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タグ : ぶち(公認心理師・臨床心理士) , メンタルヘルス
2023年12月29日
最終更新日 2024年10月22日
目次
皆さんは、夕方から夜にかけて体調が悪くなることはありませんか?夜になると熱が出やすくなったり、頭痛がしたり、体がだるくなったり…。もちろん日中の活動による疲れから夕方以降体調が悪くなることもあると思いますが、何もしない日でも夕方以降に体がだるくなることありませんか?
今回のブログでは、夕方から夜にかけて体調が悪くなる原因と、その対処法についてお伝えします。
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人間(正しくは哺乳類)には、昼と夜に合わせて体内環境を変化させる体内時計の機能が備わっています。体内時計の機能によってサーカディアンリズムと呼ばれる約24時間周期のリズムが維持されているんです。約24時間周期のサーカディアンリズムによって、血圧、睡眠、ホルモン分泌、体温が調節されています。つまり、体温が1日のなかで変動する(特に夕方にかけて体温が上昇する)のは、サーカディアンリズムがきちんと機能している証であり、正常な生理現象だと言えます(サーカディアンリズムについてはこちらをどうぞ:【眠れない方必見!】睡眠のカギは朝にある!精神科医監修不眠解消メソッド)。
ただし、早朝の体温と比較し夕方の時点で1℃以上熱が上がっている場合は要注意です。下記の可能性を考慮しましょう。
メンタルヘルスに関する情報を提供しているサイトであるからこそ『何でもかんでもストレス』に帰結することは避けたいと思います。まずは、体の病気や薬の影響によって夕方になると熱が出る知見の一部をご紹介します。
例えば、慢性的な感染症(結核、尿路感染症、ウイルス性疾患など)においては、免疫系の活動が日中と比較して夕方に活発になるため、夕方から夜間にかけて発熱することがあります。関節リウマチやシェーグレン症候群などの自己免疫疾患も夕方の発熱を引き起こすことがあります。関節リウマチやシェーグレン症候群などは、体内の炎症プロセスの一環として、特定の時間帯に症状が悪化することがよく知られています。進行したがん(特にリンパ腫や白血病)では、腫瘍関連のサイトカイン放出が一因となり、夕方に発熱する傾向があります。一部のお薬(特に抗生物質や化学療法剤など)は、夕方から夜にかけての体温上昇を引き起こす可能性があります。
医療機関にて上記が否定された場合には、ストレスの関与を考えてみましょう。ストレスが体温に影響を与える可能性については、多くの研究でその関連が指摘されているものの因果関係が明確に立証されているわけではありません。なお、ストレスによる発熱は『心因性発熱』(psychogenic fever)として知られていますが、過度なストレスや精神的な緊張が慢性的に続く場合においてストレスホルモン(コルチゾール)の分泌が乱れ、体温調節機能に影響を与える可能性が指摘されています。しかし、発熱がなぜ夕方に集中するかについてのメカニズムについては不明瞭な部分も多いというのが現状です。
『なぜ夕方になると熱が出るのか』についてメカニズムを説明する一つの考え方が”自律神経の乱れ”です。自律神経とは、活動するときに働く交感神経、リラックスするときに働く副交感神経からなっており、人の体温を維持したり、体や心のバランスをとったりしている神経です。交感神経は起床してから徐々に働きが強くなり、日中の活動を支えます。一方で副交感神経は夜にかけて働きが強くなり、就寝するためのリラックス状態を作ります(臨床心理士執筆|自律神経を整える○○は本当に自律神経を整えるのか?)。
この自律神経が乱れやすいのが夕方になります。自律神経のバランスが夕方に乱れる原因としては、体温変化や気圧などが挙げられます。人は1日の中で夕方頃に体温が最も高くなるため、体のほてりなどを感じやすいのが夕方なんです。気圧は1日の中で変化していますが、朝上昇し、夕方にかけて下降、その後また上昇して夜には下降していきます。低気圧によって自律神経が乱れることは皆さんご存じかもしれませんが、上昇・下降する気圧の変動自体も自律神経に影響するんです(参考:【精神科医監修】天気がメンタルヘルスに影響するって知ってました?)。
日中の活動量・活動時間や仕事中の姿勢などが夕方以降の体調に影響することがあります。仕事中ずっと座ってパソコンと向き合って姿勢が変わらない状態だと、筋肉の緊張状態が続いてしまいます。日中に筋肉の緊張状態が続くと、夕方頃には肩こりや頭痛などが生じることがあります(関連項目:精神科医監修|ストレスは肩こりの原因なのか?ー肩こり対策、ストレス解消法ー)。
また、日中の過ごし方は自律神経の乱れにも影響します。夜遅くまで活動し続けたり、反対に日中全く活動しなかったりすると、交感神経・副交感神経の切り替えがうまくいかなくなり、体調を崩しやすくなります。
種々のメンタル不調によっても、夕方頃に体調が悪くなりやすいことはあります。以下はその例です。
夕暮れ症候群とは、夕方から夜間にかけて、焦燥感や攻撃性、徘徊や妄想的言動などの症状が増悪する状態のことを言います。これは、日中の日照不足、疼痛や便秘など不快な身体症状、薬剤の使用などが原因とされています。例えば、日照時間が減る秋から冬にかけては、夕暮れ症候群が増えると言われています(関連項目:精神科医監修|認知症とは?加齢によるもの忘れとの違い、症状、種類を解説)。
