たちの経験や記憶も関係しています。
入学式、卒業式、誕生日、結婚式、記念日、お見舞い、送別会。
人生の節目には、お花が添えられていることが多いですよね。
私たちは小さいころから、こうした場面でお花を目にしてきました。そのため、お花は「お祝い」「感謝」「大切にされること」「季節の変化」などと結びつきやすい存在です。
本文の最初で「お花には秘めたる力がある」と書きましたが、その力は魔法のようなものではありません。お花そのものの美しさ、香り、色、手触りに加えて、これまでの記憶や文化的な意味づけが重なることで、私たちはお花に特別な感情を抱きやすくなるのです。
「お花をもらうとうれしい」
「お花を見ると少し元気が出る」
「季節の花を見ると懐かしい気持ちになる」
こうした反応は、本能だけではなく、経験や学習によって育ってきた感情でもあります。
みなさんご存じかもしれませんが、お花には色や香り、形によってさまざまな印象があります。ただし、「この花には必ずこの効果がある」と考えすぎる必要はありません。
花の色や香りの感じ方には、個人差があります。そのうえで、気分に合わせてお花を選ぶ時のヒントとして、以下のように考えてみるのはよいかもしれません。
お花屋さんで「こういうイメージで花束を作ってほしい」とお願いする時にも、こうした印象を参考にしてみるとよいかもしれません。
たとえば…
「落ち着いた雰囲気で」
「元気が出る感じで」
「やさしい色合いで」
「寝室に置きたいので香りは控えめに」
というように伝えると、自分の気分や生活に合ったお花を選びやすくなります。
ちなみに私は、カモミールのにおいが好きなので、カモミールの香りがするボディクリームを使っています。
忙しい毎日の中で、お花を生活に取り入れる方法をいくつかご紹介します。
仕事場や家に、小さなお花を一つ置いてみます。
大きな花束でなくても構いません。一輪挿しでも、ドライフラワーでも、写真でもよいと思います。
朝出勤前に見る、帰宅した時に見る、休憩中に香りを感じるなど、「お花を見る時間」を少しだけ作ってみてください。
ポイントは、長時間眺めることではなく、「今、自分は何を感じているかな」と少しだけ立ち止まることです。
その時の気分や自分の好みに合わせてお花を選ぶことも、セルフケアになります。
今日は明るい色がほしいのか。
静かな色が落ち着くのか。
香りがある方がよいのか。
見るだけで十分なのか。
お花を選ぶことは、自分の状態を確認する時間にもなります。
「今日は黄色を選びたいということは、少し元気がほしいのかもしれない」
「今日は香りが強いものより、静かな色がいい」
「今週は疲れているから、手入れが簡単なものにしよう」
このように、自分の気分に気づくきっかけになります。
一息つける時間に、アロマオイルやボディクリームで香りを楽しんだり、ドライフラワーを飾って部屋のインテリアとして楽しんだりするのも一つの方法です。
ただし、香りが強すぎると頭痛や気分不快につながることもあります。
妊娠中の方、小さなお子さんがいるご家庭、ペットがいるご家庭、アレルギーがある方は、香りの強いものや精油の使用には注意が必要です。
無理に香りを使わなくても、目で見るだけでも十分です。
大切なのは、「自分にとって心地よい形」で取り入れることです。
今回は、お花とメンタルヘルスについてご紹介しました。
お花には、気持ちを切り替えるきっかけになることがあります。お花を見ることで、頭の中の考えごとから少し離れられることがあります。香りや色、季節感を通して、自分の状態に気づきやすくなることもあります。
もちろん、お花だけで大きなストレスや不調をすべて解決できるわけではありません。つらさが長く続く時や、眠れない、食欲がない、何も楽しめないといった状態が続く時には、周囲の人や専門機関に相談することも大切です。
それでも、日常の中に小さなお花を取り入れることは、自分を少し労わる行動になります。
私はきんもくせいのにおいが好きなので、秋になると出勤と退勤の時に、つい香りを探してしまいます。
皆さんは、どんなお花が好きですか?
今日の自分に合うお花を、少しだけ探してみるのもいいかもしれません。
参考文献
【執筆】 かなた(公認心理師・臨床心理士)
【監修】 本山真(精神科医師/精神保健指定医/日本医師会認定産業医/医療法人ラック理事長) 2002年東京大学医学部医学科卒業。2008年埼玉県さいたま市に宮原メンタルクリニック開院。2016年医療法人ラック設立、2018年には2院目となる綾瀬メンタルクリニックを開院。 |