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【精神科医監修】「絶好調」が続くときに気をつけたい。躁状態と元気の違い

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2026年10月9日

『躁状態』は元気とは違う?知っておきたい躁状態の特徴

「今日は調子が良いな」
「いつもより積極的に動けるな」

そんな“絶好調な日”を経験したことはありませんか?

筆者は趣味でスポーツをしているのですが、時々「今日は体が特別動かしやすいな」「いつもよりプレーが上手くいくな」と感じる日があります。また、楽しみにしていた予定の日は、前日にワクワクして眠れなくても、朝から準備が捗ったりします。

このように、一時的に気分が高まったり、体のコンディションが良い日があったりすること自体は、決して珍しいことではありません。むしろ、心や体の調子が良い日があることは、健康な反応のひとつとも言えるでしょう。

ですが、この“絶好調”な状態が何日も続き、自分ではコントロールが難しいほど活動的になったり、周囲から「いつもとは様子が違う」と心配されたりする場合には、単なる元気とは違う「躁状態」が背景にある可能性があります。

今回は、その「躁状態」の特徴について、分かりやすく解説していきたいと思います。

こちらもどうぞ▶精神科医監修|感情の波に飲み込まれるな!激しい怒りを乗りこなせ!

※本ブログは躁状態について理解を深めることを目的としており、ご自身や周囲の方について「これに当てはまるから躁状態だ」と判断できるものではありません。実際の診断は、医師が症状や経過、生活への影響、身体疾患や薬剤の影響などを総合的に評価して行います。もし気になる症状がある場合は、自己判断せず、医療機関へご相談ください。

 

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躁状態とは、双極症でみられる代表的な症状のひとつ


躁状態とは、双極症(双極性障害)という精神疾患でみられる代表的な症状のひとつです。双極症は、かつては躁うつ病とも呼ばれていました。

双極症では、気分が高まる躁状態または軽躁状態と、気分が落ち込む抑うつ状態が、経過の中でみられます。ただし、必ず規則的に交互に出現するわけではありません。うつ状態が長く目立つ場合もあれば、躁状態や軽躁状態が本人にも周囲にも気づかれにくい場合もあります。

躁状態では、DSM-5-TRにおいて、以下のような症状が診断基準として挙げられています。

⑴高揚気分、開放的な気分、易怒性
・やけに気分が良かったり、ハイテンションになったりする
・興奮して、些細なことでも怒りっぽくなる

⑵自尊心の肥大、誇大
・自信満々になる
・自分が偉くなったように感じる
・現実離れした大きな計画を立てる

⑶睡眠欲求の減少
・少ししか眠らなくても平気になる
・寝ていないのに疲れを感じにくい

⑷多弁、話し続けようとする圧力
・遮るのが難しいほど、いつもよりおしゃべりになる
・話す勢いが止まりにくくなる
・気分の高まりと相まって、知らない人に話しかけたりする

⑸観念奔逸
・色々な考えが次々と頭に浮かんで止まらなくなる
・話題が次々に飛んでいく

⑹注意散漫
・気が散りやすい
・目に入ったものや聞こえたことによって、注意が簡単にそれてしまう

⑺目標指向性の活動の増加または精神運動焦燥
・仕事で業務を自らたくさん増やすなど、社会的な意味のある活動が増える
・新しい計画や企画を次々に始める
・その場を歩き回るなど、落ち着きのない行動が増える

⑻結果を顧みない行動
・後で困った結果につながる可能性があるにもかかわらず、それに熱中する
・多額の買い物、無謀な投資、不特定多数との性的な関わり、危険運転などがみられることもある

 

躁状態は「元気な日」とは持続期間や生活への影響が違う


躁病エピソードでは、普段とは明らかに異なる高揚気分、開放的な気分、または易怒的な気分と、活動性やエネルギーの増加が、ほとんど毎日続きます。さらに、上記のような症状のうち3つ以上、気分が怒りっぽさだけの場合は4つ以上がみられることが、診断上の目安になります。

期間としては、少なくとも1週間以上続くことが目安になります。ただし、入院が必要なほど重い場合には、期間が1週間未満でも躁病エピソードと判断されることがあります。

※厳密には、抑うつ状態や躁状態の程度、軽躁状態の有無、それらの持続期間、精神病症状の有無などによって、さらに病気が細分化されていきます。

 

 

つまり、「今日だけ気分が良かった」「休日に活動的だった」といった一時的な変化ではなく、その状態が一定期間続くことが、単なる元気と異なるポイントのひとつです。

また躁状態は、その程度が“好調”のレベルを超えて、仕事や人間関係、日常生活に支障をきたすレベルに至ることが多いこともポイントです。

例えば、夜遅くまで仕事や作業をしていても全く疲れない状態が何日も続いたら、進捗は助かるかもしれませんが、体そのものは休まらず、体調は崩れていきます。他にも、大きな買い物を衝動的にたくさんしてしまい、カードが何枚も止められる、周囲と強く衝突して人間関係が悪化する、といったことも起こりえます。

そして躁状態には、ハイテンションな状態だけでなく、怒りっぽくなったり、些細なことで口論になったりするなどの「易怒性」が目立つ場合も含まれます。

つまり躁状態は、単に元気な状態ではなく、怒りっぽさや焦り、不安、落ち着かなさなども含めて、感情やエネルギーの高まりが持続している「過敏な状態」と捉えると、イメージしやすいかもしれません。

 

