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泣くとスッキリするメカニズム|公認心理師がカタルシスの意味をわかりやすく解説

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2023年2月24日

最終更新日 2024年6月25日

公認心理師が泣くとスッキリするメカニズム『カタルシス』の意味をわかりやすく解説

皆さんはこれまでに泣いてスッキリした経験があるでしょうか。ストレス解消を目的に涙を流す『涙活』といった言葉もあるくらいですから、泣くことでスッキリするというのは、ある程度一般的な経験ではないでしょうか?言葉が発せない赤ちゃんは不快な気持ちを泣くことによって表現し、言葉が話せる幼児も不快だけでなく悔しさや苛立ちを泣いて表現します。大人になると不快や悔しさ、苛立ちの他に感動や喜びで泣くこともあります。しかし、その機会自体は子どもの頃より減り、時と場合によっては恥ずかしささえ感じることもあるかもしれません。でも、実は泣くことにはストレスを発散できるというメリットもあるのです。泣くことによってスッキリするメカニズム『カタルシス』について公認心理師が解説します。

 

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泣くとスッキリするメカニズム


少々専門的な話になりますが、人間の自律神経は「交感神経」と「副交感神経」の2つから成り立っています。前者は体を興奮させるもの、後者は体をリラックスさせるもので通常この2つはバランスがとれているものなのですが、ストレスが高まると交感神経が強くなることが分かっています。

 

【参考】精神科医監修|ストレスは肩こりの原因なのか?ー肩こり対策、ストレス解消法ー

 

ストレスが高まり交感神経が優位になったとき、自律神経のバランスを回復してくれるのが涙であり、感情によって交感神経が優位になるとまぶたの奥の涙腺が刺激され、涙が流れるようになっているのです。その涙には、涙を流すときに多く分泌される「セロトニン」という神経物質が含まれており、セロトニンは自律神経のバランスを保つ役割を果たします。

 

見た目での違いは分かりませんが、涙にも種類があり次の3種類に分類されています。

  1. 基礎分泌としての涙
  2. 反射性の涙
  3. 感情性の涙

まず、基礎分泌としての涙は、目を保護したり酸素を取り入れたりするなど身体の一部としての働きをします。次に反射性の涙は、ゴミが入ったときやタマネギを切ったときなど刺激を受けて流れるものを言い、感情性の涙は、感情の揺れ動きに伴って流れるものを指します。「泣くとスッキリする」ときに流れる涙は3つめの感情性の涙です。実際に、泣くことで気分が良くなったかという問いかけに対し、世界37ヶ国で70%以上の人が同意したという研究もあります。同時に緊張の減少や感情を浄化されたという効果も得られています。この「感情の浄化」を精神医学や心理学の用語では「カタルシス」と呼びます。

 

 

公認心理師がカタルシスの意味をわかりやすく解説


カタルシスを心理学の世界で最初に使ったのは精神科医のフロイトだと言われています。フロイトはカタルシス療法という用語も使いました。カタルシス療法は対話を通して行う精神療法で、患者にトラウマとなった出来事を思い出してもらいそのときのネガティブな感情を再体験してもらうというものです。人間は不安や嫌悪感が生じた出来事を無意識のうちに押し殺す傾向があり、そうすることで身体に不調が出現することがあると言われています。そのためカタルシス療法では、原因となっているネガティブな感情を再認識し、押し殺した気持ちを吐き出すことで心身の不調を軽減させます。

 

有名な例として、かつて使用人がコップを使用して飼い犬に水を飲ませていたことに怒りと嫌悪感をもっていた女性が、自分自身もコップから水を飲むことができなくなり脱水症状になっていた話があります。その女性はカタルシス療法を受け、決して外に出すことなく自分の中に隠していた思いを話したことによって、それまで訴えていた身体症状が消失し、コップから水を飲むこともできるようになったというのです。その後、アメリカではカタルシス療法が評価されるようになったとか。

※カタルシス効果によってトラウマの解消を狙うという発想は、現代のPTSD治療において主流のアプローチとは言えません。ご注意ください。

 

心理療法とは話題が異なりますが、フロイトよりも前にアリストテレスが「詩学」に書き残した悲劇論においては、「悲劇が観客の心に怖れと憐れみを呼び起こし感情を浄化する効果」を指すギリシャ語の演劇用語がカタルシスの語源だという説もあります。元々感情の「浄化」や「洗浄」、「清め」という意味として用いられており、悲劇論の内容を現代で表現するならば、失恋してつらいときに失恋ソングを聴いて、自分の想いを代弁してくれる歌詞の世界に浸ることで気持ちが浄化される状態、というような感じなのです。

 

紀元1世紀にはオウィディウスという作家が「涙を流すことによって、私たちは怒りを分散させている。」「涙を流すと気が晴れる。」と記し、その半世紀後にはまた別の作家が「涙は魂を楽にする。」と書いたという歴史があるように、泣くことは身体ばかりでなく、心、魂、気分にも良いと考えられていました。現代の研究において、先ほど述べたセロトニンだけでなく、感情性の涙には様々なホルモンが含まれ、分泌されていることも分かってきています。およそ2千年前に提唱されていた考えが、科学的に支持されたわけです。

 

 

泣くことによるカタルシス効果


アメリカの心理学会では、女性は平均して1年に30~64回(多くて1ヶ月に5回ほど)感情的な涙を流しているという調査結果を発表しました。もちろん、同じ状況でも泣くか泣かないかには個人差があり、調査にかかわった医師は泣きやすいタイプの人が居ることも認めています。泣きやすいタイプの人は感情を強く感じる人であり、嬉しさ、悲しさ、感動、圧倒などどのような感情であっても泣くことができると述べています。また、泣きたいときに泣くことを抑制すると心理的なダメージを生み出すとも指摘しています。本当は泣きたいのに我慢して泣かないでいることが癖になってしまうと、素直に泣いた場合よりもより多くのストレスを感じてしまうことがあるため、うまく気持ちを浄化できなくなってしまうのです。泣きたいという正常な反応に対してちゃんと泣くことで、感情の処理や気持ちの整理をすることができるのですね。

 

【解説】

ふ~みん(公認心理師)

涙は社会的絆の促進や社会的サポートを引き出す個人同士の関係を深める機能を果たしたり、一人間にとっては健康の維持や気分の変化を落ち着かせたりする側面があるとも言われています。

大人になると理由もなく涙を流す機会はなかなかありませんが、「ちょっと疲れたなぁ。」「最近うまくいかないことばかり。」なんて感じているときには、映画やドキュメンタリー番組を見たり故人のことを思い出したりして意識的に泣いて心身の状態を整えてみるのも良いかもしれません。

ふ~みん記事一覧

 

【監修】

本山真(精神科医師/精神保健指定医/産業医/医療法人ラック理事長)

2002年東京大学医学部医学科卒業。2008年埼玉県さいたま市に宮原メンタルクリニック開院。2016年医療法人ラック設立、2018年には2院目となる綾瀬メンタルクリニックを開院。株式会社サポートメンタルヘルス代表取締役社長として、中小企業のハラスメント対策サービス(ハラスメント・コンサルティング・デスク)をリリース。ご興味がございましたらお問い合わせください。

 

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