2024年12月28日
初回カウンセリングをご希望の方はこちら
オンラインカウンセリングログイン
資料ダウンロード
タグ : TAKUYA(公認心理師・臨床心理士) , 産業精神保健
2025年1月3日
目次
株式会社サポートメンタルヘルスは”働く人を応援するメンタルクリニック”を運営する医療法人が母体です。医療機関におけるメンタルヘルス対策のノウハウを以て、全国の中小企業をサポートいたします。 株式会社サポートメンタルヘルスでは、メンタルヘルス専門職による”中小企業のメンタルヘルス対策個別無料相談会”(web開催、日時は応相談)を実施しております。従業員のメンタルヘルス対策にお悩みの経営者様、人事ご担当者様、まずはお問い合わせフォームよりお申し込みください。
|
専門職によるライブ配信でヘルスケアを学びませんか?
G-life(ジラフ)
リーダーシップとはいったい何でしょうか。
リーダーシップと聞くと,どこかの偉い人や,会社の社長が発揮するものと想像して「自分とは関係ないな」と思う方も多いかもしれません。しかし,集団の構成員であるフォロワーの立場から見ると,我々は直接的あるいは間接的にリーダーという存在とよく関わっています。仕事であれば職場の上司,学校であれば担任の先生,クラスの委員長,部活のキャプテンなど,家庭においてはイベントに応じて家族のいずれかがリーダーとして家族を統率・牽引しています。これらは直接的に関わりを持つリーダーですね。あるいは首相や大統領など国家のリーダーや会社の経営者などニュースやネットを通じて見聞きするようなリーダーもいます。こちらは間接的なリーダーですね(人によっては直接的なリーダーでしょう)。
そして,これらリーダーがどのように行動したかによって,私たちや私たちの身の回りも影響を受けます。例えば,上司の指示1つで仕事の進め方が変わったり,担任の先生の決定が学校生活を左右したりすることもあります。また,国家のリーダーが取る政策や決断が,私たちの日常に大きな影響を及ぼすこともあります。
上述のように組織や集団という構造においてリーダーの存在は非常に大きいものです。そのため,「リーダーシップとは何か」を理解しようとする試みは,古くから多くの研究者によって行われてきました。
リーダーシップ理論の歴史を振り返ると,19世紀から20世紀初頭にかけては,いわゆる「偉人論」が主流でした。この理論では,リーダーシップを生まれつきの才能や特定の人物の身に備わった資質と考え,ナポレオンなどの歴史的な偉人を例に挙げながら,優れたリーダーシップを発揮する人とそうでない人の違いを論じてきました。この「偉人論」は科学的に検証されたものではないのですが,リーダーシップは生まれつきの才能であるという考えが定着していきました。
この「偉人論」をベースとして,実験や調査など科学的な研究として検証したのが「特性理論」と呼ばれるアプローチです(関連項目:【精神科医監修ライフハック心理学】類型論と特性論から性格を考える)。リーダーシップは先天的なものであるという立場をとり,その個人差を知能や性格の違いから検討しようとしました。代表的なものにStogdillの研究が挙げられます。彼は知性,独創性,公平性,忍耐力,活動性などの特性を挙げ,優れたリーダーとそうでないリーダーを比較研究し,その違いを明らかにしようとしました。
その後もさまざまな研究者が検証を行い,特性論は20世紀半ばまで盛り上がりを見せていました。しかし,研究結果には一貫性がなく,リーダーシップとはこれだ!という明確な結論は得られませんでした。リーダーシップ特性理論は現在も研究や提唱がなされていますが,後述する他の理論の登場で,徐々に一強状態ではなくなっていきます。
続いて,研究者たちは性格など目に見えないものからリーダーシップを捉えるのではなく,観察が可能な行動という面からリーダーシップを捉えようとしました。この後者のアプローチを「行動理論」と呼び,1940年代あたりから盛り上がりを見せ始めます(余談ですが,この時代は心理学そのものが「行動」に傾倒していた時代です)。
行動理論では現場リーダーの行動を観察し,その行動と集団のパフォーマンスとの関連性について検討していきました。代表的な理論にオハイオ大学研究やミシガン大学研究などのほか,三隅二十二の提唱したPM理論も行動理論のアプローチから生まれました(参考:産業医監修【心理的安全性の高め方】パフォーマンスが高まるリーダーシップ)。
そして,こうした検討が進んでいくなかで,リーダーの行動を課題解決志向と関係維持志向の2つの軸によって定義するようになりました。行動理論は特性理論と異なり後天的,つまり学習ができて獲得が可能,という立場を取っているため,この2軸は現在行われているリーダー研修やリーダーシップ開発にも影響を与えています。
一方,課題解決志向と関係維持志向の2軸が普遍的なものであるか,つまり,どんな現場,どんな状況,どんなフォロワーでも効果を発揮するのかという観点から見てみると,どうやらそれが当てはまらない場面もあるという結果も見られるようになりました。
そのため,普遍的なリーダーシップは存在しないという見方が基本となり,環境やフォロワー状況に適合した行動がリーダーシップ行動として効果を発揮すると考えられるようになりました。こういったアプローチを「状況理論」と呼びます。代表的な理論にFiedlerの状況即応モデル,HerseyとBlanchardのSL理論,Houseのパス・ゴール理論などがあります。
現在のリーダーシップ研究は,上記の状況理論をベースに,環境やフォロワー状況ごとの具体的なリーダー行動に注目する動きが主流です。
代表的なものに「シェアドリーダーシップ」や「サーバントリーダーシップ」などの理論があります。
シェアドリーダーシップとは、従来のトップダウン型のリーダーシップとは異なり、集団やチーム内のフォロワーそれぞれがリーダーシップを担うモデルです。それぞれが状況に応じてリーダーの役割を果たし、チームの中でリーダーシップが動的に共有されることで、組織の柔軟性と適応力を高めることを目的としています。一個人のリーダーシップではなくチームの状態に注目している点で,これまでのリーダーシップ研究とは異なるアプローチです。特にプロジェクトベースのチームや研究開発チームなどの専門知識の分散が重要な現場で効果を発揮します。
サーバントリーダーシップは、目的達成のためにリーダーがフォロワーの業務をサポートする構図のリーダーシップです。最終的な意思決定や責任はリーダーにあるものの,リーダーがフォロワーのニーズを最優先に考えた行動を選択することで、リーダー・フォロワー間の信頼関係,フォロワーの成長,フォロワーの向組織的な態度と行動の発揮などを促し,組織パフォーマンスのポジティブな結果を生み出すとされています。その他,組織力強化や顧客満足度の向上などが期待されます。
【執筆】 TAKUYA(公認心理師・臨床心理士) 今回取り上げたリーダーシップ論の変遷をまとめてみると,
の3点が挙げられるかと思います。 現代におけるリーダーシップとは,「強いリーダー」というイメージから、集団の力を引き出し、フォロワーの成長をサポートするものだという認識に変わりつつあります。変化の多い時代の中で,状況に応じた適切なリーダーシップを取れるかどうかが,この社会を生き残っていく方法の1つなのかもしれません。
【監修】 本山真(日本医師会認定産業医|精神保健指定医|医療法人ラック理事長|宮原メンタルクリニック院長) |