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産業医監修|地方創生につながる健康経営ー中小企業こそ健康経営をー

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2023年2月3日

最終更新日 2024年1月23日

中小企業の皆さんこそ地方創生につながる健康経営の視点を持ちましょう

 

“地方創生”をご存じでしょうか。地方創生とは、地方の人口減少に歯止めをかけ、且つ地方を活性化させることを目的として2014年から始まった取り組みです。弊社ブログにて取り上げている健康経営と地方創生には中小企業の皆さんにこそ注目していただきたいつながりがあるんです。今回は『地方創生をより推進させるための健康経営』という視点をご紹介いたします。

 

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地方創生と健康経営の関係


地方創生は「稼ぐ地域をつくるとともに、安心して働けるようにする」、「地方とのつながりを築き、地方への新しいひとの流れをつくる」、「結婚・出産・子育ての希望をかなえる」、「ひとが集う、安心して暮らすことができる魅力的な地域をつくる」の4つを基本目標としています。

これに加えて、「多様な人材の活躍を推進する」「新しい時代の流れを力にする」という2つの横断的目標に向けて政策が進んでいます。

【引用】地方創生 まち・ひと・しごと創生「長期ビジョン」「総合戦略」「基本方針」|内閣官房・内閣府総合サイト

 

地方創生とはつまり、地方の活性化を通じて地方を盛り上げることだと言えます。今回テーマとして取り上げた【健康経営】。健康経営とは、従業員の健康保持・増進を経営的な視点で捉え、戦略的に実践する経営手法を指します。地方の活性化と健康経営にはつながりが無さそうにお感じかもしれません。両者に共通するのは『人口減少』。人口減少という共通の社会課題に対するソリューションであるわけですから、より大局に立って運用すれば享受できるメリットが倍増する可能性があります。

 

 

【こちらもご参考にどうぞ!】

【産業医監修】健康経営とハラスメント対策の意外な関係

 

健康経営が中小企業に及ぼすメリット


健康経営を導入するメリットをご紹介しましょう。“従業員の健康維持・増進のための取り組みを積極的にしている”と認定された企業・法人(健康経営優良法人:後ほどご説明します!)は様々な顕彰制度の適用となります。顕彰制度の一例として、企業名の公表に加え、メディア露出の機会が増えることで企業の知名度アップに繋がるため広告費の節約による営業利益向上が見込めますね。また、事業資金の金利優遇などを行う金融機関も増えており、財務面のメリットも大きいと言えます。

 

なお、健康経営の取り組み自体、従業員の福利厚生という性質を持ち合わせていますが、顕彰制度の中には福利厚生をより充実させられるもの(従業員向けの住宅ローンの金利優遇、健康プログラムの職場での受講など)もあります。健康経営を通じて社会的評価が高まることで、中小企業だけでなく従業員ひとりひとりのメリットにも繋がるんですね。

 

健康経営が地方創生に効くロジック


人材確保の観点から考えても、健康経営にはメリットがあります。データをもとに解説しましょう。就職活動をしている学生が就職先に期待することとして『福利厚生が充実している(44.2%)』、『従業員の健康や働き方に配慮している(43.8%)』といった項目が上位に挙がっています。就職活動をしている学生の保護者にも同様のアンケートを行ったところ、概ね半数(49.6%)の方が『従業員の健康や働き方に配慮している』ことを望んでいるという結果になりました。

【参考】健康経営優良法人2018中小規模法人部門について|経済産業省

 

ここで、先ほどご紹介した“健康経営優良法人制度”について解説します。

健康経営優良法人制度とは、“地域の”健康課題に即した取り組みや日本健康会議が進める健康増進の取り組みをもとに、特に優良な健康経営を実践している大企業・中小企業等の法人を顕彰する制度です。

従業員の健康のための施策を行っていることを「見える化」することで、従業員、関係企業、金融機関などからの社会的評価に繋がります。

【引用】健康経営優良法人制度|経済産業省

 

 

求職者数が増加することで、優秀な人材を獲得できる可能性が高まります。優秀な人材を採用することができれば、生産性の向上が期待できるため、結果として企業のイメージアップにつながります。かねてより就職活動においては、その安定性や利便性から大都市の大企業が注目されやすい傾向にありました。新型コロナ感染症拡大を経て、新しい価値観や働き方が定着しつつある今、求職者が就職先を選ぶ条件は『大都市』『大企業』だけではありません。深刻な人手不足が進む地方都市の中小企業こそ、健康経営優良法人として高い社会的評価を受けることで同業他社との差別化を図りましょう。

 

