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落ち込みの原因は自己注目にあり?理想と現実と原因帰属|対処法も解説

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2023年1月13日

最終更新日 2023年1月14日

自己注目(理想と現実の自分)と原因帰属が落ち込みの原因?どう対処する?

 

ー何か悩みがあるときに解決方法を必死に考えたり、何か嫌なことが起きたときにそれを何度も思い返してしまったり

ー何とか今の嫌な気分を楽にできたら、と一生懸命考えるのに逆効果で落ち込んでしまう

 

こんな経験をされたことはありませんか?

この「考えすぎて落ち込む」は何故起こるのでしょうか。

 

今回のブログは『原因帰属』をテーマに考えすぎて落ち込んでしまうメカニズムや対処方法を解説します。

 

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自己注目とは何か?理想と現実のギャップがもたらす影響


現在の悩みや過去の出来事に思いを馳せている状態とは、大抵「自分に注意が向いている」状態です。自分の頭の中で起きていること、自分の体の小さな反応などに気付いてあれこれ考えている、周りからどう見られていたか心配したりするということです。

 

もちろん、それ自体は何ら悪いことでも恥ずべきことでもありません。取り扱い方によっては、自分について振り返ることは「反省」「内省」「自己理解」のようなポジティブな要素を生み出します。この力は一社会人として生きるためには必要不可欠です。反省、内省というプロセスを経て自己理解が深まるのであれば、悩みを次の機会に役立てることができますよね。

 

しかし、考えがまとまらずどんどん自分を批判していったり、緊張しているときにもっと緊張するような考え方に陥ったり、不安で眠れずネガティブにしか考えられなくなったり…。悩みの行きつく先が「落ち込む」になってしまうと、とても辛いですよね。

 

 

上記のように自分に注意が向くことを『自己注目(self-focus)』と言います。坂本(1997)は自己注目について下記のように説明しています。

 

―自己注目により『自分自身の行動の適切さが意識されるようになり、現実の自己の状態と行動の基準とが比較され、自分の行動を基準に近付けるように行動するようになる。現実の自己が基準よりも下回っていれば、ネガティブな感情を経験する

 

つまり、自分について考えることで「こんなはずではなかった」「どうして上手く行かないのか」といった、自分が理想としていた状況とのギャップを強めてしまう面が生まれるということです。反省・内省と自己批判をして落ち込むことは、メカニズムとしては紙一重なのです。

 

落ち込みの原因は自己注目にあり?不安にも関連?


この自己注目と抑うつ(落ち込み)には、深い関連があるとされています。例えば、うつ病の発症にはいくつかの要因があるとされていますが、性格傾向もそのうちのひとつです。

 

『義務感が強く、仕事熱心、完璧主義、几帳面、凝り性、常に他人への配慮を重視し関係を保とうとする性格の持ち主』は、エネルギーの放出も多いということになります。努力の成果が伴っているうちはエネルギーの回復もみられますが、成果が出せない状況が生じたり、エネルギーの枯渇が起これば発症の危険が高まります』

引用:2 うつ病の主な症状と原因|こころの耳|厚生労働省

 

真面目で自分を律する傾向の高さは、自己注目の高さと近しい面があるようです。自己注目が強く自己批判を繰り返しながら頑張りつづけているためにうつ病のリスクを高めてしまっています。

 

そして、自己注目は『社交不安障害』との関連も指摘されています。社交不安とは、見知らぬ人達のなかで、他者の注目を浴びたり何らかの行為を行わなければならないことに対して顕著な恐怖を感じる状態(榎本,2009)です。

【こちらもどうぞ】

精神科医監修:あがり症は性格なのか?社交不安障害の対策法を解説 | 株式会社サポートメンタルヘルス (support-mental-health.co.jp)

 

森田正馬という精神科医が提唱した『ヒポコンドリー性基調』という概念があります。これは心身が病的ではないかと不安に思う気分のことです。森田は、この傾向が生まれつき強いタイプの方が、ある感覚に注意を集中することによってその感覚が強まり、その感覚によってさらに注意が集中するという『精神交互作用』が生じることで、神経症が発祥すると考えました(高橋,2009)。

 

これも、自己注目と似たメカニズムを説明しているように感じますね。自己注目が強くなると、自分が周りからどう見えているのかが気になります。同時に、自身の体の変化にも敏感に反応するようになります。動悸が速くなっていることに気付くと「緊張している!失敗したらどうしよう?」と焦りが生じます。焦ると動悸はより速くなり、手も震え始めて頭が真っ白になってしまいます。

 

 

そんな自分が「周りからどう見えているんだろう?理想の自分に遠く及ばない!」と思うと、はじめに感じていた動悸とは比較にならないほどの混乱状態になっているのではないでしょうか。よく発表会などで「落ち着いて!」「自信をもって!」と声掛けをするのを聞きますが、結構理に適ったアドバイスなのかもしれません。

 

落ち込みの原因となりやすい「全部私のせい」という『原因帰属』


自己注目とよく似た落ち込みの原因になりやすい理論が『原因帰属』です。「起きたことは全て自分に原因があるのではないか」と考えやすいタイプの方がいらっしゃいます。これは『認知の歪み』の一つにも数えられる辛くなりやすい考え方の癖です。関連項目:【精神科医監修】認知の歪み?10パターンの考え方の癖を解説!

