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臨床心理士解説|チョコレートのメンタルを整える効果とは?

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2024年7月5日

最終更新日 2024年8月2日

チョコレートがメンタルを整える効果について臨床心理士が解説

【執筆】

かなた(公認心理師・臨床心理士)

皆さんは「チョコレート」お好きですか?私は小さいころからョコレートが大好きです。チョコレートだったらなんでもいいというわけでもなく、果実やピューレなどが入っていない、純粋なミルクチョコレートが好きです!ホワイトチョコレートやカカオ含有量が多いブラックチョコレートはあまり得意ではないんです。

そんなチョコレート好きな私ですが、これまでは好きだからという純真な思いだけでチョコレートを食べ続けてきました。しかし、健康についても考えなくては…と思う年齢に突入しました。

チョコレートが心身に与える影響について理解を深めれば、よりいい気分でチョコレートを食べれるのではないか!と思い、今回は様々な論文を読み、情報を抽出してきました。お付き合いいただければ幸いです。

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【監修】

本山真(精神科医師/精神保健指定医/日本医師会認定産業医/医療法人ラック理事長)

2002年東京大学医学部医学科卒業。2008年埼玉県さいたま市に宮原メンタルクリニック開院。2016年医療法人ラック設立、2018年には2院目となる綾瀬メンタルクリニックを開院。

 

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チョコレートの成分


まず、チョコレートの効果について紹介する前に、チョコレートに関する基本的な知識を抑えていきたいと思います。

 

ご存じの方も多いかもしれませんがチョコレートの原材料は「カカオ豆」です。チョコレートは、すり潰したカカオ豆(カカオマスといいます)に、搾油(油を搾り取る)によって得られたココアバターと砂糖を加えて完成します。チョコレートは約50%が脂質でできており、それ以外の成分としては、ポリフェノールや植物繊維などが含まれています。

 

成分についてもう少し詳しくご説明していきます。チョコレートには300~500以上の化学物質が含まれています。化学物質というと、ちょっとイメージがわかないという方や有害な物質だと感じる方もいらっしゃるかもしれません。化学物質は、食品や魚、木など様々な物質をつくっている成分の1つにすぎません。ビタミンやたんぱく質、脂質などの物質も化学物質です。このように、化学物質は日常生活にありふれた物で、体に害のある物質もあれば、良い効果のある物質もあります。

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チョコレートのメンタルや体を整える効果


さて、ここから本題に入っていきます。チョコレートは「甘いお菓子」という認識があるかもしれませんが、実は機能性も備えているんです。近年では、チョコレートの機能性に関する研究が進んでいます。様々な研究を見た結果、主に以下のような効果があることが示されています。

 

 

  • リラックス効果

チョコレートにはリラックス効果があると報告されています。この効果はチョコレートに含まれる「テオブロミン」が自律神経に作用することで生まれています。自律神経は、体温や呼吸、消化などの働きをコントロールしている神経です。自律神経が乱れることで、なかなか疲れが取れなかったり、体がだるくなったりなどの不調が出ることがあります。最近疲れているなぁ…と感じる方は、チョコレートを食べて一息つく時間を作ってみてはいかがでしょうか。

関連項目:自律訓練法とは|公認心理師がリラックス法を解説!

 

  • 睡眠のリズムを整える

チョコレートには、睡眠のリズムを整える効果があると報告されています。睡眠のリズムは体内時計(体の様々なリズムを整えるもの)で管理されています(【眠れない方必見!】睡眠のカギは朝にある!精神科医監修不眠解消メソッド)。体内時計の周期が乱れると、不眠になったり、日中に眠くなったりといった支障が出てしまいます。よって、質の良い睡眠をとるためには、この体内時計の周期を整えることが必要になってきます。

 

ちなみに、どのタイミングでチョコを食べるかについて、チョコレートと睡眠に関する研究を概観した結果、朝と夜どちらの主張もありました。朝食べても、夜食べても睡眠の質が高まるということですが、実際どちらの方がより効果的なのか気になるところです…。また、チョコレートに含まれる「マグネシウム」や「カルシウム」には安眠効果があると報告されています。睡眠にお悩みの方は、朝起きたとき、もしくは夜寝る前にチョコレートを食べてみてはどうでしょうか。

 

