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SNSは本当にメンタルヘルスを悪化させるのか―「やめられなさ」に注目する

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2026年9月25日

SNSは本当にメンタルヘルスを悪化させるのか―鍵は「やめられなさ」

若年層のメンタルヘルスを語るとき、SNSやスマートフォン、ゲームはしばしば『悪者』として扱われます。

「スマホばかり見ているから元気がない」

「SNSをやめれば気分がよくなるのではないか」

「ゲームに没頭しているから学校生活がうまくいかないのではないか」

確かに一理あります。夜遅くまでスマホを見ていれば睡眠は乱れやすくなります。SNSで他人と自分を比べ続ければ、自己評価が下がることもあります。オンライン上でのトラブルやいじめ、過激な情報への接触が、こころの不調を強めることもあります。

さて、ここで考えてみましょう。過去を振り返るに…例えばゲームであったり、携帯電話であったり、インターネットであったり。新しいテクノロジーが登場し若年層に注目され話題を集めるたびに繰り返されたきた普遍的なテーマのようにも感じませんか?

本当に問題なのは、『SNSを使っていること』そのものなのでしょうか。あるいは、『どれだけ長く使っているか』なのでしょうか。

近年の研究に基づけば、もう少し丁寧な見方が必要であることがわかってきます。重要なのは、単なる使用時間ではなく、『やめたいのにやめにくい』『使えないと落ち着かない』『生活やこころに悪影響が出ている』といった、コントロールの難しい使い方のようなのです。

周囲の大人が注視すべきは『時間』だけではなく、SNSへの没頭が本人にとって何を意味しているのか、だと言えます。

こちらもどうぞ▶【精神科医監修】SNSの心理学ーSNSとの健康的な付き合い方ー

 

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SNS使用と内在化障害には関連がある―ただし単純な因果ではない


SNSとメンタルヘルスの関係については、すでに多くの研究が行われています。特に、不安や抑うつなどの『内在化障害』とSNS使用の関連は、若者を対象とした研究で繰り返し検討されてきました。

Fassiらによる2024年のシステマティックレビュー・メタアナリシスでは、SNS使用と内在化障害の関連が広く整理されています。この研究では、143研究、約109万人の青年が対象となりました。その結果、SNS使用と内在化障害の間には、小さいながらも有意な正の関連が示されました。

ここで重要なのは、『関連がある』ということと、『SNSが原因である』と断定することは違う、という点です。

SNSをよく使う若者ほど不安や抑うつが高い傾向があるとしても、それだけで『SNSが不安や抑うつを引き起こしている』とは言えません。もともと不安や孤独が強い若者が、安心感やつながりを求めてSNSを使っている可能性もあります。気分が落ち込んでいるから、現実の活動量が減り、結果としてスマホを見る時間が増えている可能性もあります。

また、Fassiらの研究では、臨床群を扱った研究が少ないことも示されています。つまり、実際にメンタルヘルス上の支援を必要としている若者について、SNS使用がどのように関係しているのかは、まだ十分に分かっていない部分があります。

この論文から言えることは、『SNSとメンタルヘルスには関連がある』ということ、それ以上でもそれ以下でもありません。『SNSが悪い』と単純化してはいけない、ということです。

 

「総スクリーン時間」から「やめられない使い方」へ


Xiaoらによる2025年のJAMA論文は、『どれだけ長く使っているか』ではなく、『どのように使っているか』に一歩踏み込んだ研究です。この研究では、米国の大規模縦断研究であるABCD Studyのデータを用いて、若者のSNS、携帯電話、ゲームの『addictive use』、つまり依存的・コントロール困難な使い方の軌跡を分析しました。

この研究の特徴は、単に『何時間使ったか』を見るのではなく、SNS、携帯電話、ゲームについて、『やめたいのにやめにくい』『使えないと不安になる』『問題を忘れるために使う』といった使い方を測定している点です。

言い換えれば、この研究は『量』(スマホなどの使用時間)から『質』(スマホなどの使い方)へと視点を移しています。

この違いは臨床的に非常に大きいものです。

例えば、同じ3時間のスマホ使用であっても、友人と連絡を取り、調べ物をし、時間を決めて使っている場合と、不安を紛らわせるために深夜までSNSを見続け、やめたいのにやめられず、翌日の生活に支障が出ている場合では、意味がまったく違います。

