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【精神科医監修】そのメンタル不調、サインかも?|ビジネスパーソン必見!

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2021年1月23日

最終更新日 2023年5月9日

メンタル不調をサインと捉える意義を解説!

ビジネスパーソンの皆様。仕事をしていて感じるストレスについてどのように対処していますか?

 

「仕事だから当たり前、我慢しないと」、「熱があるわけでもないし、これくらいで休めない、自分の心が弱いだけ」そんなふうに、ただひたすらに我慢しながら日々の仕事に向かっていませんか?はじめは些細な不調や違和感でも、何らかの対処を施さずに放っておくと悪化してしまうこともあります。体調不良と同じように心の不調も早めの対処が効果的だといわれています。

 

とはいえ、「こんなことで相談していいのかな」、「病院に行くとか大袈裟では?」、「忙しいから後回し」、こんな風に考えてしまうのも無理ありません。発熱や咳のように、はっきりと確認できる不調ではないため、なかなか言い出しにくかったり、「みんなも同じなのに自分だけ不調なんて」と思ってしまいがちなのがメンタルの不調なんですよね。

 

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そもそもメンタル不調とは?


「ひどく気持ちが落ち込む」、「何をしても楽しいと感じられない」、「身なりを整えるのがおっくう」、「朝起き上がれない」、「全然眠れない、食べられない」…こんな状態は、精神科・心療内科的に考えると、かなり重症化している状態だと言えます。実際はこのように重篤化するかなり前の段階から、メンタルの不調・病気は始まっているんです。

 

もちろん、ショックな出来事などがあった後に、急に不調をきたす場合はあります。急性ストレス障害(Acute Stress Disorder)心的外傷後ストレス障害(PTSD:Post Traumatic Stress Disorder)といった病名がそういった状態に該当します。ショックな出来事は防ぎようがないので、不調をきたした段階でなるべく早く対処するのが現実的です。先ほどの、発熱や咳といった体の不調で例えるならば、インフルエンザやノロウイルスのように、運悪く感染発症してしまったら急激に症状が悪化するイメージです。

【参考】PTSD|みんなのメンタルヘルス(厚生労働省)

 

上記のような場合を除き、多くの場合は、少しずつ着実に不調が積み重なり、気がついた時には、先ほどのような重篤化した状態に至っているのです。つまり、悪化や重症化は防ぐことができるんです。例えるならいわゆる風邪でしょうか。風邪は「ちょっと鼻水がでるな」「喉が痛い気がする」といった初期症状が出やすいため、悪化する前に休養を取ったり、栄養のあるものを食べたり、市販薬を試したり、対応できますよね。風邪も放っておくと熱が上がったり、ひどい場合肺炎などを併発したりしますが、メンタルの不調も同じです。

 

「ちょっとしんどいな」「なんか変だな」という時点で適切な対処を施すことで、早期治療による悪化の予防、他の疾患の併発の予防に繋がります。メンタルの問題を考えるとき非常に難しいのが、不調を多少自覚する程度の段階では頑張り続けてしまいやすいということです。メンタル不調やメンタルの病気は、身体の病気とは異なり、発熱や咳といったわかりやすい症状や、血液検査などのバイオマーカーなど、“これは病気、これは病気ではない”といった明確な基準がありません。

 

この曖昧さが皆さんを頑張らせてしまうのでしょうね。“病気か病気でないか”というラインが曖昧なのであれば、『自分は病気なのかどうか』にこだわらずに、『最近ちょっと寝つきが悪い』、『ちょっとしたミスが増えている』など、今顕在化している症状と、症状によって生じる困り感・辛さに注目してもいいのかもしれません。『病気だという確証がないと医療機関を受診してはいけない』なんてことはありません。あまり構えず、『○○に困っているから受診してみよう』くらいの気持ちで構わないのです。今回は、ビジネスパーソンに身近なメンタル不調のご紹介を通じてメンタル不調をサインとして捉える意義について解説します。

 

