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タグ : メンタルヘルス , 杏仁豆腐(公認心理師・臨床心理士)
2026年10月23日

目次
ー会話が途切れると「何か話さなきゃ……!」と焦ってしまう。
ーなんとなく気まずくて、居心地が悪い。
ー相手がつまらないと感じていないか不安になる。
そんな経験はありませんか?
実は、今この記事を書いている私も、沈黙には苦手意識があります。
会話が止まると、「次は何を話そう!?」と必死に話題を探したり、沈黙を埋めるために話し過ぎてしまったりします。そのせいで、「なんであんなことを話したんだろう」と後から一人で反省することも少なくありません。
もう少し気楽に沈黙と向き合えないものか。
そんな気持ちから、このブログを書くことにしました。
このブログを通して、沈黙が苦手な方に、「意外と沈黙って悪くないかもしれない」「怖がりすぎなくてもいいのかもしれない」と、少しでも前向きに感じてもらえたら嬉しいです。
こちらもどうぞ▶精神科医監修:あがり症は性格なのか?社交不安障害の対策法を解説
公認心理師・臨床心理士によるブログ解説を毎週生配信しています!
沈黙が気まずいと感じるのは、自分だけなのでしょうか。
2025年にFiom合同会社が全国の18歳〜24歳を対象に行った「気まずいの感覚について」の調査では、最も「気まずい」と感じる場面として、「沈黙が続いたとき」が67%で最も多く挙げられました。次いで、「1対1の会話で話題が尽きたとき」が54%とされています。この調査は18歳〜24歳を対象としたものなので、すべての年代にそのまま当てはめることはできません。それでも、少なくとも若い世代の中では、会話の沈黙や間に気まずさを感じる人が少なくないようです。
また、社会心理学の研究では、グループでの会話がスムーズに流れている時、人は「自分は受け入れられている」「この場に馴染んでいる」と感じやすいことが示されています。一方で、短い沈黙によって会話の流れが途切れると、所属感や社会的な承認感が揺らぎ、拒絶されたように感じることがあると報告されています。
つまり、沈黙が苦手なのは、あなたや私だけではありません。
沈黙に気まずさを感じたり、不安になったりするのは、人とのつながりを大切にしているからこそ起きる自然な反応でもあるのです。
とはいえ、沈黙は本当にネガティブなものなのでしょうか。
結論から言うと、「沈黙=ネガティブ」というわけではありません。
ただし、沈黙の意味は、相手との関係性、文化、場面、沈黙が起きたタイミングによって変わります。
たとえば、初対面の人との会話で突然沈黙が続くと、気まずく感じやすいかもしれません。一方で、気心の知れた相手と一緒にいる時の沈黙は、必ずしも不快なものではありません。言葉がなくても安心して過ごせる時間になることもあります。
Dat Bao(2025)は、沈黙に関する110本以上の文献を収集し、社会心理学における沈黙の多面的な意味を整理しています。その中では、沈黙にはさまざまな機能があることが示されています。
たとえば、
などです。
このように、沈黙はただ気まずいものではありません。
内省の時間になることもあれば、相手の言葉を大切に受け止める時間になることもあります。時には、言葉を急いで返さないことそのものが、相手への配慮になる場合もあるのです。
沈黙が苦手な人は、沈黙そのものよりも、その沈黙に自分でつけた意味に苦しんでいることがあります。
たとえば、会話が少し止まった時に、
ーつまらないと思われたのかも
ー嫌われたのかも
ー自分が変なことを言ったのかも
と考えてしまうことがあります。
もちろん、すべての沈黙をポジティブに捉えればよい、という話ではありません。相手が本当に怒っている場合もあります。その場の雰囲気が悪くなっている場合もあります。
一方で、沈黙にはさまざまな意味があります。
相手が考えを整理しているだけかもしれません。言葉を選んでいる途中かもしれません。安心しているからこそ、無理に話さなくてもよいと感じているのかもしれません。
つまり、沈黙が起きた時に、すぐに「嫌われた」「失敗した」と決めつける必要はありません。
ーこの沈黙には、他にどんな意味があるだろう
ー相手も少し考えているだけかもしれない
ー今は言葉を探している時間なのかもしれない
このように複数の可能性を持っておくだけでも、沈黙への不安は少しやわらぐかもしれません。
沈黙が生まれた時、すぐに何かを話そうとしなくても大丈夫です。もちろん、場面によっては話題を出した方がよいこともあります。しかし、沈黙をすべて自分一人で埋めなければならないわけではありません。
沈黙が起きた時には、心の中で次のように考えてみるのも一つの方法です。
「今はお互いに考えている時間かもしれない」
「相手は言葉を選んでいるのかもしれない」
「無理に話さなくても、この場は壊れないかもしれない」
「沈黙があるからといって、嫌われたとは限らない」
このように捉え直すことで、沈黙を少しだけ受け止めやすくなるかもしれません。
また、沈黙が苦手な人ほど、相手の反応を細かく読み取ろうとして疲れていることがあります。
相手の表情、返事の間、視線、声のトーン…。
そうしたものを一つひとつ気にしていると、会話そのものよりも、「相手にどう思われているか」に注意が向きすぎてしまいます。そんな時は、相手の気持ちを完璧に読み取ろうとするのではなく、「今、自分は沈黙を怖がっているんだな」と、自分の反応に気づくだけでも十分です。
自分の『今』に気づくために▶【精神科医監修】マインドフルネスとは②仕組みとやり方
沈黙をなくそうとするより、沈黙が苦手な自分に気づくこと。そこから少しずつ、沈黙との付き合い方を変えていけるのではないでしょうか。
今回は、沈黙が苦手な方に向けてブログを書いてみました。
会話が途切れると、「何か話さなきゃ」と焦ることがあります。気まずく感じたり、相手にどう思われているか不安になったりすることもあります。しかし、沈黙は必ずしも会話の失敗ではありません。沈黙は、考える時間になることがあります。相手の言葉を受け止める時間になることもあります。関係性によっては、安心して一緒に過ごせる余白になることもあります。
もちろん、沈黙が苦手な気持ちを無理に消す必要はありません。それでも、「沈黙=嫌われた」「沈黙=気まずい」「沈黙=失敗」とすぐに決めつけなくてもよいのだと思います。
私自身も、沈黙をネガティブに捉えすぎず、さまざまな解釈を持ちながら向き合っていけたらいいなと思います。
沈黙は、怖いものではなく、会話の中にある自然な間。
そう思えるだけで、少しだけ人との会話が楽になるかもしれません。
参考・引用文献
【執筆】 杏仁豆腐(公認心理師・臨床心理士)
【監修】 本山真(精神科医師/精神保健指定医/日本医師会認定産業医/医療法人ラック理事長) 2002年東京大学医学部医学科卒業。2008年埼玉県さいたま市に宮原メンタルクリニック開院。2016年医療法人ラック設立、2018年には2院目となる綾瀬メンタルクリニックを開院。 |