問題は、スマホを使ったかどうかではありません。その使い方が、生活を支えているのか、生活を削っているのかです。

 

高い群・増加群では、自殺関連アウトカムやメンタルヘルス指標が悪化しやすい


Xiaoらの研究では、SNS、携帯電話、ゲームについて、それぞれ依存的な使い方のルートが分析されました。

SNSでは、低い群、増加群、高値ピーク群という3つのルートが見られました。携帯電話でも、高い群、増加群、低い群が見られました。ゲームでは、高い群と低い群の2つのルートが明らかになりました。

ここで注目すべきは、『高い群』だけでなく、『増加群』も重要だという点です。

最初から明らかにリスクが高く見える子どもだけでなく、年齢が上がるにつれて、少しずつコントロールの難しい使い方が強まっていく子どもたちがいます。こうした変化は、単発の面接や観察では見えにくいことがあります。

「最近、急にスマホが増えた」

「前よりもやめにくくなっている」

「注意されると強く反応するようになった」

「寝る前だけでなく、日中も手放せなくなっている」

こうした変化は、単なる反抗や怠けではなく、生活やこころのバランスが崩れているサインかもしれません。

Xiaoらの研究では、高い群や増加群では、自殺行動や自殺念慮のリスク上昇が示されました。また、SNSやゲームの依存的な使い方は、内在化障害や外在化障害とも関連していました。

一方で、ベースラインの総スクリーン時間は、アウトカムと関連しなかったと報告されています。

これは非常に重要です。

若者のメンタルヘルスを考えるとき、『何時間使っているか』だけを聞いても、十分ではない可能性があるわけです。むしろ、『やめられるか』『生活に影響が出ているか』『使った後に気分がどう変わるか』『何かを避けるために使っているのか』を見た方が、支援につながりやすいのです。

 

SNSを悪者にする前に、「没頭が何を意味しているか」を見る


ここで大切なのは、SNSやゲームを一方的に悪者にしないことです。

もちろん、SNSやゲームが生活に好ましくない影響を与えることはあります。睡眠を削ってしまったり、人間関係をこじらせてしまったりすることもあります。時に承認欲求を強く刺激し、自尊感情を下げることもあります。

しかし、それだけではありません。

SNSやゲームは、若者にとって、孤独をやわらげる手段であることもあります。学校でうまくいかない苦しさを忘れるための避難場所であることもあります。家庭で安心できないときに、唯一自分を保てる場所になっていることもあります。自分の気持ちを言葉にできない子が、動画や音楽、ゲームの世界を通して、何とか気持ちを処理していることもあります。

つまり、没頭は原因であると同時に、結果でもあります。

生活がうまくいかないから没頭する。没頭することで、さらに生活が崩れる。生活が崩れるから、また没頭が強まる…。

この悪循環を理解しないまま、『スマホをやめなさい』『ゲームの時間を減らしなさい』とだけ伝えても、十分な支援にはなりません。むしろ、本人にとって唯一の逃げ場を奪う形になることすらあります。

重要なのは、没頭の背後にある困りごとを見ることです。

睡眠は乱れていないか。学校で孤立していないか。家庭内で何かが起きていないか。自己評価が大きく下がっていないか。反すうが強くなっていないか。現実の活動で達成感や所属感を得られているか。

こうした背景を見ずに、SNSやゲームだけを取り上げると、問題の本質を見誤ります。

 

嗜好品への没頭は、生活が振るわないことのサインでもある


なお、『背後にある困りごとを見る』という視点の対象は、若年層におけるSNSやゲームに限りません。

人は、生活が振るわないとき、何かに没頭することがあります。動画、ゲーム、SNS、推し活、買い物、カフェイン、アルコール、過食、ギャンブル。対象はさまざまです。

もちろん、嗜好品や趣味そのものが悪いわけではありません。むしろ、気分転換や楽しみ、つながり、回復の資源になることもあります。

問題は、それが生活全体を支える方向に働いているのか、それとも生活を削る方向に働いているのかです。

趣味としての没頭は、生活に彩りを与えます。終わった後に少し元気になれる。人とつながれる。現実の活動にも戻れる。そうした没頭は、むしろメンタルヘルスを支える資源になります。

一方で、コントロールが難しい没頭は、生活を圧迫していきます。睡眠が削られる。学校や仕事に支障が出る。人との関係が減る。気分がさらに落ちる。やめたいのにやめられない。そうなると、その没頭は単なる趣味ではなく、生活上の困りごとを示すサインになります。

