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タグ : メンタルヘルス , 田っちゃん@無職生活を経て転職しました!(公認心理師・臨床心理士)
2026年6月26日

目次
「チャッピーに聞いてみよう」
「それ、チャッピーはなんて言ってる?」
最近、職場やSNSでこのような会話を耳にすることはありませんか?
もちろん、みなさんご存知の「ChatGPT」のことです。
2026年2月に実施された生成AI利用状況調査では、全国の15歳~69歳を対象に生成AIの利用率を尋ねたところ、利用率は51%となり、ついに過半数を超える結果となりました。前年同時期の27%から大きく増えており、生成AIがかなり身近な存在になってきたことがわかります。プライベートでの利用率は46%、仕事・学業での利用率は38%と報告されています。
今やAIは当たり前の存在になりつつあります(ちなみに、このブログも元の文章は自分で書いて、AIに読みやすい形に整えてもらっています)。1、2年前には想像もできなかった光景ですよね。
AIの進化は目まぐるしく、GoogleのGemini、AnthropicのClaude、OpenAIのChatGPTなど、日々さまざまなAIサービスが使われるようになっています。少し前までは、問いかけに答える「チャットボット」という印象が強かったAIも、最近ではかなり役割が広がっています。
例えばOpenAIは、2025年1月にブラウザ操作を行うAIエージェント「Operator」を研究プレビューとして発表しました。その後、2025年7月にはOperatorの機能がChatGPT agentに統合され、AIがユーザーの代わりに複数のタスクを進める方向へと進化しています。
AIは、私たちの質問に答えるだけではなく、情報を調べたり、文章を整理したり、資料作成を助けたり、場合によってはタスクの実行まで担う存在になってきています。
とても便利です!
本当に便利です!!
しかし、この尋常ではないスピードの中で、毎週のように新しい情報を追い、膨大なAIの出力を確認し、間違いがないかを精査し続ける日々は、私たちの心と体にじわじわと負荷を蓄積させているようにも感じます。それを示すように、最近SNSや検索エンジンでは「AI疲れ」という言葉を見かけることが増えてきました。
今回は、この「AI疲れ」に関する研究や調査を紹介しながら、AIに負担を感じすぎないような関わり方をするためのヒントを考えてみたいと思います【関連項目:スマホが手放せない現代人へ|デジタルデトックスで心身をリフレッシュしましょう】。
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まず、ここでいう「AI疲れ」とは何でしょうか。
正式な医学的診断名ではありません。ただ、現代の働き方や生活の中で、生成AIを使うことによって生じる独特の疲れを表す言葉として使われ始めている印象があります。
例えば、以下のような感覚です。
ーAIに聞けば早いはずなのに、出力が正しいか確認しているうちに疲れる
ーAIツールが多すぎて、どれを使えばいいのかわからない
ーAIを使える人と使えない人の差が広がっている気がして焦る
ー自分の仕事がAIに置き換わるのではないかと不安になる
ーAIで仕事が早く終わるはずなのに、なぜか仕事が増えている
こうした感覚は、単なる「便利なものへの慣れなさ」だけでは説明しきれない部分があります。AIは便利ですが、便利だからこそ、私たちの認知的な負荷や心理的な不安を増やしてしまう場面もあるのです。
まず一つ目は、AIの普及による「雇用不安」についてです。
AIが働く人の心理に与える影響については、海外でもさまざまな調査が行われています。
例えばPew Research Centerが2025年に公表した調査では、アメリカの労働者の52%が、今後職場でAIがどのように使われるかについて「不安を感じる」と回答しています。また、33%が「圧倒される」と感じており、AIによる将来の職場変化に対して、期待だけでなく不安や負担感も広がっていることが示されています。
この不安は、単に「仕事がなくなるかもしれない」という不安だけではないと思います。
AI化が進む中で…
「自分の専門性やキャリアの独自性そのものが失われるのではないか」
「自分は交換可能な存在なのではないか」
「AIを使える人と使えない人で、職場内の評価が変わってしまうのではないか」
といった、かなり根本的な不安につながることがあります。
確かに、日々ものすごいスピードで進化していくAIを目の当たりにすると、作業を代替されるどころか、そもそも自分の従事している仕事が失われるのではないかという、自分という存在の価値そのものが揺らぐような不安感を感じるのも決して不思議なことではないと思います。
AIに対する不安は、単なるテクノロジーへの抵抗感というよりも、
「自分の仕事は何なのか」
「自分にしかできないことは何なのか」
「自分はこれからも必要とされるのか」
という、働く人のアイデンティティに関わる問題でもあるのだと思います。
次は、Harvard Business Reviewに掲載された、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)らによる研究について紹介します。この研究では、AIを仕事に取り入れることで発生する特有の疲労状態を「AI Brain Fry」と表現しています。
直訳すると「AIによる脳の焦げ付き」みたいな感じでしょうか。
少し強い表現ですが、実感としてはわかる気がします。みなさんは、AIに「嘘をつかれた」と感じたことはありませんか?AIには、自信満々にもっともらしい誤情報を出力する「ハルシネーション」があります。
そのため、AIの出力は便利でありながら、常に人間の目で「本当に合っているのか」を確認する必要があります。この確認作業が、実はけっこう疲れるんですよね。
ゼロから自分で考えるより楽なはずなのに、AIが出してきた文章や情報に対して、
ーこれは本当か?