日内変動とは、1日の内で気分や身体の調子が激しく上下することを言います。うつ病でよく見られるのは、朝調子が悪く起き上がれなかったり憂鬱な気分になったりする状態です。一方で、夕方から調子が悪くなりやすいのが非定型うつ病です。非定型うつ病の場合は、夕方から気分の落込みなどの症状が出やすいと言われています。
※非定型うつ病とは、いわゆる「うつ病」に当てはまらないタイプのうつ病のことを言います。例えば、楽しい出来事を楽しいと感じられたり、眠れないことはなかったりしますが、対人関係で強いストレスを感じたり、夕方に抑うつ気分になったりする疾患です(こちらもどうぞ:精神科医監修:適応障害と診断され休職をすすめられたらどうすればいい?)。
夕方になると熱が出る原因別に対処方法をまとめました。
日々 規則的に体温を測定し、体温の変動パターンを記録しておくことで、発熱の傾向を把握することができます。あらかじめ発熱パターンが掴めていれば、体温の変動を早期に把握できますし、適切な対応を充てられる可能性が高まります。なお、発熱している時には十分な休養と水分補給を心がけましょう。体温上昇を抑えるためには単純に冷やすことも有効です。
先述したような自己免疫疾患やがんといった身体疾患が原因の場合には、基礎疾患の治療が最優先されます。体温の変動パターン記録をもとに担当医へときちんと相談しましょう。また、感染症が疑われる場合についても、感染症の治療が重要です。『ストレスだろう』で医療機関受診をいたずらに先延ばししないよう注意しましょう。
夕方の発熱の原因がストレスである場合について、広く戦略は3つです。”ストレス反応のもとになっているストレッサーに働きかける”(問題焦点型アプローチ)、”ストレッサーの捉え方に働きかける”(情動焦点型アプローチ)、”ストレス反応に働きかける”(ストレス解消型アプローチ)です。3つのアプローチは心因性発熱に限らず、認知行動療法理論に基づくストレス全般に対するアプローチです。なお、ストレス解消型アプローチは最も手軽に取り入れられるため導入しやすい一方、時に問題解決の先延ばしになってしまう点に注意してください。関連コラムもご参照ください(【ストレスの心理学】臨床心理士が認知的評価理論をわかりやすく解説)。
【参考】医師監修|現代社会を生き抜くスキル|ストレスコーピングを解説
まずは日中の過ごし方を見直しましょう!お仕事では、デスクワークなどずっと同じ姿勢で日中過ごされる方も多いと思いますが、そのままだと身体が固まってしまいます。可能な範囲でストレッチをしたり、正しい姿勢を心掛けたりしてみましょう(関連項目:【精神科医監修】運動がメンタルヘルスに及ぼす効果ー健康経営®の活用例ー)。また、適度な運動を取り入れるのも良いでしょう。運動はストレスホルモン(コルチゾール)の分泌を調整し、ストレス反応の軽減に役立ちます。特に軽度の有酸素運動が夕方の体温上昇を防ぐ効果があるとされています。なお、過度な運動は逆に体温を上昇させることがあるため、運動の強度やタイミングには注意が必要です。より専門的なアプローチとして漸進的筋弛緩法があります。漸進的筋弛緩法は、意識的に筋肉を緊張させてから緩めることで、心身のリラックスを促進する方法です。自律神経系を安定させ、ストレス反応を軽減することが期待されます。
また、規則正しい生活を送ることも大切です。なぜかと言うと、不規則な生活を送っていると、自律神経も乱れてしまうからです。規則正しい睡眠を確保することで、サーカディアンリズムが正常化し、体温変動も抑えられるかもしれません。とは言え、日によって睡眠時間が取れなかったり、時間がなくて食事が取れない時があったり、忙しい時には中々規則正しい生活が送れないことがあると思います。できれば計画的にお仕事も進めていきたいところですが、難しいこともありますよね…。そんな時は、自律訓練法を生活の中で取り入れることをお勧めします(自律訓練法とは|公認心理師がリラックス法を解説!)。また、マインドフルネスも効果が期待できるかもしれません(参考:【精神科医監修】マインドフルネスとは②仕組みとやり方)。特にマインドフルネスストレス低減法は、心身のリラクゼーションを目的とし、瞑想や呼吸法を取り入れたプログラムであり、慢性的なストレスによる身体症状、特に自律神経系への影響を抑えるため、体温調節に有効とされています。
参考文献
【解説】 ぶち(公認心理師・臨床心理士) 忙しい生活の中で普段の過ごし方を振り返るというのは意外と難しいと思います。少し気持ちや時間の余裕がある時に、自分がどんなふうに1日を過ごしているのか、忙しい時はどんな生活をしているのかなど振り返ることをお勧めします。 不調が大きくなる前に対処するためには、自分は忙しい時こんなふうに過ごしていて、こういう不調が生じるかも…といったことに早めに気づくことが大切です!
【監修】 本山真(精神科医師/精神保健指定医/日本医師会認定産業医/医療法人ラック理事長) 2002年東京大学医学部医学科卒業。2008年埼玉県さいたま市に宮原メンタルクリニック開院。2016年医療法人ラック設立、2018年には2院目となる綾瀬メンタルクリニックを開院。 |