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精神科医監修|テレワークでうつ病が増加?休職はできるのか?

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2022年8月26日

最終更新日 2024年1月23日

精神科医監修ブログ|テレワークでうつ病は増加しているのか?休職はできるのか?

 

新型コロナウイルス感染症の流行に伴い,私たちの生活は大きく変化しました。感染拡大防止のために,仕事,学業などを在宅で行うようになるなど,多くの人が新しい生活様式を取り入れる必要がでてきました。その中で「テレワークうつ」という言葉が生まれていること,ご存じでしょうか?このご時世ならではの精神的不調であり,様々なメディアでも取り上げられるようになりました。

テレワークでうつ病になるのか?どうしてテレワークなのにうつ病になるのか?休職はできるのか?今回はテレワークうつについて解説していきます。

【こちらもどうぞ】

精神科医監修:適応障害と診断され休職をすすめられたらどうすればいい?

 

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テレワークでうつ病になる人が増えているって本当?


勤務先におけるテレワーク制度の導入は,令和2年4月に第一回緊急事態宣言が発令された時に急増しました。その後,感染状況等の変化に合わせて,テレワークを実施する職場の割合は若干減少しているものの,テレワークを週1日以上行っている労働者の割合は,令和3年6月時点で,約6割いるという結果があります。

関連項目:新型コロナが雇用・就業・失業に与える影響|独立行政法人 労働政策研究・研修機構

 

職種別では,研究職,営業職,管理職などは約半数以上の人がテレワークを行っており,販売職,サービス職などはテレワークをする人の割合は10%以下です。現場での仕事が主である職種に就く人は,変わらず職場に出勤して仕事をしていることが分かります。このように職種によって差がありますが,全体を見ると,この情勢をきっかけにテレワークが定着しつつある職場が増えているといえるでしょう。

 

テレワークをする人からは「通勤時間を節約できる」「通勤による心身の負担が少ない」「隙間時間などを有効活用できる」などの意見が多くあります。職場に出勤して仕事をする働き方から,自宅で仕事をする働き方=“テレワーク”になったことで,仕事へのストレスが減ったという人は多いようです。

関連項目:令和3年度テレワーク人口実態調査-調査結果(概要)-|国土交通省

 

一方で,テレワークになってから,以前よりも仕事がしづらくなった,ストレスが増えた,なんだか体調が良くない,など心身の不調を訴える人も増えています。心身の不調は様々な要因が重なり合って出てくることが多いため,テレワークのみが不調の原因ではない場合が多いですが,不調を引き起こす要因の一つになっています。

関連項目:テレワークでのメンタルヘルス対策について(こころの耳|厚生労働省)

 

では,「テレワークうつ」とは一体何者なのでしょうか。

 

「テレワークうつ」というのは,診断名ではありません。新型コロナウイルスの感染流行後,心身の不調が生じて通院するようになった患者の方の中で,「オフィス勤務⇒テレワークになった」という背景を持つ方が一定数いる,ということで「テレワークうつ」と呼ばれています。

 

診断だと何に当てはまるのでしょうか。弊社の母体となる医療法人HPにて「コロナうつ」に関する解説をしています。そこでは,「コロナうつ」=適応障害としてとらえることを提案しています。

 

「テレワークうつ」も,同じ解釈をすることができます。

 

<適応障害について以下のブログで紹介しています>

【精神科医監修】そのメンタル不調、サインかも?|ビジネスパーソン必見!

 

「テレワークうつ」で考えると,

  • 朝,PCを開くことや会社用携帯を見ることが億劫,こわい
  • 仕事に対する意欲がわかない
  • 仕事の作業スピードが落ちる
  • 仕事中だけでなく仕事時間以外でもリラックスしづらく落ち着かない

などがよくみられる症状です。

 

一概に,上記に当てはまるから「テレワークうつ」,というわけではありませんが,上記のような特徴があります。

 

テレワークなのにうつ病になる原因は?