ーこの表現は自然か?
ーこの出典は存在するのか?
ーこのまま出して問題ないか?
と確認していると、いつの間にかかなりの集中力を使っていることがあります。
BCGは、1,488人の米国大企業勤務者を対象にした研究をもとに、AI Brain Fryが従業員のミス、意思決定過多、離職意向の増加と関連する可能性を示しています。特に、AIツールを常に監視したり、出力を確認し続けたりする働き方が、認知的疲労を高めると説明されています。
これは、AIが悪いという話ではありません。むしろAIが優秀だからこそ、人間側には「確認する責任」が残ります。AIに任せる部分が増えるほど、人間は「作業者」から「監督者」や「判断者」に近づいていきます。これは一見すると楽になっているように見えますが、実際にはかなり高度な認知作業です。
ーAIの出力を見て、妥当性を判断し、修正し、最終的な責任を引き受ける
この作業は、想像以上に脳を使います。
AI疲れのもう一つの要素は、ツールが増えすぎることです。
便利なツールは本当にたくさんあります。
しかし、便利なツールが増えすぎると、今度は「どれを使うか」を判断する必要が出てきます。これもまた疲れます。本来、AIは判断を減らしてくれるはずなのに、AIツールが増えすぎることで、逆に判断が増えてしまうのです。このツール選択疲れは、日常的にはかなり大きいと思います。
「これはChatGPTに聞くべきか、Claudeに聞くべきか」
「Geminiの方が検索に強いのでは」
「画像ならどのツールがいいのか」
「会社で使っていいAIと使ってはいけないAIは何か」
こうした小さな判断が積み重なると、それだけでかなり消耗します。しかもAIは、うまく使えば成果が出るからこそ、「使わないと損なのでは」という焦りも生まれます。これがまた、AI疲れにつながっていくのだと思います。
最後に、MicrosoftによるWork Trend Indexの内容から、AI時代の働き方について考えてみたいと思います。
Microsoft WorkLabは2025年に、現代の知的労働者が「終わらない仕事時間」のような状態に置かれていることを示すレポートを出しています。膨大なMicrosoft 365の生産性シグナルなどをもとに、メール、チャット、会議、通知によって仕事が細切れになり、仕事時間の境界が曖昧になっている状況を「Infinite Workday」と表現しています。
AIは、本来この問題を解決する可能性があります。
例えば…
これは本当に助かります。ただ、その一方で、AIによってタスクを処理するスピードが上がると、空いた時間にまた新しい仕事が入ってくることもあります。
ーAIで効率化したはずなのに、なぜか休めない
ーAIで早く終わったはずなのに、次の仕事が増える
ーAIで生産性が上がったはずなのに、疲労感は減らない
これは、かなり現代的な問題だと思います。
AIを使うことで、考える力が衰えるのではないかという心配もよく聞かれます。しかし反対に、AIを使うことで認知的な作業量や思考の複雑性が上がり、疲労感を引き起こしている現状もあるようです。
AIを使う時代は、「考えなくていい時代」ではなく、むしろ「何をAIに任せ、何を人間が判断するのか」を考え続ける時代なのかもしれません。
では、私たちがAI疲れを起こさないためにできる方法は何でしょうか。ここまでの研究や調査からは、いくつかのヒントが得られそうです。
まず大切なのは、AI活用で浮いた時間を、さらに仕事で埋めすぎないことです。せっかくAIで10分早く終わったのに、その10分に次のタスクを詰め込んでしまえば、疲労は減りません。AIで浮いた時間を、少し休む時間、考えを整理する時間、人と話す時間、自分のための時間に戻すことも大切だと思います。
