ブログ

【公認心理師が解説】スイーツで心も体もリフレッシュ!甘いもののメンタル効果

タグ : ,

2025年2月14日

メンタルを整える甘いものの力

皆さんは甘いもの、お好きですか?

「甘いもの」と言っても、ケーキやドーナツなどの洋菓子、お饅頭やお団子などの和菓子、はたまたチョコレートやラムネなどのいわゆるお菓子…と人によって想像されるものは違うと思います。私にとってケーキやマカロンなど見た目にも鮮やかな洋菓子たちは、食べることはもちろんですが、眺めているだけでもハッピーな気持ちにさせてくれるアイテムで、学生時代にはケーキ屋さんでアルバイトをしていたほどです。

私の場合、たまたま対象になったのが「甘いもの」だっただけで、自分が好きなものを見たり食べたりしていればだれしも当然ハッピーな気分になるだろうと思っていました。つまり、ラーメン好きな人ならラーメンを、お寿司が好きな人ならお寿司を食べたり関連する情報を見たりすることでハッピーなのではないかと。ところが、甘いものを食べたあとに幸福感を得るメカニズムにはちゃんとした理由があったのです(関連項目:栄養がメンタルを安定させる?【栄養精神医学】食事とメンタルの深い関係)。

 

【解説】

ふ~みん(公認心理師)

ふ~みん記事一覧

今回は甘いものとの関連のある2種類の幸せホルモンをご紹介していますが、他にも妊娠や出産時、スキンシップ等で肌が触覚刺激を受けたときに多く分泌されると言われている「オキシトシン」、マラソン等苦しさを感じた後に鎮痛・抗ストレス作用のために達成感や陶酔感を出現させる「β(ベータ)エンドルフィン」というホルモンも幸せホルモンと呼ばれるものです。それぞれの役割や働きがありますので、ご興味のある方はぜひ調べてみてくださいね。

 

【監修】

本山真

医師、精神保健指定医、日本医師会認定産業医

東京大学医学部卒業後、精神科病院・診療所での勤務を経て、さいたま市に宮原メンタルクリニックを開院。現在は株式会社サポートメンタルヘルス代表に加え、2院を運営する医療法人の理事長としてメンタルヘルスケアに取り組んでいる。

 

甘いもので癒される理由ーセロトニン・ドパミンの役割ー


甘いものにはほとんどの場合砂糖が使用されていますよね。砂糖は体のエネルギー源にもなりますが、それだけではなく脳の中でセロトニンやドパミンに働きかけることでリラックス効果を得られることが分かっています。セロトニンやドパミン…聞いたことがある人もいるのではないでしょうか。

 

まずセロトニンとは、別名「幸せホルモン」とも呼ばれる脳内の神経伝達物質で、不安感や緊張感を緩和させ、気持ちを落ち着かせたり脳を活性化させたりする働きを持っています。脳の興奮を抑えて心身をリラックスさせる効果がある一方で、不足するとイライラや意欲低下などが出現しやすくなります。うつ病の要因の1つは、脳内でこのセロトニンの分泌量が低下(欠乏)していることだと考えられており、治療に用いる抗うつ薬の中にはセロトニンを増やす作用が含まれているものもあります。

セロトニンの原料となるのはトリプトファンという必須アミノ酸で、そのトリプトファンが優先的に脳内に取り込まれるように働きかけるのがブドウ糖です。私たちが食べた砂糖は体内で素早く消化吸収されブドウ糖となり、トリプトファンが脳内に取り込まれるのを促進し、セロトニンの生成を助けます。牛乳、チーズなどの乳製品や卵にもトリプトファンが多く含まれているので、ケーキに使われている材料はセロトニンを作り出すのに適していたのですね。

 

 

次にドパミンとは、目標を達成したときや楽しいことを体験しているときなど欲求が満たされたときに脳内で放出される神経伝達物質です。こちらも「幸せホルモン」の1つで快楽物質とも言われ、快い感情や意欲・向上心に関わる役割を担っていて、褒められたりたくさん眠れたりすることでも分泌されます。何らかの行為によってドパミンが分泌され快感を得ると、脳はそれを学習し、再びあの快感を得たい、より素晴らしい気分を味わいたいと思うようになります。それが物事に取り組む動機や努力という良い形で現れれば問題ないのですが、悪い形になってしまうと依存症や中毒状態に陥ってしまいます(関連項目:依存とは何か?依存症との違いは?なぜ依存行動は繰り返されるか?)。

神経伝達物質については、弊社母体の医療法人コラムもご参照ください!

精神科医監修|神経伝達物質をわかりやすく解説

 

甘いものの摂取方法と注意点


薬物依存症、ギャンブル依存症、ゲーム依存症等でよく言われるように、やめたいと思ってもやめられない、それらから離れるとイライラして我慢できない等の状態がその例です。甘いものに関してもそれは同じで、砂糖類を摂取すると幸せな気分をもたらしてくれるのですが、一時的で長続きはしないものなのです。それどころか上昇した血糖値を下げようとする身体の働きで空腹になるとイライラや不安感が出現しやすくなります(関連項目:精神科医監修:耐えられない日中の眠気は病気なのか?)。

そうするとまた甘いものが食べたくなり、食べないと落ち着かなくなり…というループにハマってしまう可能性も…。甘いものを摂るとおいしさを感じると同時に幸福感が出現し、ドパミンによって私たちは「また食べたい」「もっとおいしいものを見つけたい」と思うのです。

 

食行動は生きていく上で欠かせないものですから、おいしいものや食べたいものを摂取することで気持ちが満たされて安定し、穏やかに過ごせるなら素敵ですよね。でも、何事にも限度はあるので、依存しないように気を付けなければいけないのです。ドパミンが減少する理由は解明されていませんが、セロトニンは高ストレスや疲労している状態では分泌量が減少したり働きが悪くなったりすると言われています。せっかくの「幸せホルモン」ですから、なるべく減少させない生活を送りたいですよね。

 

実はセロトニンはウォーキングやサイクリングなどのリズミカルな運動を適度にすることや日光を浴びることでも作られます。また、他者とのコミュニケーションやスキンシップにより感情が動くことでも脳が活発に働き増加します。年齢や性別に関わらず分泌され、日常の些細なことでも減少を防ぐことができますから、試してみる価値はありそうです。

 

例えば、暑さや寒さの関係ない過ごしやすい時期の晴れた日に徒歩や自転車でちょっとお出かけをして帰り道にケーキ屋さんに寄り、帰宅後は家族や集まった友人とそのケーキを食べる…だなんて幸せホルモンを増やすのに絶好のコースですね♪(こちらもどうぞ:精神科産業医監修|共食のメリットー誰かと一緒に食事をすることー

関連記事