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夜更かしの心理と対策|リベンジ夜更かしをやめて健やかな朝へ

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2025年7月25日

夜更かしがやめられない人へ──その心理とクロノタイプ別対策を専門家が解説

休日前や連休中についついやってしまう夜更かし。

最近は,睡眠時間を割いて昼間に過ごせなかった自分の時間を取り戻そうとする「リベンジ夜更かし」という言葉も目にするようになりました。

1日くらい問題ないかもしれないですが,仕事や学校や大事な約束の前日など「寝なきゃいけないのに夜更かししてしまう」ようになると,自分も周りもちょっと困ってしまいますよね。

 

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Nautsら(2019)の分類:夜更かしの3タイプ


Nautsら(2019)は,20~62歳の男女17名にインタビューを行い,それぞれの内容から共通項を抽出し,就寝時間の先延ばしをそれぞれ原因の異なった3種類に分類しています(こちらもどうぞ:癖なの?病気なの?【先延ばしの科学】精神科医監修ライフハック心理学#3)。

意図的先延ばし

故意に夜更かしをしており,後悔すると分かっていながらも家事や趣味に時間を割いている場合,意図的先延ばしに分類されます。典型的な先延ばしですが,夜更かしを(少なくとも部分的に)正当化しようとし,「自分には自由な時間を過ごす権利がある」と感じる傾向が見られます。就寝予定時刻にベッドに入ることが長期的な利益につながると確信している半面、くつろぐ時間を取る必要性も感じています。

無意識的先延ばし

注意散漫や不注意によって結果的に就寝時刻が遅くなってしまう場合に無意識的先延ばしに分類されます。スマホやゲームに夢中になり「いつの間にかこんな時間になっていた」というパターンです。他の夜更かしとは異なり,予定した就寝時刻を意図的に放棄したわけではないことがポイントとなります。5~10分スマホを見るつもりがいつの間にか1~2時間たっていたという感じですね。

戦略的遅延

先延ばしとは「本当はこの時間必要ないのになぁ」と心のどこかで認識しているからこそ,先延ばしと言えるのですが,「早くに寝るとうまく眠れない」と心から確信している場合は意図的先延ばしではなく戦略的遅延と呼ばれます。例えば,早くに寝床に入ってしまうと不安や考え事が頭に中でぐるぐると回ってしまって寝つけないために,本などを読んで就寝時刻を遅らせている場合などです。つまり不安などのネガティブな感情の対処方法として夜更かしを使っているタイプになります。遅くに眠ればもっとうまく寝つけるということですね。

 

慢性睡眠不足が引き起こす心身への影響


慢性的な睡眠不足が続くと日中の眠気はもちろん,体内のホルモン分泌や自律神経系の乱れをも引き起こしてしまいます。

また,睡眠不足だからといって日中の眠気が必ず生じるわけでもありません。実際の睡眠不足と眠気の強さにはズレが生じる(つまり睡眠不足に自覚的でない)場合があり,その際は怒りっぽくなる,気分不快感,注意力低下,意欲低下,疲労,倦怠感,筋肉痛等の形で現れることもあります。

さらに長期化すれば,うつ病,不眠症などの精神疾患,肥満や糖尿病などの生活習慣病,心疾患,免疫低下などに繋がる可能性が高まります。

長期的に見てみると夜更かしや睡眠不足はデメリットの方が大きいように思えますね(関連項目:【精神科医師監修】寝たはずなのに疲れてる?睡眠障害4つのポイント)。

 

クロノタイプ(朝型・夜型)と生活リズムの不一致がもたらす問題


とは言うものの,「リベンジ夜更かし」という言葉の背景を考えると,夜更かしすることにも一時的なストレス解消効果があるのでしょう。

「夜更かし,ダメ,ゼッタイ」なんて言われたら,窮屈な感じがしてちょっと嫌ですよね。

無理に夜更かしをやめるのではなく、自分に合った「睡眠との付き合い方」を見つけることが大切です。いくつか試してみたい工夫を紹介します。

 

まずは自分の体内時計(クロノタイプ)あった生活を送れているのかについては見直してみていいかもしれません。

クロノタイプとは俗に「朝型」「夜型」と呼ばれるような活動のしやすい時間帯のことを指しています。朝型の人は早寝早起き,夜型の人は遅寝遅起きの方が生活しやすいということです。

 

 

一方で,時計メーカーでも知られるセイコーグループが調査した「セイコー時間白書2024」によれば,5人に1人がクロノタイプと生活リズムが一致していないとの結果が出ています。

つまり,「夜型」だと認識していて「夜型」の生活リズムを送っていたものの,実は「朝型」であったというような状態の方が一定数いることを示しています。

朝型の人が前日に遅寝をすることによってパフォーマンスが低下することを示した研究(Shimuraら,2022)や,夜型の人が午前中に活動することで,朝型の人に比べ日中の眠気、精神運動覚醒、遂行機能、握力において有意に障害されることを示した研究(Facer-Childsら,2018)もあり,クロノタイプと生活リズムの不一致が与える影響は決して小さくはありません。

自分のクロノタイプを知りたいという方は,国立精神・神経医療研究センターのサイト内にてクロノタイプを評価できる質問紙(ミュンヘンクロノタイプ質問紙)が受けられます。今の生活リズムがクロノタイプに合っているかどうか振り返ってみてはいかがでしょうか。

 

リベンジではなくリフレッシュ夜更かしへシフトしませんか?


リベンジ夜更かしをしてしまうのはどうしてでしょう?日中に仕事や家事に追われ「自分のための時間」を確保できていないことは大きな要因として考えられます。仕事や家事の合間に好きなことへ没頭する時間を少しでもいいので確保してみましょう。また就寝前の余暇活動も○○時~○○時までと時間帯を固定することをおすすめします。

ちょっとのつもりが遅い時間になってしまったという場合は時間管理がうまくいっていないかもしれません。時間の意識を持つことはもちろん,アラームなどで管理してみるのも手です。

就寝前のルーティーンを作ることも有効です。人間の体内時計は25時間と言われており,1日24時間との1時間のズレを外界からの刺激によって調整していると言われています。○○時に入浴する,○○時に歯磨きをする,○○時に就寝準備をするなど就寝前のルーティーンを確立すれば,就寝時刻も一定になるでしょう(関連項目:夜勤でメンタルが限界?睡眠・光・食事で心身を整える4つの方法【専門家解説】)。

戦略的遅延のような夜更かしをしている方で,日中の活動に支障を来している方は精神科や睡眠外来などへの通院をお勧めします。不安や緊張に対する対処法としての夜更かしは,のちのち睡眠障害へと本格化してしまったり,うつ病や不安障害の併発等のリスクがあります。

 

【執筆】

TAKUYA(公認心理師・臨床心理士

夜更かしはついしてしまうものですが、自分の睡眠パターンやストレス解消方法を知ることで、少しずつ健やかな生活にシフトしていけます。リベンジではなく「リフレッシュ」として日々を楽しめる工夫を大切にしていきたいですね。

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【監修】

本山真(日本医師会認定産業医|精神保健指定医|医療法人ラック理事長|宮原メンタルクリニック院長)

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