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【精神科医監修】SNSの心理学ーSNSとの健康的な付き合い方ー

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2023年8月4日

最終更新日 2023年8月15日

SNSの心理学を精神科医監修で解説。SNSとの健康的な付き合い方とは?

 

普段皆さんはSNSを利用していますか?

 

SNS(ソーシャルネットワークサービス)とは、インターネット上で他者とコミュニケーションが取れるサービスを指します。情報収集や人とのやりとりに非常に便利なSNSですが、過剰にのめり込んでしまうことによって健康被害がもたらされたり、使い方によっては重大な事件に繋がる危険性をはらんでいます。そこで、今回のブログでは皆さんが健康的にSNSと付き合っていくために、知っておいていただきたい内容を取り上げました。

 

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SNSと健康ーSNS疲れー


皆さんは普段どのようなSNSツールを利用していますか?代表的なSNSとしては、Instagram、Facebook、Twitter、TikTokなどがありますよね。中には複数のツールを利用している方も多いのではないでしょうか。

 

私たちはSNSを通して人と簡単につながれる・自己表現できる・承認欲求が満たせる・興味のあるコンテンツを楽しめるなど扱うツールによって多様な使い方ができるでしょう。上手に使えば日常がより楽しく、便利なものになったり、ストレス発散ツールなどとして利用できますが「SNS疲れ」につながる危険性があります。

 

SNS疲れとはSNSを使用することによって生じる心理的な疲労やストレスのことを指し、SNS上の情報過多や社会的比較、ネガティブなコメントなどの影響を受けやすくなるといった側面があります。他者との比較による自己評価の低下、ネガティブな情報によって心理的ストレスや不安を感じるといったメンタル面での影響も含まれます。

 

こういったSNS疲れを予防するためには、SNSの使用について自己認識を持ちつつ、自分に合った対策を考えたり、セルフケアを行うことが重要です。現在のご自身のSNSとの付き合い方を振り返りながら、これからのSNSの利用について一緒に考えていきましょう。

 

SNSの心理学


今よりもインターネットの普及が進んでいなかった1998年。インターネット多く使うことは孤独感の増加や抑うつの増加と関連していると言われていました(Kraut et al., 1998)。総務省の情報通信白書(2017)によると、2010年から急速にスマホの保有率が上がり2016年には71. 8% に達し、新型コロナウイルス感染症蔓延防止のために行動に制限がかかった時期以降スマホの利用率が上がっています。さらに、2019年には約7割の方がスマホに依存をしていると自覚しており(MMD研究所)、SNSの利用がきわめて一般的なものになっているとともに依存のリスクが高まっていることが分かります。現代では、当時よりもインターネットの普及が著しく進んでいるため、精神的被害がより大きいことが推察されます。

 

身近なもの過ぎて忘れがちかもしれませんが、SNSは世界中の人達に対して、自分の表現をいつでも、どこでも、誰にでも伝えることが可能であり、自分の発信に対する反応を即座に受け取れるツールです。自分の投稿に対する“いいね”の数やリツイートの数、フォロワーの数を私たちは見ることができますよね。数多く“いいね”されたりリツイートされたりして、多くの人に共有されることを「バズる」という言葉が使われていたりします。この数は他人と比較して見ることもできます。

 

日常生活の中で「自分は他人から認められている」という感覚を持つことはそう多いことではないと思いますが、SNSはそれが比較的簡単で、わかりやすいという特徴を持っています。そのうえ、SNSは自己表現の場としてもとても優れており、SNSを通して自分を表現し、それがたとえば“いいね”の数というわかりやすい形で承認されたと感じることができると、幸せな気持ちを与えてくれることもあります。こういったことにより、SNSでの評価が自尊感情に繋がることも考えられ、このメカニズムによってSNSに“ハマる”のは無理もないことでしょう。

 

最近は「バイトテロ」というアルバイトによる不適切な動画投稿がニュースでも取り上げられるようになり、フォロワーや「いいね」を増やす、注目欲求を満たすために悪ふざけ動画をあえて SNS に投稿するといったケースも増えてきています。この行動背景には,犯罪といじめとは違い、周囲から称賛や注目されたい思いから、あえて投稿することで自身の欲求を満たしているのではないかと推測されます。

 

  • 「ひとにすごいと思われたい」・「羨ましがられたい」というような他者から肯定的な評価を得ようとする賞賛獲得欲求
  • 「イケてない奴だと思われたくない」・「周りの人に嫌われたくない」などのような否定的な評価を避けようとする拒否回避欲求

この2つの欲求はSNS投稿に関連のある欲求と言われています(菅原,2004)。

 

しかし、SNS依存の本質は、快楽や喜びを得ようとした「正の強化」によるものではなく、恐怖や苦痛を緩和させようとした 「負の強化」による部分が大きいと言われています。「誰かとつながっていないと不安」、「誰かの意見を聞くと安心する」という思いから人と繋がったり安心したいという欲求もSNS依存の根底にある心理です。

 

正の強化・負の強化の解説はこちらをどうぞ

 

これらのようなSNSによる心への影響は、私たちが意識しない間に生じ、さらには私たちの行動にも影響を及ぼします。

 

心理的側面だけでなく身体的な影響もあるSNS疲れ、SNS疲れを感じたままSNSを使用すると、抑うつ・不安などを伴い、身体が重くなるなどの身体症状が生じ、不登校やひきこもり、社会的つながりを閉ざしてしまうこともあります。

 

SNSとの健康的な付き合い方とは?