 

―例えば、この癖があるAさんが居たとします。

会う約束をしていたBさんが、なんとなくいつもより素っ気ない雰囲気です。

そこで、Aさんは「Bさんが不機嫌なのは、私がなにか不愉快なことを言ったからかもしれない。」と考え落ち込んでしまいました。

しかし、実のところ、Bさんは昨夜お酒を飲み過ぎてしまい二日酔いで体調が悪い。そのうえ、満員電車できたため疲れ切ってしまっていた。

結果として周りの人に構う余裕がなく、素っ気ない態度になってしまっていたのです。

そんなことは知らないAさんはBさんの反応に一喜一憂することになり、疲れてしまいます。

 

このように原因を自分もしくは相手の中にあるとすることを『内的帰属』といいます。一方、「Bさんが不機嫌なのは、ここまで来る間になにかあったからだろう。」と、原因を外部にあると想像することを『外的帰属』といいます。

 

 

気楽に考えるためには、この原因の帰属先を考えてみると良いかもしれません。自分のせいだと繰り返し考えることは更に落ち込みを強めてしまいますし、取り越し苦労であることも多々あります…。Aさんのような考えに陥りやすいタイプの方は「意外とみんな事情があるから、全ては自分が悪いわけじゃないな」と気楽に構えてみましょう。

 

自己注目や原因帰属による落ち込みの対処法


自己注目やなんでも自分に関連させる傾向が強くなっていると気づけたら、自己注目や原因帰属によって気分が落ち込んでいると気づけたらどう対処すればよいのでしょうか?いくつか対処法をご紹介しましょう!

 

自己注目や原因帰属に翻弄されないマインドフルネス

先ほど挙げたヒポコンドリー性基調への対処法は、『沸き起こる考えや不安に抗わずあるがままを受け止めること』とされています。この考え方は『マインドフルネス』にもよく似ています。

関連項目:【精神科医師監修】マインドフルネスとは①定義と潮流

 

嫌なことは考えれば考えるほど雪だるま式に不快さが大きくなってしまいます。不快さが大きくなりすぎる前に気付き、受け止めつつ、最終的には悪循環を止めるというアプローチがマインドフルネスによる対処の方向性です。考えに憑りつかれて眠れない夜には、横になってマインドフルネス呼吸法やボディスキャンをしてみましょう。結果、例え眠れなかったとしても心身を休めることはできます。マインドフルネスは、緊張や不安にも効果があると言われていますので、不眠のときだけではなく、緊張・不安を感じている場面においても試す価値のあるアプローチです。

関連項目:【精神科医師監修】マインドフルネスとは③効果、副作用を解説!

 

【臨床心理士がわかりやすく解説】マインドフルネス基礎講座

 

自己注目を物理的に分散するアプローチ

手や体を動かすこともおすすめです。筋トレや運動は、それ自体がメンタルヘルスによい影響をもたらします。

関連項目:【精神科医監修】筋トレで自己肯定感を高める!?メンタルとフィジカルの関係

 

加えて、筋トレや運動はこれまで全注意を考えることに費やしていたのを別のことに分散することができます。よくジョギングがストレス発散だとおっしゃる方がいますが、これはうまく自己注目を逸らしているともいえます。きつい筋トレ中に、複雑なことを考えつづけるのも難しいですよね。

 

体や呼吸に注意を分散させる意味で、ヨガなどもおすすめです。すぐに運動をするのが難しい状況であれば、手だけを動かすことも効果的です。家事でもよいですし、何か手作りするのもよいでしょう(個人的には、料理、ハンドメイドやジグソーパズルは効果的でした笑)。

 

落ち込み対処には鉄板の趣味活動

動いて気晴らしをする、と通ずる部分ではありますが、好きなことをするのはとても重要です。ご自身の趣味を振り返ったとき「他のことを考えなくていいから好き」という面はありませんか?何かに没頭することは、自己注目を逸らしているとも言い換えられそうですね。

関連項目:オタク臨床心理士・公認心理師は語る。趣味とストレスの関係とは?

 

―自己注目は、決して悪いことではありません。日々頑張っているからこそ感じることですが、強くなりすぎることで苦しくなってしまうのも事実です。気晴らしもうまくいかない、どうやっても休めない、そんな時は無理をせず、専門の病院へのご受診もご検討くださいね。

 

【引用文献】

坂本真二(1997)自己注目と抑うつの社会心理学 東京大学出版社

下山晴彦 編 (2009) よくわかる臨床心理学 株式会社ミネルヴァ書房

 

【解説】

maitake(臨床心理士)

『落ち込み』一つとってみても原因は様々。原因によって対処方法は変わってきますから分析は大切です!カウンセリングと聞くと敷居が高いと感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、『自分を知って対処法を考える』と捉えるとぐっと身近なものに感じませんか?

認知行動療法とは?認知再構成法と行動活性化【精神科医監修✕公認心理師解説】

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【監修】

本山真(代表取締役社長)

精神科医師/精神保健指定医/日本医師会認定産業医/医療法人ラック理事長

2002年東京大学医学部医学科卒業後、東京大学医学部付属病院で研修。川越同仁会病院、不動ヶ丘病院の勤務を経て、2008年埼玉県さいたま市に宮原メンタルクリニック開院。2016年には医療法人ラックを設立し綾瀬メンタルクリニックを開院。2019年株式会社サポートメンタルヘルス設立。

 

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