ビジネスパーソンに身近なメンタル不調


1.適応障害

適応障害とは、ストレスとなる要因がはっきりしているときに起こる不調を指します。よく見られる症状は以下のとおりです。

【よく見られる症状】

  • 仕事のことを考えると気分が落ち込む
  • 休日は元気だが、仕事がある日や前日の夜になると気持ちが沈む
  • 仕事中、不安な感じがする
  • 会社に行けなくなってしまった
  • 会社で緊張してしまって仕事が手につかない

 

適応障害は、“これがストレス!”という明確な出来事が起こった時に、比較的すぐに不調が生じることが特徴です。「先月上司に理不尽な叱責を受けてから気分が落ち込んでいる」、「先週会社で重大なミスをしてしまってから、仕事に行けない」などなど、要因となる出来事から大体3ヵ月以内にみられるメンタルや体の不調を適応障害と呼びます。もちろん、嫌なことがあったり上手くいかないことがあったりすれば、気持ちが落ち込むのは自然な心の働きです。自然な心の反応とは比較にならないほど落ち込んでしまったり、不調がなかなか回復しなかったりする状態が適応障害です。

 

適応障害である場合、ストレスの要因となるものから距離を置くことで不調は解消します。ビジネスパーソンにおいては、“仕事を変える”、“仕事を休む”、“(同僚、上司、部下など人とのトラブルであれば)対象となる相手と距離を取る”、“異動する”などが【距離を置く】ポピュラーな方法です。なお、当初は適応障害と診断されていた方の約2人に1人が、5年後には他の精神疾患へと診断名が変更されています。ある種のストレス反応ではありますが、楽観視しない方が良さそうですね。

【参考】

 

2.社交不安障害(SAD)

社交不安障害は、人と接する特定の場面で、強い緊張や不安、恐怖を感じる病気です。あがり症、シャイな性格、という言葉では片づけられないほどの強い症状、強い苦痛がみられることが特徴です。歴史的には、対人恐怖、社会不安障害といった疾患名から、『社交場面において出現する不安』ということで現在の社交不安障害と診断名となった経緯があります。

 

“仕事”において症状が出現しやすい場面と、よくみられる症状は以下の通りです。

【症状が出現しやすい場面/よくみられる症状】

<場面の例>

  • 社内外でのプレゼン
  • 朝礼での挨拶、スピーチ
  • 会議で発言する
  • 上司と話をする
  • 取引先へ訪問する
  • 電話応対をする
  • 接待での会食 等

 

<緊張したときに出やすい症状>

  • 震え
  • 冷や汗、手汗
  • 動悸、息苦しさ
  • 赤面
  • 腹痛、下痢
  • 言葉が出てこない 等

 

発表場面、人前に立つ場面。苦手に感じる方って少なくないと思います。『多少苦手』程度であれば何とかなることもあるわけですが、社交不安障害である場合は、“震えが止まらなくなったり、クーラーがガンガンきいている部屋なのに冷や汗をだらだらかいたり、普段だったらあり得ないくらい言葉に詰まってしまったり”、その場面を乗り切ることさえ困難なほどに不調が出現します。

 

また、社交不安障害は、プレゼン、商談など社交場面での振る舞いが上手くいかないことによって、他者から否定的に思われることにも恐怖を感じます。これは、『仕事ができない奴だと思われる』『職場の人に迷惑をかけてしまう』『みんなの前で恥をかいてしまう』といったことへの恐怖心です。

 

「社内プレゼンが決まってから落ち着かない」

「プレゼンは一か月も先なのにドキドキして眠れなくなってしまった」

「会議で発言を求められると頭が真っ白になって喋れなくなってしまう」

「上司と話さないといけないことについて考えると動悸がする」

 

社交不安障害は、『また同じように緊張したらどうしよう』と、まだ起こっていない将来に対しても不安が生じたりします(これを“予期不安”といいます)。そして予期不安を喚起する場面を避けるようになります。

 

“苦しい思いをする”と分かっていることをやりたがる人はなかなかいません。とは言え、仕事となると“苦しい思いをする”場面を避け続けることは難しいのが現実(仕事に差し障りが出てしまいますもんね)。『性格の問題』と考えて、苦痛を感じていたり、不便さを感じていても治療に至らないことがよく知られている疾患であり、その労働損失はすさまじい額になるとする知見もあります。

 

社交不安障害も予期不安も、薬物療法と認知行動療法と呼ばれる精神療法(心理療法)の合わせ技にエビデンスがあります。深刻化する前に医療機関受診を!