では、これからの時代、SNSやインターネットとどのように向き合えばいいのでしょうか?

 

  • SNSによる影響を理解する

非常に身近なものとなった現代においては、SNSによって影響について包括的に理解しておくことが重要です。良い面ばかりを追い続けるのでなく、SNSにのめり込むことによって生じる問題、例えばイライラ感やうつなどの心への影響、睡眠不足による学業や仕事への影響など、SNSによってもたらされている影響について理解しておくことによって、SNSとの健康的な付き合い方について自分自身で考え直すことができるでしょう。

 

  • 自分自身を受け入れる

人々はSNSを通して自分の関心のある世界に触れて楽しみ、日常を切り取って他者と共有するように、自分のためにSNSを使っていると思います。しかし、そこに他者が関与すると、他者からの評価や比較が生じてしまいます。そのため、発信の軸は自分のためであることを再認識し、他者比較ではなく自分自身を受け入れることに焦点を置くよう心掛けると良いでしょう。

 

上記のように、考え方を改める方法以外にも、依存しているコンテンツだけ辞める、利用時間を減らす、通知を減らす、スマホの画面を赤一色にする、ネットリテラシーを身に着けるなど、ご自身にあった方法を見つけてみると良いでしょう。

 

  • スクリーンフリーな時間をつくる

SNS疲れの解消・予防のためにはスマホやSNSから離れて、スクリーンフリーな時間を作ることが大切です。膨大な情報の流れを一度シャットダウンし、ご自身の身体と気持ちを緩める時間を作る。そのためのツールとして“マインドフルネス”をおすすめします!

 

マインドフルネスは、自分の体験にリアルタイムで気づいて、受け止め、じっくり観察して、最終的に手放す方法です。解説、マインドフルネスの方法、効果などについては、下記ブログ、動画を参考にしてみてくださいね。

 

 

【臨床心理士がわかりやすく解説】マインドフルネス基礎講座

 

マインドフルネスには、イライラやストレス、不安などを低減させたり、さらに記憶や認知機能身体の不調をも低減させる効果があると注目されています。ネット疲れの解消だけでなく、日々のストレスを低減にも効果が期待できます。

 

引用参考文献


  • 前田彩花 (2021). SNS疲れによって引き起こされるネガティブ感情について 甲南女子大学大学院論集,19,pp37-48
  • 正木大貴 (2020). なぜわれわれはSNSに依存するのか?:SNSにハマる心理 Contemporary Society Bulletin, Kyoto Womenʼs Universiy.pp161-170.(2023.6.16閲覧)
  • 株式会社サポートメンタルヘルス マインドフルネスとは①定義と潮流 https://support-mental-health.co.jp/blogs/mindfulness01/ (2023.6.16閲覧)
  • 株式会社サポートメンタルヘルス マインドフルネスとは②仕組みとやり方https://support-mental-health.co.jp/blogs/mindfulness02/ (2023.6.16閲覧)
  • 株式会社サポートメンタルヘルス マインドフルネスとは③効果、副作用を解説!https://support-mental-health.co.jp/blogs/mindfulness03/ (2023.6.16閲覧)
  • Kraut, R.、Patterson, M.、Lundmark, V.、Kiesler, S.、Tridas, M.、Scherlis, W. 1998 インターネット パラドックス: 社会的関与と心理的幸福を低下させるソーシャル テクノロジー? アメリカの心理学者、53歳、1017-1031。
  • 田中道弘 (2005). 大学生のインターネット利用と精神的健康に関する研究 埼玉学園大学紀要人間学部編,pp173-181

 

【解説】

市川

自分らしさを失わず、より健康な状態でSNSを利用していくために、今一度、ご自身のSNSの使い方を振り返ってみてはいかがでしょうか?

市川記事一覧

 

【監修】

本山真(精神科医師/精神保健指定医/日本医師会認定産業医/医療法人ラック理事長)

2002年東京大学医学部医学科卒業。2008年埼玉県さいたま市に宮原メンタルクリニック開院。2016年医療法人ラック設立、2018年には2院目となる綾瀬メンタルクリニックを開院。

 

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