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公認心理師執筆|自然セラピーとは?自然の持つリラックス効果を解説

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2024年10月4日

自然セラピーとは何か?自然の持つリラックス効果を解説

【解説】

ふ~みん(公認心理師)

日本には四季があるので、それぞれの季節で何種類もの花が咲き、鳥や虫の声が聴こえ、時期によって表情が変わる山や樹木や景色があり、とても素敵ですよね。子どもの頃はそれらに対してきれいだと感じたり大きいと思ったりすることはあったものの、癒されるという感覚をもったことはなかった気がします。それがいつからか風景や草花など自然の力に癒しを感じるようになりました。大人になったのかなぁ、なんて思うこともありますが、それだけ子どもの頃よりも日々考えたり疲れたりしているのかもしれないですね。

今回はそんな自然によるリラックス効果についてご紹介しようと思います。

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【監修】

本山真

医師、精神保健指定医、日本医師会認定産業医

東京大学医学部卒業後、精神科病院・診療所での勤務を経て、さいたま市に宮原メンタルクリニックを開院。現在は株式会社サポートメンタルヘルス代表に加え、2院を運営する医療法人の理事長としてメンタルヘルスケアに取り組んでいる。

 

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自然の持つリラックス効果


数は多くありませんが、自然がもたらすストレス軽減効果やリラックス効果、それに付随する予防医学的効果については、日本だけでなくイギリス、ニュージーランド、韓国、フィンランドなど世界中で関心を持たれ研究されています。その中で、自然環境とメンタルヘルスの関係を調査した例もあるとか。

 

例えば、都市部の住宅街と緑地に関する研究では、緑の少ない地域に住んでいる人は、緑が多い地域に住む人と比較して、抑うつのリスクが25%、不安障害のリスクが30%増加するという結果が出ているもの、森林浴が交感神経の興奮を制御し、分類した6項目中「緊張・不安」「抑うつ・落ち込み」「敵意・怒り」「疲労」「混乱」の5項目で気分が向上し、血液循環を改善させ血圧を降下させるという結果が得られたもの、ストレスを与えた被験者に花の画像を見せると、ネガティブな情動が減少し、ストレスにより上昇した血圧やホルモン値が低下したというもの、などです。

 

 

脳への影響も研究されており、上述した花の画像がストレス軽減に有効である例についても、画像の花より生花を鑑賞するとより脳がリラックスすることが分かっています。また、小川のせせらぎ音や風に揺れる木の葉の音といった何気ない自然界の音には、自律神経を落ち着かせ、身体を弛緩させる効果があることも証明されています。

 

私たちの脳は日々多くの刺激や情報に触れ、それを瞬時に処理しているわけですが、過剰なストレスを受け続けると処理が追い付かなくなり、集中力が低下したり気分が沈んだりします(関連項目:【精神科医監修】認知機能とは?認知機能が関連する困りごと)。このような脳の状態を「脳疲労」と呼び、それが蓄積すると五感の異常や心身の不調として現れてしまいます。つまり、脳疲労を和らげることがストレス軽減につながるということなのです。森林の中にいると身体がリラックスすることが分かっているので、脳疲労を和らげることも期待されています。

 

自然セラピーのメカニズム


とはいえ都会で生活しているとなかなか自然に触れる機会はないかもしれないですね。実際、「森林浴」という言葉が最初に使われたときは、都会の空気や喧騒から離れ、森林の環境に浸ったり散策したりすることによる保養を推奨するためだったと言われています。1982年、当時の林野庁長官によって森林浴が提唱されたのを機に少しずつ社会に浸透し始めますが、その頃はまだ森林による快適性増進効果やセラピー効果など医学的な解明はされていませんでした。1990年代に入ってから、元々海外で取り入れられていた森林療法という概念や言葉が使われるようになり、以降自然セラピー分野の研究が進むようになりました。

 

現在では、森林浴には交感神経と副交感神経のバランスを整える効果、ストレスホルモンを減少させる効果、心拍数と血圧を安定させる効果などがあることが実証されています。また、全国各地には森林セラピー研究会によって認定された森林セラピー基地や森林セラピーロードがいくつも整備されています。これらの認定を受けるには、科学的根拠に基づいたリラックス効果の実験結果や自然・社会条件、滞在施設等の基準を満たす必要があるので、健康増進やセルフケアなどの目的に添った設備や環境が用意されていることは間違いありません。

 

いわば専門家のお墨付きとも言える場所なので、興味はわくけれど初めて触れるにはちょっと敷居が高いと感じる人もいるでしょう。しかし、実際はただゆっくり歩いたり深呼吸をしたり、好きな飲み物でのんびりティータイムを楽しんだりするだけの利用もできるようですので、関心がある方は設置されている場所やそれぞれの特徴などを調べてみることをお勧めします。

 

自然セラピーのススメ


自然には五感をほどよく刺激する要素がそろっています。変化する景色、日差しなどを視覚でとらえ、鳥の鳴き声、水や風の音を聴覚で得て、土や草花などの香りを嗅覚で認識し、足の裏で地面のでこぼこを感じたり木の肌に触れたりして触覚を使うことにより様々なものの状態を理解します。そして、その地域の特産物を生かした料理を味わうことで味覚も働きます。こうした五感の機能を正常に保つためにも、自然に触れ、脳疲労をため込まないようにすることは大事なのです(こちらもどうぞ:【精神科医監修】感覚過敏とスヌーズレン・センサリールーム)。

 

桜や紅葉、雪などの風情ある景色は海外からも鑑賞のために来日する観光客がいるほど人気がありますが、どれも1年のうちの限られた時期にしか見られないものです。それに比して森林は楽しめる期間が長いと言えます。森林の力は治療として活用されることもありますが、病気予防、健康増進、リラクゼーション、ストレス解消、気分転換にも適していると言われていますので、日常生活にちょっと疲れを感じたら自然が与えてくれるパワーを感じに出かけてみるのも良いかもしれません(関連項目:【精神科医監修】散歩でメンタルケア!ストレス発散効果は?【ライフハック心理学#2】)。

【参考】環境省ホームページ:国立公園の健康効果など

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