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タグ : ハラスメント対策 , 中小企業 , 健康経営® , 本山真(精神科医師・産業医) , 産業精神保健
2022年3月7日
最終更新日 2024年9月17日
目次
中小企業経営者・人事担当者の皆様、2022年4月いよいよ中小企業においてもハラスメント対策が義務化されました。中小企業ハラスメント対策義務化に関しては、株式会社サポートメンタルヘルスブログにおいてもかねてから取り上げてまいりました。
【関連項目】 ハラスメント相談窓口義務化にどう対応する?【産業医解説×パワハラ対策】 中小企業様必見|ハラスメント対策義務化前に知っておきたいこと 事例に学ぶ【従業員理解に活かす職場ハラスメント対策】公認心理師が解説 【安心できる職場作り】ハラスメント対策の必要性・重要性|公認心理師執筆 |
2022年4月ハラスメント対策義務化を受けて『企業は何をすればよいのか?』、『ハラスメント対策を講じない場合罰則はあるのか?』、中小企業経営者・人事担当者の皆様が気になるポイントだと思います。本ブログでは、精神科産業医が中小企業ハラスメント対策義務化を4つのポイントに分けて解説いたします。
2022年4月より中小企業においても義務化されたハラスメント対策。義務化と言われれば何らかの対応をしなければいけないんだろうけど、そもそもハラスメント対策とは何なのか?そうお考えの中小企業経営者・人事担当者様も少なくないのではないでしょうか?
まずはハラスメント対策義務化に至る流れをおさらいしておきましょう。2019年6月『女性の職業生活における活躍の推進等に関する法律』(女性活躍推進法)等の一部を改正する法律が公布。それを受け、労働施策総合推進法、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法も改正されることになりました。2020年6月1日労働施策総合推進法改正法の施行を受け企業のパワハラ対策が義務化されることとなり、あらゆるハラスメント対策が法律で義務化されることになったわけです(中小企業は2022年3月までは努力義務とされていました)。
法律では、1.国・事業主・労働者の責務の明確化、2.事業主の雇用管理上の措置、3.事業主への相談等を理由とした不利益取扱いの禁止、がハラスメント防止対策としてまとめられています。
中小企業ハラスメント対策義務化とは、端的に言えば『ハラスメントを絶対に許さない』という企業のメッセージを具体化することだと言えます。赤文字部分が厚生労働省による対策のポイントとなります。解説しましょう。
『ハラスメントを絶対に許さない』というメッセージの具体化に際し、そもそも『どういった行為がハラスメントに該当するのか』について従業員に周知する必要がありますね。そのうえで企業代表者様それぞれの『ハラスメントは絶対に許しません!』というメッセージを打ち出す流れとなります(事業主の方針の明確化及びその周知・啓発)。
労働者が『ハラスメントを受けているかもしれない』と感じている場合、相談しやすい仕組みが必要ですし、『報復されるかも』『職場に居づらくなるかも』といった心配により相談できないという事態は避けなければなりません(相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備/併せて講ずべき措置 (プライバシー保護、不利益取扱いの禁止等))。
相談があった場合、企業内で現在ハラスメントが行われている可能性があるわけですから、相談内容がハラスメントに該当するのかどうか迅速な事実関係の調査が必要です。調査の結果、ハラスメント行為に該当した場合、迅速に対応する必要がありますし、絶対に許されない行為ですからハラスメント行為者に対しては職場として毅然とした態度を示す必要がありますよね(職場におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応)。そして、ハラスメントを二度と発生させないための策を講じる必要があります。
端的に言えばこれがハラスメント対策。まとめてみれば至極真っ当な話じゃないでしょうか?上記ハラスメント対策を具体的な行動レベルに落としたものが下表です。下表のうち株式会社サポートメンタルヘルスは、外部相談窓口の委託を承っております。
相談窓口の外部委託が推奨される理由については、以前弊社ブログにてまとめています。相談者が日々関係のある社員へとハラスメントについて相談できるか?社員から相談を受ける相談担当者の心のケアは大丈夫か?この辺りが外部相談窓口のメリットだと言えるでしょう。ご参考になさってください。
関連項目:ハラスメント相談窓口義務化にどう対応する?【産業医解説×パワハラ対策】
『義務化』と聞くと、ハラスメント対策を講じない場合に罰則があるのかどうか、気になるポイントですよね。結論としては罰則に加え、企業イメージ低下というペナルティが生じ得ます。
パワハラ防止法、セクハラ防止法、マタハラ防止法、それぞれ引用します。
厚生労働大臣は、事業主から第三十条の二第一項及び第二項の規定の施行に関し必要な事項について報告を求めることができる。
労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律
厚生労働大臣は、この法律の施行に関し必要があると認めるときは、事業主に対して、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができる。
雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律
厚生労働大臣は、この法律の施行に関し必要があると認めるときは、事業主に対して、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができる。
育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
法律上、明記されている罰則は、上記厚生労働大臣等が事業主に求める報告に関して、報告をしない、または虚偽の報告をした場合、20万以下の過料に処する、というものです。加えて、厚生労働大臣等より勧告を受けた企業が従わなかった場合、その旨、公表が可能とされています。これはつまり『ハラスメント対策義務化に対応していない企業であるということが公表される』ということです。
労働人口減少の時代において、企業イメージの低下は人材の確保・定着という観点より致命的なものとなり得るという意味で、企業名の公表は大きなペナルティだと言えるでしょう。ペナルティを避けるというのが守りのブランディングだとして、ハラスメント対策の導入については攻めのブランディングの意識をお持ちいただきたいと感じます。次節でハラスメント対策と企業ブランディングの関係を説明します。
生産年齢人口は2010年をピークに下降トレンドに突入しています(参考:国立社会保障・人口問題研究所|日本の将来推計人口)。企業の更なる成長にはフレッシュな若手の労働力が欠かせませんよね。一方で若手の求職者は減少の一途を辿るわけです。厚生労働省の調査によれば、求人数と求職者との間には既に大きなかい離が生じています。
労働人口減少の未来を生き抜く中小企業には、若手労働者に選ばれるためのブランディングが必要になるわけです。それでは若手社員にとって中小企業の何が魅力なのか。興味深い調査結果をご紹介しましょう。キャリタス就活2021学生モニター調査結果(株式会社ディスコ)“学生の中小企業を受けた理由”によれば、『会社の雰囲気がよい』43.2%と最多回答だったんです。
つまりブランディングとして意識するべきポイントは【会社の雰囲気】だと言えますね。では会社の雰囲気を向上させるためのストラテジーとは?
弊社ブログを引用します。
パワハラ対策はパワーハラスメントの予防・解決につながるだけでなく「管理職の意識の変化によって職場環境が変わる」(43.1%)、「職場のコミュニケーションが活性化する/風通しが良くなる」(35.6%)、「休職者・離職者の減少」(13.4%)、「メンタルヘルス不調者の減少」(13.1%)といった副次効果も得られるんです。
義務化である以上、中小企業にとってハラスメント対策は講じなければいけないもの。経営者・人事担当者の皆様には、副次効果によるブランディング機能を是非意識していただきたいと思います。
【執筆】 本山真(精神科医師/精神保健指定医/産業医/医療法人ラック理事長) 2002年東京大学医学部医学科卒業。2005年産業医取得。精神科・心療内科クリニックを運営する医療法人ラック理事長。 |