では,テレワークなのにうつ病になるのはなぜでしょうか?

 

コミュニケーションの取り方の変化

オフィス勤務の場合, 同じ空間で仕事を行います。業務に関する相談や質問,依頼をしたいときに,その場でささっとやりとりしたり約束を取り付けたりしやすい環境です。また,ちょっとした雑談など,自然発生的なコミュニケーションも生まれやすいでしょう。

 

一方テレワークの場合,周囲に職場の人がいない状態で仕事を行います。職場の人とのやりとりは主にチャットやメール,電話などで行うかと思います。また,自然発生的なコミュニケーションは生まれにくい環境だと思います。裏を返せば,黙々と仕事に集中したい時に適している環境ともいえます。

 

調査では,テレワークをする人が感じているテレワークの短所として,「仕事に支障が生じる,勤務時間が長くなる等,勤務状況が厳しくなる」と答えた人は61.2%に上ります。

(ちなみに“仕事に支障が生じる”とは,コミュニケーションがとりづらいなどといったことによる業務効率の低下のことです)

 

また,「ネガティブな出来事があったときに吐き出せないことがストレスである」と答えた人が42.6%,「職場の人と雑談ができないことがストレスである」と答えた人が42.6%という結果でした。

関連項目:コロナ禍で在宅勤務を経験している労働者が感じるストレス

 

コミュニケーションのとりづらさは,テレワークをする人の多くが感じている課題といえます。例え一つ一つの相談,質問内容などがそこまで深刻ではないものだったとしても,「やりとりしづらい」「話したいけど話しづらい」といったことが積み重なっていくと,いつの間にか仕事の困り感も精神的な負担感も大きなものになります。そして,結果的に精神的不調に繋がる可能性があります。

 

 

 

精神科医本山の豆知識|一人暮らしの方がテレワークでうつ病になりやすい?

今回は『テレワークなのにうつ病になるのか』というテーマを取り上げました。オフィスワークが常であったプレコロナと比較すれば大きな環境変化ですから、心身ともに何らかの変化が生じてもおかしくありません。

 

精神科的には反応性うつ病(まあ謂わば適応障害に近しい概念ですが)という考え方がありまして、テレワークという環境変化によって生じた反応性うつ病と整理しても良いような気はしますね。

関連項目:セルフメンタルヘルス|厚生労働省

 

さて豆知識コラムは『一人暮らしの方がテレワークでうつ病になりやすいのか?』です。これはまあケースバイケースと言ってしまえばそれまでですが、職場での些細なコミュニケーションが(実は)ストレス解消になっていた方については『YES』だと言えますね。

 

”一人暮らしでテレワーク且つミーティングの予定なし”となると、誰とも話さず一日が終わるわけです。それが一過性であれば気分転換にもなるでしょうが、毎日人と話さない且ついつまで続くかわからない、となればダメージは知らぬ間に蓄積していくかもしれません。仕事が休みの日に『たまには誰とも話さない時間もいいな』というわけではないですからね。

 

ストレスマネジメントの考え方に基づけば…まずは『自分は全く会話をしない環境がストレッサーである』と発見した、と考えましょう。そのうえで各種ストレスコーピングを施すことをおすすめします。

 

問題解決型コーピング(問題へのアプローチ)としては、ルームシェアの検討などが該当しますし、情動焦点型コーピングは全く会話をしていないわけではなくSNSはしている。これならどうだろう?と考えてみるようなアプローチ、ストレス解消型コーピングは気晴らしです。一人暮らしは自由ですから制約なく気晴らしできるかもしれませんね。

 

心身の変調に気づきにくい

オフィス勤務とテレワークでは,一緒に働く人の様子について得られる情報量が異なります。オフィス勤務の場合,上司,同僚,部下と直接顔を合わせます。仕事中の様子などを直接見たり,聞いたりして「いつも通りだな」「ちょっと疲れていそうだな」など,仕事の調子,相手の調子を把握しやすいでしょう。

