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タグ : かなた(公認心理師・臨床心理士) , メンタルヘルス , メンタルヘルス対策
2024年2月23日
最終更新日 2024年2月23日
目次
みなさんは、人生の中でどれくらいけがや病気を経験したか、覚えていますか?
(筆者は野原を駆け回り、公園の木に登る野生児だったので、思い切りこけて膝小僧を怪我したり、サボテンに突っ込んで棘がささりまくったり…数えきれないほどけがをしていました。社会人になってからは、以前より風邪をひくことが増えた気がします。)
何らかのけがや病気なることは、誰しもが経験することで、生きる上で避けられないものですよね。実は、体の病気は心の健康状態(メンタルヘルスと呼ばれています)に関わっています。今回は、「メンタルヘルス不調」の一次予防として、体の病気とメンタルヘルスの関係をご紹介したいと思います。
一次予防とは『疾病予防や健康増進を行うことで、健康診断など(二次予防)と異なり、原因の排除やリスクの低減を図ること』と定義づけられています。
引用:厚生労働省『一次予防』|こころの耳,閲覧日:2024年1月5日
簡単にいうと、不調が出る前に、不調の原因を取り除くことや不調になるリスクを下げることです。事前に備えることは、自分の身を守るために大事なことですよね。現在、からだの病気を抱えている方も、そうでない方も「メンタルヘルス不調」に関する情報や対策を知っておくことで、いざというときに自身の選択肢が広がったり、不安が軽減されたりする可能性があります。
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人の「体」と「心」は密接に結びついています。メンタルヘルスが不調だと、ストレスから身体的な不調を引き起こすことがあります。反対に体の病気にかかることで、不安や落ち込み等が蓄積され、メンタルヘルスの不調を引き起こすこともあります。このように心と体はお互いに影響しあっているので、心と体のバランスを保つことが大事になってきます。
【参考】
近年は「生活習慣病」が死因の6割を占めており、日本人がかかる疾患の中心となっています。「生活習慣病」とは、がん、心疾患、脳血管疾患、糖尿病などのことで、罹患する方が増えきています。罹患者数の増加を受け、近年では生活習慣を改善し、病気の発症や重症化を防ぎながら健康的な生活を維持することを目指すようになってきています。
ちなみに、生活習慣病の中でも、がんは生涯のうち2人に1人はかかると言われており、がん検診やがん医療の推進、仕事と治療の両立などの取り組みが国によって進められています。
【参考】
体の病気を抱える人は健康な人と比べて様々な精神疾患に罹患するリスクが高いと言われています。実際に、精神疾患の有病率を比較した研究では、体の病気を抱える人は体の病気を抱えていない人に比べて、大うつ病で2~3倍、パニック障害や身体化障害で10~20倍、物質依存で3~5倍のリスクが認められています。
【参考】
※ちなみに”大うつ病”とは所謂うつ病を指します。Major Depressive DisorderにおけるMajorの日本語訳に”大”が充てられたことに起因しています(Major Leagueは”大”リーグと訳されていますよね。これと同じです)
体の病気になると、心の状態は様々な変化を経て日常生活へ適応していきます。今回はがん患者さんの心の状態を例に挙げてご紹介しますが、それ以外の病気に罹患した方も下記のような心の状態変化の過程を踏むと考えられます。
まず、病気の告知や病状の進行など、ストレスのかかる出来事が起こった時、つらい気持ちや、将来への不安が増した状態になります。そして、否定的な気持ちを抱えながらも、時間が経つ中で気持ちを整理していき、少しずつ前向きな気持ちになっていきます。この心の状態の変化には波があります。「大丈夫」と思える時もあれば、「だめかもしれない…」と落ち込む日々が続く時もあります。心の状態は様々な変化を繰り返し、最終的には、病気を受け入れ、自分らしく日常生活を送れる状態になります。
心の変化の過程にて、時になかなか落ち込みや不安から抜け出せず、日常生活に支障が出てしまうことがあります。”うつ状態”や”ストレス反応”と呼ばれる状態は、強いストレスがかかったり持続的にストレスに晒されたりすれば、誰にでも生じる可能性があります。不安で眠れなかったり、人と会うのが苦痛だったりする状態が一定期間続くと、適応障害やうつ病といったこころの病気に該当する状態への移行する場合があるため、無理をせず、精神科や心療内科などで治療を受けることが推奨されます。
