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タグ : メンタルヘルス , 盛光(公認心理師・臨床心理士)
2022年9月2日
最終更新日 2024年7月30日
目次
コミュニケーションメソッドの一つであるアサーション。先日弊社ブログにて取り上げました。今回はアサーションについてより詳しく解説します。自分が取りやすいコミュニケーションタイプが分かる質問リストをご用意しました!あなたはどのアサーションタイプに当てはまるでしょう?ぜひ取り組んでみてください!
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アサーション(assertion)とは,自分も相手も大切にする自己表現(平木,2009)です。歴史をたどると,1950年代,心理療法の中の行動療法の中で提唱されました。1960~70年,アメリカにおいて黒人や女性の権利を主張する人権運動が活発になり,今まで抑圧されてきた人が適切に自己主張する方法として,アサーションが発展していきます。
アサーションには,相手と対等にコミュニケーションをとるためのスキルが含まれており,自分の意見を伝えることが苦手な人や立場の弱い人が相手に自分の意見を適切に主張できるための方法として広がりました。また,「自分の意見を一方的に主張する,相手の表現を否定する人」に対しても,アサーションの考え方を意識させる必要がある,と考えられるようになりました。
そこで現在,アサーションが目指すのは,自分も相手も大切にしながらどのようにコミュニケーションをとっていくか考えていくこと,そしてよりよい人間関係を築いていくことです。コミュニケーションに苦手さを感じている人も,つい自分の意見を相手に押し付けがちな人も,一度ご自身のコミュニケーションを振り返ってみませんか?
では,初めに皆さんの普段の自己表現の仕方を確認してみましょう。
以下のそれぞれの質問に対して,A~Cのどれかを選んでください。 A:「当てはまる」「どちらかというと当てはまる」 B:「当てはまるけれど,その状況のとき相手に対して否定的な感情や腹立たしさを抱く」 C:「当てはまらない」「どちらかというと当てはまらない」 |
1.自分から働きかける行動 ・あなたは人にいい感じを持ったとき,その気持ちを表現できますか? ・あなたは,自分の長所やなしとげたことを,人に言うことができますか? ・あなたは,自分が神経質になったり,緊張したりしたとき,それを受け止め,伝えることができますか? ・あなたは,初対面の人たちの会話の中に,気楽に入っていくことができますか? ・あなたは,会話の場から一足先に抜けて,立ち去ることができますか? ・あなたは自分の知らないことや分からないことがあったとき,そのことについて説明を求めることができますか? ・あなたは人に支援や助けを求めることができますか? ・人と違う意見や感じを持ったとき,それを表現することができますか? ・自分が間違っていると気づいたら,それを認めることができますか? ・フェアで適切な批判を,人前で述べることができますか? |
2.人の働きかけに対応する行動 ・人からほめられたとき,素直に「ありがとう」と言えますか? ・自分のしたことを批判されたときに,きちんと受け答えできますか? ・不当な要求をされたとき,断ることができますか? ・長電話や長話のときに,自分から打ち切る提案をできますか? ・あなたの話をさえぎって話し出した人に,対応することができますか? ・パーティーやイベントへの招待を,率直に受けたり断ったりできますか? ・訪問販売を断りたいとき,断ることができますか? ・レストランで注文したものと違う料理がきたとき,そのことを言って,取り替えてもらうことができますか? ・人の善意や行為がわずらわしいときに,それを伝えることができますか? ・人から援助やアドバイスを求められたとき,必要であれば断ることができますか? |
お疲れさまでした。
次に,A~Cがそれぞれいくつあるか数えてみてください。
【アサーションタイプ診断結果】
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なお,毎回どの人に対しても同じコミュニケーションの取り方をしている,という人はそう多くないと思います。皆さんそれぞれ,状況や相手に応じてコミュニケーションの取り方を無意識に分けている,ということが普通です。どのコミュニケーションタイプの割合が多いのか,これは人によって異なります。これでご自身の自己表現のタイプが分かったかと思います。では次に,それぞれのタイプについて説明します。
アサーションの考え方では,コミュニケーションのタイプを“アサーティブ”と“ノンアサーティブ”に分けています。
ノンアサーティブ2種類、アサーティブ1種類、合わせて3種類、3つのタイプとなります。まずはノンアサーティブの2種類を紹介します。
自分よりも相手を優先して考えることや,相手の意見に合わせるタイプです。自分の気持ちを言いそこなう,言ったけど相手にうまく伝わっていないことがあります。あいまいな表現,自信のなさそうな小さな声量,消極的な態度もこのタイプに含みます。
