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タグ : フリーランス新法 , メンタルヘルス対策 , 産業精神保健
2024年9月30日
目次
近年、企業におけるダイバーシティ&インクルージョン(多様性と包摂)の重要性がますます強調されるようになりました。ダイバーシティ&インクルージョンは、異なる背景やスキルを持つ人々が一緒に働くことで新しい視点が生まれ、イノベーションや業績向上につながるとされています。フリーランス新法施行を受けてフリーランス人口の増加が予想される今、フリーランスの活用は多様性を促進し、組織にとって新たな可能性を切り拓く強力な手段となるかもしれません。
とは言え、ダイバーシティ&インクルージョンを実現することは簡単ではありません。特に、フリーランスのように単発・短期契約で働くフリーランスやリモートワーカーを含める場合、コミュニケーションやチームの一体感をいかに構築するかが課題となることが多いようです。今回はフリーランスを活用しながら、企業のダイバーシティ&インクルージョンを促進していくための方法について考えてみたいと思います。
まず、多様性(ダイバーシティ)の観点からフリーランスを活用することのメリットを考えてみましょう。フリーランスは、特定のスキルや経験を持っていることが多く、(広義の)自由な働き方を好むという特徴があります。フリーランスの経歴や年齢、バックグラウンドは多種多様であるため、フリーランスを積極的に活用することは、社内の固定観念や慣習に新しい風を吹き込む可能性があります(関連項目:フリーランス新法の理解が中小企業成長の鍵ーワークライフインテグレーション推進ー)。
例えば、フリーランスには、これまでさまざまな業界で働いてきたジェネラリスト、リモートワークのスペシャリスト、新しい技術や手法を駆使するエキスパート、さらには多国籍の人々が存在します。フリーランスの持つ独自な視点や知見は、組織にとって大きな刺激となるでしょうし、問題解決アプローチや新たなアイデアを生み出すことにつながるかもしれません。
さらに、フリーランスの柔軟な働き方は、社内の固定観念や習慣にとらわれづらいというメリットがあります。結果、従業員と比較して、自由な発想を以て仕事を取り組むことができるかもしれません。固定観念に縛られない自由な発想と柔軟性は、組織全体の創造性を高め、イノベーションの源となることが期待できます。
一方で、フリーランスを職場に受け入れる際、フリーランスをチームの一員として感じられるような「包摂」の文化をどう醸成するかが課題となります。ここで鍵となるのが「心理的安全性」です。心理的安全性とは、チームメンバーが自由に意見を出し合い、ミスを恐れずに行動できる環境を指します(参考:産業医監修【心理的安全性の高め方】パフォーマンスが高まるリーダーシップ)。
特にフリーランスは、短期契約やリモートワークが主流であるため、従業員と比較して組織内で孤立感を感じやすい傾向にあります。孤立感によってフリーランスの持つ多彩な経験や知見が充分に発揮されないこともあるでしょう。フリーランスの孤立感を防ぐためには、フリーランスが参加するミーティングやプロジェクトの場において、フリーランスの意見をしっかりと尊重し、組織への貢献が評価される環境や仕組みを整えることが効果的です。
具体的には、定期的なフィードバックや1on1ミーティングの実施が有用でしょう。フリーランスもチームの一員という意識が醸成でき、自身のアイデアや意見が実際にプロジェクトに影響を与えていると実感できると思います。また、コミュニケーションツールを活用して、従業員とフリーランスが自由かつ簡単に意見交換できる環境を作ることも重要でしょう。
ダイバーシティ&インクルージョンを推進することは、組織全体のメンタルヘルスに大きな影響を与えます。職場が多様なバックグラウンドやスキルを持つ人間を包摂する環境であれば、社員一人一人は自分の存在や貢献が認められていると感じやすくなります。この「認められている」という感覚は、仕事に対する満足感や自己効力感を高め、ストレスや燃え尽き症候群の予防に効果があります(関連項目:精神科医監修|バーンアウトとは?症状とメカニズム、予防法を解説)。一方、心理的安全性に乏しい環境においては、フリーランスに限らず、従業員も不安感やストレスを感じやすくなります。
多様性のある職場では、様々な価値観に基づく意見の衝突が起こることも少なくありません。こうした意見の衝突を建設的な議論として受け入れ、対話を促進する文化が根づいていないと、従業員やフリーランスのメンタルヘルスに悪影響を及ぼすリスクがあります。つまり『組織全体で多様性を尊重し包摂する文化』を育てることは、一人一人の働き手が安心して自分らしく働ける環境を作り出すための基本だと言えます。フリーランスの活用を通じて、ダイバーシティ&インクルージョンを促進することは、メンタルヘルスを重視した職場作りの一つだと言えるわけです。
企業がダイバーシティ&インクルージョンを実現し、フリーランスの活用によって組織のメンタルヘルスを向上させるためには、具体的な取り組みが必要です。ここでは、企業が実施できるいくつかの具体的なアプローチを紹介します。
まず、フリーランスと従業員の間にオープン且つ透明性の高いコミュニケーション機会・コミュニケーション手段を確保することが重要です。結果、フリーランスもプロジェクトに対して責任を持ち、自分の意見が反映されるという事実に自信を持てるようになるでしょう。
フリーランスは多様な働き方を求めています。フリーランス活用にあたって、企業はリモートワークやフレキシブルな労働時間といった手段を提供し、働く側が自分に最適な環境で働けるよう配慮するという構えを醸成しましょう。
メンタルヘルスケアは、従業員に対して、だけではなく、当然フリーランスにも必要です。例えば、フリーランス向けにメンタルヘルス相談窓口を設けたり、メンタルヘルス関連の福利厚生サービスを共有することで、フリーランスが健康に働ける環境を提供することが可能です。
フリーランスの活用は、ダイバーシティ&インクルージョンの文化を職場に根づかせるための強力な手段です。多様な視点を取り入れることで、組織は新しいアイデアやイノベーションを生み出す力を高めることができます。そして、包摂的な環境を作り上げることは、組織の心理的安全性を高め、すべての働き手のメンタルヘルスに寄与するでしょう。
企業はフリーランスを含めた全ての従業員が安心して働ける環境作りに注力し(関連項目:フリーランス新法とハラスメント対策義務化|中小企業が知っておくべき重要ポイント)、ダイバーシティ&インクルージョンを推進することで、持続可能な成長を手に入れることができます。
【監修】 本山真(精神科医師/精神保健指定医/日本医師会認定産業医/医療法人ラック理事長) 2002年東京大学医学部医学科卒業。2008年埼玉県さいたま市に”働く人を応援する心療内科”をコンセプトとして宮原メンタルクリニック開院。2016年医療法人ラック設立、2018年には2院目となる綾瀬メンタルクリニックを開院。医療の垣根を超えて日本の中小企業を応援するため、2019年株式会社サポートメンタルヘルスを設立。 |