だからこそ、支援に携わる方や周囲の大人は、『何に没頭しているか』だけでなく、『なぜそれが必要になっているのか』を見る必要があります。

 

支援は「使用制限」だけでなく、生活全体の調整へ


SNSやゲームの問題に対して、使用制限が必要になる場面はあります。夜間の使用を減らす、通知を切る、寝室にスマホを持ち込まない、利用時間を見える化する。こうした工夫は、睡眠や生活リズムを整えるうえで役立つことがあります。

しかし、くれぐれも使用制限だけでは不十分です。

もしその子が、孤独をやわらげるためにSNSを見ているなら、必要なのは制限だけではなく、安心して関われる人や場所です。学校でのしんどさを忘れるためにゲームをしているなら、必要なのはゲームを取り上げることだけではなく、学校生活の負荷や人間関係を調整することです。家庭で緊張が続いているなら、本人だけを変えようとしても限界があります。

したがって、支援は、『使うな』から始めるのではなく、『何がその使い方を必要にしているのか』から始める方がよいと考えます。

そのうえで、睡眠、孤独、学校適応、家庭環境、気分、自己評価、反すう、援助希求などを含めて評価する。デジタル環境との関わり方を、生活全体の中に位置づける。これが、若者のメンタルヘルス支援において重要になります。

 

問題はSNSそのものではなく、生活との関係にある


SNSやスマートフォン、ゲームは、現代の若者にとって日常の一部です。それを一律に悪いものとして扱うことは、現実的ではありません。

一方で、コントロールが難しい使い方が、メンタルヘルス上のリスクと関連することも無視できません。

大切なのは、『SNSを使っているかどうか』『何時間使っているか』だけに注目しすぎないことです。

周囲の大人が目を向けるべきは、その使い方の質です。

やめたいのにやめられないのか。使えないと落ち着かないのか。睡眠や学業、人間関係、気分に影響が出ているのか。そして、その没頭の背景に、どのような生活上の困りごとがあるのか。

SNSやゲームへの没頭は、問題の原因であると同時に、すでに生活が振るわないことの結果でもありえます。

だからこそ、支援では『やめさせる』だけでなく、『何がその没頭を必要にしているのか』を見ていく必要があります。

若者のメンタルヘルスを考えるうえで、デジタル環境を理解するだけでは十分ではありません。必要なのは、デジタル環境と日常生活との関係を読み解く視点です。

 

参考文献


  • Fassi L, Thomas K, Parry DA, Leyland-Craggs A, Ford TJ, Orben A. Social Media Use and Internalizing Symptoms in Clinical and Community Adolescent Samples: A Systematic Review and Meta-Analysis. JAMA Pediatr. 2024 Aug 1;178(8):814-822. doi: 10.1001/jamapediatrics.2024.2078. Erratum in: JAMA Pediatr. 2026 Jul 6. doi: 10.1001/jamapediatrics.2026.0629. PMID: 38913335; PMCID: PMC11197453.

▶143研究・1,094,890人の青年を対象に、SNS使用と内在化症状の関連を検討したメタアナリシスで、臨床群を扱った研究は11%、SNS使用と内在化症状には小さいが有意な正の関連が示されています。

  • Xiao Y, Meng Y, Brown TT, Keyes KM, Mann JJ. Addictive Screen Use Trajectories and Suicidal Behaviors, Suicidal Ideation, and Mental Health in US Youths. JAMA. 2025 Jul 15;334(3):219-228. doi: 10.1001/jama.2025.7829. PMID: 40531519; PMCID: PMC12177733.

▶ABCD Studyの4,285人を対象に、SNS・携帯電話・ゲームのaddictive use trajectoriesを分析し、高い群・増加群が自殺行動、自殺念慮、内在化・外在化症状と関連する一方、ベースラインの総スクリーン時間はアウトカムと関連しなかったと報告しています。

 

【コラム監修】

本山真(精神保健指定医/日本医師会認定産業医)

東京大学医学部卒業後、精神科病院、精神科クリニックにおける勤務を経て、2008年埼玉県さいたま市に宮原メンタルクリニックを開院。メンタルヘルスサービスのアクセシビリティを改善するために2019年株式会社サポートメンタルヘルス設立。

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