相手を優先することで自分のことが後回しになるため,結果的に相手の言いなりになってしまうこともあるかもしれません。自分の意見を抑えて相手に譲ってあげたつもりなのに,相手にはその配慮や気持ちは伝わりにくいです。結果的に,感謝されるどころか,「あなたも私の意見の方がよいと思ったんでしょ?」と誤解されやすいです。このようなタイプの人は,自分のことをずっと後回しにしているため,段々と自分が何を言いたいのか,どうしたいのか分からなくなっていくことがあります。
周囲から理解されない寂しさ,自分の意見や欲求を外に出せない苦しさなどが溜まっていくと,相手に対して「なんで分かってくれないのか」「相手も自分のように配慮すべきだ」と不満や怒りが沸いてきます。そして,そしてついに限界が来ると爆発することがあるかもしれません。自分の中では蓄積された不満が限界に来たから,と分かっても周囲の人はそのような事情は知らないため,「いきなりキレた」という見方になります。
また,爆発せずに耐え続けることでエネルギー切れになることもあります。そうすると,“コミュニケーション=ストレス,疲れる”と捉えるようになり,人間関係を避けがちになります。
以上から分かる通り,ノンアサーティブタイプ(受け身型)の人は,心理的に負荷がかかりやすく,心身症や抑うつ状態など,精神不調に繋がる可能性があります。
関連項目:【ストレスってなに?】ストレスとの上手な付き合い方
相手より自分の考えや意見を優先するタイプです。相手の意見や気持ちを配慮せず,自分の意見を一方的に押し通すように伝えがちです。
例えば「言い負かす」「怒鳴る」「命令する」などです。セクハラ,パワハラも,自分の考えや発言に気をとられて,相手の気持ちを無視していることから,このタイプの典型例です。また,一見丁寧な表現や相手をおだてるような言い方でも,自分の思い通りになるように操作している場合は,このタイプに含みます。
関連項目:ハラスメント対策
自分の意見が通りやすい,と感じるでしょうが,周囲から見るとこのタイプの人は自己中心的に見えます。「何を言ってもこっちの意見聞いてくれないし…」そのような人と一緒にいたいとは思えなくなりますよね。いつのまにか,周囲から孤立しやすくなります。また,このような人は,一方的な強引さのために,意見を通した後に後味の悪さが残ることが多いです。
自分の伝え方が必要以上に攻撃的で,傷つけるつもりじゃなかったのに…と後悔することもあるかもしれません。このようなタイプは,自分の思い通りにしたい人,他人よりも優位に立ちたい人が当てはまりやすいです。また,権力や権威のある人,知識や経験が豊富にある人,役割や年齢が上である人は,そのつもりがなくても気づかぬうちにこのタイプに陥りやすいです。
この自己表現に慣れていくと,相手が自分のことを支持してくれない,異なる意見を持っていると分かると,自分を維持することができない,だから自分を守るために相手を攻撃する,という流れになります。人と対等で親密な関係を築くことが難しくなり,孤立につながりかねません。
次に,アサーティブタイプです。
自分のことも相手のことも大切にしたコミュニケーションをとるタイプです。自分の気持ちや考えを自分で把握し,相手に正直に伝えます。その際,相手の気持ちや状況を配慮した表現を選びます。自分の意見を伝えたら相手の意見を素直に受け止めます。
アサーションとは,自分が話したいことを非主張的にも,攻撃的にもならずに,できる限り素直に正直に伝えると同時に,相手の反応を待って対応していくことを含んだ表現(平木,2012)です。
ここではコミュニケーションを「自分の思い通りに進むとは限らない」ことを前提としています。そして,互いの考えや気持ちに関心を寄せ,理解しようとします。例え同じ意見にならなかったとしても,理解しあえると互いに自分らしくいられる関係でいることができます。また,互いの意図を理解して新たな提案を行っていくことで,互いがある程度納得できる合意点を見つける話し合いを行うことができると思います。
今回はアサーションのタイプについて詳しく解説しました。あなたのアサーションタイプ診断結果はいかがでしたか?コミュニケーションは相手あってのものですから単純に良し悪しを評価するものではありません。診断結果から『自分のコミュニケーションはダメだ』と落ち込んでしまうことのないようご注意ください。
コミュニケーションメソッドであるアサーションを練習するアサーショントレーニングについてはこちらで紹介しています。
ぜひご覧ください。
アサーション|コミュニケーションメソッドの心理学を臨床心理士が解説
参考引用文献
【執筆】 盛光(公認心理師・臨床心理士) 余談ですが,私は学生の頃に心理学の先生から「自分の意見を伝えない=自分で自分を無視している」と言われたことがあります。自分のことも,相手のことも無視することなく,大切にできるといいですね。
【監修】 本山真(精神科医師/精神保健指定医/日本医師会認定産業医) |