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タグ : maitake(臨床心理士) , メンタルヘルス , 認知行動療法・認知バイアス
2022年9月23日
最終更新日 2024年7月29日
目次
ーあなたのストレス、分析してみませんか?ー
今や、どこに行っても聞く「ストレス」という言葉。元々は、物理学の用語なのです。物に力がかかった時…例えば、丸いボールを拳でへこませた時、押した部分が歪みますよね。その歪んでいる状態=ストレスがかかっている状態、といったイメージから、そのように言われています。
これは、ハンス・セリエによって提唱された概念で、いいことも悪いことも、刺激になることは少なからずストレスになるという考え方です。私達(ボール)は、日々色々なストレスの原因(拳で押されて)によって、ストレス状態(ところどころへこんでいる)になっていますね。少しでも受け流せる方法があったらいいのに…と思ったことはないでしょうか?今回は、そんな時に使える方法の一つ「認知的評価理論」とストレス対処方法である「コーピング」をご紹介します。
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認知的評価理論とは、人がストレスを感じるときの仕組みを分析したもので、ラザルスら複数の研究者によって提唱されました。セリエのストレスの定義は「(内容は問わない)刺激があったら=ストレス」ですが、ラザルスらの認知的評価理論では「出来事×個人の解釈=ストレスになったりならなかったり」と出来事への二段階の解釈(これを、一次評価・二次評価といいます)を重視しています。つまり、出来事に対する認知(評価)が違えばストレスにならない可能性もあるということです。
では、人はどのように出来事をストレスだと認知しているのでしょうか?認知的評価理論に基づいてご説明いたします!後半では、ストレスをどうやって乗り越えていくのかなどもご紹介致しますので、是非、今のご自分の悩みに当てはめて分析してみてください。
「早起きが苦手」「苦手な相手がいる」等、なんでもOKです。
認知的評価理論に基づきストレスを分析してみましょう。まず「その出来事は、自分にとって恐れを感じるものか?」をチェックしてみてください。同じ出来事であっても『人によって恐れ(怖いな、嫌だな、困るな、と思うか)になるか』の差があります。あなたにとって『恐れになるかどうか』が重要です。
ー例えば…『部署のみんなの前で、一分間スピーチをするよう言われた!』場合
どのように感じられるでしょうか?
得意分野です! もしくは、別になんとも思わないです。という方は「恐れを感じない」つまり、ストレスにならない。一方で、苦手だと感じる方にとっては「恐れを感じる」出来事になります。
ここまでが認知的評価理論における第一段階の解釈、『一次評価』です。
次の段階にいきましょう。「その出来事には、対処できそうか?」チェックしてみてください。これを認知的評価理論における『二次評価』と言いますが、以下の点にも注意して考えてみましょう。
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ここで、何か思い当たったなら、そのアイデアを対処法として試すことができます。このように、出来事に対して「恐れることなのか」と「対処できそうか」のチェックを挟むのが、認知的評価理論です。
【認知的評価=考え方のクセ?】
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認知的評価理論に基づき出来事の評価を終えたら次は対処方法が知りたくなりますよね。ストレスへの対処方法は心理学的にコーピングと呼びます。コーピングとは、ストレスの基(ストレッサー)にうまく対処しようとすることです。
皆さんは、気持ちが落ち込んだときにどのような方法をとっていますか?深呼吸をして気持ちを切り替える、お酒を飲む、愚痴を言う、原因を解決しようとする…など、何らかのアクションを起こすことによって対処しようとしているのではないでしょうか。これら対処法の中で「よい結果に繋がるように、意識的に」行っているものがコーピングです。ストレスで心が押しつぶされてしまわないように、コーピングを使いましょう。
では、今回のストレスにぴったりのコーピングを探してみましょう。コーピングは大きく2パターンに分けられますので、以下のA・Bに振り分けましょう。今のお悩みにはどちらがより適切かも意識しながら、先ほど②で思いついたアイデアも含め、いくつか想像・分類してみてください。AとBの両方にまたがっても構いません。
A)その出来事の思いや考えを変化させられそうですか? B)その出来事を、避けたり、変えたりすることができそうですか?
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A)を「情動焦点型コーピング」といいます。
情動に注目する、つまり自分の考えや気持ちの方を変えようとします。『相手を変えるより自分が変わった方が良さそう。』という状況です。相手や原因を変えるのは至難の業ですが、考えを変えることは今すぐにでも取り掛かれます。やってみて、成長できる場合も多々あるでしょう。一方で、根本的には解決していないともいえます。明らかに環境の方に原因があり、離れなければ解決しないとなるとその場しのぎや我慢に終わってしまうこともあります。
B)を「問題焦点型コーピング」といいます。
こちらは、問題そのものを変化させる方法です。『出来事を根本的に解決したいし、変える見込みがある。』な場合がこれにあたります。例でいえば、スピーチを免除してもらう、欠席してスピーチせずやり過ごす、カンペを読ませてもらう等の対処が考えられます。しかし、相手や原因の方を変えるためには、それなりの手続きが必要となります。お金や時間、相手とのやりとりが必要になることもあり、実現が難しいことが多いでしょう。相手や環境を変えなければどうしようもない場合、最適な対処になることもあります。
今のお悩みに対して試せそうなのは、どちらでしょうか。
上記のように「ストレス」→「分析」→「相応なコーピングを探す」ことを意識していただくと、悩みが整理され、ストレスに押しつぶされることが減るかもしれません。うまく対処できたという経験が積み重なれば、この先もできるだろう、という考えに繋がります。この感覚を「自己効力感」といいます。自己効力感を高める=自分なら対処できる!と感じることですので、これ自体がコーピングを行うにあたって大切な基盤になります。対処するから上手くいき、次も上手くいくと思えて対処ができる、という良い循環が生まれるとよいですね。
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認知的評価モデルに基づくストレス理論において、ストレスコーピングはたくさんあるほどよいといわれています。対処できる方法が多い人=自分の機嫌をとる方法が多いとも言い換えられます。もし、あるコーピングに失敗しても、別のものを試せばよいからです。数があればあるほどその問題に合った方法を取り出せますので、ストレスに強くなれます。そのためにおすすめの方法が「コーピングリストを作る」ことです。自分なりの気晴らしや、趣味、楽しいと思えること、どんなに些細であってもコーピングです。
【解説】 maitake(臨床心理士) コーピングリスト作りは、認知行動療法のカウンセリングの中で用いられることもあります。もちろんおひとりで考えることもできますが、カウンセリングの中で臨床心理士など専門家と一緒に、考えを深めながら作っていく方法もあります。ストレスだらけだと叫ばれる時代、コーピングを増やして乗りこなしていきましょう!
【監修】 本山真(精神科医師) 精神保健指定医、日本医師会認定産業医、医療法人ラック理事長 株式会社サポートメンタルヘルス代表 |