 

仕事の話だけでなくちょっとしたコミュニケーションの中でも,表情,話す内容などから普段との違いを感じ取ることもあるかもしれません。また,周囲の気づきが本人の気づきになることもあります。周囲から「疲れ気味?大丈夫?」などと声をかけられてハッとした,という方,いるかもしれません。自分の心身の変調に気づきにくい,ということは実は結構あります。

 

さすがに急激に調子が悪くなったら気づくと思いますが,徐々に調子が悪くなっていく場合,自分ではその変化に気づかないことがあります。さらに,仕事に追われていたり没頭していたりすると,自身の変調に目を向ける余裕がなくなりがちです。そのような時に,第三者からの気づきは自身の変調に気づくための大事なきっかけになるのです。

 

テレワークの場合,職場の人は周囲にいない状態で仕事を行います。上司や同僚などへの相談,質問,報告などをチャットやメールで行う場合,相手の表情や話しぶりなどは分かりません。電話の場合も,例えばよほど疲れた声で話さない限り,相手の調子を読み取ることは難しいと思います。すると,本人が限界を迎えてから上司が初めて本人の不調を知る,といった事態になることがあります。

 

テレワークとの相性

自分とテレワークとの相性がよいかどうか,ということも大きなポイントです。職場という環境で仕事をした方が頭を切り替えられる,という人もいれば,自宅でも自分なりの切り替え方法を持っているから問題ない,という人もいます。

 

テレワークが導入されてから仕事がしやすくなった,という人の中には,通勤をストレスに感じていたが通勤時間がなくなったため楽になった,という意見があります。仕事をする時は静かな環境で集中したい,という人にとってはむしろテレワークの方が向いているかもしれません。

 

大切なことは,どちらの方が優れている,ということではなく,どんな働き方が自分に合っているか,ということです。テレワークうつになる方の中には,今の働き方が合っておらず不調をきたしている可能性があります。

 

<テレワークとの相性については,以下のブログにて詳しく解説しています>

【公認心理師執筆】自分に合った働き方の選択|新しい働き方としてのテレワーク

 

テレワークでの勤務でも休職は可能?


「通勤するわけではないし,仕事はするけど家にいるから休職するのは難しい…?」

そんな話を聞いたことがあります。テレワークで休職はできるのでしょうか。

 

結論から言うと,休職できるかは会社によります。

 

そもそも休職制度というのは,法律で義務付けられているものではなく,各企業が独自に定める制度です。もし休職制度のない会社である場合,休職することはできません。そのため,まずは勤め先に休職制度があるかどうか確認することが必要になります。

 

次に,休職制度の内容を確認します。

どのような病気で,

どのような理由があって,

どのくらいの休職期間で,

どのような働き方をしていて,

・・・

など,休職の要件も企業によって様々です。

 

ご自身の状況と休職の要件を照らし合わせて,休職が可能か確認します。病院を受診して医師が「休職が必要」と判断したら,診断書を会社に提出する,という流れが多いと思います。新型コロナウイルス感染症関連でテレワークが新しく導入された企業は,休職制度が新しくなっているかもしれません。一度確認してみるとよいと思います。

【休職中の過ごし方についてはこちらもどうぞ】

【精神科産業医監修】学校では教えてくれない休職中の過ごし方

 

【参考資料】

 

【執筆】

盛光(公認心理師・臨床心理士)

今回はテレワークうつについて解説しました。現在,メンタルヘルス対策として体調などを定期的に報告するシステムを導入する企業もあるようです。テレワークで顔を合わせる機会が少ない分,企業側も本人からも積極的に情報共有を行い,不調のサインを見逃さないことが大切であるように思います。テレワークに限った話ではありませんが,自身の体や心の調子に耳を傾け,不調が続くようであれば,一度医療機関への受診も検討してみてはいかがでしょうか。

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【監修】

本山真(精神科医師/精神保健指定医/日本医師会認定産業医)

 

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