  • 認知機能の改善や低下のリスクを下げる

チョコレートに含まれるポリフェノールは、認知機能に作用するという結果が報告されています(認知機能についてはこちら:【精神科医監修】認知機能とは?認知機能が関連する困りごと)。実際に、ポリフェノールの1種である「フラボノイド」の定期的な摂取が、認知機能の改善や認知症・認知機能低下のリスクを下げるという報告もありました。わかりやすい例でいうと、チョコレートを食べることで仕事の作業スピードが上がる、チョコレートを定期的に摂取することで老化に伴う忘れっぽさの進行が少し緩和されるなどが挙げられます。

 

上記の情報だけを聞くと、「チョコレートすごい!」となるかもしれません。世の中何事もそうですが、利点もあれば限界点もあります。チョコレートを定期的に摂取すると認知機能が劇的に改善したり、認知機能の低下を予防できたりといったわけではありませんので、その点はご注意くださいね。

 

  • 気分を調節する

ポリフェノールという成分は認知機能だけでなく、気分にも影響を与えることが報告されています。実際に、慢性疲労を抱える人を対象とした研究では、ポリフェノールが豊富なチョコレートを食べた後は、ポリフェノールが少ないチョコレートを食べた後と比較して、不安に関連する症状が軽減したという結果が報告されています。

 

上記のように肯定的な報告がある一方でチョコレートはストレス発散を目的とした暴食を促進するという報告もあります。ですので、長期的な気分の安定にはつながらない場合もあります。また、テオブロミンはセロトニンの働きを助け、気分の落ち込みを緩和するという結果もあれば、うつ病のリスクを高めるという結果もあります。このように、研究の知見が一致しておらず、どちらとも言い切れないのが現状です。

 

効果的なチョコレート摂取のための注意点


ここまでチョコレートの効果について、様々な研究結果を交えながらご紹介しましたがチョコレートをたくさん摂取すれば効果がある!というわけではありません。また、体の病気を抱えている場合など、心身の状態によってチョコレートの摂取が悪影響を与える可能性もあります。ご自身の状態を考慮しながら、おいしく、健康的に食べていただければと思います。

 

今回はチョコレートについて研究を概観しながらご紹介しました。普段何気なく食べているものが心身とどのような関わりがあるのかを知ることで、健康意識につながることもあるかもしれません。

 

参考文献


  • Crichton, GE , Elias, MF, & Alkerwi, AA (2016). チョコレート摂取は認知機能の向上と関連している: メイン州-シラキュース縦断研究。Appetite  、  100、126-132
  • エスコバル、C.、エスピティア・バウティスタ、E.、グスマン・ルイス、マサチューセッツ州、ゲレーロ・バルガス、NN、エルナンデス・ナバレッテ、M. Á.、アンヘレス・カステヤノス、M.、… & ブイス、RM (2020) 。朝食にチョコレートを摂取すると、時差ボケとシフト勤務の実験モデルで概日の非同期が防止されます。科学的報告書、10(1)、6243。
  • Franco, R., Martínez-Pinilla, E. テオブロミンとうつ病の甘いつながりは一方的か双方向か? BMC Psychiatry 23, 411 (2023). https://doi.org/10.1186/s12888-023-04662-7
  • Garbarino, S., Garbarino, E., & Lanteri, P. (2022). チョコレートを食べることの季節性リズム、気分、時間的パターン: 生理学、発見、将来の方向性のスコープレビュー。Nutrients、14(15)、3113。https ://doi.org/10.3390/nu14153113
  • Moreira, A., Diogenes, MJ, De Mendonça, A., Lunet, N., & Barros, H. (2016). チョコレートの摂取は認知機能低下のリスク低下と関連している。アルツハイマー病ジャーナル、53(1)、85-93。
  • Li, XY, Liu, H., Zhang, LY, & Yang, XT (2022). 食事性テオブロミンとうつ病の関連性:人口ベースの研究。BMC精神医学、22(1), 769。
  • Mielmann, A., Le Roux, N., & Taljaard, I. (2022). 気分、親しみやすさ、受容性、感覚特性、態度がチョコレートに対する消費者の感情的反応に与える影響。Foods (バーゼル、スイス)、11(11)、1621。https ://doi.org/10.3390/foods11111621

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