次に、人とのつながりを意識的に持つことです。AIは便利ですが、AIとのやり取りだけでは、どうしても人間同士のつながりは薄くなりやすいと思います。
こういった一見非効率に見える時間が、実はメンタルヘルスにとっては大切だったりします。
また、AIツールを一度にたくさん使いすぎないことも重要です便利だからといって、複数のAIを常に切り替えていると、それだけで判断が増えます。
まずは、自分がよく使うAIを1つか2つに絞り、
ー何を任せるのか
ー何は任せないのか
ーどこまで確認するのか
を自分なりに決めておくと、疲れにくくなるかもしれません。そしてもう一つ大切なのは、AIに代替されにくい人間の役割に軸足を置くことです。
こういったものは、AIが補助できても、人間が完全に手放してよいものではないと思います。
AIは情報処理が得意です。しかし、何を大切にするのかを決めるのは、まだ人間の役割なのではないでしょうか。ただ、AIはまだまだ発展途上です。
ここで対処法について「これが正解です」と断言するのは少し早い気もします。人間全体がこれからAIとの共生方法を育んでいく段階だと思いますので、使いながら手探りで、自分に合ったAI疲れを起こさない方法を見つけていくことが大切なのだと思います(こちらもどうぞ:推し疲れの原因とは何か?SNS、お金の使い過ぎ、バーンアウトに注意!)。
本日題材として取り上げた「AI疲れ」を見て、AIの台頭に対するあなたの意見はどうでしょうか?
「AI疲れなんて引き起こすAIの出現は人類にとってマイナスだ」と考えるでしょうか。それともプラスだと考えるでしょうか。
正直なところ、あまりにここ数年の成長スピードが早いために、これから先の展開の読めなさに、私自身不安になることがあります。ただそれでも、AIは人々の生活を豊かにするものでもあると信じています。
これから少子高齢化がさらに進み、労働人口不足の問題に直面する中で、AIは必ず労働力不足を補う一助となってくれるはずだからです。また、AIの登場により、今までアイデアとして持っていたけれど実現できなかったことを行うハードルが低くなったようにも感じます。
ー文章を書く
ー資料を作る
ー画像を作る
ー情報を整理する
これまで専門的なスキルが必要だった作業の一部を、AIが手伝ってくれるようになりました。
AIと人間の役割は違うはずです。AIにできる部分はAIに任せて、人間が自分の「やりたいこと」や「大切なこと」に集中でき、誰もが生き生きと生活できる社会になればいいなと願うばかりです。
参考文献
【解説】 田っちゃん(公認心理師・臨床心理士) みなさんはどのAIを使っていますか? 私はAnthropic社の「Claude」を好きで使っています。 なぜ好きなのかというと、あのオレンジのウニみたいなアイコンがもぞもぞ動くのが可愛いからです。あと、Claudeはとても人間味のある柔らかい表現を使ったり、答えられないことは誠実に「答えられない」というスタンスをとっているところに魅力を感じます。 本当に人と話しているみたいです。 このように、より人間らしくなってきているAIですが、そうなってくるとAIが隆盛した後に、人間に残る「AIでは代えがきかないもの」とは一体なんなのでしょうか。 それは、「人間の心」というものでしょうか。 AIの進化は、私たちが当たり前だと思っていた「人間としての価値」に気づかせてくれるのかもしれないなぁと、少し楽しみな気もしています。
【監修】 本山真(代表取締役社長) 精神科医師/精神保健指定医/日本医師会認定産業医/医療法人ラック理事長 2002年東京大学医学部医学科卒業後、東京大学医学部付属病院で研修。川越同仁会病院、不動ヶ丘病院の勤務を経て、2008年埼玉県さいたま市に宮原メンタルクリニック開院。2016年には医療法人ラックを設立し綾瀬メンタルクリニックを開院。2019年株式会社サポートメンタルヘルス設立。 |