【参考】
体の病気は生活へとどのような影響を与えるのでしょうか。具体的且つ代表的な影響をご紹介します。
【日常生活への影響】
体の病気になることで、治療中心の生活になる場合があります。治療中心の生活になると、食事や運動、飲食や喫煙などに制限やルールが決められたり、病気によってはしっかりと病状管理を継続する必要があったりと、様々な考慮が必要になってきます。また、身体的な痛みや薬の副作用に悩まされる場合もあります。さらに、治療や体調を優先した結果、仕事を休まざる終えない状況になり、経済的な問題につながる場合もあります。
【人間関係やコミュニケーションへの影響】
医療者や家族とのコミュニケーションに困り感を抱える可能性があります。医者との関係では、限りある時間で治療について話すことに加えて、相談をするのが難しい、時間をもらうのが申し訳ないなどと感じる場合があります。また、家族との関係では、おたがいに相手が大事だからこそ気を遣ってしまう、相談できないなど、様々な遠慮、躊躇、とまどいや葛藤が生まれます。さらに、外見・機能的な障害による夫婦・パートナー間の問題もあります。特に、親世代は予後の見通しや外見に伴う変化に関して、子供にどう伝えるかも悩みどころの1つになる場合があります。
【将来への不安、人生や自己の存在に関する苦痛】
病気を抱えることで、その人にとって大きな転換を与える場合があります。つまり、病気になったことで、それまでとは違う新しい人生の価値を見出す可能性があるということです。また、結婚や出産、仕事の継続など、大きな判断を伴う可能性がある事項についてしっかりと考える必要があります。さらに、自分の存在意義、家族への思い等とどのように向き合うかを自分自身に問いかけるようになります。
【参考】
ここまで体の病気になることで生まれる”心の状態の変化や問題”を説明してきました。最後に、メンタルヘルスを維持する、または、メンタル不調が出たときにさらに悪化させないためには、どのような対処があるのかを1部ではありますがご紹介しますね。
【医療機関への相談】
医療機関には、医者や看護師だけでなく、ソーシャルワーカーや心理士などの専門職と呼ばれる支援者がいます。大した不安ではないかもしれないと考えたり、まだ大丈夫と感じたりしている場合でも、まず相談してみることで、気持ちの変化があるかもしれません。利用できるものは利用すべし!の精神がポイントですね!
【治療や生活全般に関する制度の活用】
体の病気を経験した方が、自分らしく生活を送れるように、国が支援制度の整備を進めています。例えば、障害年金や高額療養費の負担軽減などの制度です。治療と仕事の両立に関しても、事業ごとで利用できる支援が用意されていたりします。ちなみに、病院でも治療中に利用できる制度に関するチラシやパンフレットを置いている場合があるので、確認してみると新たな情報が得られるかもしれません。
【リフレッシュする時間を作る】
病気を抱えている方に限らず、心と体を休める、リラックスする時間はとても大切です。すでに体を動かしたり、家でゆっくりしたりと、試行錯誤しながら対処されている方も多いかもしれません。「もっと他の対処法を知りたい」、「自分の力だけでは難しいかもしれない」と感じている方は、認知行動療法を中心とした心理療法などを利用するのも一つの手かもしれません。実際に、心理的支援はメンタルヘルス不調に効果がある可能性を示す研究結果もあるため、安心して利用できるのではないでしょうか。
【参考】
【執筆】 かなた(公認心理師) 今回は、体の病気とメンタルヘルスについて、ざっくりとご紹介しました。今回示した心の状態やメンタルヘルス不調への対処法は、代表的な例になります。生活の状況や人生の中で大事にしていることなどは、1人1人違いますよね。 また、病気を受け入れ、自分らしく日常生活を送れるまでの時間は人それぞれです。焦る気持ちもあるかもしれませんが、自分のペースで、無理をしないことが大事だと思います。自分のペースで、自分に合った対処法を模索していっていただけたらと思います!
【監修】 本山真(精神科医師/精神保健指定医/日本医師会認定産業医/医療法人ラック理事長) 2002年東京大学医学部医学科卒業。2008年埼玉県さいたま市に宮原メンタルクリニック開院。2016年医療法人ラック設立、2018年には2院目となる綾瀬メンタルクリニックを開院。 |