【参考】

 

3.強迫性障害(OCD)

強迫性障害は、『強迫観念』『強迫行為』のどちらか、あるいは両方が生じる不調です。

 

『強迫観念』とは、繰り返し浮かぶ不安や苦痛を引き起こす考えのことです。「数字の入力を間違えているかもしれない」、「物品の数え間違いがあるかもしれない」、「職場の戸締りが不十分なのではないか」など、浮かぶ考えは人それぞれ異なりますが、ご本人にとってはすぐにどうにか対処したい耐え難い不安や苦しさを伴うものとなります。

 

この強迫観念による不安な気持ちを打ち消すための行動、それが『強迫行為』です。上で例に挙げた強迫観念に対しては、「入力した数字を繰り返し確認する」、「何度も同じものの数を数える」、「戸締りを何度も確認する」といった強迫行為を伴いがちです。

 

『あれ?鍵閉めたっけ?』など“心配になって念のため確認をする”という行動は、皆さんご経験があると思います。強迫性障害の場合は、その回数や程度が明らかに過剰で、その他の行動に支障をきたしている場合がほとんどです。仕事に関連して起こり得る症状には、以下のようなものがあります。

 

【よくみられる症状】

  • 書類にミスがないか、何十回も同じ部分をチェックしてしまい、その他の業務が滞る
  • 職場の鍵を閉めたか心配になって、駅から職場に戻って確認することが続く
  • 提出するものが揃っているのか、何度も確認してしまって期限に間に合わない
  • デスクの配置にこだわって、揃えることに時間を費やしてしまう
  • 職場で共有の物品にそのまま触れず、毎回消毒してから触る

 

強迫行為を行うことで、一時的に強迫観念は薄れます。強迫行為によって不快な気持ちが治まることを学習することにより、再度同じような強迫観念が出現すると不安を低減させるため強迫行為を繰り返す。結果として“強迫行為をしないと耐えられない”といった状態に陥るわけです。

 

「大きな数字を扱う業務になって、失敗できないという不安が強くなってから確認する回数がどんどん増えてしまった」、「一度失敗してしまってから、ミスをしていないかが心配になってしまった」など、業務の変化や仕事で実際に起きた出来事がトリガーとなり強迫性障害に陥る方も少なくない印象があります。強迫性障害の治療は、薬物療法と認知行動療法と呼ばれる精神療法(心理療法)の併用が有効であり、多くのエビデンスが蓄積されています。

【参考】

 

4.過敏性腸症候群(IBS)

過敏性腸症候群は、身体に問題はないにも関わらず、下痢や便秘などお腹の不調が出現する不調です。およそ10人に1人が過敏性腸症候群だと言われているので非常にポピュラーなメンタル不調だと言えますね。診断に際しては、RomeⅢという基準を用います。

 

「大切なプレゼンまであと少し。こんなときに限ってお腹が!」、こんな経験ありませんか?「急な腹痛をどうしても我慢できず途中下車。結果、遅刻してしまった」こんな損失も生じがちです。いわゆる「お腹が弱くって」「お腹に来やすくて」という不調ですね。不調の出現にはストレスの関与が疑われていて、生活習慣の改善や薬物療法の効果が認められない場合、認知行動療法というアプローチを選択することもあります。

 

下痢、便秘、またその両方に悩まされているビジネスパーソンは、まずは体の病気の除外!検査で異常がなければ過敏性腸症候群を疑う!という順番が安心です。メンタル不調に早期に気づくことも大切ですが、体の不調をメンタル不調を勘違いして治療が遅れるのも大きな機会損失ですよ!

