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精神科医監修|ストレスは肩こりの原因なのか?ー肩こり対策、ストレス解消法ー

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2023年2月17日

ストレスは肩こりの原因なのか、精神科医監修で肩こり対策、ストレス解消法も解説

 

一度でいいから、肩こりを知らなかった頃に戻りたい…。

 

常に肩こりと共に過ごしているため、よくこう思います。肩こりは日本人の多くが悩まされているいわば国民病といわれており、同じように感じている方も多いのではないかと推測します。厚生労働省の調査によると、男女ともに肩こりを訴える方は非常に多く(平成28年度調査より)、特に、女性の悩みとしては1位にランクインしています。多くの人が肩こりに悩んでいるのに、そしてその自覚はあるけれど、病院に受診するほどのことではないと感じているのです。

 

とはいえ、体に重くだるい感覚があり、ひどい場合は痛みも引き起こします。東洋医学においては、肩こりを未病(病気の一歩手前の状態)として警鐘を鳴らすほど、軽視できないものなのです。原因は様々あると言われていますが、ストレスや精神的な不調から生じる肩こりもあるのです。今回は、肩こりとメンタルヘルスについてご説明します。

 

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ストレスは肩こりの原因なのか?


ストレスは万病のもとです。「ストレスで胃が痛い」「頭痛がすると思ったら、知らないうちにストレスを感じていたらしい」等、日々心と身体の関連を感じることがあるのではないでしょうか。色々な症状として現れてくるストレスですが、強くて継続的なものは身体のみならず脳にもダメージを与えていきます。

 

ストレスがかかると、脳の視床下部という部分が反応します。視床下部から末梢神経を経て、身体の隅々まで「ストレスがかかっている」ことを伝え、備えるための指令出します。この指令の目的は「ストレスに対するための準備をする」というもの(「ストレスに対する」というのは、ストレスという敵から自分を守ろう・闘って追い払おうとするイメージです)。

 

ここから指令は二つのルートを辿り、身体に影響してきます。一つ目が、対ストレスのため、ホルモンを分泌させるルートです。この時、肩の周辺や首の筋肉を緊張させてしまうため、これだけでも血流は悪くなってしまいます。同時に、自律神経系にも指令を出し身体を興奮させる交感神経を活性化させます。交感神経が活発化すると、いわゆる「戦闘モード」になり闘う力が得られる一方で、身体には負担がかかります。これが二つ目の自律神経ルートです。交感神経が活発になっているときは血管が収縮する働きがありますので、さらに血流の悪化に影響を及ぼしてしまいます。こうして、ストレスは二重に肩こりに影響を及ぼしてしまいます。

 

 

ここまで散々「血流が悪くなる」と話してきましたが、このことの何が問題なのでしょうか。実は、血液中には酸素や栄養素が運ばれています。同時に、老廃物を運び代謝したり、ホルモンを全身に運ぶ働きがあります。その血液の流れが悪くなるということは、上記全てが不十分になってしまうということです。マッサージを受けると一時的に肩こりがよくなるのは、リラックスし、また押し出すことで血流がよくなるためともいえます。

 

肩こりの仕事への影響


近年、健康経営という経営手法が広まってきています。健康経営とは経済産業省(2018)によれば、従業員の健康保持・増進の取組が、将来的に収益性等を高める投資であるとの考えの下、健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践すること です。以下の二つの状況を想像してみてください。

 

①心身ともに何の不調もなく、仕事に取り組んでいるとき

②肩こりがつらく、頭痛もしている状態で仕事に取り組んでいるとき

 

どちらも同じ「仕事に取り組んでいる」状態です。しかし、これだけ状況が違えば仕事の成果も違ってくるのではないでしょうか。

 

 

