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タグ : ふ~みん(公認心理師) , メンタル不調・精神疾患解説
2024年5月10日
最終更新日 2024年8月2日
弊社の母体である医療法人コラムにて、これまでに男女それぞれの更年期についてご紹介してきた更年期シリーズですが、最後は「プレ更年期」です。
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具体的なお話に入る前に、今回もまずは一般的に言われている「更年期」について簡単に振り返ってみましょう。女性の体にとって、妊娠や出産の準備状態にある20代~30代の「性成熟期」と広くとらえて非生殖期にあたる60代以降の「老年期」との移行過程にあるのが「更年期」です。日本人女性の平均閉経年齢はおよそ50.5歳であり、私たちが一般的に使っている「更年期」とは、その中でも閉経前5年と閉経後5年を合わせた計10年、つまり45歳~55歳頃のことを指しています。
その時期に生じる様々な不調を総称して「更年期症状」と言い、その症状が仕事や家事などの日常生活に支障をきたすほど重症化したものを「更年期障害」と呼びます。女性の場合は卵巣の機能が低下し、エストロゲンという女性ホルモンの分泌量が急激に減少することによって月経周期の乱れや心身の不調を引き起こすことが原因であると考えられています。
一方、男性の場合はテストステロンという男性ホルモンの減少が更年期症状を引き起こす一因とされていますが、その減少は緩やかであり基準値内であっても心身の不調が認められることから、社会的なストレス、家庭や生活の環境、老化による体力低下などの影響が大きいのではないかと考えられています。
では、「プレ更年期」はどのようなものなのでしょうか。そもそも「プレ」という言葉は、以前の、前の、などという意味で使用されています。スポーツ界で公式戦開始前に行われるプレシーズンマッチ、幼稚園入園前の月齢のお子さんを対象としたプレ保育など、プレという言葉自体を聞いたことがある方は多いと思います。
つまり、プレ更年期とは一般的に言われる更年期の前の時期を指しているのです。45歳以上を更年期の対象としているので、具体的には30代後半~40代半ば、45歳未満のことを言いますが、プレ更年期とは医学用語ではなく、本来の更年期ともメカニズムがやや異なります。
閉経時期には個人差があるものの、30代後半~40代半ば頃と言えば、ホルモン減少が始まっていたとしてもまだ緩やかであり、実際に閉経を迎えるまでには時間がある段階です。そのため、いわゆる更年期症状の原因となる急激な卵巣機能の低下が原因であるとは考えづらく、それよりもストレス過多や不規則な生活によってホルモンの分泌量が一時的に障害されている状態であるととらえられています。
例えば、仕事が忙しく過労気味だったり、無理なダイエットで急激な体重減少が起きていたりするなど、心身に強いストレスがかかって月経周期が乱れることはご存じの方も多いことでしょう。月経周期が乱れるほどのストレスがかかると、自律神経のバランスも崩れがちです。そうなるとほてりや発汗、頭痛などが出現します。以前、更年期症状は自律神経失調症と診断されることが多いとご紹介しましたが、ほてりや発汗、頭痛などは自律神経の乱れが原因となり体の器官や脳内を正常にコントロールできなくなった結果として現れることがあるものです。
もちろん、実際に卵巣や子宮、甲状腺機能などに何らかの異常があるケースも考えられますが、婦人科でホルモン値の測定をしても特に低下しておらず、他の疾患も見つからないという場合などは自律神経の乱れによる症状出現の可能性が高いと言えます。明らかな原因がある月経不順や無月経の場合は、その原因を取り除けば自然と体が元に戻ると考えられていますが、仮に原因が明らかであっても4カ月、半年、1年と長期間にわたる場合は婦人科を受診し、治療を受けた方が良いかもしれません。
関連項目:精神科医監修|なぜ女性は睡眠不足なのかーライフステージやホルモンバランスとの関係ー
プレ更年期の治療としては、ホルモン療法、薬物・漢方療法、サプリメント摂取のほか、栄養バランスのとれた食生活、マッサージ、アロマテラピーなどにも不快症状を軽減させる効果があると言われています。
ホルモン療法はいわゆる「更年期」の治療法でご紹介したホルモン補充療法(HRT:Hormone Replacement Therapy)とは異なり、低用量ピル(OC:Oral Contraceptives )によるものや、エストロゲンやプロゲステロンなどのホルモン剤を投与して人工的に月経周期を作り出すカウフマン療法が中心となります。HRTが不足した女性ホルモンを補う働きをするのに対し、OCはホルモン量を調節して安定させる働きをする、という点が特長です。
ピルと聞くと避妊目的で使用するイメージが強いかもしれませんが、ホルモン不足や分泌量の不安定さによる不定愁訴(様々な症状が入れ替わり立ち替わり出てきて何となく調子が悪いと感じること)を軽減させる効果があることが分かっています。カウフマン療法は排卵を止めて卵巣を休ませたあと、薬剤投与を中断したときのリバウンドを期待するもので、無月経や不妊治療に有効な治療法とされています。
しかしながらホルモン療法には吐き気、頭痛、不正出血といった副作用が生じることがありますので、心配な場合はまず漢方薬による体質改善や薬物による治療法を試してみても良いかもしれません。
ほてりやのぼせといった血液循環の悪さや無気力、イライラなどの気分面に対しては「加味逍遙散」、めまいや肩こりなどに対しては「桂枝茯苓丸」、冷えや集中力低下には「当帰芍薬散」というように、この3種類は更年期症状や月経不順など女性に関する困りごとによく用いられる漢方薬です。漢方薬はその他にも様々な種類があり、医療機関や薬局ではそれぞれの症状や体質に合ったものを処方してくれるはずです。それでも効果を実感できなかったり、不快症状が強く日常生活に支障をきたしたりする場合は婦人科や内科、精神科を受診し、症状の改善につながるお薬を処方してもらうのが良いでしょう。
【参考】
【解説】 ふ~みん(公認心理師) 仕事や育児に忙しい時期に心身の状態が良くないと物事をネガティブにとらえてしまいそうですが、そんなときだからこそ、自分自身がリラックスできて気分転換になるようなポイントを見つけて、気分を切り替えながら付き合っていけると良いですね。
【監修】 本山真 医師、精神保健指定医、日本医師会認定産業医 東京大学医学部卒業後、精神科病院・診療所での勤務を経て、さいたま市に宮原メンタルクリニックを開院。現在は株式会社サポートメンタルヘルス代表に加え、2院を運営する医療法人の理事長としてメンタルヘルスケアに取り組んでいる。 |