【参考】過敏性腸症候群|e-ヘルスネット(厚生労働省)

 

5.発達障害

“精神疾患”という枠組みからは少々外れてしまいますが、ビジネスと切っても切れない密接な関係にある“発達障害”に触れておきましょう。発達障害は近年非常にポピュラーになっている印象があります。実際、厚生労働省の調査によれば、全国で48万人が発達障害と診断されているんです。

【参考】平成28年生活のしづらさなどに関する調査(全国在宅障害児・者等実態調査)結果|厚生労働省統計情報・白書

 

発達障害の中には、主に以下の診断名などが含まれます。

  • 自閉スペクトラム症(ASD)
  • 注意欠如・多動症(ADHD)
  • 知的能力障害
  • 限局性学習症(SLD)
  • チック症群 

*ちなみにアメリカ精神医学会出版DSM(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders:精神障害の診断と統計マニュアル)の最新版【DSM-5】にて自閉症、アスペルガー障害は自閉スペクトラム症としてまとめられました

 

以前は、“発達障害は子どもの頃に診断されるもの”、特にADHDなんかは“大人になると多くの人は症状がなくなる/良くなる”なんて言われていました。現在では『大人になっても発達障害の症状は継続する』という認識が一般的なんです。『発達障害それそのものが心の不調』というわけではありませんが、ビジネスにおいて心の不調を生じる状況に置かれやすいのが発達障害の方々です。

 

学校から社会人になるタイミングでは、自身を取り巻く環境が特に大きく変化します。環境との相性は人それぞれですが、発達障害をお持ちの方は、環境との相性に敏感な方が多いんですよね(これは、どの診断名だから、というわけではなく、発達障害をお持ちの方全般にいえることです)。そして、現代社会において大多数を占めている職場環境は、発達障害をお持ちの方と相性が良いとは言えないのです。結果的に、発達障害をお持ちの方は、そうでない人と比べて不調が生じやすい現状にあります(発達障害=メンタル不調ということではないのでご注意!)

 

余談ですが、新型コロナ感染症に伴うテレワーク。職場でのコミュニケーションやチームでの仕事にやりがいを感じらした方からすると、それこそ適応障害に至るほどストレスが高い環境変化になりうるわけですが、【自宅で一人で仕事ができる】ということでかえって高いパフォーマンスを発揮している方もいらっしゃいます。新しい生活様式に伴う予期せぬ変化ではありましたが、環境との相性って大切なんだなと改めて自覚しました。

【こちらもどうぞ】

【精神科医監修】テレワークうつ・リモートワークうつを対策!

【公認心理師執筆】自分に合った働き方の選択|新しい働き方としてのテレワーク

 

「発達障害かもしれない」と感じたうえで、「どうも生活が上手くいっていないな」と思われる方は、思い悩んで不調が悪化する前に、専門機関へ相談してみるのも手ですよ!

【参考】発達障害|みんなのメンタルヘルス(厚生労働省)

 

6.うつ病

メンタル不調やメンタル疾患の中でも、うつ病は比較的よく認識されている病でしょう。近年では芸能人や著名人でも「自分はうつ病だった」と公表している方が増えてきました。うつ病は、“15人に1人が一生に一度はかかる病気”とも言われているほど、身近なメンタルの病気なんですよね。

心の病と聞くと、「メンタルが弱いせい」と、心や性格に原因があるように考えられがちですが、うつ病をはじめとするメンタルの不調・病気の多くは、脳内の神経伝達物質の不具合によって生じることがわかってきているんです。うつ病に関して言えば、脳内にあるセロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンといった神経伝達物質のバランスが、何らかの要因によって崩れてしまうことが不調の原因と言われています。

 

この“何らかの要因”ははっきりしていない部分もあるのですが、環境の変化や過労といったストレスによるものや、天気や季節によるものもあります。つまり、メンタルの強さや、性格とはさほど関係なく、置かれている状況や環境によって誰でもうつ病に罹る可能性はあるということです。

 

うつ病の主な症状についてご紹介すると下記のような症状が挙げられます。

【精神面での主な症状】

  • 気分が落ち込んでいる
  • 意欲や活力の低下
  • 集中力の低下
  • 趣味などに対する興味の喪失
  • 今まで楽しめていたことが楽しめない
  • 不安感や焦燥感
  • 死んでしまいたい、いなくなりたいと感じる

 

【身体面での主な症状】

  • 疲れやすい
  • 慢性的な倦怠感
  • 睡眠の問題(眠れない、眠りが浅い、夜中や早朝に目覚める、寝すぎてしまう)
  • 食欲の問題(食べられない、食べ過ぎてしまう)
  • めまい
  • 動悸
  • 頭痛、肩こり
  • その他原因不明の体調不良

