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タグ : フリーランス新法 , メンタルヘルス対策 , 産業精神保健
2024年10月7日
目次
2024年11月フリーランス新法施行によって、フリーランスという働き方がより拡大していくことが予想されます。労働人口減少の現代において『フリーランスの持つ経験・知見をいかに活用するか』は、企業の持続的成長を考えるうえで欠かせない視点なのではないでしょうか。フリーランスに選ばれる企業であるために、フリーランス新法の遵守(フリーランス新法とハラスメント対策義務化|中小企業が知っておくべき重要ポイント)に加えメンタルケアの導入をおすすめします。
フルタイム・パートタイム勤務の労働者と比較し、柔軟な働き方が可能であるフリーランスですが、一方で、フリーランスだからこそ生じやすいメンタルヘルス上の問題が明らかになっています。鍵となるのは『孤独感』です。本コラムではフリーランスのメンタルケアをすすめるにあたり鍵となる『孤独感』をいかに対策するか、セルフケア・ラインケアという観点から具体策をご紹介しようと思います。
英国における調査(Wang,2022)によれば、フリーランスは、フルタイム労働者、パートタイム労働者よりも精神的健康度、生活満足度が低いということが明らかになっています。フリーランスの孤独感の高さ、経済的な不安定さが『フルタイム・パートタイム労働者よりも精神的健康度、生活満足度が低い』という違いを説明するようです。ちなみにフリーランスと失業者とを比較すると、精神的健康度、生活満足度ともにフリーランスの方が高い、という結果が得られていますが、その差は、失業者よりも経済的な不安定ではない、という点のみによって説明されます。
つまり、フリーランスという働き方はその特徴ゆえ孤独感が高くなる傾向にあり、結果としてメンタルヘルスや生活満足度に悪影響を及ぼすということです。
孤独感とメンタルヘルスの関係については興味深い報告があります。物理的に孤立しているという状態(社会的孤立)そのものよりも、自身が客観的に孤立しているという自覚(主観的孤独感)の方が、メンタルヘルス悪化(抑うつ症状の悪化)との関連が強いのです(Kushibikiら,2024)。
上記知見について、どこか既視感があると思っていたところ大事MANブラザーズバンドによる楽曲でした。
“ここにあなたが居ないのが淋しいのじゃなくて
ここにあなたが居ないと思う事が淋しい”
引用:それが大事 作詞:立川俊之
1991年に発表された楽曲で言及されていた感覚が2024年調査を以て可視化されたということですね。
閑話休題。企業がフリーランスのメンタルケアを考えるにあたっては、フリーランスが物理的に孤立しないようにするアプローチと同時に、”フリーランスが自身の置かれている状況をどう捉えているか”を把握すること、孤独感が生じているようであれば、孤独感を軽減・解消することが求められるわけです。『孤独感の自覚』にいかに気づき対策するか、という視点に立てば、従業員のメンタルヘルス対策としても援用できる発想ですね。
それでは、孤独感を軽減・解消するためには、どのようなアプローチが有効なのでしょうか。
『孤独感』とは”客観的に孤独かどうか”ではなく、”自身の置かれている状況をいかに認知しているか”ということです。認知へのアプローチと言えば認知行動療法です(参考:認知行動療法とは?認知再構成法と行動活性化【精神科医監修✕公認心理師解説】)。孤独感に対する認知行動療法は『孤独を感じている人における自動思考を特定し、自動思考が正しいものかどうか検証する』というアプローチを取るようです。
Masiら(2010)によるメタアナリシスによれば、認知行動療法は孤独感の軽減・解消に一定の効果を示すようです。一方、認知行動療法による介入のみでは効果が限定的であること、そもそもメタアナリシスの対象となったいくつかの研究では,孤独感だけではなく、抑うつも対象に含まれていたこと(五十嵐,2020)から、全ての孤独感に認知行動療法が有効だとは言い切れません。
認知行動療法に限らず、孤独感の軽減・解消に特化したアプローチというのはまだ模索中のようです。今後知見の蓄積を通じて、より効果的なアプローチが明らかになっていくものと考えます。現状は、孤独感がうつと関係しているという知見を以て、うつに良いとされるアプローチが推奨されているようですね。(やや卵が先か鶏が先か論にはなりますが)前提知識として、そもそもうつ状態においては、状況を悲観的に認知する傾向が強まります(関連項目:【精神科医監修】認知のゆがみの治し方|心のコリほぐしましょう!)。したがって、実際の状況に比して孤独感を強く抱きがちになるということは充分にあり得ます。つまり孤独感を軽減・解消するために、うつ状態を対象としてアプローチするというのはある種理に適っています。
うつに対するセルフケアアプローチをご紹介しておきますね。
※呼吸法は下記を参考にしてみてください!
『主観的な孤独感がメンタルヘルスに影響を与える』という知見をご紹介しましたが、やはり『物理的な孤独を防ぐ』という視点は重要です。
物理的な孤独を防ぐために職場ができる具体策は下記の通りです。
有期且つ短期契約であることの多いフリーランスではありますが、少なくとも契約期間内においては、社員と気軽にやり取りのできるコミュニケーションツールを導入したいところです。これは孤独対策に加え、業務遂行においても有用な手段だと言えるでしょう。
食事会などの社内イベント開催にあたり、フリーランスへの声かけを躊躇してしまうことがあるかもしれませんが、実際に参加するかどうかはフリーランス個々人の判断です。有期且つ短期であってもチームの一員であるわけですから、一律で声かけをしてみましょう。
主観的な孤独感を防ぐために職場でできる具体策は下記の通りです。
短時間でも構いません。契約開始、契約満了のタイミングで1on1ミーティングを実施しましょう。チームに参画しているのは『フリーランス』ではなく『○○さん』です。”○○さんという個人とプロジェクトを進行している”という事実を改めて共有するという手続きは主観的孤独感の軽減・解消に効果があると思います。契約満了時には、○○さんの成果についてフィードバックを行ないましょう。
上記1on1ミーティングにおけるフィードバックに限定せず、コミュニケーションツールやメールを用いて、日常的にフィードバックを行なってみましょう。単純接触効果(参考:オタク臨床心理士・公認心理師は語る。日常に潜む4つの認知バイアス)と呼ばれますが、接触機会が増えることで”つながっている意識”の醸成が期待できます。
参考文献・資料
【監修】 本山真(精神科医師/精神保健指定医/日本医師会認定産業医/医療法人ラック理事長) 2002年東京大学医学部医学科卒業。2008年埼玉県さいたま市に”働く人を応援する心療内科”をコンセプトとして宮原メンタルクリニック開院。2016年医療法人ラック設立、2018年には2院目となる綾瀬メンタルクリニックを開院。医療法人におけるメンタルケアの知見を”働く人”へと届けるため、2019年株式会社サポートメンタルヘルスを設立。 各種取材お申し込み・お問い合わせはこちらのフォームよりお願いします。 |