地方創生につながる健康経営


先ほどご紹介した健康経営優良法人制度は、大規模法人部門と中小規模法人部門に分けられています。大企業、中小企業それぞれの構造に合わせた認定基準によって評価される仕組みになっていますので、中小企業の皆さんもご安心ください。なお、健康経営優良法人2021より、“健康経営優良法人の中でも特に優れた企業であり、地域において健康経営の発信を行っている企業”として優良な上位500法人は『ブライト500』と認定されるようになりました。

 

健康経営優良法人制度の申請方法や認定要件に関する情報はこちらをご確認ください。

健康経営優良法人の申請について|経済産業省

 

さて、ブライト500に認定されるためには何が必要なのでしょうか?認定要件をもとに中小企業が必ず達成するべき4つのポイントをピックアップしました。

  1. 経営理念の共有
  2. 健康づくり担当者の設置
  3. (求めに応じて)40歳以上の従業員の健診データの提供
  4. 健康課題に基づいた具体的目標の設定

 

1つずつ解説していきますね。

 

1.経営理念の共有

健康経営を導入するにあたっては、『なぜ自社に健康経営が必要だと思うのか』を経営者自身の言葉で従業員に周知します。この経営者からのメッセージを“健康宣言”と言います。

中小企業の経営者が健康宣言を行うメリットは下記の通りです。

  • 経営者が率先して健康経営を進めていくことを従業員に約束する
  • 従業員を大切にしている企業・法人であると社内外に認知してもらう
  • 従業員が健康に働き続けるための環境整備が可能になる
  • 健康問題による損失を最小限にする

 

2.健康づくり担当者の設置

経営者が健康宣言をしたのち、健康宣言を実際の取り組みに遷移させていきます。取り組みを進めるにあたっては健康経営を推進する役割を担うチームや担当者の選出が必要です。取り組みの効果を高めるために、産業医や保健師といった専門職を活用するのもおすすめです。

 

3.(求めに応じて)40歳以上の従業員の健診データの提供

健康経営とは経営手法の一種です。的確な経営を推進するうえでは各種課題の抽出が有用ですよね。健康経営も同様、自社及び従業員の健康課題を抽出することが有用なわけです。自社及び従業員の健康課題を抽出するためには定期健康診断の受診率やストレスチェック受検率をアップさせることがセオリーです。経営者や健康づくり担当者が積極的に定期健康診断やストレスチェックの重要性を発信することで、受診率100%、受検率100%を目指しましょう。

※なお、40歳以上の従業員の健診データに関しては、保険者の求めに応じて情報を提供することがあります。健診データの提供によって生活習慣病を防ぐことを目的とした特定保健指導を適切に実施することができ、自覚症状があまりない生活習慣病の早期発見・早期治療が可能になります。

 

定期健康診断のようなフォーマルなデータ収集に加えて、日常的なコミュニケーションというインフォーマルなデータ収集も侮れません。コミュニケーション場面は生の声を吸い上げることに加え、改めて健康宣言を浸透させる機会とするのも良いでしょう。各種データをもとに多角的に健康課題の抽出を試みるプロセスが必要です。

 

4.健康課題に基づいた具体的目標の設定

次のプロセスでは、健康課題の抽出に基づき具体的な目標を設定します。具体的な目標設定をするうえでのポイントは、現実的に実行できること、検証・評価のプロセスが簡単であること、の2つです。小さな行動で構わないのでできることから始めて、都度振り返って評価を行うことを繰り返します。

 

 


ブライト500の認定要件の中で、上記4項目は必須です。上記必須の4ポイントをベースとして、各々の企業が抱える健康課題に即した取り組みを継続的に推進すれば都市から離れた地域にある中小企業であっても、健康経営優良法人を目指すことは十分可能です。健康経営優良法人認定によって、従業員の定着及び優秀な人材の獲得、生産性の向上、社会的評価の向上といったポジティブな循環が生まれていきます。結果として、各所に点在しているヒト・モノ・カネという経営資源が地域に流入しやすくなり、地方創生につながることが期待できます。

 

【執筆】

若丸(公認心理師・臨床心理士・健康経営アドバイザー)

今回は地方創生に繋がる健康経営の概要について解説しました。具体的な取り組み事例については別の機会でご紹介する予定です。

健康経営の考え方の中に、職場における健康づくり(職域保健)と各自治体が主体となって行う健康づくり(地域保健)があります。これらのどちらか一方ではなく、双方が連携しながら推進することでより効果的・効率的な保険事業を展開することが可能になります。

健康経営における最終目標は、1つの企業が始めた取り組みを地域全体に広げていくことだと考えています。企業と自治体がタッグを組んで健康維持・増進に向けた取り組みを展開すると、その地域に住む人たちがよりイキイキと生活できるようになり、地方創生も自然と進んでいくのではないかと期待しています。

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【監修】

本山真(日本医師会認定産業医|精神保健指定医|医療法人ラック理事長)

 

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