 

症状の生じ方には個人差があるため、全ての症状が必ず現れるというわけではありませんし、症状の種類も多岐にわたるため上記以外の症状が現れる方もいます。

 

頑張りすぎてしまうビジネスパーソンと不調のサイン


頑張り過ぎてしまうあなたに知っておいていただきたい不調のサインについて、うつ病を例に取って説明差し上げます。先ほど挙げた症状一覧の中でも、【精神面での主な症状】は、多くの方が既にご存じの症状ではないでしょうか。一方で、【身体面での主な症状】は精神面での症状と比べると、あまり認識されておらず、うつ病の症状として見落とされがちです。

 

精神症状よりも身体症状が強く現れる方もいらっしゃるので、このような方の場合は特にメンタルの不調というよりは、単純な身体の不調と認識されやすい傾向があります。もちろん、身体の不調を疑い、内科などを受診することはとても大事です。身体に異常があるにも関わらず、メンタルの不調として扱ってしまうと、症状は改善されないばかりか、最悪の場合重大な身体疾患を見落としてしまう危険性もあります。

 

「検査をしたけど、体に異常はなかった」、「身体症状の治療を始めたが、いまいち改善しない」。そんな場合は、単純な身体の不調ではなく、メンタルの不調としての【身体症状】である可能性があります。メンタルの不調による身体症状は、根本にあるメンタルの不調を改善しない限り、改善はされません。

 

「ちょっと休めば治る」「気のせい」と放っておくと、症状は次第に強くなりますし、なかなか治りにくくもなってしまいます。先にもお話したように、身体の不調を全てメンタルの不調と結びつけてしまうのは本末転倒ですが、“メンタルの状態と身体の状態は繋がっている“ということは頭の片隅に残しておいていただきたいものです。

 

先ほど、精神面での症状は比較的認知されていると書きましたが、多くの方が認識している精神症状(上に挙げた【精神面での主な症状】)は悪化している状態でよく見られる症状なんです。症状が悪化すると、社会生活や日常生活を送ることにもしんどさが生じてきます。しんどさゆえ生活が思うように回らずさらに悪化…よくあるケースなんですよね(重篤化したとしても治療につながりさえすれば、休職、休学、入院治療という方法はあります。ご安心を)。

 

上に挙げた【精神面での主な症状】は突然顕著に現れるというわけではなく、そこに至るまでの初期症状のようなものがあります。初期症状としてよく見られる症状であり、「気のせい」「怠け」など見落とされてしまいがちな症状をいくつかご紹介します。

 

  • 「~したい」「~に行きたい」と思うことが減った
  • 「~したい」「~に行きたい」と思いはするけど、なかなか行動にうつすことができない
  • 今まで楽しめていたことが、そこまで楽しめなくなった(例:好きなTV番組を見ても楽しめない)
  • 趣味に費やす時間や活力が減った(例:ジムに行くことが億劫だ、友人との約束が億劫だ)
  • ぼーっとしやすくなった(例:読書が捗らない、仕事が捗らない・ミスが増えた、TVを見ても内容が頭に入らない)
  • 疲れやすく、すぐ横になってしまう

 

これらの症状は「気のせい」「怠け」等見落とされがちですが、実はメンタル不調の兆候であることがあります。先にも述べましたが、不調のサインの生じ方は人それぞれであり、今回挙げたものはほんの一例です。不調のサインに気付くには「なんだかいつもと違う」「いつもできていることができない」という変化に注目してみることをおすすめします。真面目でストイックなビジネスパーソンほど、不調のサインが出ている状態においても「気合が足りていない」「もっと頑張らなくては」と頑張ってしまいます。

 

不調のサインが出ている状態でより頑張ろうとすることは返って逆効果です。「いつもと違う」「いつもできていることができない」のは、気合や努力不足ではなく、心身のエネルギーが不足している状態なのです。もしもご自身にこのような変化が生じた時、あるいはご家族や職場の同僚や部下など身近な方にこのような変化が見られた時は、「もしかして、不調のサイン?」と一度立ち止まって考えてみてください!

