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タグ : メンタルヘルス , 杏仁豆腐(公認心理師・臨床心理士)
2026年8月28日

目次
「○○ちゃんは几帳面だからA型でしょ!」「いや意外とO型じゃない?」
———こんな会話を一度はしたことや聞いたことがあるのではないでしょうか。
私が小学生の頃、図書室には血液型別の性格傾向が書かれた本が置いてありました。本を読みながら「確かに自分ってこういうところあるかも!」と自分に当てはめたり、友人と感想を言い合ったりして楽しんでいた記憶があります。
最近で言えば、16タイプ性格診断やラブタイプ診断などが流行りましたね。16タイプ性格診断は、広く「MBTI診断」という名前で呼ばれたりしますが、マイナビによる「2023年10代女子が選ぶトレンドランキング」の「コト」部門で1位に輝いていました。
SNS上で関連ワードをよく見かけましたし、私の周りの人もみんなやっていた気がします。もちろん(?)私もやりました!
※「なお、SNSなどで「MBTI診断」と呼ばれているものの中には、公式のMBTIではなく、MBTI風の16タイプ結果を表示する無料診断サイトも多く含まれます。そのため、本記事では、流行しているオンライン診断全般を指す場合には「16タイプ性格診断」と表記します(コラムにて詳しく解説します)。
こうした流行の背景には、“型に当てはめたいと思う気持ち”があるのではないでしょうか。このブログでは、その心理や注意点について紹介していきます。
公認心理師・臨床心理士によるブログ解説を毎週生配信しています!
現在広く知られている「MBTI」という単語は、「Myers-Briggs type indicator」という心理検査のことを指します。スイスの心理学者であるC.G ユングの著書を元に1940年代に初版が開発されました。
その後、1960年代に出版されたり、商用版に改定される等の変遷を経て、自己理解をするためのツールとして発展してきたという歴史があります。
現在16タイプ性格診断として広く知られている海外のサイト等ではMBTI風の結果を出しつつ、内容は「ユング的な認知機能は採用せず、他の概念を再構成したモデルを用いている」と説明していたりします。別の概念を測定した上で、MBTIで用いられる項目に落とし込んだ結果を出しているわけですね。
こんな風に、MBTIのような見た目になっているけれど、実はMBTIという呼称を使っていないサイトが多くあるのです。
日本MBTI協会では、「MBTIと似ている性格診断テストについて」というページで、ユングのタイプ論に基づくMBTIについての解説と、上記のような診断サイトは無関係という旨を説明しています。
こういったやや複雑な事情があるため、本ブログでは現在流行しているタイプ診断のことを「16タイプ性格診断」と表記しています。
<コラム参考サイト>
では、なぜ人は型に当てはめたくなるのでしょうか?
人によっては「型にはめられたくない!」という場合もあると思いますが、自分ってどういうタイプなんだろう…?と気になる人が多いのも事実。
ここでは、型に当てはめたくなる心理について解説します。
人間には“自分を理解したい”という欲求があります。近年の研究では、「正確な自己理解を追求しようとする」傾向が取り上げられており、それは「自己洞察動機」と定義されています
16タイプ性格診断やラブタイプ診断は、いくつかの質問に答えるだけで独自のタイプに分類し、自分という人間を分かりやすく説明してくれます。“自分を理解したい”という欲求が満たされますね。
さらに皆さま、「タイパ」という言葉をご存知でしょうか?