②のように、従業員が職場に出勤はしてはいる(present)ものの、何らかの健康問題によって業務の能率が落ちている状況(つまり企業や組織の側から見れば間接的ではあるが、健康関連のコストが生じている状況)(厚生労働省保健局,2017)を「プレゼンティーズム」といいます。対比して、健康上の問題から病欠しており、働けていない状態を「アブセンティーズム」といいます。そして、驚くべきことにアブセンティーズムよりもプレゼンティーズムの方が生産上のコストは大きいと分かっています。毎年問題に上がりますが、花粉症などもプレゼンティーズムに含まれます。こういった「休むほどでもない不調」の積み重なりが、知らず知らずのうちに仕事にも影響を及ぼしているのです。

関連項目:【安心できる職場作り】ハラスメント対策の必要性・重要性|公認心理師執筆

 

ストレス由来の肩こり対策・解消法


肩こりに悩まれている皆さんは、ある意味では肩がこるほど頑張ってきたということでもあります。生きる上でストレスを完全に避けることはできませんが、ストレスをストレスと捉えにくくしたり、発散したりすることはできます。日々頑張っているご自身を労わりながら、肩こりを解消できる方法をご紹介します。

 

筋トレ

筋肉には、全身に血を押し出す力があります。そのため、筋力が高ければ高いほど、血流が良くなります。「筋肉がある=血のめぐりがよい=肩が凝りにくい」のです。筋トレはメンタルヘルスによいことが分かっていますが、肩こりを軽減することで更なるストレスを防ぎ、結果的により健康になるという効果もありそうですね。

【参考】【精神科医監修】筋トレで自己肯定感を高める!?メンタルとフィジカルの関係

 

漸進的筋弛緩法

身体から力を抜きづらいタイプの方におすすめです。身体は無意識に緊張し、姿勢を保っています。しかし、緊張しやすかったり、寒かったりといった場合には余分に力を入れがちです。そういった場合には、『逆に力を入れて、抜く』ことが効果的です。身体の部分部分に、7~8割ほどの力を入れて数秒キープします。間がきたら、息を吐きながら脱力します。どなたでも簡単にできますが、効果を感じやすい方法です。

【参考】自律訓練法とは|公認心理師がリラックス法を解説!

 

ストレッチやヨガ

運動が効果的なのはもちろんですが、もっと短時間かつ気軽に行えるのがストレッチです。ヨガには、先ほどの筋弛緩法、ストレッチ、呼吸法、瞑想、運動などリラックスするための様々な要素が含まれています。どちらも無理に身体を柔らかくしようと頑張るのではなく、ご自身が心地よいと思える状態に気付き呼吸をすることで、身体全体がリラックスしていきます。この時、「ながらストレッチ」「ながらヨガ」ではなく、とにかく今やっていることに集中してやると、より効果的です。

 

認知再構成法などの心理療法

「出来事をストレスと捉えるから、ストレスになってしまう。それなら、捉え方から見直そう。」というのが、認知再構成法です。人にはそれぞれ考え方の癖や傾向があります。ストレスになりやすい捉え方をしていた場合、それを客観的にみて「他にどんな考え方があるか」と視点を変えてみます。こうすることで、出来事をストレスと捉えにくくなることを目指す方法です。

 

認知再構成法

【画像引用】認知行動療法とは?認知再構成法と行動活性化【精神科医監修✕公認心理師解説】

 

【引用文献】


 

【解説】

maitake(臨床心理士)

今回は肩こりとストレス(メンタルヘルス)の関連について解説しましたが、背景に何らかの病気が潜んでいる可能性も否定できません。「たかが肩こり」と思わず、異変を感じたら医療機関へ相談いただくこともご検討ください。

maitakeブログ一覧

 

【監修】

本山真(代表取締役社長)

精神科医師/精神保健指定医/日本医師会認定産業医/医療法人ラック理事長

2002年東京大学医学部医学科卒業後、東京大学医学部付属病院で研修。川越同仁会病院、不動ヶ丘病院の勤務を経て、2008年埼玉県さいたま市に宮原メンタルクリニック開院。2016年には医療法人ラックを設立し綾瀬メンタルクリニックを開院。2019年株式会社サポートメンタルヘルス設立。

 

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