 

不調のサインを掴んだら?


さて、“実際にこのような不調のサインが現れたら”、“自分で不調のサインをキャッチしたら”どのようにしたらよいのでしょうか。ちなみに、『不調のサイン』イコール『不調』ではありません。不調のサインはあくまで「このまま頑張りすぎると、本格的に不調をきたしてしまうよ」というサインであり、サインが現れたから・サインをキャッチしたから、即病院に行かなくては、休職しなくては、ということではありません。まずは、ここ最近の自分の生活について振り返ってみましょう。

 

  • 今までと変わった点はどのようなところですか?
  • いつくらいから変わってきましたか?
  • 不調のサインが生じる前後に何かきっかけとなる出来事はありませんでしたか?
  • 最近心身を休めていましたか?
  • 頑張りすぎていませんでしたか?

 

一人で振り返るだけでなく、身近な人にも協力してもらい、客観的に見てどうだったかをフィードバックしてもらうと、自分でも気が付くことができなかった変化にも気が付くことができます。

 

  • 最近ボーっとしていることが増えたね
  • 言葉数が減ったね
  • イライラしやすくなったね
  • 今までしなかったようなミスをするようになったね
  • 疲れている感じがするよ

自分では気にもとめなかったような些細な変化にも、実は周囲は気にかけてくれていることがあります。

 

振り返ってみて、何が自分自身にとって負担となっているのか、何が自分のエネルギーを消費しているのかが明らかになってきたら、その負担となっていることから距離を置き、エネルギーを回復させましょう。例えば、業務の忙しさが負担となっているのであれば、休日や仕事以外の時間は家事などをお休みしてゆっくりと休養をとってみたり、有給休暇を消化をして心身ともにゆっくり休めることもよいかもしれません。

 

自分ひとりでは対処が難しいようであれば、同僚や上司に相談してみてもよいかもしれません。あるいは、「これって不調なのかな?」「どうすればいいのだろう?」と少しでも悩まれたら、医療機関への受診やカウンセリングの利用など、専門家に相談にのってもらうと安心できます。「自分はうつ病だ」「自分はうつ病ではないから大丈夫」と自己判断するのではなく、専門家にきちんと現在の状態について教えてもらえると安心ですよね。受診するほどでは…という方は、無料の電話相談などもあります。大切なのは、不調のサインを見て見ぬふりをして、頑張りすぎないことです。

【参考】働く人の「こころの耳電話相談」|こころの耳(厚生労働省)

 

不調はサイン!精神科医よりビジネスパーソンの皆様へ


 

日々忙しなく全力で頑張っていらっしゃる皆さん。

 

頑張りすぎていませんか?

疲れきっていませんか?

 

たまには一度立ち止まってひとやすみし、自分を労いましょう。

 

「最近の自分はどうかな?」

「何か変わったことはないかな?」

日々を振り返り、不調のサインをチェックしてみましょう。

もしも不調のサインがでていたら、一度ゆっくりして、エネルギーが回復したらまた頑張ればいいのです。

 

“積羽船を沈む“

軽い羽根でもたくさん積まれると、その重さで舟が沈んでしまいます。

ほんの僅かなメンタル不調であっても、たくさん積み重なれば誰でも苦しいんです。

 

そして、メンタル不調は、誰にでも起こり得ることです。

サインとして捉えれば、むしろ生体が正常に機能していることの証左なんです。

 

サインをキャッチしたら一度立ち止まって自分を振り返ってみましょう。

気晴らしや息抜きをして自分にご褒美をあげましょう。

 

今は立ち向かわなければならない。

そんなときもあるかもしれません。

無事ピンチを乗り切ったら自分を褒めてあげて休みましょう。

 

どうしても辛いときには誰かに相談してみてください。

一人で抱えこみすぎないようにお互い様でいきましょう。

 

【こちらもどうぞ】

もしメンタルの病気になったら? |公認心理師が疑問にお答えします!

 

【監修】

本山真(精神科医/産業医)

株式会社サポートメンタルヘルス代表/医療法人ラック理事長

【執筆】

籔(公認心理師・臨床心理士) & akiko(公認心理師・臨床心理士)

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