軽躁状態は「調子が良いだけ」と見過ごされることもある


躁状態より程度が軽く、入院が必要なほどではない場合には、「軽躁状態」と呼ばれることがあります。

軽躁状態では、本人も周囲も「最近調子が良い」「仕事ができている」「明るくなった」と受け取りやすく、見過ごされることがあります。

しかし、軽躁状態も、普段のその人とは違う気分や活動性の高まりが一定期間続く状態です。特に、その後に気分の落ち込みが強く出たり、生活リズムが崩れたりする場合には、双極症の経過として注意が必要になることがあります。

 

躁状態は本人が気づきにくいことがある


躁状態では、その特徴のひとつとして、「本人が躁状態であると自覚しにくい」という点があります。

双極症では、気分が落ち込んだり、何の意欲も湧かなかったりする抑うつ状態も経験します。抑うつ状態の時は、「辛い」「何もできない」と不調を自覚しやすいですが、そこから躁状態や軽躁状態に移行すると、「これが本来の自分だ」と認識してしまうことがあります。

誰しも、自分のプラスマイナスゼロの状態を把握することは難しいものです。抑うつ状態の時にできなかったことができたり、遅れていた仕事や予定を取り戻せていたりすると、なおさら「元気になっただけ」と感じやすいかもしれません。

実際に、双極症の患者さんの中には、気分の落ち込みを主な困りごととして受診し、うつ病として治療を始めた後、診察の中で過去の躁状態や軽躁状態が分かり、後から双極症の診断が検討される、というパターンもあります。

また、本人よりも、家族や友人、職場の人など周囲の方が先に変化に気付くことも少なくありません。

身近な人から、「最近いつもと様子が違うね」「少し心配だよ」と言われた時には、その言葉にも少し耳を傾けてみることが大切です。

 

躁状態に似て見える他の疾患や状態もある


うつ病のほかにも、躁状態の症状と似た状態がみられる病気はさまざまあります。

例えば、神経発達症(発達障害)のひとつであるADHD(注意欠如・多動症)では、注意がそれやすい、衝動的に予定を入れる、好きなことには過集中しやすいといった特徴がみられることがあります。

ただし、ADHDの特徴は比較的長く続くその人の特性としてみられることが多い一方で、躁状態では、普段とは明らかに違う状態が一定期間まとまって出現することがあります。このように、いつから、どのくらいの期間、どのような変化が起きているのかは、鑑別の重要なポイントになります。

また、強迫症(強迫性障害)では、不安を打ち消すために確認や洗浄などの行動が増えることがあります。ただし、これは気分の高まりやエネルギー増加による活動性の増加とは背景が異なります。

さらに、甲状腺などホルモンに関わる病気、脳の病気、服用中の薬、アルコールや薬物の影響などによっても、怒りっぽさ、落ち着かなさ、睡眠の変化、活動性の変化などが現れることがあります。

このように、躁状態および双極症は、他の病気や身体の状態、薬剤の影響との判別が必要になることがあります。だからこそ、自己判断せずに、ご自身の状態を専門的に見極めてもらう必要があるのです。

 

気になる変化が続く時は、自己判断せず医療機関へ相談する


冒頭の注意書きにも記載したとおり、「もしかしたら躁状態かも」と感じても、本ブログの内容だけで自己判断することはできません。

実際には、症状が続いている期間や日常生活への影響に加えて、他の病気や服用中の薬の影響、これまでの気分の波、家族歴、睡眠リズム、衝動的な行動の有無なども含めて、医師が総合的に判断します。

寝ずに頑張れる状態が続いている、普段の自分からは考えられないほど活動的になっている、浪費などの衝動的な行動が増えてきた、怒りっぽさや口論が増えているなど、「いつもと違う変化」が続く場合には、精神科や心療内科などの医療機関に相談することを検討してみてください。

また、ご家族や周囲の方が「いつもと違う」と感じた場合にも、本人を責めるのではなく、「最近眠れている?」「少し疲れていない?」と、生活や睡眠の変化から穏やかに声をかけることが大切です。

 

「元気」と躁状態の違いを知ることが早期発見につながる


「元気」と「躁状態」は、一見すると似ているように感じられるかもしれません。しかし、その背景や生活への影響は大きく異なります。

気分が良くなることや、活動的になること自体は決して悪いことではありません。ですが、その変化が普段の自分とかけ離れていたり、自分ではコントロールができないほど続いたりする場合には、「元気だから大丈夫」と見過ごさず、一度立ち止まって考えてみることも大切です。

躁状態は、単なる元気ではなく、気分・エネルギー・行動の高まりが持続し、生活に支障や危険をもたらすことがある状態です。

 

参考文献


  • 日本うつ病学会双極症委員会(2024/1/16)『双極症とつきあうために vol.11』
    https://www.secretariat.ne.jp/jsmd/iinkai/katsudou/soukyoku.html
  • 医療情報科学研究所(2024)『こころの健康がみえる』MEDIC MEDIA p140-151
  • 松﨑朝樹(2020)『精神診療プラチナマニュアル 第2版』p8-11

 

【執筆】

ひのき(公認心理師・臨床心理士)

ひのきコラム一覧

日々の気分の波を過度に心配する必要はありませんが、本ブログを通して「元気」と「躁状態」の違いについて知っておくことで、いざという時の安心につながり、不調をキャッチする一助になると幸いです。

 

【監修】

本山真(精神科医師/精神保健指定医/日本医師会認定産業医/医療法人ラック理事長)

2002年東京大学医学部医学科卒業。2008年埼玉県さいたま市に宮原メンタルクリニック開院。2016年医療法人ラック設立、2018年には2院目となる綾瀬メンタルクリニックを開院。

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