タイパって何?という方はこちら▶【精神科医監修】タイパの心理学ー時代に求められる効率と価値観のバランスー
「タイパ」とは「タイムパフォーマンス」の略で、時間あたりの生産性を重視する考え方です。近年この考え方が注目されており、10~60代の1200人を対象としたセイコーの調査によると、2025年に「タイパを意識して行動している」「タイパを重視する考え方は社会に定着」と答えた人はいずれも60%を超え、前年に比べ増加したことが分かっています。タイパを重視する人々にとって、簡単に自己理解ができる(自己理解への欲求を満たせる)便利なツールとしてフィットしたわけです。
アメリカの心理学者であるマズローは、「欲求階層説」というものを提唱しました。欲求階層説は、「人間は“自分の能力や可能性を十分に発揮し、なりたい自分に近づく”ために絶えず成長する」という考えに基づいています。
この欲求階層説によれば、人間には、集団への所属や他者との友好的な関係を求める「所属と愛情の欲求」、他者から認められたい・自分を肯定し価値あるものと認めたいという「承認と自尊の欲求」があるとされています。
型に当てはめることによって、その型への所属意識が生まれ、同じタイプの他者とのつながりを感じることができます。また、自分自身の特性を肯定的に捉えることで自尊心を満たすことができます。
このように、型に当てはめる行為が、私たちが持つ複数の欲求を同時に満たしてくれるのです。なんともありがたいお話ですね。
ただし!型に当てはめる行為にはいくつかの危険性も潜んでいます。
大規模な調査データを用いた研究では、血液型と性格の間に一貫した関連はほとんど認められず、血液型で性格を判断する科学的根拠は乏しいとされています。
また、16タイプ性格診断やラブタイプ診断は、やるたびに結果が変わったりしますよね。心理尺度では、同じ人が同じ条件で受けたときに、どの程度安定した結果が得られるかという「信頼性」が重要です。結果が毎回大きく変わる診断は、その時の気分や回答の仕方に影響されやすく、個人の性格を固定的に判断する根拠としては慎重に扱う必要があります。
アメリカの社会学者ロバートは、自己成就的予言というものを提唱しました。自己成就的予言とは、「個人がある予期に沿って、意識的もしくは無意識的に行動した結果、その予期が現実になること」です。タイプ診断そのものが必ず自己成就的予言を引き起こすわけではありませんが、「自分はこのタイプだからできない」と繰り返し考えると、行動の選択肢が狭まり、結果的に可能性を小さくしてしまうことがあります。
ステレオタイプとは、「特定の集団に対し、合理的な理由なしに、その集団成員を単純化・画一化し、固定化したイメージをもつこと」です。
例えば、血液型で言えば「A型は神経質」、16タイプ性格診断で言えば「P型は無計画」など、ステレオタイプに否定的な感情や評価が加わることで偏見や差別に繋がります。
それだけでなく、否定的なステレオタイプの対象となった場合、様々な課題の遂行能力が低下することが分かっています。
ひとつ前の、「自分の可能性を狭める」とも関連しますが、目の前の相手をタイプで判断して決めつけることはもちろん、自分自身への決めつけも、本来持っている力を出せなくなる要因になってしまうかもしれません。
この世に全く同じ人間など存在しません。必ず個人差があります。
実際、16タイプ性格診断のように分類化をしてしまうと、個人差を十分に捉えられないことが分かっています。
単に一括りにして“違い”を無視してしまうと、本来持っている特徴やその魅力に気付けないかもしれません。
「型に当てはめられるのが嫌、窮屈!」と感じる人は、この危険性にセンサーが反応しやすいのかもしれませんね。
今回は“型に当てはめたくなる”心理や注意点を紹介しました。様々な欲求を満たしてくれる便利で楽しいツールですが、執着しすぎると危ないのです。
株式会社MERYによる「MBTI診断の印象」に関するアンケートでは、1位が「自己分析や自己理解の参考になる」(48.0%)、2位が「会話のきっかけやネタになる」(40.1%)という結果となっています。
型は、自分や他人を決めつけるためのものではなく、理解を始めるための仮説として使うと便利です。「この人はこういうタイプだからこう」と決めるのではなく、「こういう傾向があるかもしれない」「でも実際にはどう感じているのだろう」と考えることで、型はラベルではなく対話の入口になります。
引用・参考文献
【執筆】 杏仁豆腐(公認心理師・臨床心理士)
【監修】 本山真(精神科医師/精神保健指定医/日本医師会認定産業医/医療法人ラック理事長) 2002年東京大学医学部医学科卒業。2008年埼玉県さいたま市に宮原メンタルクリニック開院。2016年医療法人ラック設立、2018年には2院目となる綾瀬メンタルクリニックを開院。 |