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2026年10月16日

目次
最近SNSでよく見かける「自然界隈」という言葉をご存じですか?
明確な定義がある言葉ではありませんが、都市での生活やスマホから少し離れて、山や川、森などの自然を楽しむ人たちを指して使われることがあります。楽しみ方としては、BBQ、グランピング、キャンプ、川下り、ハイキング、登山等お手軽なものから本格的なものまで多々あります。また、自然の中で写真を撮ったものを、SNSで「#自然界隈」と投稿するのも自然界隈の活動の一部です。
かくいう私も自然が好きです。特に壮大な山、森の緑、空の青さなどが一面と広がっている景色に心を奪われます。普段都会のビルだらけの中で生活していると、たまに出会える自然に癒されます。自然の中をただ歩くのも楽しいですし、アクティビティに参加するのも楽しいですね。
なぜ人は自然に惹かれるのか。自然にどのような効果があるのでしょうか?
日本は、森林の土地面積が全体の66%を占めている世界有数の森林国であることから、今回は森をテーマに考えていきたいと思います。
【関連項目】公認心理師執筆|自然セラピーとは?自然の持つリラックス効果を解説
公認心理師・臨床心理士によるブログ解説を毎週生配信しています!
そもそも人間の起源は猿人や原始人であり、その頃は大自然の中で暮らしていました。人間の進化の過程で徐々に文明が進化し、都市での生活を送るようになったわけです。要は、人間はほとんどの時間を自然環境下で過ごし、また生活や文明が進化した今現在も自然は身の回りに存在します。昔も今も自然環境と共に生きてきたのです。
そのため、自然環境は私たちにとって、注意を休ませたり、緊張をゆるめたりしやすい環境として働く可能性があると考えられています。特に日本人は「見晴らしの良い山」「高原の牧場」のといった、広い空間かつ人の手が入った自然を好む傾向があるとされています。
森を楽しむと言ったら、まずは「森林浴」ではないでしょうか?森林浴という言葉は、1982年(昭和57年)に林野庁が提唱しました。「森林のもつ癒しパワーを五感で受け取り、心と体をリラックスさせるもの」であり、気軽に森林に親しむ方法として、温泉浴、海水浴、日光浴になぞらえて森林浴という言葉になったそうです。現在は身近な言葉ですが、当時は真新しいものだったんですね。
次に森林浴の効果について考えていきます。
森林浴が精神面に与える効果について、POMS(Profile of Mood States、以下POMS)を用いた研究がなされています。
※POMSとは、現在の自分の気分、感情状態を測る心理検査のことです。
森林浴参加後にPOMSを評価したところ、抑うつ、怒り、敵意、疲労、混乱の項目において、参加前に比べて数値が減少(=落ち込みやイライラ、頭がぼーっとする感じが改善)したことがわかりました。これらの結果から、森林浴は気分の落ち込みや不安、疲労感をやわらげる補助的なセルフケアとして役立つ可能性があると考えられます。
※ただし、うつ病などの治療そのものを代替するものではありません。
日の光を浴びたり、軽い運動(散歩など)をしたりすることで、気分の落ち込みが軽減することは知られていますが、森林浴にも同様の効果があります。
運動とメンタルについてはこちらもどうぞ▶運動は抗うつ薬に匹敵するのか? ―メタアナリシスが示した「うつ病と運動」の最新研究―
森林浴にはストレス減少の効果も期待されています。人間の体には、強いストレスがあると「アドレナリン」「ノルアドレナリン」「コルチゾール」といったホルモンが働きます。すると体が戦闘モードになり、心臓がバクバクするなど緊張状態になります。そのような状況が長く続くと、心身に支障をきたしうつ病や不安障害、不眠症などの精神的な疾患につながる可能性もあります。
研究によると、都市散策と比べて森林浴では尿中のアドレナリン濃度を減少させ、男性の血中コルチゾールおよび男女の尿中ノルアドレナリン濃度を減少させることが明らかとなっています。これらの研究から、森林浴は都市環境での散策と比べて、ストレス関連指標を下げる可能性があると考えられます。
※ただし、効果の大きさや持続時間には個人差があり、今後さらに質の高い研究も必要です。
森林浴は、睡眠の質を改善する可能性も示唆されています。
森林浴では、歩行による適度な身体活動、自然環境によるリラックス、日中の光刺激などが組み合わさるため、夜の休息につながりやすい可能性があります。確かにたくさん運動して汗をかいた日は、すぐ眠れたり長時間ぐっすりと眠れたりすることが多いですよね。
他にも、都市部での散策と森林浴後を比較すると、すっきり起きることができ、疲れが取れたと感じやすいそうです。
森の中を歩いていると独特な香りがしませんか?木の香り、森の香りなどと表現しますが、それは「フィトンチッド」という揮発性の物質によるものです。
森林浴中にフィトンチッドを吸入すると爽快感を得られることがわかっています。また、フィトンチッドなどの森の香り成分は、森林浴の心地よさに関係している可能性があります。香りは気分や記憶と結びつきやすく、心地よい香りを感じることでリラックスしやすくなる人もいます。森林浴は、歩くことや視覚的な情報に加えて、嗅覚でもストレス減少やリラックス効果をもたらします。森はアロマや香水と同等の役割を果たしていたんですね。
ちなみに、フィトンチッドはヒノキの香り成分の一部でもあります。ヒノキの精油を手に入れると、香りをかぐたびに森林を身近に感じられるので、アロマオイルやディフューザーなどで癒されてみてはいかがでしょうか。
自然をテーマに、森林浴が抑うつ状態の改善やストレス減少に効果をもたらしていることがわかりました。自然の画像や映像を見たり、自然の香りをかいでみたりするだけでも効果があるそうなので、試してみてはいかがでしょうか。
今回は森という壮大な自然を取り上げましたが、もっと身近な自然からも癒しを得られるのではないかと考えました。緑地や緑道、公園などで花木を愛でることも楽しいですし、森林浴同様、ストレス減少などの効果があるのではないかと考えました。下を向いて歩くのではなく、上を向き周りを見ながら歩くと、今まで気づくことのできなかった自然に出会えるかもしれませんね。
※なお、森林浴は心身のセルフケアとして役立つ可能性がありますが、強い抑うつ、不安、不眠などが続く場合には、自然に触れるだけで解決しようとせず、医療機関や専門家に相談することも大切です。
参考引用文献
【執筆】 すい(公認心理師) 林野庁のHPに森林浴スポットの一覧が掲載されています。写真やアクティビティなどが掲載されているのですが、それを眺めているだけでワクワクしちゃいます。興味のある方は是非チェックしてみてください。
【監修】 本山真(精神科医師/精神保健指定医/日本医師会認定産業医/医療法人ラック理事長) 2002年東京大学医学部医学科卒業。2008年埼玉県さいたま市に宮原メンタルクリニック開院。2016年医療法人ラック設立、2018年には2院目となる綾瀬メンタルクリニックを開院。 |